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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:闇を乗り越えろ、暗黒騎士ミッドレンジ!(スタンダード)

岩SHOW


 マジックのクールさを伝えるべくデッキやカードについて語り続けている今週のCool Deck。今後しばらくはマジックのクールさを語ると同時に「FINAL FANTASY」シリーズのクールさを語ることになるね。『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がリリースされた。このセットの盛り上がりっぷりはマジックの歴史にもしっかりと刻まれる出来事で、それをリアルタイムで体験している我々はクールな歴史の証人とも言えるのである。FFの世界観を可能な限り元ネタのフレーバーを再現した、携わった日々との強いこだわりと愛を感じるカード達。どれもこれもがクールなキャラであり名シーンなのだが……あえて1枚ピックするなら今回はこれを選ぼう。

 

 《暗黒騎士、セシル》!彼は「FINAL FANTASY Ⅳ」の主人公。このゲームが発売されたのは1991年。当時まだ筆者はこのゲームをプレイするには幼過ぎたのだが、年が少し離れた親戚がえらくハマっていた。好きなゲームなどの話をするたびにFFⅣが、FFⅣがと口癖のように言っていたものである。主人公のセシルはゲーム開始時には暗黒騎士であり、暗黒剣の使い手という……30年以上前のゲームにしてはかなり先進的なクールな設定。ゲームの途中、彼は光の力に目覚めパラディンとなるために試練に挑む。その内容は、暗黒騎士の自分との戦闘という……今になっても色褪せないクールすぎる物語だ。

 このゲーム中の最大のイベントを、《暗黒騎士、セシル》は見事に再現している。自らのHPを消費することで敵全体を攻撃するアビリティ「あんこく」は、セシルがダメージを与えるたびにそれのコントローラーがライフを失うという形で表現。大きなデメリットを与えられているため、それに見合うようにクリーチャーのとしての質は大変に素晴らしい。1マナ2/3に接死持ち、攻撃でもブロックでも活躍する破格のスペックだ。そしてあんこくでライフを失った際にライフがゲーム開始時の半分以下……即ち通常のフォーマットであれば10点以下になれば、《覚醒のパラディン、セシル》に変身!

 

 白魔法により回復などが行えるようになったパラディンの姿。4/4にサイズアップし、暗黒騎士とは逆に絆魂でライフを回復させてくれる。プロテスとは対象の物理防御を上昇させる魔法であり、これをマジックでは攻撃時に誘発する能力に。自分以外の攻撃クリーチャーが破壊不能を得るというかなりクールなもので、セシルに率いられればサイズで上回るクリーチャーが立ち塞がっていようが、恐れずに味方全員で総攻撃をかけることが可能となる。このクールすぎる変身クリーチャーを使うなら……こんなデッキが良いんじゃないかな。

AK - 「黒単ミッドレンジ」
スタンダード (2025年6月11日)[MO] [ARENA]
4 《花盛りの湿地
4 《ラノワールの荒原
4 《コイロスの洞窟
4 《ウェイストウッドの境界
2 《眠らずの小屋
3 《
1 《
-土地(22)-

4 《暗黒騎士、セシル
4 《闇の腹心
4 《苔森の戦慄騎士
4 《ファイレクシアの抹消者
-クリーチャー(16)-
3 《強迫
3 《苦々しい勝利
1 《大渦の脈動
2 《薮打ち
4 《狩人の才能
2 《要塞の闘技場
4 《死の車
3 《ヴェールのリリアナ
-呪文(22)-
1 《強迫
2 《石の脳
2 《一巻の終わり
2 《受け継ぎし地の開墾
3 《害獣駆除
2 《羅利骨灰
1 《大渦の脈動
1 《極悪非道の盗人
1 《平地
-サイドボード(15)-
MTGGoldfish より引用)

 

 

 黒単に緑と白をほんのりタッチした、スタンダードのミッドレンジ(中速デッキ)。《苔森の戦慄騎士》などライフを失うカードを色々と採用。クリーチャーを展開しつつ相手のパーマネントを除去して攻撃、殴り勝つマジックの王道的なデッキだ。そこに自らのライフを削る手段を盛り込んでセシルの変身を促すというスパイスが加わることで、リスキーではあるがエキサイティングなゲーム体験をもたらすものに仕上げられている。まさかの再録となった《闇の腹心》は、毎ターン手札を1枚もたらす代わりにそのマナ総量分のライフを失わせる。時に己の首を絞めることもあるが、ハマれば大量の手札をもたらすクールな名カードだ。

 この腹心やセシルのあんこくでライフを減らし、パラディンへの変身を目指す……だけでなく、このライフが減った状態を武器にする。《死の車》!自分のライフ分、マイナス修正を受けるというデメリットを持つが……その代償に1マナ13/13と驚異的なスペックを誇るバケモノ機体だ。普通のデッキでは扱いにくいが、これだけライフを失うことに長けたリストなら6/6くらいのサイズで攻めることも難しくないだろう。

 

 クールすぎる《死の車》を活かすために腹心と共に採用されているのが《要塞の闘技場》。あまり目にする機会のないエンチャントだが、これもまたクールな逸品。クリーチャーの攻撃が対戦相手に通れば腹心と同様に手札をもたらしライフとのトレードを行う。このエンチャントはキッカーコストも設定されており、緑と白のマナを支払えばそれぞれにつきライフが3点回復。ライフがちょっと心配な時もこれで安心だ。またこの闘技場やサイドのカードのために白マナを加える土地は《コイロスの洞窟》が担当。色マナを加える際にはダメージを受ける、他のデッキであればもっとリスクの低い土地に変更しても良いのだが……このデッキではそのダメージさえもメリットに。セシルや《死の車》のためのライフ調整をこの洞窟や《ラノワールの荒原》といったダメージランドで行う……こんなゲーム体験をしている時に「クールなマジックしてるな」と実感できるものである。

 

 クリーチャーに目をやると《ファイレクシアの抹消者》の姿が。5/5トランプルというボディに、ダメージを受けるとそれのコントローラーに同じ値のパーマネントの生け贄を要求するという、無慈悲な暗黒ファイレクシアンだ。この抹消者のえげつない能力を無理やり誘発させて対戦相手のパーマネントを消し飛ばすため、格闘を行う《薮打ち》が採用されている。黒緑系のデッキで一時期流行った組み合わせで、クリーチャーデッキ相手にこのコンボが決まればゲームの流れは決定的なものとなる。またこの《薮打ち》での格闘はセシルとの組み合わせもクール。接死で確実に討ち取り、あんこく誘発でライフを減らして変身を目指したり、パラディンセシルと格闘させて絆魂で回復したり……《狩人の才能》もパワー分のダメージをクリーチャーが与える除去なので、セシルから接死or絆魂の一撃を叩き込もう。

 暗黒騎士だった過去の自分の猛攻に耐えてパラディンへと変貌を遂げたセシル。《暗黒騎士、セシル》でこの物語を再現しながら、光の力に目覚め……とか言いつつ《死の車》などの暗黒全開なカードと組み合わせて戦う、コラボだからこそできるクールなゲーム体験を是非とも味わってほしいね。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Overcome the Darkness‼

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