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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

新・新世界秩序

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Making Magic

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新・新世界秩序

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年4月1日


 開発部には、「フューチャー・フューチャー・リーグ(リンク先は英語)」(あるいは短くFFL)と呼ばれる道具がある。これは1年先の未来を想定してマジックをプレイするというものだ。私がフューチャー・フューチャー・リーグについて触れると、いつも「なぜフューチャー・リーグでなくフューチャー・フューチャー・リーグなんです?」という質問を受ける。かつては、6ヶ月先を想定してフューチャー・リーグを行なっていた。開発部はすぐにそれでは足りない、6ヶ月では問題を見付けられても解決には間に合わないと気付いたのだ。開発部はさらに6ヶ月未来を見るリーグを用意し、それを「フューチャー・フューチャー・リーグ」と名付けたのだ。この話をしたのは、今日の話題が「新・新世界秩序」だからである。


Chaos Lord

新しいものは必ず古くなる

 何年も前に、開発部は習得上の問題が存在する(リンク先は英語)ということに気がついた。マジックの複雑さは少しずつ水準を上げており、マジックを始めるのはどんどん難しくなっていっていたのだ。この問題を解決するため、我々は「新世界秩序」と呼ぶものを作り上げた。この記事をまだ読んでいない諸君は、この先に進む前に一読することをお勧めする。今日の話はこれを下敷きにした話なのだ。

 新世界秩序の中心思想は、「コモンはカード資産のない初心者にとって環境の大部分を占める。コモンの複雑さを減らし、より高いレアリティに複雑さを寄せれば、マジックの空気を保ったままで入門をずっと簡単にできる」というものだ。

 今日の話は、新世界秩序を使うようになってから何年も経って開発部が見付けた、重要な発見のことになる。フューチャー・フューチャー・リーグと同じように、まだ足りない、ということがわかってきたのだ。それを踏まえて、新世界秩序が目指したものを再び探求し、そして「新・新世界秩序」(略してNNWO)と名付けた計画を策定することになった。混乱を避けるため、内部では元の新世界秩序を「旧・新世界秩序」(略してONWO)と呼んでいる。

 新・新世界秩序がどのようなもので、将来のデザインやデベロップにどんな影響を与えるのか。また、旧・新世界秩序の今後果たす役割は何なのか。これからそれについて見ていくことにしよう。


Chaos Harlequin

新・新年

 時折、我々は自身のやりかたを査定するために実際のデータを用いるべく市場調査を行なっている。調査から、新世界秩序を使ったセットはそれ以前のセットに比べて初心者プレイヤーにとってずっと易しくなっているということがわかったが、我々の計算機は進化の余地はまだあると示している。言い換えると、わかりやすくなっているが、もっとわかりやすくできるということだ。

 それを踏まえて、上層部から、もし次のレベルまで進めたら何が起こるか示すように求められた。我々は時折「並行デザイン」と呼ぶ工程を行なっている。つまり、既に存在するファイルを選び、コピーして、名前を変えるのだ。その後、環境に存在する何かをたいていの場合は少々過激に変化させ、新しい環境に置いてプレイテストを行う。しばしば、我々はそこから教訓を得た上で元の環境に戻るが、場合によっては新しい環境が気に入ってそのまま続けることもある。今回はそのケースで、我々はこの新・新世界秩序の環境を試してみたのだ。もちろん、この新世界(あるいは新・新世界)が巧くいったので、この環境で続けることにしたのである。

 最初に我々がやったのは、ベルトを締めることだった。新世界秩序が砂の上に引いたコモンの境界線を、アンコモンに引き上げたのだ。これまでコモンに適用されていた同じルールが、アンコモンに適用されることになる(私の新世界秩序に関するコラムを読めば、その境界線がどこなのかがわかるはずだ)。本題に入る前に、これまであまりにも懐疑的すぎたことを強調しておきたい。時を経て、デザインにおいてはあり得なかったことにこそ最高の発見が存在するものなので、何にでも機会を与えなければならないということを学んだのだ。

 旧・新世界秩序がアンコモン向けのものになったので、コモンのための新・新世界秩序を定義しなければならない。そのための鍵になるのは、初心者プレイヤーにとって難しいものの大量の一覧を再検討してきた年月を振り返ることである。

 まず先に一言触れておこう。新・新世界秩序は、旧・新世界秩序と同じように、(a)通常はこうだという話であり、遵守しなければならないものではない。以下の一覧にあるものは「レッド・フラッグ」と呼ばれ、要注意とされるだけである。(b)より大きな視野に立って無視する理由があるなら、コモンのおよそ20%はレッド・フラッグを無視してもよい。その一番の例が上陸である。通常、コモンでは外部の誘発を意識する必要がないようにしている。特に対戦相手が自分のパーマネントに影響を与えるために使いうるものはそうである。上陸は、上陸を持つカードが充分な数あり、そしてすべて一貫していたので、全体としてプレイヤーが気付くべきだと学ぶものになっていた。そう気にすることはない。これから私が示すものは、一見して思うほど常軌を逸したものではないのだ。

 それはさておき、一覧を検討していくことにしよう。

パワー/タフネスは正方であるべきである

 初心者プレイヤーがぶつかる最大の問題の1つに常に挙げられるのが、パワーとタフネスの違いを理解することである。今まで何度2/2が1/3にブロックされたときに起こることを理解できないでまごつくプレイヤーを眺めてきたかわからない。この問題をコモンで解決するため、一般には全てのクリーチャーは正方形の特性を持つことにする(正方形の特性を持つとは、パワーとタフネスの数字が同じである、つまり1/1や2/2、3/3などであることを示す開発部語である)。


Goblin Mime
混乱するキーワード

 我々の調査の中には、常磐木クリーチャー・キーワードそれぞれについてどの程度グロクを得る(「グロク」はロバート・ハインラインの異星の客由来の言葉で、明白に見えすぎる考えを全体として理解すること)のが難しいかというものもあった。その調査の結果を紹介しよう(レッド・フラッグに当たらないキーワードにはINと書いておく)。

接死

 全てのメカニズムの中で、こでは一番ギリギリのものだった。プレイヤーは前提なしで接死を理解することが多いが、他のキーワード(トランプルヤプロテクション、先制攻撃など)と組み合わさると初心者プレイヤーは混乱してしまう。また、ダメージを与えないときにはこの効果は発生しないということも理解されない。OUT

防衛

 初心者プレイヤーはなぜ不利益にしかならないキーワードが存在するのかは疑問に思うが、処理は間違わない。IN

二段攻撃

 初心者は一般的に先制攻撃を理解するが、二段攻撃は殴りすぎだと感じる。この能力をコモンで使うことはめったにないので、取り除いてもそう問題はない。OUT

瞬速

 これは驚くべき結果となった。理解すれば単純に見えるが、初心者プレイヤーは混乱するものなのだ。これを解決するには、インスタントを特殊タイプにすべきだと考える。OUT

先制攻撃

 初心者プレイヤーが先制攻撃をいろいろな奇妙なやり方で扱うのを見てきたが、すぐに解決するようだ。IN

飛行

 しばしばこれはマジック史上最高のキーワードだと言ってきた。プレイヤーはフレイバーからこのメカニズムを理解できるのだ。IN

速攻

 これを理解するには、プレイヤーが「召喚酔い」(この語はカードでは使っていないが)を理解しなければならない。もう少し掘り下げると良くないのかも知れないが、プレイヤーはすぐにこれを処理できるようになるものだ。IN

呪禁

 初心者プレイヤーは対象というものを理解しないので、最初から呪禁は消える定めにあった。OUT

破壊されない

 これはキーワードではない(ただの英単語だ)が、混乱を招いている。多少経験を積んだプレイヤーでも、これがどういう時にクリーチャーを救うのか完全には理解できていない。二段攻撃と同じように、これをコモンで使うことはほぼないので、取り除いてもそう問題はない。OUT

威嚇

 初心者プレイヤーはアーティファクトという例外を知らない(し、アーティファクトが無色であることに混乱する)が、正しくプレイする傾向にある。IN

土地渡り

 初心者がこれで混乱するとは思わないだろうが、常に混乱を招いている。土地渡りそれぞれが違う名前を持っていることはその助けにならない。OUT

絆魂

 入り込んだばかりのキーワードである。初心者プレイヤーは正しく扱えないが、ライフを得ることは大好きなのでこれの働きを理解しようとする。IN

プロテクション

 経験を積んだプレイヤーでさえ、これを正しく扱えない。まして初心者が扱えるわけがない。OUT

到達

 初心者プレイヤーも、「飛行クリーチャーをブロックできる」と理解できる。IN

再生

 どのように起こるかというフレイバーは実際のメカニズムの働きと一致しない。OUT

トランプル

 初心者はトランプル単体でも難しく、他のメカニズムと組み合わさるとその存在を忘れがちである。OUT

警戒

 攻撃クリーチャーをタップするようになれば、警戒を理解できるようになる。IN


 まとめると、接死、二段攻撃、瞬速、呪禁、破壊されない、土地渡り、プロテクション、再生、トランプルはコモンではレッド・フラッグが立てられた。つまり、それらは状況に応じて使っていいかどうか判断しなければならないということである。そのブロックのキーとなる要素との相互作用を踏まえてこの中の1つか2つを選び、コモンではそれに集中するということになるだろう。

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ある種のカードはレアリティが高まる

 旧・新世界秩序には、コモンに入れずにより高いレアリティに動かす必要があるカードを決めるということが含まれていた。新・新世界秩序では、もう一度何がコモンにふさわしいかを考えなければならない。通常はアンコモンに入れるものとして選んだものがいくつか存在する。これがそのセットに必要であれば、セットに応じて、以下の要素のうちの少量はコモンに下げることができるということを忘れないでもらいたい。それでは紹介しよう。

装備品

 装備品はコモンにしては複雑なほうだということはわかっていた。芳醇でトップダウンなコモンのデザインが好きだったので、フレイバーに富んでいたこれを残していたのだ。しかし実験の結果は芳しいものではなく、落ち着いて考えてみると明らかに新・新世界秩序において認められる境界線を越えていた。これまでコモンだった装備品はアンコモンに、アンコモンだった装備品はレアに格上げになることになる。

インスタント

 遠い昔、我々はマジックの入門編というべきポータルという商品を作った。ポータルは初心者プレイヤーが学ぶべきゲームで、準備が出来たら基本セットに進むようにデザインされていた。ポータルはいくつもの理由から巧く行かなかったが、私がよく言うように、失敗は成功の母である。ポータルにはカード・タイプは3種類しかなかった。土地、クリーチャー、ソーサリーである。同じ轍は踏まない。(もちろん装備品は除く)アーティファクト(や、バニラやフレンチバニラのアーティファクト・クリーチャー、あるいはただのマナ発生源)はコモンにも存在できるのだ。

 ポータルがやった正しいことの1つは、インスタントをなくしたことだった。マジックを学ぶのが難しいのは、対戦相手のターンに呪文を唱えてくることを警戒しなければならないからである。ここでもう一度強調しておくと、新・新世界秩序はコモンにのみ適用される(ごく一部の特例ではアンコモンにも適用される)ものであり、インスタントというカード・タイプがマジックからなくなるわけではなく、コモンから(一部の場合にはアンコモンからも)消えるだけである。

起動型能力

 新世界秩序を作るに至らしめた理由の1つは、盤面の複雑さという危惧であった。つまり、戦場で起こっていることを追跡することの難しさである。カードに何ができるかだけでなく、他のカードとどう相互作用するかもそれに含まれる。自分自身に、そして対戦相手にどんな選択肢があるかを把握するのがどれだけ難しいのか。盤面の複雑さを押さえるために、新世界秩序は盤面の複雑さを減らすためのレッド・フラッグを置いた。新・新世界秩序はそれをさらに推し進める。

 この鍵になるのは、他のカードに影響を及ぼせるカードというのは盤面の状況を著しく複雑化させるということである。この問題を再検討して、我々はこの問題が他のカードに影響を及ぼすカードというだけでは済まないと理解した。攻撃したりブロックしたりする以外の機能を持つクリーチャーが存在するだけでも、状況は複雑になる。これの対策として、新・新世界秩序は全ての起動型能力にレッド・フラッグをつけることにした。つまり、基本的にコモンには起動型能力が存在しないことになる。アンコモンは旧・新世界秩序に従うので、他のパーマネントに影響を及ぼす起動型能力のほとんどはレアや神話レアにのみ存在できることになる。

 心配する諸君のために強調しておくと、「戦場に出たとき」の効果はコモンに残る。「戦場に出たとき」の能力を持つクリーチャーは、最初のターン以降は単純なバニラのように働くことから「実質バニラ」と呼ばれている。同様に「実質フレンチバニラ」は最初のターン以降はフレンチバニラ(クリーチャー・キーワードを持つだけで他に文章を持たないクリーチャー)として働く実質カードだ。これらはコモンで使い続けられるが使い方は慎重になり、主に存在するのはアンコモンになることになる。

死亡誘発

 長きに渡って、我々は死亡誘発を「戦場に出たとき」の誘発と同じように扱ってきた。どちらもターン1つ以外に置いてはバニラのように振る舞うクリーチャーだという点では同じである。しかし、そのターンがいつなのかがわからないということが重大だと言うことがわかってきた。従って、我々は死亡誘発にもレッド・フラッグをつけることにした。

トークン生成

 トークン生成そのもので混乱を招くことはそう多くないが、開発部が憂慮しているのは準備の問題である。プレイヤーがデッキを準備することは忘れなくても、トークンを表すものを準備することを忘れないとは言えない。この問題を緩和するため、トークン生成をコモンからなくすことにした。

切り直し

 データ調査の結果、初心者プレイヤーは平均的に切り直すのが下手だとわかった。そして、切り直しには時間がかかるのも問題である。そこで、まあ、新・新世界秩序を利用してその回数を減らすことに決めた。


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スパイナル・タップ・ルール

 大量の計算の結果、我々はカードのルール・テキストに含まれる単語の数とプレイヤーがそのカードを理解できない回数に高い相関性があることを突き止めた。もっとも難易度の壁となるマジック・ナンバーは、12語であった。スパイナル・タップ・ルールとは、カードは「11点満点」であるというもので、つまり、ルール・テキストは11語までにする必要があるというものだ。12語になると、そのカードにはレッド・フラッグが立てられる。

 スパイナル・タップ・ルールには特例としての例外が存在する。新しいキーワードを10語までで書くのはほぼ不可能である(キーワードにも1語を消費する)ので、コモンにも、同じ注釈文が10枚以上ある場合に限って10語以上の注釈文をつけることが認められる。これを「10の10」ルールと呼ぶ。

バニラ定数

 新・新世界秩序は、何かを取り除くだけではない。同時に、コモンにもっと存在すべきものは何なのかについても議論を重ねてきた。正直に言うと、開発部が同意するまでには困難があった。初心者プレイヤーにとって最善のものは一体何なのかという点で意見の相違があったのだ(私がいつも言っているとおり、私は意見の多様性が開発部の最大の特徴の一つだと信じている)。我々全員が同意したことは、バニラ・クリーチャーは初心者向けだということである。

 従って、我々は各セットに充分な数のバニラ・クリーチャーを入れるように定数を定めることにした。現時点で想定している割合は、コモンの20%である。数値をどうするにせよ、我々は適正な量を定めるには数セットかかることになるが、開発部内では20%を充分あり得る数字だと意見の同意を見た。

 目端の利く諸君は、大型セットで20%と言えばクリーチャー20体だということに気付くだろう(大型セットのコモンの枚数は101枚である)。コモンの全てのクリーチャーは正方形の特性を持つという上述のルールと、コモンにおける通常のサイズ制限により、選択肢はそう多くはない。20%のうち20%はレッド・フラッグの立っているものであってもよいので、その分を除くと16枚のバニラ・クリーチャーが数に入ることになる。

白:1/1、2/2、3/3

青:1/1、2/2、3/3、4/4、5/5

黒:1/1、2/2、3/3、4/4

赤:1/1、2/2、3/3、4/4

緑:1/1、2/2、3/3、4/4、5/5、6/6、7/7

アーティファクト:1/1、2/2、3/3、4/4、5/5


 この28の選択肢から16枚を選ぶので、セットごとにバリエーションを持たせることには何の問題もない。

その他の制限

 初心者向けに焦点を当てるうえで、これまで存在した中で最も問題の大きなカードを紹介しよう。

 新・新世界秩序をまとめるにあたり、我々はこれもまた解消すべき障壁であると認識した。そこで、我々の選んだ手段はこうである。初心者プレイヤーを無作為に選び出し、その語学力を計るのだ(気にする諸君のために添えると、我々は水準を9割に定めている。つまり、購買層の9割以上が読める単語しか使ってはならない)。調査の結果、この境界線は小学5年生レベルだということがわかった(そう、これは少しばかり衝撃的な事実だったが、若年層にも受け入れられている現実を踏まえている)。

 とにかく、小学6年生レベル以上の語学力を必要とするカード(カード名のみならず文章全て)にはレッド・フラッグがつけられ、より高いレアリティに移動することになる。フレイバー・テキストも含むかどうかということは議論になったが、最終的に、議論を呼ぶ余地があるものは何であれコモンには残すべきでないという結論を得た。

新しい新

 ああ! 一見するとたいしたことはないように見えるだろうが、考えるのをやめればリラックスできることがわかるだろう。ゲーム中に、あまりに多い情報に接して、脳みそを使いすぎていると感じたことはあるだろう。今後はそれは減り、そして、この新・新世界秩序の世界になじんでしまえば、二度と離したくなくなる。トラストミー。

 諸君にも色々と言いたいことがあるだろうから、いつもと同じようにメール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で待っている。

 それではまた次回、ドラゴンの迷路のプレビュー開幕でお会いしよう。

 その日まで、エイプリル・フールに公開された記事を読める細心の注意があなたとともにありますように。

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