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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ディミーア・シャドウ:イクサランから来た名わき役(レガシー)

岩SHOW

 新セット『カルロフ邸殺人事件』がリリースされたところで、ひとまず前セット『イクサラン:失われし洞窟』を振り返ってみようか。やはりこのセットがもたらした最大級のインパクトは……「発見」だな。

 指定された数字以下のマナ総量を持つ呪文を唱えることのできるこの能力。ランダム性があるものだが、デッキ構築の段階でこれを強く意識することで任意のカードを公開し、マナを支払わずに唱えるという動きが可能となる。これを活かしたコンボデッキ がパイオニアにて突出した使用者数になり、突然誕生したデッキが環境のど真ん中で大旋風を巻き起こしたのはインパクト満点だったね。今では環境整備もあって以前ほど絶対的な存在ではなくなったが、それでも《クイントリウス・カンド》コンボは強デッキの一角を占めている。《嘶くカルノサウルス》はパイオニアのみでなくモダンでも墓地から再利用するデッキで利用され、スタンダードでも恐竜デッキをはじめとする赤い中速デッキの主力として大活躍だ。

 派手さという観点からは上記の2枚に肩を並べるようなカードはないかもしれないが……シブいカードがレガシーに居場所を見つけたのもスルー出来ないことかなと。その1枚は《鍾乳石の追跡者》!洞窟住みのゴブリンということで、夜行性の爬虫類や深海魚のような、他のゴブリンとは少々雰囲気の異なる風貌。ビジュアル面でも味があるが、カードとしての味わいもこのカードならではのものを持っている。

 ターン終了時に、自身の墓地にパーマネント・カードが落ちている……「落魄」の条件を満たしていれば+1/+1カウンターを得る。1マナ1/1と侮っていると、メキメキと成長して2マナのクリーチャー相当かあるいはそれ以上のサイズに。威迫も持っているため簡単にはブロックされず、コツコツと着実にダメージを叩き込んでくれる。更に生け贄に捧げればクリーチャー除去もできる……と、1マナに色々詰め込んだ強カード。山椒は小粒でもピリリと辛いと言うが、それはまさにこのゴブリンのためにあるような言葉だ。

 レガシーであれば《汚染された三角州》のようなフェッチランド、そして《不毛の大地》と、この追跡者のために墓地に落とせるパーマネントは簡単に用意できる。そして他にも……今回は落魄ギミックを仕込んだレガシーのデッキを紹介しよう。

Jhonata Avelã - 「ディミーア・シャドウ」
Lampions XIII Etapa 1 #90 優勝 / レガシー (2024 年2 月3 日)[MO] [ARENA]
4《汚染された三角州
1《沸騰する小湖
1《溢れかえる岸辺
1《Underground Sea
4《湿った墓
4《不毛の大地
1《
1《
-土地(17)-

4《鍾乳石の追跡者
4《死の影
3《オークの弓使い
1《厚かましい借り手
3《悲嘆
4《通りの悪霊
2《濁浪の執政
-クリーチャー(21)-
4《渦まく知識
4《思案
4《目くらまし
4《意志の力
2《殺し
4《再活性
-呪文(22)-
1《厚かましい借り手
2《激しい叱責
1《致命的な一押し
2《シェオルドレッドの勅令
1《火薬樽
2《外科的摘出
1《ダウスィーの虚空歩き
1《狼狽の嵐
1《否定の力
1《船殻破り
2《水流破
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 「ディミーア(青黒)・シャドウ」!シャドウとは《死の影》のこと。1マナ13/13という奇学外のボディの持ち主《死の影》、その実態はプレイヤーのライフ分だけマイナス修正を受けるという、蝋燭の灯のように脆いもの。しかしプレイヤーのライフが減れば減るほど危険なクリーチャーに。ライフが満タンでは戦場に出ることすら叶わないが、10点以下になるとマナ総量に見合わぬ優秀なスペックに。残りライフ5点くらいまで意図的に減らして、高コストクリーチャーすら一方的に殴り倒すサイズまで育てる……薄氷の勝利を掴もうとするのがシャドウデッキだ。

 《湿った墓》や《殺し》といったライフを支払うカードを多めに盛り込み、普通にゲームを進めながらライフを失っていく。対戦相手の攻撃は時に受け、余りイケ過ぎないというバランス感覚が求められる。プレイ難易度は簡単ではないが、ギリギリのラインまで減らしたライフを維持できれば、シャドウらが相手を蝕みつくすだろう。

 このシャドウや、あるいは影は不採用の青黒系のデッキに《鍾乳石の追跡者》が採用されるようになってきた。1ターン目にフェッチランドから安定して出せる2/2威迫、これだけでも頼りになる。そして黒いデッキであれば、土地以外にも落魄を満たす要素が。簡単なものはサイクリングだ。落魄はどこから墓地に落ちるかは問わない能力なので、手札からパーマネント・カードを捨ててもOK。《通りの悪霊》はシャドウデッキの必須カードであり、マナではなくライフを支払ってサイクリングする。隙が無く動けてライブラリーの圧縮にもなり、ライフを調整して影の光輪を早める……色々できちゃうことリストに、落魄を満たすという一文が加わったわけだ。

 このリストでは不採用だが、青黒系では《カザド=ドゥームのトロール》との相性も光る。これは沼サイクリングを持ち、1マナで土地を探しながら落魄を満たす。その軽さと、沼タイプを持っていればなんでも持ってこれる探せる範囲の広さが魅力だ。

 そして青黒の定番ムーブといえば……《悲嘆》!これを想起コストで支払い、マナの代わりに手札を追放することで唱えて戦場へ。対戦相手の手札を確認して1枚捨てさせ、《悲嘆》は生け贄となって墓地へ。これで落魄を達成。さらに《再活性》で《悲嘆》を戦場に戻すことで、対戦相手の手札をグズグズにしたうえで威迫持ちのパワー3を確保。妨害と攻めを同時に行う、最近の黒の嗜み的なムーブである。どんな相手にも効果的なめちゃ強い動きであり、《再活性》のライフ損失が《死の影》のためのセットアップにもなる……何もかもが噛み合った時、このデッキは見た目以上の破壊力を叩き出す。《再活性》は前述の《通りの悪霊》やトロールをリアニメイトするのも超強力。悪霊の沼渡りが炸裂すると、なんだかそれだけでゲームに勝ったような気分になれる。

 主役をはれるようなカードではないが、名わき役として良い仕事をしてくれる《鍾乳石の追跡者》。どんなセットにもこういった、派手さこそないが長く使われるカードというものは潜んでいる。『カルロフ邸殺人事件』ではどのようなカードが皆のハートをつかむのだろうか?今一度、地味に見えるカードもチェックし直さねばならないね!

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