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Making Magic -マジック開発秘話-

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Making Magic

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サポート・グループ

Mark Rosewater / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru

2012年2月20日


バイバック

 よし、みんな。そろそろ時間だ、座ってくれ。

 このサポート・グループに新しい仲間が加わった。そこで、まずは彼に自己紹介をして貰って、それからみんながそれぞれ自己紹介をすることにしよう。

 はじめてくれ。

不死

 えーと、はい、私の名前は不死といいます。私は最新の闇の隆盛出身のメカニズムです。

 何から話せばいいですか?

 私が何者なのかを説明するのは私にとってとても難しいことです。

 強いメカニズムで、デベロップの方は少しばかり恐れているようです。今週のコラムは私の特集で、とてもいい評価を頂いています。多くの方々は、私のことを「上向きの頑強」だと見ているようでしたが。

消失

 上向き? 冗談じゃない。劣化版だろ。

補強

 消失君、邪魔してあげるなよ。

バイバック

 問題ない。グループであるということは、議論できるということだからね。

消失

 良くなっているという意見には同意できないって言っただけだ。理由? もし良くなっているなら、プレイヤーはお前のことを好きになるだろうさ。

不死

 上向きとは言いましたが、頑強さんと同一視されたいわけじゃありません。これからずっと頑強さんの何とかだって言われ続けるのはごめんです。

消失

 他のメカニズムの何とかだって言われるのが問題だって言うのか? お前、俺に喧嘩売ってるのか? 「なんで消散じゃなくて」と言われ続けて、どれだけつらかったか......!

馬術

 いやでも消失よ、デザインはまだお前を進化させようとしたじゃないか。俺なんて、フレイバーを除いたらあの超有名で大人気のメカニズムの完全コピーなんだぞ。

想起

 でもあなたはポータル三国志のメカニズムでしょ。売られていたのも世界の一部だけだし、ほとんどのプレイヤーはあなたの存在すら知らないわよ。

馬術

 ありがとう想起。慰めてくれて。

複製

 一体何を言ってるの。みんな感情的になりすぎよ。

バイバック

 ああ、話がずれてしまったようだ。不死君、ここに来た理由について話してもらえないか?

不死

 はい、えーと、私は自分というものについて悩んでいるんです。どこで変われるのか、どうすればいいのかわからず、愚かなことをしてしまいました――自殺しようとしたんです。

 しかし、死ぬことはできませんでした。私が自分のメカニズムを知るべきだったと思われることでしょう。

 でも、私は助けが欲しいんだと分かりました。セラピストの先生に、ここに来るように勧められて、ここにお邪魔させていただいたわけです。

 これが全てです。

バイバック

 うん。それじゃ次はこっちの自己紹介に移ろう。

 想起さんからはじめてくれるか?

想起

 私は想起、ローウィン出身よ。私はいつもキッカーと比べられるわ。

双呪

 あいつの名前は出さないことにしてたんじゃないのか?

想起

 ごめんなさい。私はよく、キの字の人と比べられるの。

双呪

 ありがとう。

感染

 僕は感染。ミラディンの傷跡ブロックの出身さ。僕は前にあったメカニズム2つ、有毒と萎縮を組み合わせただけのものだって思われてる。

 じゃあ、おにぎりはご飯と海苔を組み合わせただけだって? 組み合わせたものは新しいものにはならないとでも?

 それに、そもそも有毒はダメージに関係ない、完全に別物だよ。

刹那

 萎縮はダメージに関係あるぜ。

感染

 うん。だから、組み合わせたものは新しいものになるんだって。

刹那

 どうでもいいさ。

感染

 どうでもいいだって? よりによって君がそんなこと言うのかい、「帰ってきたインタラプト」!

刹那

 俺はインタラプトじゃねえ。インタラプトとは話が違う。

 違うんだ。

 ところで、俺は刹那。時のらせん出身だ。

多相

 私は多相。同じくローウィン・ブロックの出です。

 私に関して問題にされているのは、メカニズムそのものではなく、カードですね。《霧衣の究極体》です。

 私が作られた時、多くのプレイヤーが《霧衣の究極体》がかわいそうだと叫びました。

 でも、それが問題ではないと誰も気づいてくれませんでした。人気のあるものはコピーされる定めです。嫌われているものをコピーなんてするはずがないじゃありませんか。

 警戒は《セラの天使》のコピーでしたが、警戒は私のようには非難されませんでした。

 なぜそんな差がついたのか分かりません。気に入ったものなら、それが多くなるのはうれしいことだと思うんですが。

 デザインは好かれるように新しいメカニズムを作るものです。

 なぜプレイヤーは......いえ、まあ、これが私の問題点です。

双呪

 双呪だ。ミラディンから来た。他の連中と同じく、俺も先輩――インベイジョンのとあるメカニズムとの問題を抱えている。そいつの領分に足を踏み入れちまったわけだ。

 何でもできるメカニズムと喧嘩する方法なんて、思いつくかい?

 あいつのことをただのメカニズムと呼ぶのも違うと思う。

 言ってみれば、ただのメカニズムじゃなく、全てのメカニズムなんだ。

 もちろん、誰もがあいつの跡を追っている形になる。足跡がデカすぎるんだ。

 どうすりゃあいつの影から逃れられるっていうんだ?

補強

 僕は補強、モーニングタイドで生まれたんだ。

 プレイヤーの人たちは僕のことをサイクリングの一種だと思ってるんじゃないかな。

 そう言われればまあ、そうだよね。でも、別の効果を持ってるのも事実だよ。

 手札にあるカードを+1/+1カウンターと交換するんだから、カードではないよね。僕をサイクリングだと言ったら、僕らは全員キッカーや分割カードになっちゃうよ。

双呪

 だから奴の名前は出すなって言ったろ!

バイバック

 双呪はちょっと――まあ、彼のことについて神経質になってるみたいだな。ここは彼のことをキの人と呼ぶことにしよう。

威嚇

 俺の名前は威嚇だ。子供達は俺のことを、畏怖モドキだって言ってるらしい。

 らしいというのは、俺の前じゃ言わないからだ。

 ま、言うような奴の顔面にはキツい一発をお見舞いしてやるけどな。

バイバック

 あー、威嚇、ここは君の怒りにもの申す場所じゃないのは分かっているが、暴力的な話は謹んで貰いたいな。

威嚇

 ここは感情を表す場所だと思ってたんだがな? 実際に殴ったりはしていねえ、ただ殴ってやりたいという感情を示しただけだ。

 そりゃ、黒のカードが俺を持ってれば畏怖とほとんど一緒になる、だがそれは一面ってもんだ。畏怖は一色にこだわってやがる。それに名前だ。恐怖に囚われた奴が何で他の奴らにブロックされなくなるんだ?

「僕怖いの、ブロックしないでね」

 プレイヤーがバカどもだと思うなら、そりゃ扱いやすいだろうさ。

蘇生

 私はね、アラーラの断片ブロックから来た、蘇生ってもんだけどね。

 プレイヤーはね、私をね、クリーチャー用のフラッシュバック呼ばわりするのよ。確かにそうだけどね。ローズウォーター先生はフラッシュバックを参考に私をデザインしたっていうしね。だから、その名前にはね、まあ、ね、満足してるのよ。

 大体はね。

多重キッカー

 ワールドウェイクの多重キッカーです。

 言うまでもなく、キの人とよく関連づけられます。

感染

 そりゃ、キの人だからだよ。

 君は新しいメカニズムじゃないよ。言ってみれば、ちょっとひねっただけの亜種みたいなものさ。君や土地サイクリングは、まず自分の名前を手に入れてからにしたらどうだい。

多重キッカー

 僕のことを延長だと思ってる人がいるのはわかります。

威嚇

 感染の言うとおりだ。お前はただのキッカーだよ。

双呪

 その名前は出さないと言っただろう!

威嚇

 お前らが勝手に言っただけだ。

 キッカー! キッカー! キッカー! キッカー!

 ここにいるうちの半分はあいつのせいで来てるんだろう。何はばかることがある?

多重キッカー

 僕は何度も起動できる能力を持っています。キッカー――キの人はそうじゃありません。

威嚇

 ああ、お前はキッカーと複製の愛の結晶だ。だが、オリジナルじゃねえ。

複製

 アタシはここにいるけど?

多重キッカー

 オリジナルって話だったら、あなたも人のことを言えないでしょう?

威嚇

 俺は他の4色でも使えるメカニズムだ。それに、多色や無色ではまた違う動きを見せてるぜ。

多重キッカー

 混乱させるやり方ですよね。

威嚇

 お前のカードは完璧なのか?

 《彗星の嵐》って言ったら思い出すか?

☆消失が退席しました☆
バイバック

 議論はいいことだが、喧嘩はよくないな。

不死

 あの、何が起こったんですか?

バイバック

 消失は論争が苦手なんだ。

想起

 消失が会議の途中でいなくなるのはよくあることなのよ。

感染

 いつものことだよ。

バイバック

 馬術?

馬術

 俺はポータル三国志の馬術。

 他の世界観にあわせるために変更された飛行だよ。

感染

 ツッコンで悪いけど、なんで馬に乗ってると地上のクリーチャーにブロックされないの?

 騎士だって馬に乗ってるけど、ブロックされるよね。

複製

 アタシは複製。ギルドパクトの住人よ。

 キの人の仲間ってことになるのかしら。

 でも、多重キッカーも言ったとおり、アタシは何度も起動できる。キの人とは違うの。

 それが全てね。

 イゼットはいいわよ。

バイバック

 さて、みんなの自己紹介が終わったところで、私も自己紹介をさせてもらうよ。私の名前はバイバック、テンペスト出身だ。みんなの言うキの人の能力の一部を持っている、と思われがちだが、実際のところ彼よりも数年前に生まれているんだ。

 このグループの世話人を務めさせてもらっている。

 今回の話し合いは、新人の不死が抱えている問題について話し合い、みんなの個人的な経験を分かち合う場にしたい。

 ......不死君?

不死

 え、えっと、僕は何を話せばいいんですか?

バイバック

 そうだな。どうやら君は何かに苛立っているように見える。その苛立ちの理由について話してくれないか?

不死

 あ......はい、マジックのゲームは全部が全部、あるテーマのバリエーションだと思うんです。毎年、《巨大化》に新しい服を着せて出しているみたいな。誰もこのことに驚いていないように思います。

 それなら、なぜ、新しいメカニズムはそれに一番近い働きをするメカニズムと比べられなければならないんでしょうか?

刹那

 そりゃ人間の性質ってもんさ。

 新しい刺激を受け入れるためには、文脈が必要なんだ。

威嚇

 使われてんのか?

不死

 え?

威嚇

 お前は使われてんのか? プレイヤーはお前を使ってくれてんのか?

不死

 あ......ああ、はい、特にリミテッドでは。

威嚇

 ならぐだぐだ言うんじゃねえ。

 プレイヤーが使ってくれてんなら、それでいいじゃねえか。

不死

 いえ、でも、僕は自分のメカニズムについて......

感染

 威嚇に同意したくはないけど、今回は威嚇に一票だな。なんでそんなに人の評価にこだわるのさ?

 違う効果を持ってるんだろ。それは分かってるんだろ。デザイナーやデベロッパーもわかってるんだ。何が問題なんだ?

多重キッカー

 不死の言いたいことも分かりますよ。メカニズムなら誰でも、自分がマジックに貢献してる唯一無二のものを感じたいと思うものです。

感染

 不死はもうそれを持ってるんだろ。違う効果を持ってるんだから。

 ただのエゴだよ、それは。

不死

 エゴ......ですか?

感染

 周りを見てみなよ、誰だって次の時代を担いたいと思ってるんだ。でも、そのためには、オリジナルだと思われなきゃならない。

 派生品だと思われたら、言ってみれば二級市民扱いを受けるのさ。

不死

 でも、私は派生品じゃありません。

馬術

 いや、派生品だよ。俺たちは全員派生品だ。

 だからこそ、ここにいるんだろ。

多相

 ローズウォーターのコラムで、君のできた経緯はみんなが知っています。彼は、もし-1/-1カウンターを使えるなら、頑強を使おうと思っていたのです。だから、君は派生品なのですよ。

補強

 派生品だったら悪いのか?

 たとえば靴屋に行って靴を買うとき、前の靴と似てるからって誰も恥じたりしないだろ。

 実際、ちゃんと動くことが保証されているっていう安心感があるよ。

蘇生

 まったくそのとおりだよね。

 自分ってものをね、そのまま受け入れればね、心安らかになれると思うよ。

 私のことをね、クリーチャー・フラッシュバックって呼ぶ人もいるけどね、構わないのよ。

 それで何が問題かってのよ。

不死

 何が問題なのかはわかりませんが、でも、問題でしょう。

 誰かの影の中で生きているような、そんな気がするんです。

馬術

 影!? シャドー!? ......ああ、脅かすなよ。

多重キッカー

 不死君、君の悩みはよく分かりますよ。僕のことを新しいメカニズムだと思ってくれたプレイヤーがどれだけいると思います?

 この部屋にいるメカニズムの中で、僕を新しいメカニズムだと思ってくれている人はいますか?

 僕は自分の名前すら持ってないんです。

刹那

 ローズウォーターはデザイン中に名前を付けて、それを守ろうとしたそうじゃないか。

 その名前ならプレイヤーに何をするかわかりやすくていいと思ったんだろ。

多重キッカー

 僕はそのときからずっと、今もずっと、こうなんですよ。

 あなたとは違うんです。

双呪

 違いに注目しろ。

 何が自分にしかできないのかを考えるんだ。

 他のメカニズムにできないことでお前にできることは何だ?

威嚇

 ああ、双呪。お前にしかできないことって何かあるのか?

双呪

 キの野郎はAかBかの二者択一だが、俺はAかBかその両方かが選べるぜ。

威嚇

 は?

双呪

 ちょっとした差だがな。

威嚇

 キッカーがモードを持つ呪文だったら、両方できるんじゃねえか?

双呪

 頼むからその名前は出すなよ。

 バイバック、全員一致だよな?

威嚇

 俺は一度もはいと言った覚えはねえ。

双呪

 ほとんど一致してるよな。

威嚇

 は? サポート・グループはいつから多数決になったんだ。

 奴をキの人だのキの野郎だの呼びたいなら呼べばいい、つきあってやるよ。

 で、お前とキの人の違いは何なんだ?

 AとBの両方ができるなんてナンセンスなことはいうなよ。それはキッカー――おっと、キの人でもできることだぜ。

双呪

 全部をひとまとめにしてしまわないことこそがメカニズムの存在意義だろ。

 ああ、ほとんどのマジックのメカニズムは3つか4つの大分類に分類できるさ。

 なんでそんなことをしなきゃならないんだ?

 なんでデザインが俺たちの仲間を増やしてると思ってるんだ?

威嚇

 俺を輝かせるためさ。

双呪

 彼らの仕事は、ゲームを本質的に同じものに保ちながら、違う味わいを持たせることだ。

 確かに、《巨大化》や《稲妻》の類のカードはどのセットにも存在する。

 ゲームの本質は変わっちゃいない。

 デザインは、変わったというイメージを作らなきゃならない。

 俺たちのようなメカニズムを作ってる理由は、違うように見えるメカニズムを作りたいからだ。

 ああ、俺はキの野郎でも表せるさ。だが、そうしたが最後、俺は普通の存在になっちまう。

感染

 つまり、僕らは全部、比較される相手のメカニズムで表すことができて、そうされていないのは目先を変えるためだけだってこと?

 いくらなんでもでたらめだ。

双呪

 じゃあ、何だと思ってるんだ?

感染

 僕らは進化だよ。

 僕らは現在進行形の、マジックのデザイン技術なんだ。

 有毒だって問題なかったし、萎縮だって悪くなかった。でも、それを組み合わせると――なんと、すごいものが生まれたってわけさ。

複製

 感染の言う通りね。不死の考えてることは逆だと思うわよ。

不死

 逆?

複製

 あなたが逆に考えてると思うってこと。

不死

 いえ、言っている言葉は聞こえているんですが、その、意味が。

複製

 あなたの元になったメカニズムは成功していたんでしょ。

 マジック世界に作られたメカニズムは沢山あるけれど、その中で目立って成功したと言えるのはそんなに多くないわ。

 でも、何か新しいものの基礎になったなら、それは成功だったということよ。

 確かにあなたは子孫よ。でも、いいものではあるわ。

 あなたの引き継いだ遺産を恥じてはいけないわね。

 誇りなさい。

不死

 恥だなんて思ったことはないです。

 頑強はすごいメカニズムだと思ってます。

想起

 いい返事。

不死

 「上向きの頑強」という名前でもよかったと思っています。

 ありがとうございました、気が楽になりました。

バイバック

 私たちはそのためにここにいるんだからね。

 よし、それじゃそろそろ終わりにしよう。

 色たちはカラー・パイを改めるためのミーティングを続けているみたいだな。

双呪

 まだ会議中なのか?

バイバック

 毎週だな。

 さて、それでは来週またお会いしよう。議題は「基本根本」になる。

多相

 え、何ですって?

バイバック

 すぐに分かる。

 諸君が今回のミーティングから何かを得てくれれば幸いだ。

 それではまた来週。

 その日まで、あなたの来た道の良いところがあなたとともにありますように。

 おやすみ、みんな。

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