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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

セファリッドよ永遠に。ブレックファストはナドゥと一緒に(レガシー)

岩SHOW
 

 2024年6月、マジック界のちょっとしたニュース。クリーチャー・タイプの再編!動物の特徴を持ったヒューマノイド種族というのは様々なカードで見られる。狼男やミノタウルスなど、ファンタジー世界の種族として広く認知されているものもあれば……ヴィーアシーノやセファリッドなどのマジック界のオリジナル種族まで。長年問題になっていたのは後者で、これらは種族名がそのままタイプになっていた。今回はこれを廃止し、モデルになっている生き物、トカゲやタコに統合することになった。マジックを始めた頃にこれらの種族と触れていた人にとっては、自分の知るものが一つなくなってしまうという寂しさはあるが……タイプ統合により、《セファリッドの皇帝アボシャン》はこれまでセファリッドでなかったタコと組み合わせても機能するようになったりと、ゲーム的にはプラスに働く側面が大きい。

 タイプを参照してどうこうするカードが損座しなかった種族が、色んなカードとシナジーを形成することを考えると……タイプとしての役目を終えて、お疲れさまでした!タイプではなくなったが《ヴィーアシーノの○○》みたいなカードは今後も登場することだろう。

 

 そもそもセファリッドで構築フォーマットで活躍したカードってあるの?と馴染みのないプレイヤーは思うかもしれない。種族としてはスポットライトを浴びることはなかったが……単一のカードとしてはある!しかも現役バリバリのやつが!《セファリッドの幻術師》だ。このタコは自分のクリーチャーが与える・与えられる戦闘ダメージを軽減して0にする。でも大事なのはそのディフェンシブな起動型能力ではなく、誘発型能力。幻術師は呪文や能力の対象となると、自身のライブラリーを3枚切削する。無敵のブロック役になれるが、ちょっとしたデメリットを持っている……あるいはこれが収録されたころは墓地利用を推奨するカードが多かったため、それらのカードのための墓地肥やしを狙う、そんな風に設定された能力だ。

 これを《コーの遊牧民》など、起動コストが{0}の能力持ちと組み合わせると……無限に対象に取って、ライブラリーをすべて墓地に落とすことができてしまう。これにより《タッサの神託者》の勝利条件を目指す「セファリッド・ブレックファスト」はレガシーにおけるコンボデッキの代表格として、今も最前線でプレイされ続けている。構築フォーマットで最も活躍したセファリッドであり、そしてタコでもあるのだ。

 

 セファリッドが朝ご飯をかっこむようにライブラリーを食い尽くすこのコンボ、コー以外には《手甲》も起動コスト{0}なのでコンボパーツとして用いられる。《手甲》といえば、モダン環境の風景を変えた《有翼の叡智、ナドゥ》!ナドゥもセファリッドと同じく呪文や能力の対象になると能力が誘発、ライブラリーの上のカードが手札に加わるか、土地ならば戦場に出る。これを{0}能力で何度も起動、ナドゥはクリーチャー1体につき2回までの誘発になるので、色んなクリーチャーでバトンを繋いでライブラリーを掘り進め……こちらも空になったら《タッサの神託者》でフィニッシュ!そうでなくとも盤面も手札もメチャ強い状態になるので、そのまま殴って勝つことも可能だ。

 これら共通の挙動、共通のパーツを持つコンボ……ワンセットにしたらどうなるか?これを実行した新「セファリッド・ブレックファスト」がレガシーで大増殖中!

Ramon Sales - 「セファリッド・ブレックファスト」
Alpha Legacy 120 トップ8(参加者52名) / レガシー (2024年6月22日)[MO] [ARENA]
3 《溢れかえる岸辺
3 《霧深い雨林
1 《吹きさらしの荒野
1 《Tropical Island
1 《Tundra
1 《Underground Sea
1 《神聖なる泉
1 《行き届いた書庫
1 《迷路庭園
2 《魂の洞窟
3 《ウルザの物語
1 《死者の原野
1 《平地
2 《
-土地(22)-

4 《コーの遊牧民
3 《ナルコメーバ
3 《セファリッドの幻術師
1 《タッサの神託者
3 《有翼の叡智、ナドゥ
1 《粗石の魔道士
-クリーチャー(15)-
4 《渦まく知識
4 《思案
4 《意志の力
1 《オアリムの詠唱
3 《剣を鍬に
2 《虹色の終焉
2 《手甲
2 《通り抜け
1 《陰謀団式療法
1 《戦慄の復活
2 《時を解す者、テフェリー
-呪文(26)-
1 《目くらまし
2 《狼狽の嵐
3 《否定の力
2 《夏の帳
2 《静寂
1 《厚かましい借り手
1 《剣を鍬に
1 《魂標ランタン
2 《外科的摘出
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 両方のルートからライブラリーを掘り進む、二段構えのブレックファスト!レガシーらしく土地周りが優秀なので、問題なく3色分のカードを運用できる。土地と言えば《ウルザの物語》もブレックファスト系のデッキでは便利な1枚だ。アーティファクトが並ぶわけではないので構築物のサイズには期待できないが、この英雄譚のⅢ章能力で《手甲》をライブラリーから探してきて直接戦場に出せる。モダンでも見られるムーブはレガシーでも強力だ。そして《死者の原野》も搭載されているのが面白い。ナドゥ・ルートで動けば土地が沢山並ぶので、原野からゾンビが這いずり出てくる。これを《手甲》やコーの対象にして、まだまだどんどん掘り進む。十分な数のゾンビが並び、手札にたっぷりの《意志の力》や《オアリムの詠唱》が揃えば、対戦相手にターンを返してその後の動きをシャットアウトして勝つということもできるね。

 

 ブレックファストの隠れたテクニックとして使われていた《通り抜け》。ウィザードをライブラリーから探して手札に加えるという、特殊なサイクリング能力を持っている。これでセファリッドをサーチ、時には神託者を引っ張ってきたりとコンボデッキに柔軟性を持たせるいぶし銀の1枚。これ、ナドゥも持ってこれるんだよね。能力も強ければタイプも強いときたもんだ。さらに《粗石の魔道士》を持ってきてそこから《手甲》というサーチに次ぐサーチも……こういうアクションを実行している時「ああ、マジックやってるなぁ~レガシーやってるなぁ」としみじみ感じるものだ。たまらんね。

 セファリッドというタイプ自体は消滅しても、カード名や「セファリッド・ブレックファスト」というデッキ名は永遠に残る。ナドゥが加わってコンボパーツにバリエーションがもたらされたこのデッキ、2024年のレガシーを象徴するデッキとしてますます勝ち進んでいくのだろうか。その動向が楽しみだ。

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