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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

デザイン演説2022

Mark Rosewater
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2022年8月1日

 

 2003年12月、私はマジックの主席デザイナーに就任した。私がすべきだと考えたことの1つとして、毎年マジックの「1年」の締めくくりに、その年に発売されたすべてのセットについて論じ、そのデザインの方向性についての私の考えを語る記事を書くということがあった。大統領が毎年行なう、アメリカの一般教書演説に倣うことにした。最初にその記事を書いたのは2005年、私が監督した「マジックの1年」全体のセットが世に出た年である。

 過去の17本の記事は以下の通り。

 この記事の構造は次の通り。まず最初に、その1年全体を振り返り、その年の良かったところと教訓について語る。その後、順に、各ブースター製品(新しいカードが入っているもの)を検証し、そのセットの良かったところと教訓について語っていく。今回も、カード個別のデザインよりも大局的なデザインを語っていくことになる。

 いつもの通り、今回も同じ質問から始める。「昨年のマジックのデザインはどうだったか」だ。

 全体として、いい年だったと思う。私は我々が作ったセットを誇らしく思っており、多くの革新やフレイバーに富んだデザインがあったと言える。興味深いことに、私が一番不満なのは一番安全側に振ったセットであり、一番満足しているのはリスクを取ったセットである。マジックは常に進化し続けるゲームなので、年ごとにどう変わっていくかを見るのは興味深いことだ。私は、昨年から大きく踏み出し、新しいことを試すことに心を躍らせていたと感じている。私の感覚では、これはマジックのデザインにおける良い年だった証拠なのだ。

マジックのデザイン全体

良かったところ

マジックでできることの境界を押し広げた

 もし、我々が今年したことについて、10年前の私にするかどうか尋ねたら、絶対にしないと答えただろう。私が自分の仕事に関して最も心を躍らせていることの1つが、常に変わり続け、飽きることがないことである。新しく取り組むべき課題が常に生まれ続けることを愛しているのだ。とはいえ、その鍵となることは、いつどのようにそれをするかについて賢明でなければならないことだが、私は開発部はほとんどの場合うまくやっていると考えている。

カラー・パイを正しく再調整する方法を実験した

 これがもっとも明らかなのは、白である。何年にもわたり、白は統率者戦最弱の色だった。そして我々は白を理念的に白である範囲内でもっと通用するようにする方法を何年もかけて探っていたのだ。そして今年、その試みの多くが公開され、ユーザーの反応は素晴らしいものだった。その試みは白だけにとどまるものではないが、他の色はもう少し繊細なものである。私は、メカニズム的にそしてクリエイティブ的にマジックの基礎であるカラー・パイがマジックとともに変わりゆくことを楽しんでいる。

ユーザーからの反響に合わせてデザインを調整した

 マジックを調整するという中には、ユーザーがどのようにプレイしたいと思っているかを理解することが含まれている。過去10年でマジックは大きく変化してきたが、私は、その変化の意味と、その需要に合わせてデザインを変化させることができるということを理解した上での開発部のあらゆる努力を誇りに思っている。

教訓

後方互換性をもっと意識する必要がある

 我々は、今、私が「永遠世界/eternal world」と呼んでいるものをデザインしている。これはマジックのプレイの中核であり、マジックのすべての歴史を含んでいる。そのためには、我々は現在のデザインがどのように過去のデザインを扱っているかをよりよく理解しなければならない。単独でクールなものを作るだけでは不充分なのだ。我々は、その前駆となったものを補完するように形作らなければならない。おそらく、直近の未来のデザインを最も変化させているのはこのことだろう。

複雑さにもっと注意する必要がある

 「永遠世界」の方向性の副次効果として、我々は各セットに認めている複雑さの量を増やしている。私は我々がなぜそうしているのかを理解しているが、過去のあやまちに陥らないように警戒する必要があることもわかっている。新規プレイヤーは常にマジックを同じ地平から始めることになるのだ。我々は彼らを取り残さないように注意しなければならない。

製品についてどう語るかをもっと意識する必要がある

 昨年の多くの誤りは、我々がデザインしたものにあるのではなく、想定するものについてユーザーに伝えるやり方にあった。しっかりしたデザインであっても、ユーザーがそれが何であるかを正しく受け止められるようになっていなければ、方向を見失ってしまうのだ。ユーザーが我々が何をデザインしているのか想定できるように、我々が作ったものについて意思疎通する方法をよりよく理解する必要がある。

『イニストラード:真夜中の狩り』

良かったところ

新しいメカニズムはほぼほぼ人気だった

 腐乱、降霊、昼/夜はそれぞれにファンがついた。プレイヤーは、それぞれのメカニズムによる我々がこれまでに扱ってきて新しい空間を見つけたメカニズム的テーマの扱いを楽しんだ。腐乱は驚くほどの深さがあり、ゾンビへのフレイバーに富んだ追加となった。降霊は余波の斬新な調整で、スピリットに一体感をもたらすメカニズムとなった。昼/夜は人狼メカニズムをゲーム全体に影響する要素へと拡張するいい仕事をした。テーブルトップでは昼/夜は把握しにくいという批判や、盤面にそれを参照するカードが1枚もなくなったときに失うべきかどうかという議論があった。(デザイン中にも、その議論にはかなりの時間をかけていた。)集会がマジックの新しい側面(クリーチャーが持つパワーの種類数)を参照することを楽しんだ人々もいたが、新メカニズムの中で最も批判が多かったのは集会だった。

魔女やフォークホラーの追加は好評だった

 イニストラードのセットをする上での課題の1つが、ゴシックホラーの古典的題材に触れながらその次元に新しいホラー要素を加えようとすることだった。多くのプレイヤーは、『イニストラード:真夜中の狩り』で加えられた新しいものを楽しんだ。魔女のメカニズムは大好評ではなかったが、そのフレイバーは大好評だった。この新しい要素から生まれたこのセットの視覚的要素については、多くの好意的コメントがあった。

過去のキャラクターの再登場は好評だった

 再登場した中でもプレイヤーが楽しんでいたと思われるのは、過去のキャラクターが新しい形で登場していることだった。アーリン・コードなどが新しいカードになったことには多くの肯定的コメントがあった。

プレイヤーは多色フラッシュバックや新しい土地のサイクルを楽しんだ

 プレイヤーはフラッシュバックのイニストラードへの再登場を楽しみ(最初の訪問時にはあったが2回目にはなかった)、多色のフラッシュバック・カードへの調整は好評だった。新しい「スロー・ランド」(『イニストラード:真夜中の狩り』で始まり『イニストラード:真紅の契り』で終わった)も好評だった。

教訓

人狼は役目を果たせなかった

 我々が最初にこのセットを告知した時、「イニストラード:人狼」という仮名をつけていた。これによって、この製品は実際よりも人狼に焦点を当てたものだと期待されたのだ。加えて、他の有力なクリーチャー・タイプに比べ、光が当たっていないとプレイヤーは感じていた。人狼は他の注目されているクリーチャー・タイプよりも数が少なかったのだ。伝説のクリーチャーは1枚だけ(トヴォラーは高得点だったが)、そして今、人狼らしいものは黒にはなかったのだ。新しい何かというよりも、作り直されたメカニズムでしかなかった。人狼の仲間と期待された狼も、あまり得るものがなかった。人狼は有力クリーチャー・タイプの中で唯一テーマにした統率者デッキが存在しなかった。いくつかの例外を除いて、強くもない。そして最低のドラフト・アーキタイプだった。(詳しくは後述。)「人狼セット」というには素晴らしいものではなかった。

昼/夜には後方互換性がなかった

 テーブルトップのマジックの焦点はこれまでよりも広がっており、プレイヤーは新旧のカードを混ぜてプレイしたがっている。過去の人狼と新しい人狼がうまく組み合わせてプレイできないことは大きな失敗だと言える。

リミテッド、特にドラフトで、色ごとのパワーが均一でなかった

 色のバランスが均一でなく、白、青、黒は赤、緑よりも強かった。(残念なことに、赤と緑は主な人狼の色であった。)このことから特定のアーキタイプ、特に青黒ゾンビ、が支配的になっていた。

『Double Feature』は大失敗だった

 これはデザインの問題ではなく、厳密に言えば『イニストラード:真夜中の狩り』の話でもないが、『イニストラード:真夜中の狩り』についての反響の中で最も大きかったものの1つである。プレイヤーは『Double Feature』は必要なかったと考え、白黒の外観は気に入らず、この製品の狙ったユーザーを外していると感じて、そしてこれがただ2つのセットを混ぜ込んだだけでドラフト体験を作ったとは言えないことに憤慨していた。

『イニストラード:真紅の契り』

良かったところ

セット間のメカニズム的な重なりはプレイヤーに好評だった

 ブロックがなくなり、『灯争大戦』以降は同じ次元を舞台にした連続セットもなくなって、『イニストラード:真夜中の狩り』と『イニストラード:真紅の契り』でいくつかのメカニズムに重なりがあったことはプレイヤーに好評だった。特に、セット間で進化した降霊メカニズムは好まれていた。

血はメカニズム的に好評だった

 開発部は最近アーティファクト・トークンを多くデザインしており、血・トークンはその潮流の最新のものだった。多数派の意見は、血・トークンはプレイ感がよくデッキの円滑化に寄与しているというものだった。血・トークンに関する最大の不満はフレイバーで、手掛かりや宝物や食物・トークンのような大当たりとは言えないというものだった。

ドラキュラ・カードは好評だった

 『イコリア:巨獣の棲処』とゴジラ・カード以来初めて、他のIP、今回はブラム・ストーカーによるドラキュラ、をかぶせた。あの小説を楽しんでいるプレイヤーから、多くの好意的反響が届き、小説のキャラクターや設定にふさわしいカードを見つけるいい仕事をしたと評価された。

婚姻というテーマは面白かった

 反響にはよくあることだが、ユーザーがみな同意見ということはない。このセットの婚姻というテーマを称賛し、それによるさまざまなトップダウン・カードを好きになったプレイヤーがいた。彼らはイニストラードを舞台とした他の6つのエキスパンションと異なる特徴をもたらす助けとなった、このセット全体の外観も気に入っていた。

教訓

ホラーの設定らしさが感じられなかった

 しかし、このセット全体を包む婚姻が、この次元に関連しているはずのゴシックホラー感を乱していると感じたプレイヤーもいた。雰囲気が恐怖よりも祝賀に寄っていて、イニストラード次元のファンの多くは自分たちが気に入っていたイニストラードではないと訴えていた。

訓練、切除、濫用は成功というより失敗だった

 訓練と切除はどちらもこのセットのフレイバーに特に馴染むものではなかった。訓練はだるいものに見えた。切除は扱いが難しかった。濫用はプレイヤーに、『イニストラード:真夜中の狩り』で楽しんだメカニズム・腐乱が戻ってこないと思い起こさせた。これらのメカニズムのプレイ感が悪かったわけではなく、単に多くのプレイヤーにとってセットを強化するものでなかっただけである。

リミテッドがあまりにも「爆弾的」だった

 競技プレイで見かけるほど強くはないがリミテッドでは充分な影響を与えるレアや神話レアが何枚もあり、あまりにも多くのゲームが対戦相手に特定のカードを引かれたことで負けになっていた。

吸血鬼はもっと強くすべきだった

 吸血鬼は『イニストラード:真夜中の狩り』における人狼のような量の問題はなかったが、質の問題があった。吸血鬼は全体として弱い側で、プレイヤーが構築フォーマット、特に統率者戦で、吸血鬼ファンが望んでいたような基柱となるものをあまり提供しなかった。大きかった不満点2つは、人気のキャラクターだったオドリックがほとんど使い物にならないカードだったことと、3色の伝説の吸血鬼の不存在だった。

『神河:輝ける世界』

良かったところ

この年の大ヒットとなるセットだった

 批判はあったが(後述)、これは年内で圧倒的に好評なセットだった。神河への再訪は、長年にわたって熱心なプレイヤーが求めていたことだったので、それによって莫大な興奮になった。

プレイヤーは伝統性と現代性の本質的対立を楽しんだ

 このセットはデザインの2つの側面(最初の神河では扱わなかった日本テーマに踏み入ることと、プレイヤーが気に入っていた次元らしくあること)のバランスを取る必要があった。この問題への解決策は、この次元の2つの側面をそれら2つの狙いを反映したものにし、そしてそれら2つの側面の関係性を次元の基本的対立にすることだった。日本のポップカルチャーらしさが好きなプレイヤーも伝統的要素が好きなプレイヤーもいて、この対立のどちらの側面も大好評だった。

過去の参照は好評だった

 このセットでは初代『神河』ブロックを連想させるものが多く、長い間再訪を望んでいたファンは食いついた。このセットを作った我々も、最大のファンと同じぐらいこの次元を崇敬していたのは明らかだ。

とても楽しいドラフトのセットだった

 プレイヤーは、忍者やメカや祭殿、そしてすべてを少しずつプレイできるようにする調和テーマと、デザインに編み込まれたすべてのアーキタイプを楽しんだ。掘り下げる余地が多く、プレイヤーはドラフトごとの新しい経路を気に入った。

メカニズムはいずれも好評だった

 プレイヤーはほとんどすべてを気に入っていたと思われる。換装、英雄譚クリーチャー、侍と戦士の包括、忍者とならず者の包括、忍術の再登場。魂力の再登場まで楽しんでいた。プレイヤーは我々が似たテーマを最初の登場時よりうまく実装する新しいメカニズムを見つけて、メカニズム的テーマを再訪することを喜んだ。

ほとんどのプレイヤーはサイバーパンクの出来栄えを気に入った

 マジックの根本はハイファンタジーだが、上述の通り、開発部は本流のマジックの次元でできることを予備調査している。『神河:輝ける世界』では限界を押し広げ、そして多くのファンがそれを自然な拡張だと感じていた。やりすぎだと感じた人がいなかったわけではないが、その人数は少なかったと思われる。

日本版カードの多くは大好評だった

 特に、基本土地と、有名な日本のアーティストによるカードは大好評だった。

教訓

プレイヤーは神河を舞台にしたセットが1つだけなことを残念がった

 オンラインでは、マジックは次元にどれぐらいとどまるべきかという活発な議論が行われていた。結論は出なかったが、神河の2つ目のセットが欲しいという意見が大勢を占めたようだ。

一部プレイヤーが求めていた要素を再登場させなかった

 次元を再訪するときの課題は、その次元のファンが求めているものすべてを収めることである。『神河:輝ける世界』では、新しいものを大量に加えるので、存在しないことでプレイヤーが残念がるものが入っていないことになるというさらなる課題があった。実際、初代『神河』ブロックのようにスピリットがメカニズム的に役割を果たすことを求めていたプレイヤーからの反響は多かった。セットにもっとカミがほしいというもの。秘儀のサブタイプが再登場してほしかったというもの。さらには、連繋が再登場しなかったことを残念がるものも。プレイヤーたちはこのセットに入っていたものを楽しんでいたが、個人的なお気に入りが登場して欲しいというプレイヤーは多かったのだ。

クリーチャーがエンチャントやアーティファクトなことが明白ではなかった

 この問題のためにカード枠はあったが、多くのプレイヤーは特定のクリーチャーのカード・タイプについて混乱があったと訴えていた。これは、なぜエンチャントなのか、なぜアーティファクトなのかという定義がいくらか曖昧であることから起こったと考えられる。

複雑さが少し高かった

 このセットには多くのものが入っており、中には多すぎだと感じるプレイヤーもいた。これは、ドラフト・アーキタイプに関する高評価の裏返しでもある。ほとんどの場合、深みには複雑さが伴うのだ。

侍のメカニズム的特徴にプレイヤーは不満だった

 これに関して2つの不満があった。1つ目に、多くの侍ファンはこの賛美系のメカニズム的特徴が侍らしいとは感じなかった。2つ目に、過去の侍とうまくシナジーせず、不快に感じられた。侍と戦士の包括が、侍デッキ作成に広い選択肢をもたらしたことから好評だったことは唯一好意的なコメントだった。

『ニューカペナの街角』

良かったところ

プレイヤーは3色セットの再登場に心を躍らせた

 『イコリア:巨獣の棲処』には少しの3色テーマがあったが、完全な3色セットは2014年の『タルキール覇王譚』以来であり、友好3色となると2008年の『アラーラの断片』以来となる。統率者戦の人口から3色カードの需要は増えており、プレイヤーは『ニューカペナの街角』に掘り下げられる新3色カードが多いことに心を躍らせた。

一家のメカニズムはほぼほぼ人気だった

 最も人気だった陣営メカニズムは、盾カウンターで、次が奇襲だった。謀議と犠牲もかなりのファンがいた。また、「上クリーチャー」についに名前がついたことにもプレイヤーは満足した。

多くのクールな個別のデザインがあった

 このセットに関して多かった反響は、どのカードかはプレイヤーごとに異なるが、いくらかのカードが本当に魅力的だったというものだった。

ファンはこの次元の外観と雰囲気を楽しんだ

 『ニューカペナの街角』はその前の『神河:輝ける世界』同様、マジックの次元がどのようなものでありうるかの限界を広げた。ユーザーはこの次元の美的外観を気に入り、マジックが新しいことを試みていることを楽しんだ。

教訓

この次元は少しばかり単調で、陣営にそれほど差が感じられなかった

 この次元の批評は、あまりにも犯罪に寄りすぎていることに落ち着いた。法執行力はどこに行ったのか。何かに抵触していないのなら、犯罪とは何なのか。また、5つの一家がお互いに似すぎていると感じられた。

ドラフトに問題があった

 強すぎる単色のコモンがあり、そのためセットは少しばかり攻撃的になり、2色デッキのほうが3色デッキよりも強くなったことが3色セットにおいては残念なことだった。また、色のバランスや振れ幅の大きいレアにも問題があった。また、ドラフトごとの変化も少しばかり小さすぎたという意見もあった。

充分説明されていないクリエイティブ要素があり、混乱を招いた

 この典型例が、天使である。物語の始まりに、天使は何年も前にこの街から去ったと語られているので、セットにこれほど多くの天使が入っていたことは驚きだった。その理由は、物語の終わりに天使たちが戻ってくることだったが、プレイヤーの多くはそれに気づかなかったので、セットの内容と物語が矛盾しているように見えた。

3色土地は「トライオーム」と呼ばれるべきだった

 これはデザインと言うよりも命名の問題だが、この意見は多かった。

『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』

良かったところ

このセットには多くのフレイバーに富んだトップダウンのD&Dデザインがあった

 他のIPを扱うことの楽しさの1つが、そのIPのクールな一面をマジックのカードの形で再現できることである。『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』について受けた肯定的コメントの多くは、好きなD&Dの要素がマジックのメカニズムに翻訳されていることを見たプレイヤーが興奮していたというものだった。このセットはまた、『フォーゴトン・レルム探訪』で抜けていたいくつかのものも再現していた。

ドラフトが楽しかった

 昨年のデザイン演説記事で、初代『統率者レジェンズ』について語った中で教訓の1つが、ドラフトにはかなりの進化の余地があるというものだった。デザイン・チームが、何の訂正が必要だということを理解し、訂正するという素晴らしい仕事をしたというのはプレイヤーの総意である。

統率者のデザインは独創的で、統率者戦プレイヤーから多くの反響を得た

 プレイヤーからの強い意見に、既存のデッキで既存の統率者を侵害する統率者をデザインするのを止め、プレイヤーが新しいものを組む必要がある統率者を作ってほしいというものがあった。『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』への反響は、統率者はそうなっている、というものだった。

プレイヤーは多くのメカニズム的実装を楽しんだ

 背景は全体的にヒットだった。D&Dセット(や統率者デッキ)での出来事/adventureの登場にプレイヤーは興奮した。イニシアチブについて多くの称賛があった。(ただし、どのダンジョンにでも探索することができないことを残念がる声もあった。)プレイヤーはテーマ間のシナジーを楽しんでいた。丁寧な多人数戦デザイン空間で多くのカードが反復工程を経たことについて多くのコメントを受けた。

教訓

『統率者レジェンズ』というラベルをつけるべきではなかった

 最も多かった不満は、このセットが実際と違うなにかであることを期待していたというものだった。『統率者レジェンズ』と見て、これには統率者戦のための需要の高い再録カードが大量に入っていると思う人が多かったのだ。統率者戦の再録がなかったことと、直後の『ダブルマスターズ2022』(『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』でプレイヤーが期待していたような再録が多く入っていた)は、プレイヤーを怒らせた。

『統率者レジェンズ』の続編というより『フォーゴトン・レルム探訪』の続編だと感じられた

 このセットは2つの要素を混ぜていて、多くのプレイヤーはそのうち一方の要素にずっと寄っていると感じた。これはただ再録の問題だけではなく、このセットには統率者戦に充分な影響を与えるようなカードが十分入ってはいないと感じられたのだ。

このセットには、特に統率者に、マジックを思わせるものがない

 もう1つこの製品がD&D世界を舞台にしたことに関するいらだちは、『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』にはプレイヤーが初代『統率者レジェンズ』で気に入っていた、過去のマジックの物語を連想させる多くのものを入れられなかったということだった。本流のセットに伴う統率者デッキでは、お気に入りの過去のキャラクターの統率者を作る機会は少ない。このセットでその機会を得られなかったことは残念なことだったのだ。

それほどメカニズム的な革新が行なわれなかった

 このセットはほとんどが過去のメカニズムの再登場で、新しいものをについてもほぼほぼ既存のものの焼き直しだった。このセットがもっとメカニズム的な革新をしなかったことを残念がるプレイヤーがいた。

こんな年だった

 この1年の話はそろそろ終わりとなる。いつもの通り、目的はユーザーが我々の仕事をどう捉えたかを誠実な理解で振り返ることである。過去を見直すことでしか将来の進歩のあり方を学ぶことはできないのだ。ここまで語ってきた各セットについての反響を送るために時間をかけてくれた諸君に感謝したい。

 今日の記事と、過去1年のセットについての私の見解についての意見を教えてほしい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『ラヴニカ』の展望デザイン提出文書を振り返る日にお会いしよう。

 その日まで、我々が昨年作ってきたものをあなたが楽しめますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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