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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

ラバイア値 その3

Mark Rosewater
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2024年5月13日

 

 何年も前のある日、特定のメカニズムについて本流のセットに再録される可能性がどれぐらいあるかという質問が私のブログ(Blogatog)に寄せられた。私は数値で示すのが好きなので、最も再録可能性が高いものを1とし1~10の値で示す「ストーム値」と呼ばれる指標をその場で作った(名前の由来は「ストーム」というメカニズムの値が10だったからである)。こうして指標が作られると、プレイヤーたちはお気に入りのゲーム内要素がどの値に位置するのか質問を寄せるようになった。

 そして私は、ストーム値を紹介し説明する記事を書き、諸君皆に『タルキール覇王譚』ブロックのメカニズムの再録の可能性について語った。

 ストーム値の記事2本目は、『ラヴニカ』と『ラヴニカへの回帰』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事3本目は、『ゼンディカー』と『戦乱のゼンディカー』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事4本目は、『イニストラード』と『イニストラードを覆う影』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事5本目は、『ミラディン』と『ミラディンの傷跡』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事6本目は、『カラデシュ』と『アモンケット』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事7本目は、『テーロス』ブロックと『テーロス還魂記』のメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事8本目(その1その2)は、『エルドレインの王権』と『イコリア:巨獣の棲処』、『ゼンディカーの夜明け』、『カルドハイム』、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』についてのものだった。

 ストーム値は評判が良く、さまざまな他の指標を生み出した。プレインズウォーカーについての「ヴェンセール値」、クリーチャー・タイプについての「ビーブル値」、そして次元についての「ラバイア値」だ。2018年の11月までさかのぼるが、私はラバイア値についての記事を二部作(その1その2)で書いた。ラバイア値という名前は、『アラビアン・ナイト』の舞台であるラバイア次元から取られているが、これはラバイアがこの指標で10である(つまり、再訪の可能性は非常に低い)ためである。

 それから6年が経ち、我々はさらに多くの次元を作ってきた(加えて、もう1つ取り挙げ損ねた次元があった)。今日の記事では、次元を再訪するかどうかを予測するためのさまざまな因子について説明し、それからそれぞれの世界をこの指標で評価していこう。1は可能性が非常に高いこと、10は非常に低いことを意味する。

 前回も説明したが、私が使う評価基準は以下の通りである。

人気

 この評価基準はストーム値と非常に近い。基本的には、ユーザーがそれを好きかどうかだ。諸君全てが特定の世界を好きであればあるほど、再訪の可能性は高くなる。手に入るのであればデータを使用するが、初期の世界のいくつかについては市場調査を行っていなかったので、サンプリングによる証拠を用いることにする。

  • 大好評 ― 市場調査で、史上すべての中で上位25%に含まれている世界。なお、これらの評価は現在の世界と既存のすべての世界との比較になる(市場調査はずっと以前から始めていたのだ)。従って、上位に入るのは難しい。
  • 好評 ― 市場調査で、平均以上で上位25%には至らなかったもの
  • 普通 ― 市場調査で、平均以下で下位25%には至らなかったもの。ただし平均としてかなり好かれるようにしているものなので、平均以下といってもプレイヤーの多くが嫌っているわけではなく、それ以上に好かれているものがあるというだけである。この分類に入ったからといって再録の可能性が下がるわけではない。
  • 不評 ― 市場調査で、下位25%のもの。この区分に入ったものは、再録の可能性は低くなる。
メカニズム的特徴

 この評価基準では、その世界がメカニズム的関連性を持っているかどうかを評価する。メカニズム的にデザインの基軸となるものが存在するかどうか。ユーザーがこの世界に関連付けていて、再録した時に興奮をもたらすような要素が存在するかどうか。

  • 強力 ― この世界は1つ以上のメカニズム的要素と強く関連付けられている。それによってデザインは簡単になり、プレイヤーを興奮させやすくなり、そして再訪の可能性は高くなる。
  • 平均 ― この世界にはいくらかのメカニズム的関連付けはあるが、可能な限り強いものである、とは言えない。
  • 貧弱 ― この世界にはあまり、あるいはまったく、メカニズム的関連付けは存在しない。再訪の可能性は低くなる。
クリエイティブ的特徴

 これはメカニズム的特徴という評価基準と対になるものである。ただしこの評価基準では、メカニズムではなく、クリエイティブ的要素、つまり宇宙論、外観と雰囲気、住人、場所に注目する。それらすべてが強い結びつきを持ち、その次元を1つのまとまった世界だと感じさせるようになっているかどうか。世界のクリエイティブ的なつながりが強ければ、再訪の可能性は高くなり、再訪を知ったプレイヤーを興奮させることになる。

  • 強力 ― この世界は非常に明確な特徴を持つ。例えば、ランダムに選んだカード1枚を見たとき、この世界から来たものだということがすぐにわかることになる。
  • 平均 ― この世界には特徴があるが、明瞭でくっきりしたものではない。
  • 貧弱 ― この世界の特徴は、世界に求められるようなまとまりがあるものではない。
拡張の余地

 この評価基準では、その世界に新しいものを作る空間があるかどうかを評価する。セットでは、再訪であっても、新しい題材を導入する必要がある。その世界は新しい掘り下げができるようになっているか。この評価基準の大部分は、過去の訪問でその世界の他の一面をどの程度ほのめかしていたかである。拡張の余地があればあるほど、再訪の可能性は高くなる。

  • 広大 ― その世界には、再訪時に掘り下げられる多くの新しいものが存在する。
  • 中等 ― その世界には、再訪時に掘り下げられる新しいものがいくらか存在する。
  • 最小 ― その世界で新しく掘り下げるものを探すには苦労が必要である。
物語の継続性

 この評価基準では、前回訪問時にどんな物語の流れが残っていたかについて語る。言い換えると、その世界への再訪によって、前回訪問時に始めた話を終わらせることができるかどうかである。これはユーザーがその物語をどの程度意識していたかということによって加重される。

  • 重要な物語 ― その世界には、プレイヤーがずっと気にしているような物語が存在する。
  • 小さな物語 ― この世界には、プレイヤーがずっと気にしているような物語が存在するが、重要というほどではない。
  • 最小/不存在 ― この世界に存在する物語は、プレイヤーが気にしていないようなものであるか、あるいはそもそも存在していない。

 まだ語っていない次元の評価を始める前に、過去の2記事で語ってきた次元のラバイア値一覧を掲載しておこう。

  • アラーラ:
  • アモンケット:
  • ドミナリア:
  • フィオーラ:
  • イニストラード:
  • イクサラン:
  • カラデシュ:
  • 神河:
  • ローウィン/シャドウムーア:
  • メルカディア:
  • 新ファイレクシア:
  • ファイレクシア:
  • ラバイア:10
  • ラース:
  • ラヴニカ:
  • レガーサ:
  • シャンダラー:
  • タルキール:
  • テーロス:
  • ウルグローサ:
  • ヴリン:
  • ゼンディカー:

 2018年11月以降に訪れた次元とそれぞれのラバイア値も簡単に確認しよう(『機械兵団の進軍』ではほぼすべての次元を訪れたため、ここには含めない)。

  • ドミナリア(1) – 『団結のドミナリア』『兄弟戦争』
  • イニストラード(1) – 『イニストラード:真夜中の狩り』『イニストラード:真紅の契り』
  • イクサラン(4) – 『イクサラン:失われし洞窟』
  • 神河(8) – 『神河:輝ける世界』
  • 新ファイレクシア(5) – 『ファイレクシア:完全なる統一』
  • ラヴニカ(1) – 『ラヴニカの献身』『灯争大戦』『カルロフ邸殺人事件』
  • テーロス(3) – 『テーロス還魂記』
  • ゼンディカー(2) – 『ゼンディカーの夜明け』

 ラバイア値3以下の次元はすべて再訪していることに気づいただろうか。それに加えて、4(イクサラン)、5(新ファイレクシア)、8(神河)も再訪しており、値が大きくても再訪の可能性はあることが示されている。とはいえ、値が小さい方が可能性は高い。

 それから昨年の「Gen Con」にて、我々はマジック30周年を祝い3年分の発売予定セットを発表した(ユニバースビヨンドのセットは除く)。そこで発表された、再録予定の次元とラバイア値は以下の通り。

  • ローウィン/シャドウムーア(7) – 『Wrestling』
  • タルキール(4) – 『Ultimate』

 また『Tennis』については、本流のセットの主な舞台になっている次元(上記の一覧にもある次元)とカード上での言及はあったものの主な舞台になったことはない次元(上記の一覧にあるとは限らないが、おそらくある次元)の2つの世界を再訪すると発表されている。

 最後にもう1つ、ラバイア値(や他の指標)についての補足をしよう。評価は、私が知っている将来に関する知識は含めずに行っている。しかし今回は(昨年の発表のおかげで)諸君全員が将来に関する知識を持っているという、これまでとは少々異なる状況で評価をすることになるため、全員が知っている知識は取り入れることにしよう。

 以上を踏まえて、世界について語っていこう。それでは、アルファベット順で紹介していく。
 

アルケヴィオス

 
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      アーチ道の公共地》 | アート:Piotr Dura
 

 過去の訪問:『ストリクスヘイヴン:魔法学院』

人気:大好評

 『ストリクスヘイヴン:魔法学院』は、本流のセットで最も売り上げの良いセットの1つだ。プレイヤーは魔法学院の要素が収められた次元を気に入り、我々の取り組みを高く評価した。しかし一方で、この世界の大部分がアメリカの大学をベースにしているため、一部カードのフレイバーが普遍的でない、というフィードバックも寄せられた。なお「アルケヴィオス」とは、ストリクスヘイヴン魔法学院が存在する次元のことである。

メカニズム的特徴:強力

 ストリクスヘイヴン魔法学院は、アルケヴィオスに強力なメカニズム的特徴をもたらしている。第一に、対抗2色の陣営。各陣営はそれぞれの大学や学問分野と結びついている。第二に、「インスタントやソーサリー重視」のテーマとの密接な関連性。第三に、一般的な大学や特に魔法学院ジャンルへの共鳴を呼び起こすトップダウン・デザインの領域だ。

クリエイティブ的特徴:強力

 ストリクスヘイヴンが起こす共鳴の中心は、確固たる独自性を持つ。魔法学院のアイデア自体は『ウルザズ・サーガ』ブロックのトレイリアのアカデミーでも少し触れられているが、ゲームの観点でも何年も前のことであり、ストーリーの観点では大昔のことだ。教育というテーマは普遍的なものであり(とはいえ実際に登場する要素は一部地域に寄ったものであることは断っておきたい)、魔法学院のジャンルには取り組むべき領域が豊富にある。ストリクスヘイヴンでは、魔法に焦点を当てたことが感じられる特徴を築き上げるための仕事がしっかりできたと私は思っている。

拡張の余地:中等

 アルケヴィオスへの最初の訪問は、この次元に存在する場所の1つであるストリクスヘイヴン魔法学院がすべてだった。つまりこの世界の大部分はこれから探検できるということである。大きな課題となるのは、ストリクスヘイヴン魔法学院が大いに人気を博したため、プレイヤーがアルケヴィオスとストリクスヘイヴン魔法学院を結びつけていることだ。アルケヴィオスを訪れる際は、多少なりともストリクスヘイヴンも訪れるだろうという期待があるのだ。

物語の継続性:小さな物語

 ストリクスヘイヴン魔法学院には、リリアナがオニキス教授として潜伏している。カズミナもストリクスヘイヴンとのつながりを持ち、何かを企んでいるようだが、詳しくはわからない。学生や教授陣にも知った顔はあるものの、進行中の筋書きはあまりない。ファイレクシアの魔の手からアルケヴィオスを守るための戦いで教授が亡くなるなど被害を受けたため、学院の復興に関する物語はあり得るだろう。それから、クイントリウスが灯を点し、プレインズウォーカーになっている。

ラバイア値:3

 この次元は人気である。メカニズム的特徴もクリエイティブ的特徴も強力だが、ストリクスヘイヴン魔法学院との関係が深い。魔法学院の人気に応えながらアルケヴィオスの他の場所を見るのは難問だが、不可能な仕事ではないだろう。この世界は昨年発表した『Yachting』の舞台の1つとなるため、再訪の日は近い!
 

エルドレイン

 
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      寓話の小道》 | アート:Howard Lyon
 

 過去の訪問:『エルドレインの王権』『エルドレインの森』

人気:好評

 エルドレインは「キャメロット」テーマとおとぎ話のインスピレーションが混ざった次元である。後者に比べると前者はわずかに人気で劣るものの、どちらにもファンはついている。全体的に明るい雰囲気が、好評につながっている。市場調査から得た内容でこの次元に関して最も特筆すべきは、プレイヤーはおとぎ話のマジック流のアレンジ(例えばゴルディロックスが熊猟師になっているなど)を最も楽しんでいることだ。

メカニズム的特徴:平均

 この次元がおとぎ話テーマを用いるトップダウン・デザインの世界であることはよく知られている。この次元を舞台にしたセットでは、印象的なメカニズムや当事者カード、アーティファクト・トークンの「食物」が導入されたが、それらは再訪のたびに目にすることになると思われる。最初の訪問である『エルドレインの王権』では、各宮廷と単色のテーマが結びついていた。『エルドレインの森』ではおとぎ話の要素に焦点を移したため、それは使われなかった(宮廷はファイレクシアの侵攻により特に大きな被害を受けた)。この変更により、役割・エンチャント・トークンを筆頭としてエンチャントに注目したものが追加された。エンチャントと結びつく次元は希少なため、おそらく再訪時にもエンチャントが取り挙げられると思われる。

クリエイティブ的特徴:強力

 エルドレインの最大の強みは世界構築にあると私は考えている。それはプレイヤー層の大部分に愛されている(エルドレインを舞台にしたセットを発表するたびに、私のメール受信箱は大盛りあがりになる)。有名で大いに愛されているジャンルに触れることができ、この次元ならではのユニークなカードを作ることができるのだ。

拡張の余地:中等

 エルドレインには主要な構成要素が2つある。「宮廷」と「森」だ。『エルドレインの森』では宮廷の役割が少なかったため、探索する余地は多くあるだろう。有名なおとぎ話の素材にはだいぶ触れてきたため、再訪時にはこの世界を舞台にした新たなストーリーを紡ぐのに時間が必要になるだろう。とはいえ基礎の部分がよく知られているため、他のトップダウンの世界よりは比較的楽に作れるだろう。

物語の継続性:重要な物語

 エルドレインは、先のファイレクシアとの戦争で大打撃を受けた。次回の訪問では、宮廷への再訪をはじめ、さまざまな側面を探検できるだろう。ローアンとウィルはともにエルドレイン出身であり、彼らの物語には解決されていない問題が多々ある。

ラバイア値:4

 この次元の評判は上々であり、扱える素材にも事欠かない。どの次元よりも大きな流れの中にあるため、再訪の際は多くの質問に答える必要があるものの、物語の観点から見れば中身が詰まったセットだと言えるだろう。
 

イコリア

 
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      ラウグリンのトライオーム》 | アート:Jonas De Ro
 

 過去の訪問:『イコリア:巨獣の棲処』

人気:好評

 『イコリア:巨獣の棲処』は、発売された年の本流のセットで最も売れたセットだった。プレイヤーはこの世界の怪物の雰囲気を気に入ったが、以下に述べる通り、いくつかのメカニズムに問題があった。

メカニズム的特徴:平均

 イコリアと最も結びつきが強いメカニズムは、「変容」と「相棒」の2つだ(このセットには「サイクリング」もあり、また「キーワード・カウンター」が導入された)。変容は一部のプレイヤーから人気を集めたものの、我々が世に出したメカニズムの中でも特に複雑で、多くの混乱を呼んだ。相棒は、パワーレベルを理由に修正を行わざるを得なかった唯一のメカニズムだ。再訪の際はどちらも再録が検討されると思われるが、ゼンディカーの「上陸」やエルドレインの「出来事」のように確定で入るようなことはないだろう。どちらのメカニズムも多くの重荷を抱えており、プレイ・デザイン/プレイ・バランス上の懸念事項である。

クリエイティブ的特徴:平均

 プレイヤーは怪物テーマを楽しんだが、他の多くの次元と比較して環境的なまとまりが弱かった。この世界では怪物たちから生き残るために身を潜める必要があるが、そのことが他の多くの次元ほど示唆されていなかったのだ(ここで起こり得ることがプレイヤーに伝わらなかった)。

拡張の余地:中等

 テーマとしての怪物には、掘り下げがいのあるデザイン領域がある。フレイバー的にこの次元に合う新規メカニズムを生み出す余地は多くあると、私は考えている。まだこの世界のごく一部しか見ていないため、世界構築の観点からも拡張の余地は十分にある。

物語の継続性:最小

 イコリア出身の唯一のプレインズウォーカーであるルーカが、先のファイレクシア戦争で死亡してしまった。目立って取り挙げるべきものは少ない。

ラバイア値:5

 イコリアは評価が難しい次元だ。フレイバーに富んだテーマを持つ人気セットの舞台として第一歩を踏み出したが、その出来栄えは再訪がやや難しいものになっている。
 

カルドハイム

 
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      アクスガルドの武器庫》 | アート:Cliff Childs
 

 過去の訪問:『カルドハイム』

人気:好評

 『カルドハイム』は、北欧に着想を得た次元である。ここは厳密に言うと、10の次元が領界路を通してつながっている世界だ(領界路はもともとこの次元のものだった)。プレイヤーはこの次元を気に入り、もっと見たいという声が大多数だった。

メカニズム的特徴:平均

 『カルドハイム』で特に人気を博したメカニズムは、「予顕」だった。片面が神でもう片面がそれに関連するパーマネントのモードを持つ両面カードや、氷雪テーマも好評だった。また、このセットでは「誇示」が登場し、「多相」が再登場した。再訪する場合は、予顕と氷雪が再録される可能性は十分にあると私は考えている。神々のモードを持つ両面カードも再登場するかもしれない。

クリエイティブ的特徴:強力

 このセットには広範にわたる資料があり、すべての領界をデザインするのに多くの労力をかけた。この世界は、もっと見たいと熱望する顧客の支持を集めている。

拡張の余地:広大

 このセットのクリエイティブ面は、過剰なほど充実している。この世界には、それぞれ異なるクリーチャー・タイプに焦点を当てた10の次元がある。再訪時に探検する場所は余るほどあるだろう。

物語の継続性:重要な物語

 カルドハイムは、先のファイレクシア戦争において重要な役割を果たした。ファイレクシアンは世界樹を調整し、多元宇宙じゅうの次元へ侵攻できるようになった(その結果、領界路が多元宇宙に開かれた)。世界樹もカルドハイムも混沌に陥ったままであり、再訪の際は戦争後の世界を取り挙げなければならないだろう。

ラバイア値:4

 この次元には、プレイヤーがもっと見たいと望む強力なフレイバーがある。メカニズムにおける核を固めている。未解決のままの重要な物語もある。再訪する上で一番難しい部分は、最初の訪問時と同じである。これだけ多くの要素をどうやって1つのセットに収めるかだ。
 

ケイレム

 
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      豪勢な大通り》 | アート:Jung Park
 

 過去の訪問:『バトルボンド』

人気:普通

 ケイレムは1つのセットの主な舞台となり、2018年当時にも存在していたが、前回のラバイア値の記事では取り挙げるのを忘れてしまった。いくつかの要因(1つのまとまった次元が舞台になることが少ないサプリメント・セットであること、この次元の様子が見られる新規カードはすべて「武勇の場」として知られる競技場を描いていたこと)から、この次元の認知度は高くないと思う。

メカニズム的特徴:平均

 『バトルボンド』は双頭巨人戦に注目したセットであり、主要メカニズム(「~との共闘」、「助力」、「支援」)はどれもチームをテーマにしたものに寄っていた。『バトルボンド』の第2セットで再訪するならチームのテーマは取り挙げやすいが、ラバイア値は本流のセットで訪れる次元についての指標である。本流のセットでは2人で対戦することに焦点を当てるため、その点で見るとメカニズム的特徴には少々疑問が残る。本流のセットで訪れる場合は、おそらくスポーツがテーマになるのではと私は見ている。スポーツは共鳴を呼び、トップダウン・デザインの機会も多いだろう。

クリエイティブ的特徴:貧弱

 新規カードに限って見ると、この次元のクリエイティブ面は1つの競技場の中がすべてだった。本流のセットでは取り組める場所が他にも必要になるため、再訪するなら競技場以外の場所について新しいアイデアが多く求められるだろう。

拡張の余地:広大

 このことは諸刃の剣である。『バトルボンド』は、スポーツ・テーマの余地を残しながらも、ケイレムを特定のテーマに固定することはほとんどなかった。また、テーマを築くための土台もなかった。ケイレムを訪れることは、まったく新しい次元を訪れるようなものなのだ。

物語の継続性:最小/不存在

 『バトルボンド』はローアンとウィルが初めて登場したセットであり、登場するチームにもバックストーリーがある。しかしそのどれも、物語とするほど重厚なものではない。

ラバイア値:8

 この次元には、本流のセットで取り組めるものが多くない。ほぼ真っ白なキャンバスではあるが、それならもっと多くのものを作る余地がある新しい次元に向かわない理由があるだろうか? 再訪にはケイレムでなければならない、という強力なフックが必要になるだろう。
 

ニューカペナ

 
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      舞台座一家の中庭》 | アート:Kasia 'Kafis' Zielińska
 

 過去の訪問:『ニューカペナの街角』

人気:普通

 『ニューカペナの街角』は、(他のマジックのセットと比較して)より近代的な雰囲気の次元を実験する試みであったと私は見ている。ニューカペナはファンを獲得したものの、全体的に見て大ヒットとはいかなかった。

メカニズム的特徴:強力

 ニューカペナは、弧/断片3色陣営の次元であり、各陣営はそれぞれ異なる犯罪ジャンルの要素を中心に構成されている。再訪には新たなメカニズムが必要になるかもしれないが、ラヴニカと同様に、各陣営の感覚は維持することが求められるだろう(つまり同じ陣営の透かしが入ったカードはすべて、同じデッキに入れてもうまく機能するようにすべきだろう)。

クリエイティブ的特徴:強力

 ニューカペナは、1920年代のアール・デコ調の雰囲気を持っている。そのこと自体が独創的であり、この次元を舞台にしたセットのカードを1枚見れば、どこから来たものなのかすぐにわかるだろう。

拡張の余地:広大

 このセットは他のマジックのセットと一線を画すものであり、特定のジャンルや外観を持ち、まだ探検していない未踏の領域が多数存在する。

物語の継続性:重要な物語

 『ニューカペナの街角』は、この次元が大きく上書きされる出来事(天使の帰還)をもって閉幕した。再訪時には、この大きな変化が次元に与えた影響を探検することができるだろう。

ラバイア値:6

 ニューカペナには、訪れるのに前向きな要素がいくつもある。メカニズム的特徴もクリエイティブ的特徴も強力である。再訪時に取り挙げられる物語の枝葉も多く残っている。再訪に際しての最大の障壁は、この次元が人気でなかったことだ。しかしながら、同じことが言えた神河への再訪は大成功を収めている。最初に人気を集められなくても、やり方次第で克服できるのだ。
 

サンダー・ジャンクション

 
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      乾燥地帯のアーチ道》 | アート:Raymond Bonilla
 

 過去の訪問:『サンダー・ジャンクションの無法者』

人気:評価するのは早すぎる

 この記事を書いている時点では、まだこのセットは発売されていない。この次元の人気がどうなるか判断するのは難しい。

メカニズム的特徴:強力

 メカニズムの多く(「悪事を働く」、「無法者」、「計画」、「放題」)に悪役のフレイバーをつけることで、プレイに独特の感覚が生まれる助けになっている。メカニズムは全般的に非常に手堅く、新しいデザインの可能性も十分に開かれている。

クリエイティブ的特徴:強力

 プレイヤーは全般的に、西部劇テーマの感覚を気に入っている。このセットの雰囲気については最初のフィードバックが多く寄せられているが、指摘された点も再訪時に簡単に修正できる。

拡張の余地:広大

 先述した通り、メカニズムにはさらなるデザインの余地が多くある。この次元にも問題となる側面はあるものの、素材が豊富にあるジャンルを取り扱っている。再訪することになっても、デザイン面クリエイティブ面ともに取り組めるものは多くあると私は思う。

物語の継続性:小さな物語

 現行のストーリーラインにおける最初の大きな出来事として、このセットでは古代の宝物庫の強奪事件が展開される。有名なキャラクターも多数登場し、新たな物語を先導するだろう。

ラバイア値:5

 柔軟性の高いメカニズムに、フレイバーに満ちたトップダウン次元。この世界には再訪するに足る理由があると確信できる。なお繰り返しになるが、これは最初の反応にもとづいて書かれていることには注意されたし。
 

この世はすべて舞台

 前回取り挙げなかった新しい次元についての話は、これで以上だ。「その4」は、また6年後くらいになるだろう。いつもの通り、この記事や取り挙げた次元に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(X(旧Twitter)TumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 次回まで、あなたが一番心躍らせる次元を訪れることができますように。
 

 (Tr. Tetsuya Yabuki)

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