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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:カスケード・クラッシュ、潮を縛る新たな力(モダン)

岩SHOW

 一見非力に見える存在がものすごい力を持っていた──創作ものではお馴染みのクールな展開だ。マジックにクールさを求める人に捧げる、毎週金曜日の定番コラム「今週のCool Deck」。今回はこの「人は見た目によらない」系のカードを使ったデッキへの理解を深めていこうと思う。フォーマットはモダンだ。歴史あるフォーマットだけあって、見かけよりもずっと強い、デンジャラスなカードに溢れた環境だ。

 たとえばこの《暴力的な突発》。3マナのインスタントで、クリーチャーのパワーをターン終了時まで+1する。すべての自コントロールクリーチャーが強化されるとはいえ、2色の3マナ呪文でこれだけでは力不足だ。ただしこの呪文には続唱がついている。これを持つ呪文を唱えたら、ライブラリーからこれよりマナ総量が低い呪文が公開されるまでぺらぺらとめくっていき、公開されたらそれをマナを支払わずに唱えられる。突発の場合は2マナ以下の呪文が捲れるわけで……まあしかし何が公開されるかわからないのであれば、かなり使いにくいカードなのでは?そう思われるのも当然だ。

 続唱呪文はデッキ構造次第で化けるカードである。突発からはマナ総量2以下の呪文が唱えられる。だったらそれを絞れば狙ったものが確実に唱えられるというわけである。そこで3マナ未満の呪文を《衝撃の足音》のみに絞った構築をする。そうすれば。非力で不安定だった《暴力的な突発》が一転、インスタントのタイミングで4/4トランプルのトークン2体を生成する、激強呪文に劇的変化!非力が剛腕に、これぞクールな展開だ。

 《衝撃の足音》と《暴力的な突発》&《断片無き工作員》の続唱呪文をフル投入し、それ以外の部分は デッキ内にマナ総量が高い、しかし軽く使うことができるテクニカルなカードをたっぷりと採用して構築した「カスケード(続唱)クラッシュ」はモダンでもかなり強力なデッキとして人気を集めている。《厚かましい借り手》や《緻密》《否定の力》のように、2マナ以下のモードを持っていたり代替コストで支払うことができるカードがこのデッキを成立させているのだ。このクラッシュ(衝撃)デッキがさらにクールな要素を手に入れたという一報が。それはもちろん、クールすぎるセット『イクサラン:失われた洞窟』が世に解き放たれたからだ!

Daniele Bonazza - 「カスケード・クラッシュ」
Event @ ABC Cards&Games 優勝 / モダン (2023年11月19日)[MO] [ARENA]
4 《樹木茂る山麓
4 《霧深い雨林
1 《沸騰する小湖
1 《ケトリアのトライオーム
1 《踏み鳴らされる地
1 《蒸気孔
1 《繁殖池
2 《宝石の洞窟
1 《天上都市、大田原
1 《耐え抜くもの、母聖樹
2 《
2 《
-土地(21)-

4 《断片無き工作員
3 《ティシャーナの潮縛り
1 《厚かましい借り手
4 《緻密
2 《嘶くカルノサウルス
-クリーチャー(14)-
3 《死亡 // 退場
4 《火 // 氷
2 《覆滅 // 複製
4 《否定の力
4 《ロリアンの発見
4 《暴力的な突発
4 《衝撃の足音
-呪文(25)-
4 《活性の力
1 《耐え抜くもの、母聖樹
4 《忍耐
2 《激情
1 《血染めの月
1 《月の大魔術師
2 《神秘の論争
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 技師《ティシャーナの潮縛り》見参ッ!新たなマーフォークが華麗に加わった。まずは3マナであること、これ重要。続唱の邪魔をしないことが何よりも大事だ。そして瞬速持ち。なので対戦相手のターンや、あるいはこちらのターンの戦闘中などにも突発かティシャーナかの2択を持ったまま対戦相手の動きを見てから動くことができる。そして肝心の能力は……起動型、あるいは誘発型能力の打ち消しだ。

 まず起動型能力の打ち消し。これはモダンであれば対象に困るケースは少ない。ほとんどの多色デッキには《霧深い雨林》や《樹木茂る山麓》のように生け贄に捧げるコストを支払い能力を起動、ライブラリーから土地を探して戦場に出すフェッチランドというものが採用されている。これらで《ケトリアのトライオーム》などの複数の基本土地タイプを持った土地をサーチして多色デッキのマナ基盤を成立させているのである。ティシャーナはこれらのフェッチの起動を打ち消せる!つまりインスタント・タイミングの土地破壊というわけである!クールすぎる、クールすぎるぞ……実際にこれを決められたら凍てつきそうだ。これまでもこの手の打ち消しはあったが、続唱を邪魔しない3マナであり、かつ戦闘面でも仕事をする3/2というサイズなのが偉いね。

 誘発型能力は《創造の座、オムナス》がそれの塊だ。これを打ち消しても、また土地を出されたりしたら能力が誘発するのでは?ご安心を。ティシャーナにはこの打ち消しに続きがある。打ち消された能力がアーティファクト・クリーチャー・プレインズウォーカーのものであるなら、それはすべての能力を失う!ティシャーナが戦場にいる限りという条件付きではあるが、厄介なオムナスをなんの能力も持たないもっさりエレメンタルにしてやることができるのだ。もちろん誘発型能力だけでなく起動型能力を打ち消した場合にも能力を失わせることができるので《飢餓の潮流、グリスト》や《レンと6番》といったプレインズウォーカーを封じたり、《一つの指輪》や《石鍛冶の神秘家》らの誘発を封じつつ起動もさせない、などなど相手を選ばずにアドリブが効く、テクニックの化身とも呼べるようなカードなのだ!《虚空の杯》をX=0で置かれても、強引にクラッシュコンボを決められるのもクールだなぁ。

 今パイオニアでは続唱と似た発見能力を使ったデッキが突如誕生し、環境を激変させている。それらもクラッシュと同じくデッキ内にマナ総量は重くとも軽く使える呪文を採用する、というわけで分割カードの評価が高まっている。カード1枚に2つの呪文を併せた分割呪文。それらは2つの呪文のマナ総量を合計したものが、ライブラリーや手札などにある時のマナ総量となる。クラッシュでも《火 // 氷》を使うのは定番になっているね。このリストはパイオニアでにわかに注目を集めている《覆滅 // 複製》を採用。モダンでこのカードを見ることは滅多にないため、それだけでもうクール。《覆滅》はティシャーナと同じく能力に対する打ち消しで、これらでフェッチランドをガンガン打ち消す土地破壊デッキになるパターンが新しい勝ち筋となりそうな予感。《複製》はサイをコピーするのが現実的だが、《嘶くカルノサウルス》から捲ってこの恐竜をおかわりするパイオニアから輸入したパッケージが決まれば痺れるね。除去でもあるカルノサウルス、モダンでも唱えられれば超強力なことは疑う余地なし!

 スタンダードとパイオニアを激変させているイクサラン、モダンにもクールな影響が見て取れる。このセットちょっとクールすぎるかもしれんなぁ……冬の寒さもクールで上書きされそうだ。一見それほどまでに強くなさそうなカードでも、その真価を知れば強者をねじ伏せる力となる。これをいつも忘れずに。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Know true powers!!

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