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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『ストリクスヘイヴン』にて その2

Mark Rosewater
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2021年4月5日

 

 先週、『ストリクスヘイヴン』のデザインに関する話を始めたが、話すべき話がまだあるので今回はその後半戦となる。展望デザインの残りの部分を解説し、セットデザイン・チームを紹介し、そしてセットデザイン中にセットに加えられた大きな変更について説明しよう。それでは諸君、着席。授業を始める。

学院ツアー

アーチ道の公共地》 アート:Piotr Dura

 前回、展望デザイン・チームはクリエイティブ・チームと密に協力して、ストリクスヘイヴン学院に存在する5つの大学を表す5つの陣営を作った、というところまで話した。各陣営は、学問の分野を中心にしている。次の工程は、各大学のメカニズム的特徴を作ることであった。その要素には次のようなものがある。

1.各大学は、その学問の分野を体現したものでなければならない。

 良い陣営セットを作るための鍵は、各陣営がそれぞれ全体の構造と関連しており、それぞれに独自の特徴があることである。そのための秘密は、その特徴を作るための手段として全体の構造を使うことである。『ストリクスヘイヴン』では、学院内の場所を使っている。つまり、陣営は学院を構成する大学であるということだ。各大学には専門分野があるので、我々はその専門性をその陣営独自のフレイバーに富んだ選択をするための指針として使うことができる。「数学の大学らしく」は、陣営を作る上で他の原動力では与えられないような方向性を示してくれるのだこの方向性の価値を理解し、受け入れることが重要なのである。

2.大学は、同じ2色であってもギルドとは違うものでなければならない。

 『ストリクスヘイヴン』の大目標の1つが、独自の特徴を持ちラヴニカの単なる焼き直しにはならない2色の陣営セットを作ることができると証明することだった。そのために重要なのが、ギルドとは違う選択をするようにすることである。大学が特定の分野において、ラヴニカのギルドと同じプレイパターンを取るようにすることはできるが、それでは魅力的なセットは作れないということがわかっていた。つまり、定義を探す上で、我々はギルドがした選択と違う選択をする傾向があったということである。陣営の中には、簡単だったものもあれば、難しかったものもある。

3.陣営は2色の重複ではなく対立を軸としたものである。

 これについては先週も触れた。今回の陣営と対応するギルドとの雰囲気を違うものにするための方法の1つが、カラー・パイ上で異なる観点から見ることである。ギルドを作るときは、「これらのギルドの共通点は何か」と問いかけた。『ストリクスヘイヴン』では、「これらの色間での中心的対立は何か」と問いかけたのだ。大学を作るにあたって、我々はその対立がその定義の中心になるようにした。

 これから各大学を解説し、それぞれどのようにデザインしたのかを説明していこう。

シルバークイル大学
シルバークイルの学舎》 アート:Titus Lunter

 アグロ寄りの大学が必要だったが、ギルドの中で最もアグロ寄りなボロスと同じ色であるロアホールドにはしたくなかった。あらゆる選択肢を見た上で、この環境において白黒をアグロ・デッキの色にできるというアイデアを採用したのだ。オルゾフは遅く、コントロール寄りの締め付けるデッキだったので、白黒を全く異なる方向性に進めることにした。また、呪文関連のセットにおいて、大量の軽い呪文を唱えて有利を得るという陣営が必要で、それはアグロ戦略とうまく組み合わさったのだ。

 唯一の問題は、シルバークイルが言葉・言語の大学であるということだった。アグロ寄りだと感じさせるにはどうすればいいか。また、ダグ/Doug(ベイヤー/Beyer、『ストリクスヘイヴン』のクリエイティブ・リード)はアメリカで予備役将校訓練課程(ROTC)と呼ばれる、軍を目指す若者たちという題材に当てはまる大学を探していた。(加えて、彼は扱いにくい子供という題材の居場所も探していた。これについては後ほど。)

 どうすればそれを言葉関係のものにできるだろうか。そのとき私は、各大学が、違う種類の魔法を扱っているとすることを閃いたのだ。シルバークイルが使う魔法が言葉を使って呪文を唱える音声魔法だとしたらどうか。そうすれば、言葉は(触媒を混ぜたりするのと違い)すぐに発せられるので、シルバークイルが最も素早く魔法を使えることになる。最速の魔法ということから、シルバークイルが戦闘の魔法を教えるようになったとしたらどうか。そうすれば、言語の大学が軍の訓練をするようにできる。また、言語の大学は他の子供をけなして喜ぶような子供たちの場所として素晴らしいところに思えた。

プリズマリ大学
プリズマリの学舎》 アート:Adam Paquette

 青赤の大学についての大きな問題は、この世界が魔法を使う(インスタントやソーサリーを扱う)世界であり、イゼットが特に扱っていたテーマが魔法を使うことだったということであった。この陣営をそれと違うものにするにはどうすればいいか。まず、我々はフレイバー的に別の方向に向かわせた。プリズマリは、学生が芸術的表現に関するすべてを学ぶ芸術の大学である。イゼットも創造性を扱っていたが、これは発明に特化していた。『ストリクスヘイヴン』では、機能性ではなく表現を扱うのだ。

 メカニズム的には、イゼットがインスタントやソーサリーをどう扱ったかを見て、それと違うことをすることにした。イゼットは「インスタントやソーサリー関連」が濃かった。つまり、それらを使ったプレイ・パターンは、さまざまな呪文を試し唱えることだった。これの逆方向に向かうことにした。プリズマリが、大きな呪文1つを組み上げるものだとしたらどうか。芸術の生徒たちが、ただ大量の呪文を唱えるのではなく大きなショーを見せるほうを好むというのは腑に落ちる。

ウィザーブルーム大学
ウィザーブルームの学舎》 アート:Alayna Danner

 生死に関する対立が中心なので、黒緑の大学が生物学中心のものになることはわかっていた。ゴルガリと違うものにするため、墓地を扱うことができないのはわかっていた。緑と黒はどちらもさまざまな形で生命に関わっており、生命に関するもの以上に生物学に関わるものはないので、我々はこの陣営の中心を生命、つまりライフと関わるさまざまな方法に置くことにした。緑はライフを得ることに最も長けており、黒はライフを消費することに最も長けている、というアイデアを採用した。

 この方向性のもう1ついいところは、通常、「ライフ関連」デッキは白黒なので、通常と違う色でアーキタイプを組むことができるのだ。ダグはゴスの集団を必要としており、ウィザーブルームが明らかにふさわしかったので、この大学についてはすぐにまとまったのだった。

ロアホールド大学
ロアホールドの学舎》 アート:Titus Lunter

 我々は赤白の大学を歴史の大学にするというアイデアを非常に気に入っていた。メカニズム的に、墓地を参照することなく歴史に焦点を当てるにはどうしたらいいか。墓地は文字通り、そのゲームの過去を表している。また、ボロスと似た雰囲気にしないため、このセットでは赤白の陣営をアグロに寄せることはしないとも決めていたので、我々は別の方向に向かった。ロアホールドが、赤白の、遅くてコントロール寄りの側を扱い、墓地をリソースとして使うとしたらどうだろうか。

 紙の上では、それは非常にクールに聞こえる。問題は、メカニズム的に墓地に注目しているのは、黒緑のほうが上だということである。このことから、我々は何を扱わなければならないのかを掘り下げることになった。白には、ほとんどのパーマネント・タイプを墓地から手札や戦場に戻す能力がある。赤には、インスタントやソーサリーを墓地から取る能力があり、自力で戻ってくるフェニックスがいる。また、何かが墓地を離れることを参照するという、これまであまりやってこなかったことがあることにも気がついた。いくらかの作業は必要だったが、我々は充分な赤と白の効果を集めて、ロアホールドを遅くて墓地中心の陣営にすることができたのだった。

クアンドリクス大学
クアンドリクスの学舎》 アート:Piotr Dura

 我々はどのメカニズムが「数学的」かを決めることを非常に楽しんだ。(X呪文、倍加呪文など。)緑青の大学の難しいところは、シミックと近くなりすぎないようにすることだった。シミックは+1/+1カウンターを大量に使っていて、数学的効果もまた+1/+1カウンターを必要とする傾向にあった。

 展望デザインはこの大学を、大量の小型の1/1クリーチャー・トークン(クリーチャー・トークンについてはこのあと述べる)を出す、広く並べる大学として作り、そしてそれをさらに多くつくる助けとなる呪文を作った。(青と緑はコピーや倍加に長けている。)セットデザインは最終的に、広く並べる戦略から離れ、リソースを使ってクリーチャーの数を増やすのではなくそれぞれを大きくする、加速の陣営にした。

同じで、そして違う

 陣営を独自の雰囲気にすることは、『ストリクスヘイヴン』と『ラヴニカ』を差別化する方法の1つではあるが、それがすべてではない。私はもう1つ、異なる構造にする、ということにも強く意識を向けていた。過去の陣営セットでは、各陣営それぞれに独自のメカニズムを持たせることにしていた。私は、これと違うことをすることを考えていた。『ストリクスヘイヴン』では、各陣営が同じメカニズムを、それぞれ異なる使い方で、使う、とするのだ。

魔技

 1つ目は、展望デザイン中は呪技/Spellcraftと呼んでいて、最終的には魔技と呼ばれるようになったメカニズムである。我々は呪文を有意義なものにしたかったので、呪文関連のメカニズムを作ることにした。上陸は土地を有意義なものにし、星座はエンチャントを有意義なものにした、それならそのセットがさせたいことをすることで利益を得られるようにしない理由があるだろうか。魔技のいいところは、結果を変えることができるので、すべての色にカードを作って大学ごとに独自性を持たせることができる、というところである。その方法はこうだった。

シルバークイル ― この大学はアグロ寄りなので、ここの魔技の効果はクリーチャーを強化したり回避能力を持たせるものが多い。同じターンに複数のインスタントやソーサリーを唱えることを最も喜ぶ大学である。

プリズマリ ― この大学は単一の大きな呪文を唱えることに寄っているので、ここの魔技の効果は複数重ねないようなものが多い。

ウィザーブルーム ― この大学の魔技の効果は、何らかの形でライフを中心としている。

ロアホールド ― この大学は、墓地中心なので呪文を唱えることを推奨することになるため、魔技の効果にあまり一貫した性質はない。

クアンドリクス ― この大学は大型クリーチャーを育てることが主なので、クリーチャーに+1/+1カウンターを置くものや、大型クリーチャーを唱えるための土地などのリソースを得る助けになるものが多い。

 魔技の誘発を最大化させるため、インスタントやソーサリーを唱えたときだけでなくコピーしたときにも誘発するようにした。このセットの難しかったところの1つが、充分な呪文をプレイヤーのデッキに入れさせる方法を見つけることだったので、コピーも有効にすることで矢筒の矢を増やすことができた。

クリーチャー・トークン

 もう1つ結構初期に手に入れた芳醇なアイデアが、各大学にはその大学の動物マスコットや馴染みのある動物を表す独自のクリーチャー・トークンがあるというものだった。クリーチャー・トークンが重要な理由は、フレイバー以上に、興味深いゲームプレイを成立させるために充分なクリーチャーを入れながら、セット内のインスタントやソーサリーの比率を上げようとしていたからである。トークンを生成する効果はインスタントやソーサリーに持たせることができ、それによって戦場にクリーチャーを出しながら魔技を誘発させるといったことができるのだ。

 展望デザインでは、これを扱う名前のあるメカニズムが2つあった。

  • 召魔/Conjure [クリーチャー・タイプ] ― [コスト] (あなたがこの呪文を[コスト]で唱えたなら、これが戦場に出たとき、[該当するサイズ、色、クリーチャー・タイプの]クリーチャー・トークン1体を生成する。)
  • 使徒/Familiar ― あなたがクリーチャー・トークンをコントロールしているなら、[効果]。

 1つ目の能力、召魔は、呪文を唱える時に追加のマナを支払ってクリーチャー・トークンを出すという、基本的にはキッカー型の効果であった。2つ目の能力、使徒は、クリーチャー・トークンを出していることで利益を得られる能力語であった。セットデザインは最終的にこれら2つの能力を採用しなかったが、セットの根幹部分としてトークン生成という面は残した。最終的に各大学のクリーチャー・トークンはこうなった。

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シルバークイル ― 攻撃的で、序盤に唱えられるように大きすぎないものが必要だった。最終的には、2/1の飛行クリーチャーになった。展望デザイン中は、これはガーゴイルだった(学内の雰囲気を表そうとした)が、クリエイティブ・チームは文芸専門の大学であることを踏まえて墨獣に変更した。

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プリズマリ ― 青赤の大学は最大の呪文を唱えるものだったので、ここには(自然の)最大のクリーチャー・トークンを与えようと考えた。最初から、青赤らしさを考えて、エレメンタルであるべきだと考えていた。展望デザインは3/3のエレメンタルにしたが、セットデザインが4/4に強化した。

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ウィザーブルーム ― 黒緑の大学は濃いライフのテーマを持っているので、何かライフに関連したものにしようと考えた。絆魂について話し合ったが、緑は通常絆魂を持たないので、新しいクリーチャーを作ることにした。1/1で、死亡したときにライフをくれるのだ。展望デザインはこれを「地虫/grub」と読んでいたが、セットデザイン中に邪魔者に変更された。(訳注:pestという単語には害のある小動物という意味があり、今回のカード名などでは害獣となっていますが、マジックのクリーチャー・タイプとしては《迷惑エンジン》《信号の邪魔者》ですでに「邪魔者」という訳語が充てられており、そのまま維持されています。)

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ロアホールド ― 赤白の大学の歴史というフレイバーからスピリットにすることは決めていたが、そのサイズをどうすべきかについてはなかなか決まらなかった。展望デザインは最終的に2/2のクリーチャーとして提出したが、セットデザインは3/2に変更した。

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クアンドリクス ― ここについては、展望デザインのあとセットデザインで大きく変更が加えられている。展望デザインはクアンドリクスを、呪文で複数のクリーチャー・トークンを作り出す唯一の大学と考えており、そのクリーチャー・トークンを1/1のフラクタルにしていた。その当時は、この大学は広く並べる戦略に基づいていた。セットデザインが加速戦略に切り替えたとき、フラクタルは1/1クリーチャーから、一定数の+1/+1カウンターを置いた0/0クリーチャーに変更されたのだ。

モードを持つ両面カード(MDFC)

 『ストリクスヘイヴン』の最初の原動力は、MDFCを中心としたセット、だった。マジックの「1年」の3セットすべてでそれを使うと決めたとき、『ストリクスヘイヴン』で使える枚数は減ることになった。つまり、慎重に扱わなければならないということである。最終的に、我々は3種類の使い方をすることにした。

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学部長 ― 上述の通り、我々は大学に色の組み合わせの対立を扱わせることにしていた。初期に思いついていたアイデアの1つが、各大学に1人でなく2人の学部長を置くことだった。各学部長はその大学の根本的対立のその色の側を表すのだ。伝説のクリーチャーは陣営の要素を強調するための素晴らしい場所なので、対立をその中心にするため、それを指導者に編み込むことができる。MDFC技術を使って両方の学部長を1枚のカードに入れることによって、これがしなければならないことなのだと明白にできた。

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プレインズウォーカー ― 我々は時を経て、可能な場合にはセット内の要素の利点を活かして独特のプレインズウォーカーを作り始めるべきだと学んだ。プレインズウォーカーのデザインは限られているので、特定のセットでしか使えないデザイン空間を使えるならそれを活用すべきなのだ。『カルドハイム』では、ティボルトが《嘘の神、ヴァルキー》に擬態しているということを表すためにMDFCを使った。『ストリクスヘイヴン』ができる、何かクールなことはあるだろうか。

 ローアンとウィルが登場することがわかって、そこに黄金の可能性が生まれた。この双子は灯を共有しているので、彼らのプレインズウォーカー・カードを印刷するたび我々はその関連性を表す方法を探していた。『バトルボンド』では共闘能力を持たせ、『エルドレインの王権』では同じカードに載せた。もちろん、片面がローアン、もう一面がウィルのMDFCがあるべきだ。最初から物語に登場していたわけではないので、ルーカの可能性はもう少し後で出てきた。ルーカはそのペットとの繋がりで知られているので、MDFCを使って彼とそのペットを同じ1枚のカードに入れるのは完璧にふさわしいだろう。

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パーマネント/呪文 ― 最後の分類は、興味深いことに、そもそもMDFCでやろうとしていたことである。インスタントやソーサリーとパーマネントを組み合わせることで、デッキにインスタントやソーサリーを詰め込むのだ。デッキ内でそれぞれがシナジーを生じるようにデザインされている。レアに6枚のサイクルがあり、各大学に1枚と無色に1枚のMDFCがある。そして神話レアには、伝説のクリーチャー/呪文の敵対色MDFCが3枚(白黒、黒緑、緑青)、そしてローアンとウィル(青赤)、ミラとルーカ(赤白)が存在する。

作られなかったあと2つのメカニズム

 他にも、展望デザインが入れたがセットデザイン中にボツになったメカニズムが2つある。1つ目は、諸君も知っているであろうメカニズム、フラッシュバックだ。呪文と相性のいいメカニズムを探していて、フラッシュバックはふさわしいと思えたのだ。たとえば、魔技を2回誘発させることができる。最終的にうまく行かず、セットデザインはこれを「インスタントやソーサリー関連」を成立させる助けとなる、似たような機能の別のメカニズムに置き換えた。(これについてこの後で説明する。

 2つ目のメカニズムは、巻物/scrollと我々が呼んでいたものだ。巻物は、インスタントやソーサリーを保持できるアーティファクト・トークンである。そのあとで生け贄に捧げることで、それが保持していた呪文を唱えることができるのだ。カードの中には、可能なインスタントやソーサリーから巻物を作れるというものがあった。また、すでに決まっている呪文(マジックの歴史上有名なものが多かった)を保持した巻物を作るカードもあった。巻物もセットデザイン中にボツになったが、同じような役割を果たすものが追加されている。これについてもすぐに話そう。

セットデザインの話をしよう

 セットデザイン中に何が起こったかの話をする前に、『ストリクスヘイヴン』のリード・セットデザイナーのヨニ・スコルニク/Yoni Skolnikにチームの紹介をしてもらいたい。

クリックしてセットデザイン・チームを表示

 セットデザイン・チームは大量の素晴らしい仕事をしていたが、これからセットデザイン中に追加された2つの大きな要素について語ろう。

講義と履修

 『カラデシュ』のデザイン中、我々は「発明/inventions」というメカニズムを作った。デッキ外のアーティファクト・カードを持ってくることができるカード、というものだった。((ただし、これらにはデッキに入れて使えるようにマナ・コストがあった。)フレイバー的には、プレイヤーは発明家として必要に応じて物品を作れるというものだった。デベロップ・チームは、エネルギーか発明はどちらもバランスを取るのが非常に難しく、そのどちらかしかデベロップできないと言ってきた。セット全体にとって重要なのはエネルギーだったので、発明は棚上げになったのだ。

 フラッシュバックが除かれて、デッキ内のインスタントやソーサリーを強化する他のメカニズムを必要になった。1枚のカードで2つの呪文を唱えられるようにするような新しいメカニズムはあるだろうか。チームは発明のことを思い出し、アーティファクトでなくインスタントやソーサリーを手にする変形版を試すことにした。インスタントやソーサリーを持てっくることができる一連の効果のほうがアーティファクトより少しうまく働き、セットデザイン・チームは問題への解決策を手に入れたとすぐに気がついたのだった。履修と講義・カードに少し柔軟性を与えるため、ルーター能力(引いて捨てる)をもう1つの選択肢として加えた。

ミスティカルアーカイブ

 魔法学院ストリクスヘイヴンは、魔術師にとって多元宇宙で最高の学院である。(少なくとも、既知の多元宇宙では。)『ストリクスヘイヴン』セットは、マジック史上初めて、インスタントやソーサリーに大テーマとして焦点を当てたセットである。このセットに、この部分を明記させる方法はあるだろうか。マジックがこのようなものを表すためにこれまでに使った道具は何か。『時のらせん』には、そのセットの過去テーマを強調するために古いカードをブースターに入れる、ボーナス・シートがあり、プレイヤーの反応は上々だった。これと同じことを、インスタントやソーサリーに限ってやることはできないだろうか。マジックの(今後発売されるものも含む)歴史上から、最もクールなものを集め、それを『ストリクスヘイヴン』のブースターに入れるのだ。これならこの目標を達成できるだろう。

 『時のらせん』のボーナス・シートからの唯一の変更点は、そのカードをスタンダードで使用可能にはしないことで入れるカードの選択肢を広げたことだった。この変更の理由は、セット・ブースターで使っている「ザ・リスト」によるものである。ザ・リストはセット・ブースターで一定の割合で出てくる過去のカードの一群であり、ここでも、もっと心躍るものにできるようになるとわかっていたので、選んだカードはスタンダードで使用可能にしなかったのだ。ザ・リストは『ゼンディカーの夜明け』と『カルドハイム』でうまくいったので、我々は同じようなことを『ストリクスヘイヴン』のドラフト・ブースターでも試すことにしたのだった。(ミスティカルアーカイブ・カードは、ドラフト・ブースター、セット・ブースター、コレクター・ブースターに入っている。)

終業ベル

 こうして『ストリクスヘイヴン』のデザインができあがったのだ。いつもの通り、今日の記事や『ストリクスヘイヴン』のいろいろな面に関して、諸君からの反響を楽しみにしている。諸君が5大学についてどう考えているかには特に興味がある。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、このセットのカード個別のデザインの話する日にお会いしよう。

 その日まで、『ストリクスヘイヴン』で多くのことを履修できますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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