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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
世界の頂点に悪魔が来る!加虐者型ディミーア・デーモン(スタンダード)
2024年の世界選手権、無事閉幕。今年でなんと30回目、記念すべき大会がラスベガスにて開かれ、3日間の激闘を制してハビエル・ドミンゲス/Javier Domínguezが自身二度目の世界王者の座を手にした。常にトップ戦線に君臨し続ける実力者中の実力者が、マジック界最高のタイトルを再び手中に収めることになった……他にもTOP8に大ベテランのカイ・ブッディ/Kai Buddeをはじめ、セス・マンフィールド/Seth Manfieldに井川良彦にと世界中の強豪がひしめく、30回記念に相応しすぎる大会に。マジックのモチベーションがグッと上昇したプレイヤーも少なくないはずだ。
刺激をもたらした世界選手権、予選及び決勝ラウンドで熱戦を繰り広げたスタンダードのデッキを紹介していこう!
『ダスクモーン:戦慄の館』は様々なデッキに新戦力をもたらした。黒という色、特に中速デッキ(ミッドレンジ)における最大の補強は《不浄な別室》だ。3マナで毎ターン、1枚ドローをもたらすエンチャント。何もなければ対価として2点のライフを失うことになるが、デーモンをコントロールしていれば話は変わる。2点のライフを失うのは対戦相手になり、こちらはむしろ2点増えるというドレインがオマケでついてくるのだ。これは文句なしに強い、ということで《ドロスの魔神》や《アクロゾズの放血者》といった既存のデーモンの価値が見直され、スタンダードなどで一気に躍進。デーモンデッキが突如として隆盛し、今最も勢いのあるデッキとして世界大会でも高い使用率が予想されていた。この別室はもう一つの部屋である《祭儀室》からデーモンを出すことで、自己完結しているのも魅力的だ。
この強力エンチャントを軸としたデーモン系ミッドレンジが、世界選手権のトップ8に降臨!
4 《不穏な浅瀬》 4 《グルームレイクの境界》 4 《地底の大河》 3 《闇滑りの岸》 2 《噴水港》 8 《沼》 1 《地底街の下水道》 -土地(26)- 2 《終末の加虐者》 4 《ドロスの魔神》 2 《腐食の荒馬》 4 《フェアリーの黒幕》 -クリーチャー(12)- |
2 《完成化した精神、ジェイス》 4 《強迫》 4 《喉首狙い》 2 《呪文どもり》 2 《保安官を撃て》 3 《苦痛ある選定》 1 《切り崩し》 4 《不浄な別室 // 祭儀室》 -呪文(22)- |
1 《完成化した精神、ジェイス》 2 《ヴェールのリリアナ》 1 《死人に口無し》 1 《ギックスの命令》 2 《鋼と油の夢》 1 《萎縮させる責め苦》 2 《否認》 1 《苦痛ある選定》 1 《極悪非道の盗人》 2 《切り崩し》 1 《除霊用掃除機》 -サイドボード(15)- |
というわけで早速、世界王者のディミーア(青黒)カラーのデーモンデッキを見てみよう。《ドロスの魔神》と《祭儀室》で攻め、《腐食の荒馬》や《フェアリーの黒幕》で攻めながら手札も補給。しかしクリーチャーの総数は12枚+《祭儀室》4枚とそれほど多いわけでもなく、むしろ大量のクリーチャー除去と《強迫》《呪文どもり》などでコントロール的に立ち回るのも得意な構成のミッドレンジとして組まれている。
そして特筆すべき存在は《終末の加虐者》!6マナ6/6飛行に加えてアップキープの開始時に1ドローと、戦闘面でもアドバンテージ面でも優れたフィニッシャー……なのだが、デーモンというものはそう一筋縄ではいかない。これが戦場に出るとお互いのライブラリーが残り6枚になるまで追放されてしまうという、とんでもない能力を備えている。残り6枚で毎ターン2枚ドローするとなると、あと3ターン以内で勝たなければライブラリーアウトで敗北してしまう…悪魔は利益だけをもたらすことは決してないのだ。ただしこの加虐者がもたらす終末は対戦相手にとっても苦しいものだ。相手も強引に残りライブラリーが6枚になるため、コンボパーツやフィニッシャーなどの勝利に必要な手段を奪われてしまう可能性がある。
そしてこの6枚以下のライブラリーに舌なめずりするのが《完成化した精神、ジェイス》だ。彼の[-X]はXの3倍の枚数のライブラリーを切削する。残り6枚であればX=2でサクッと削りと落とせるので、対戦相手をライブラリーアウトに落とし込める。ジェイスを加虐者より先に出しても、後に出しても成立するというのがこのコンボの強みで融通が利くところ。魔神らでの殴り勝ちを狙いつつ、隙があれば加虐者ジェイスで一撃必殺。まさしく世界の頂点をとるに相応しい、美しいデッキだ。
ただ、世界王者のデッキをそのままコピーして回して、ショップの大会やアリーナのランク戦などで勝てるかというと、それはまた別のお話になる。世界選手権やプロツアーで使われるデッキは、あくまでその大会で勝つために組まれたものだ。上級者が集まり、使用率上位を占めるデッキに狙いを定め、さらにデッキリスト公開性なことを加味してカードが選択されている。さらに上級者の実力やプレイ感覚に基づくチョイスもある。
たとえばこのリストだと……《腐食の荒馬》を使いこなすことは、多くのプレイヤーにとって難しいかもしれない。これは攻撃時にライブラリーを捲ってそのマナ総量分のライフを失いながらカードを手札に加える。乗騎出来れば失うのは相手になるが、そうも毎度うまく乗ってやることはできないだろう。そしてマナ総量分ライフを失うということで、主軸として4枚採用されている《不浄な別室 // 祭儀室》を捲ってしまった時には……2つの部屋それぞれのマナコストを足した分のライフが吹っ飛ぶ。つまり……8点!痛い!この大ダメージ、想定外のところで喰らうとゲームに敗北してしまうやも。そのあたりをしっかり念頭に置いて荒馬で攻撃しなければならない。
さらに黒マナを6つも要求する加虐者が採用されているが、無色マナしか捻出できない《噴水港》が2枚採用されているため、これを引いてしまったために加虐者が唱えられない……なんてことも起こり得るね。もちろん《噴水港》が強くて勝つマッチアップもあるし、これで宝物を生成して唱えるということも可能なので、このあたりはプレイヤーの好みと使用感で枚数を調整するなり、別のものに置き換えるなりしていこう。自分に合う形にチューニングする時間が一番楽しいしね。
チャンピオンの「加虐者型ディミーア・デーモン」をお届けしたわけだが、デーモンデッキの形はこれだけではない。次回はスタンダードにおける他のデーモンのバリエーションを、世界選手権のデッキリストを眺めながら解説させていただくのでどうぞよろしく!
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