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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

オリジン・ストーリー

Mark Rosewater
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2026年10月13日

 

 『リアリティ・フラクチャー』には43組の「模倣宇宙の片割れ」のペアがあり、そのうち38組はキャラクターのペアである(そのうち1組はギデオンと彼の記念碑なのだが)。これらのキャラクターはそれぞれ、『マジック』の歴史を通じて人気を集めてきたキャラクターであることを理由に選ばれた。今回の記事では、その中から何人かを取り上げ、彼らがどのように誕生したのか、最初のカードをどのようにデザインしたのか、そして『リアリティ・フラクチャー』でのペアをどのようにデザインしたのかを語っていこう。

カーン

 『リアリティ・フラクチャー』では、《銀白の防衛者、カーン》と《金色の守護者、カーン》が登場する。どちらも彼が創造した人工次元ミラディンを舞台としているが、それぞれ異なるバージョンのミラディンが描かれている。

 カーンの最初のカードは、『ウルザズ・サーガ』で登場した《銀のゴーレム、カーン》である。

 

 今回取り上げるキャラクターの中で、最初にカーンを選んだのは、私にとって最も思い入れのあるキャラクターだからである。何しろ、私自身が彼の生みの親の1人なのだ。何年も前のこと、私は友人のマイケル・ライアン/Michael Ryan(当時マジックの編集者だった)と話をしていて、『マジック』には継続的な物語がないことを嘆いていた。そこで私とマイケルは、自分たちで物語を考え、『マジック』のブランド・チームに提案することにした。我々はその物語を「ウェザーライト・サーガ」と名付けた。驚いたことに、チームからは「やろう!」という返事が返ってきたのである。

 我々のアイデアは、セットをまたいで登場するおなじみのキャラクターたちを用意し、彼らの物語を追い続けるというものだった。彼らが次元から次元へと旅する手段は、ウェザーライト号という飛行船であった(『ミラージュ』ブロックの物語で初登場した)。我々は、『マジック』の5色すべてを網羅するように乗組員を揃えた。その際、私は乗組員の1人をアーティファクト・クリーチャーにすることを強く主張した。私はアーティファクトをテーマにしたデッキで遊ぶのが好きで、アーティファクト・クリーチャーが大好きなのだ。

 我々は古典的な物語を描きたいと考えていたため、ウェザーライト・サーガを「叙事的英雄の神話」と呼ばれる物語の類型に基づいて構築した。私もマイケルも、比較神話学(人間は根本的に同じ物語を繰り返し語っているという考え方)について著したジョーゼフ・キャンベル/Joseph Campbellの大ファンだったのだ。物語の主人公であるジェラード・キャパシェンには、果たすべき運命があった。彼は「レガシー」と呼ばれる一連のアーティファクトを使って世界を救うことになるのである(後に、その相手はファイレクシア人であることが明らかになった)。

 レガシーは物語の中で非常に重要な役割を果たすため、我々はアーティファクト・クリーチャーをそれに結び付けることにした。私は彼をどうしてもゴーレムにしたかった。その理由の1つは、私が『アルファ版』で初めてパックから引き当て、好きになったアーティファクト・クリーチャーが《黒曜石のゴーレム》だったことであり、もう1つは、ゴーレムがユダヤ神話に由来する存在だったことである。ゴーレムは通常、単一の素材から作られる。そこで、銀でできたゴーレムなら格好いいだろうと考えた。我々は彼を「カーン/Karn」と名付けた。これは「道標や登山道の目印、記念碑として人工的に積み上げられた石の山」を意味する「ケルン/cairn」という単語に由来している。

 我々は、カーン自身がレガシーの一部であるというアイデアを気に入っていた。彼の体内は空洞になっており、レガシーのアーティファクトをすべて収納できるのである(当初の物語では、ウェザーライト号はレガシーの一部ではなかった)。また、彼にはジェラードの守護者という役割も与えられていた。

 我々は、すべてのキャラクターを特定の類型に結び付けていた。カーンに選んだのは「心優しき巨人」と呼ばれる類型である。これは、体が非常に大きく恐ろしげな外見をしているが、実際にはとても優しい人物を指す。この類型に合わせるため、我々はカーンを、信念として戦うことを拒む平和主義者にすることにした。彼の背景設定は、過失によって罪のない者を死なせてしまい、その出来事をきっかけに非暴力を誓ったというものだった。

 私とマイケルがウェザーライト・サーガを作ったとき、最初の物語は3年間にわたって展開する予定だった。我々は、ウェザーライト号の乗組員たちを何年もかけて1人ずつカード化していくつもりだった。ウェザーライト・サーガが始まったころ、私は店舗でのプレイ向けに企画された「ヴァンガード」というプロジェクトを担当することになった。ヴァンガード・カードはデッキの外に置く大型のカードで、プレイヤーに特殊な能力を与え、初期ライフ総量や初期手札枚数、手札の上限を変更するものだった。ヴァンガード・カードにはキャラクターを登場させたいと考えていたが、ウェザーライト号の乗組員全員がカード化されるまでには何年もかかることがわかっていたため、私はヴァンガード・カードにウェザーライト・サーガのキャラクターを使うことを提案した。

 

 私とマイク・エリオット/Mike Elliottは、キャラクターが決まる前にヴァンガード・カードをデザインしていたため、既存のカード・デザインにキャラクターを当てはめられるか検討した。そのうちの1枚は、『アンティキティー』の《ティタニアの歌》から着想を得たもので、自分のクリーチャーでないアーティファクトをすべて、マナ総量に等しいパワーとタフネスを持つクリーチャーにするものだった(このコラムでは、私の『アンティキティー』好きが繰り返し話題になっている)。カーンの仕事はアーティファクトの集合体であるレガシーを守ることだったので、このカードには彼が最もふさわしいと思われた。

 そこから1年後の『ウルザズ・サーガ』に話を進めよう。このブロックでは時代を遡り、物語におけるウルザの役割を掘り下げることになった(ウルザは、私とマイケルが物語の制作から離れた後に追加されたキャラクターである)。ウェザーライト号の乗組員のほとんどがまだ存在していなかった時代を舞台としていたため、カード化できる乗組員はカーンしかいなかったのだ。

 私はカーンを大型のクリーチャーにしたかったが、彼は平和主義者なので、他のクリーチャーを殺さないことを表現する方法が必要だった。その解決策は、4/4のクリーチャーにして、ブロックするかブロックされるたびに-4/+4の修整を受けるようにすることだった。彼のヴァンガード・カードが人気を集めていたため、クリーチャーでないアーティファクトをクリーチャー化する起動型能力も与えた。それから何年も後、大修復によってプレインズウォーカーの力を弱め、彼らをカード化できるようにした際、物語の中でカーンはプレインズウォーカーになった。我々はカーンのプレインズウォーカー・カードを何枚も作り、その中には非常に強力なものもあった。その後、ファイレクシア戦争で彼は灯を失い、再び伝説のクリーチャーとしてカード化できるようになった。彼は、伝説のクリーチャーからプレインズウォーカーになり、再び伝説のクリーチャーに戻った数少ないキャラクターの1人なのである。

 『リアリティ・フラクチャー』でカーンをペアの1つに選んだのは、通常の多元宇宙のミラディンと、模倣宇宙のミラディンの対比を見せたかったからである。通常の多元宇宙版のカーンである《銀白の防衛者、カーン》は、開発部が「ヘイトベアー」と呼ぶものだ(対戦相手の妨げとなるような全体に影響する効果を持つ小型クリーチャーで、通常はそのカードがあることを前提に自身のデッキを構築する)。カーンは昔からメカニズム的にアーティファクトと関係が深かったため、今回もその特徴を利用した。また、彼の防御的な性質を強調するため、アーティファクトとクリーチャーの両方の戦場に出たときの能力を封じるようにした。

 ジェイスは模倣宇宙からファイレクシア人を取り除いたため、そちらのミラディンはずっと幸福な場所になっている。無色のカーンと対比させるため、模倣宇宙版は5色すべてを持つカードにした。そのために用いたのは、『シャドウムーア』の《刈り取りの王》で初めて採用した、5種類すべての混成2色マナ・シンボルを使う手法である。このバージョンのカーンは、戦場に出たときの能力と唱えるためのコストによって、使う色が多いほど恩恵を得られるようになっており、5色すべてを使うことを促している。

フブルスプ

 『リアリティ・フラクチャー』では《極端な迷い子、フブルスプ》(イニストラードが舞台)と《道を知る者、フブルスプ》(模倣宇宙のゼンディカーが舞台)が登場する。

 フブルスプの最初のカードは、『灯争大戦』で登場した《迷い子、フブルスプ》である。

 

 ただし、彼が初めて姿を見せたのは、『ギルド門侵犯』の《道迷い》である。

 

 青には、クリーチャーをオーナーのライブラリーの一番上に置くコモンがよく存在する(最近では、オーナーに一番上か一番下かを選ばせることが多い)。ラヴニカは都市なので、このカードのコンセプトは大都会で迷子になったクリーチャーだった。周囲を人々の脚に囲まれているという構図が気に入ったため、小さな存在にしたかった。ラヴニカにはホムンクルスという、人工的に作られた小さなクリーチャーがおり、その多くは大きな目を1つ持っている。そこで、迷子になるクリーチャーを小さなホムンクルスにすることにした。カードにはフレイバー・テキストを1行入れる余地があったため、この小さな生き物に名前を付けたのである(ラヴニカのホムンクルスの名前には母音が含まれない)。

 このカードがどのように人気を集めたのか、正確なところはわからない。デイヴィッド・パルンボ/David Palumboによるイラストは素晴らしかった。名前が付いていたことで、このクリーチャーに少し人格が感じられるようになったのもよかったのだろう。迷子になるという経験は、誰にでも共感できるものだった。このカードはインターネット上でミームになり始めた。我々も、さまざまなカードのイラストに彼をこっそり登場させるようになった。

 

 我々は彼のぬいぐるみも作った。彼は一種の非公式マスコットのような存在になったのである。そこまで人気が出たのだから、彼をカード化する必要があると私は確信した。過去の銀枠セットのカードの再録と少数の新規カードを組み合わせたボックス製品『Unsanctioned』には、プレインズウォーカー・カードの枠が1つあった。私はそこにフブルスプを入れたかった。迷子になってあまりにも怖い思いをした結果、灯が点るというアイデアが気に入っていたのだ。そうなれば、彼は多元宇宙のあちこちで迷子になれる。私はフランチャイズ・チームにそれでよいか尋ねたが、答えはノーだった。彼らはフブルスプを本流のセットに登場させたかったのである(代わりに私は、ビーブルたちの集団がプレインズウォーカーになった《B.O.B. (Bevy of Beebles)》を作った)。

 それから数年後、『灯争大戦』でフブルスプをカード化する機会が訪れた。舞台はフブルスプの故郷であるラヴニカに戻っていたが、このセットは世界そのものよりも物語に重点を置いていたため、ギルドに属さないラヴニカの要素を扱う機会があった。彼のデザインについては、2つのことがわかっていた。1つ目は、何度も迷子になる小さなホムンクルスというフレイバーを表現する必要があること。2つ目は、彼を中心にデッキを組みたくなるような、風変わりなカードにしたいということだった。展望デザインでは、対象になったときに彼をデッキに切り混ぜるというコンセプトを考え出したが、実際に印刷された1つ目の能力はセット・デザイン中に作り直されたものである。それ以来、我々はさらに4枚のフブルスプのカードを作っており、今後もきっと多くのカードを作ることになるだろう。フブルスプはMagicConの事実上のマスコットにもなっている。

 『リアリティ・フラクチャー』の《極端な迷い子、フブルスプ》は、《迷い子、フブルスプ》と似たコンセプトを取り入れている。彼はカードを引くことができ、ときどきライブラリーに切り混ぜられる、構築の軸となるカードである。ライブラリーに切り混ぜる能力を利用して、ライブラリー切れによる敗北を防げるというのも面白い工夫だった。《道を知る者、フブルスプ》では、決して迷子にならないフブルスプというフレイバーを表現する必要があったため、探索を表現する際によく使う、土地を探すというメカニズムを採用した。このカードでは、異なる名前の基本土地を集めることで、版図能力によってフブルスプのパワーを高められるようになっている。

ヤーグル

 『リアリティ・フラクチャー』では、《アーボーグの暴食、ヤーグル》と《オタリアの大巨獣、ヤーグル》が登場する(アーボーグとオタリアはどちらもドミナリアにある場所である)。

 ヤーグルの最初のカードは、同じ《アーボーグの暴食、ヤーグル》であり、『ドミナリア』で初登場した。

 

 長年にわたり、開発主席者を務めていたのはエリック・ラウアー/Erik Lauerという人物だった。エリックはゲームを愛する素晴らしいデザイナーで、現在は引退している。彼が情熱を注いでいたものの1つが、パワーとタフネスの組み合わせだった。彼は、それまでに使われたことのない組み合わせをすべて(まあ、実際に印刷する可能性のあるものに限るが)リストアップし、セットを手掛けるたびに新しい組み合わせを入れられないか検討していた。

 エリックが『ドミナリア』に取り組んでいたとき、あるアイデアが浮かんだ。『マジック』では、それまで9/3というクリーチャーを作ったことがなかった。それをバニラ・クリーチャー(ルール文章を持たないクリーチャー)にしてはどうだろうか? そして、彼は実際にそうした。さて、9/3というのは奇妙な数値なので、カードのコンセプトを考える際には少しふざけた方向に進んだ。小さな脚を持つ巨大なクリーチャーにしてはどうだろうか? イラストレーターのジェハン・チュー/Jehan Chooはこのコンセプトを楽しんで描き、そのイラストはすぐにセット内でも特に人気の高いものになった。我々はイラストの雰囲気に合わせて、彼に「ヤーグル」という少し間の抜けた名前を付けた。

 カード全体として大ヒットとなり、ヤーグルはフブルスプと同じように、すぐにミームの題材となった。ウィザーズもその人気に乗り、9月3日(9/3)を「ヤーグルの日」と名付けたほどである。

 『リアリティ・フラクチャー』のこのペアは、展望デザインの終了後に引き継がれたものである。模倣宇宙版のヤーグルをどうするべきかは、かなり明白だった。正直なところ、実際に印刷されるかどうかはわからなかったが、実現して嬉しく思っている。今回もジェハン・チューが手掛けた新しいヤーグルのイラストは素晴らしい。

ピア・ナラー

 『リアリティ・フラクチャー』では、《決意の再建者、ピア》と《霊気の苦行者、ピア》が登場する。

 ピアの最初のカードは、『マジック・オリジン』の《ピア・ナラーとキラン・ナラー》であり、夫と一緒にカード化されている。

 

 ピアが何者なのか知らない読者のために説明しておくと、彼女はチャンドラの母親である。まずは、彼女がどのように誕生したのかを語ろう。我々は当時、最新の基本セットをデザインしており、そこに新鮮味を加える方法を探していた。次のブロック(『戦乱のゼンディカー』と『ゲートウォッチの誓い』)では新たな物語が始まり、ゲートウォッチと呼ばれるプレインズウォーカーのチームが登場することになっていた。最初のゲートウォッチのメンバー5人は、それぞれ『マジック』の5色を代表する存在であり、チャンドラは赤の担当だった(チームは当初4人で結成され、次のブロックでリリアナが加わった)。それなら、基本セットで最初のゲートウォッチのメンバー5人の誕生秘話を描いてはどうだろうか?

 我々が考え出したアイデアは、各プレインズウォーカーの故郷の次元を描き、彼らがプレインズウォーカーになる過程と、初めて灯が点ったときに訪れた次元を見せるというものだった(最初に灯が点ると、意図せずプレインズウォークしてしまう)。5つの故郷の次元と、最初に訪れた5つの次元に、それぞれ10種類の2色のアーキタイプを割り当てることにした。

 当時、我々はまだチャンドラの故郷の次元を訪れたことがなかったが、どのような世界にするべきかについてはいくつかの手掛かりがあった。彼女は調整装置とゴーグルを身に着けており、そこからはスチームパンクに着想を得た世界が示唆されていた。スチームパンクの世界は、我々が何年も前から作りたいと話していたものである。また、彼女の名前からも示唆されているように、故郷の次元にはインドの文化を色濃く反映させる予定だった。

 最終的に我々は、チャンドラの故郷の次元を少しだけ見せることを「未来への布石」にすることにした。つまり、数年後に改めて取り上げるということである。『マジック・オリジン』では、アヴィシュカー(当時はカラデシュと呼ばれていた)の世界設定を作り込むために、通常より多くの時間を費やした。その一環として、チャンドラの両親に会う機会も設けた(チャンドラは両親が2人とも死んだと思っており、その出来事が灯の点るきっかけになったが、実際には母親は生き延びていた)。

 『マジック・オリジン』の青赤のテーマはアーティファクトであり、アヴィシュカーが発明の世界であることを強調するものだった。そこで、ピアとキランには飛行を持つ無色の1/1の飛行機械・アーティファクト・クリーチャー・トークンを生成し、それを爆破する能力を与えた。飛行機械は、アヴィシュカーを表現するために我々が作った唯一のクリーチャー・トークンだったのだ。このデザインは、発明家としてのキランの役割と、反逆者としてのピアの役割の両方を示唆するものだった。その後、アヴィシュカーを再訪するたびにピアは登場することになる(『カラデシュ』『機械兵団の進軍』『霊気走破』、そしてもちろん『リアリティ・フラクチャー』である)。

 『リアリティ・フラクチャー』の《決意の再建者、ピア》は、ピアの伝統的なアーティファクト・テーマを強く打ち出している。ピアのカードではおなじみの、飛行を持つ無色の1/1の飛行機械・アーティファクト・クリーチャー・トークンを生成する能力を持っている。彼女の強化能力は、初めて単独でカード化された際のアーティファクト・クリーチャーを強化する能力を思わせるものだが、今回はコストも効果も少し大きくなっている。一方、《霊気の苦行者、ピア》はメカニズム的な対比をより強く意識したもので、アーティファクトではなくエンチャントを扱うようになっている。緑はエンチャントをライブラリーから探すことをあまり行わないため、これは緑の新たな領域に少し踏み込んだものだった(私なら、少しばかりの曲げだと呼ぶだろう)。とはいえ、緑は「エンチャント関連」のテーマでは第2位の色であり、パーマネントとの相互作用も多いため、試してみても問題ないと考えたのである。

サヒーリ・ライ

 『リアリティ・フラクチャー』では、《アヴィシュカーの宝石、サヒーリ》と《監視の領事、サヒーリ》が登場する。

 サヒーリの最初のカードは、『カラデシュ』の《サヒーリ・ライ》である。

 

 『マジック・オリジン』では、アヴィシュカーという世界が紹介された。『カラデシュ』は、我々が初めて本格的にその世界を訪れたセットである。当時のブロックは、大型セット1つと小型セット1つの計2セットで構成されていた。『カラデシュ』ブロックは、『カラデシュ』と『霊気紛争』からなる。最初のセットは、世界の創造性と発明の数々を披露する発明博覧会を題材にしていた。マジックでは、それまで暗く過酷なテーマの世界を数多く扱ってきたため、祝祭を中心とした明るい世界を描くというアイデアが気に入っていた。しかし、当然ながらどんな世界にも対立は存在する。そこで2つ目のセットでは、発明家たちがこの世界の圧政的な政府に反旗を翻す姿を描いたのである。

 当初、『カラデシュ』の顔となるキャラクターはチャンドラの予定だった。何しろ、アヴィシュカーは彼女の故郷の次元なのだ。しかし、最初のセットのテーマは発明と創造性であり、どちらもチャンドラの得意分野とは言い難かった。一方、2つ目のセットのテーマは反逆であり、こちらの方が炎を操る彼女にはずっとふさわしかった。そこで、チャンドラの出番を『霊気紛争』に移すことにした。そうなると、『カラデシュ』の顔となるキャラクターが必要になる。既存のプレインズウォーカーには適任者がおらず、我々はアヴィシュカー出身の人物を強く望んでいた。そこで、この目的に合ったまったく新しいプレインズウォーカーを作ることにしたのである。

 我々はサヒーリを青赤にした。青赤は創造性を表す色の組み合わせだからである。最初に彼女に与えた能力は、アーティファクト版の《熱の陽炎》の効果だった(アーティファクトの一時的なコピーを作れるというものだ)。私はこの効果をセット内のどこかで使いたいと考えており、セットの顔となるプレインズウォーカーは絶好の採用先だと思われた。彼女の1つ目の能力には、青赤らしい小さな効果として占術と1点のダメージを与える効果を組み合わせた。奥義では異なる3つのアーティファクトをライブラリーから探せるようにし、ここでも発明家らしさを強調したのである。

 

 彼女はその後、『灯争大戦』と『兄弟戦争』で再登場し、物語の中でも役割を果たした。その後、ファイレクシア戦争で灯を失い、『イクサラン:失われし洞窟』と『霊気走破』統率者デッキに登場した後、『リアリティ・フラクチャー』で再び姿を見せることになった。

 『リアリティ・フラクチャー』の通常の多元宇宙版のサヒーリである《アヴィシュカーの宝石、サヒーリ》は、ピアと同様に、アヴィシュカーのテーマである飛行機械・トークンを扱っている。また、青赤ではおなじみのテーマである、クリーチャーでない呪文を唱えることで恩恵を得られる能力も持っている。これは『灯争大戦』の彼女のプレインズウォーカー・カードでも見られたものである。一方《監視の領事、サヒーリ》は飛行機械を生成する点では共通しているが、構築の軸となるのはまったく異なる要素、すなわち占術と諜報である。これは『リアリティ・フラクチャー』の小規模なテーマの1つであり、他の4枚のカードでも扱われている。


お話はここまで

 今回のカードにまつわる物語を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、今回の記事や『リアリティ・フラクチャー』、あるいは今回取り上げたカードについてなど、あらゆるフィードバックを楽しみにしている。メールやソーシャル・メディア(Bluesky、Tumblr、Instagram、TikTok、X)を通じて送ってもらえると幸いだ。

 次回は、『マジック:ザ・ギャザリング | スター・トレック』 の最初のプレビュー記事でお会いしよう。

 それまで、あなたが最も心に響くキャラクターを見つけられますように。


(Tr. Ryuki Matsushita)

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