『イクサラン：失われた洞窟』、どうやらこのセット……とんでもなくクールだ！オンライン上でのリリースから、各自がクールなデッキを構築してそれが動くさまをシェアしている。クールなものを求める僕のようなプレイヤーには眼福だ。

　というわけでやってきました金曜日。毎日マジックの構築フォーマットのデッキを紹介するデイリー・デッキ。一週間のトリを務めるのは金曜日のこの「今週のCool Deck」。クールを第一の尺度としてデッキを分析、マジックを遊ぶ上で大事な感情「クール」を皆で高めていこうという趣旨の元、日々クールなデッキを探している。新セットリリース直後は世界がクールで溢れていて、たまらないんだなコレが。当コラムをやっていて冥利に尽きるタイミングで、ちょうど凄まじくクールなデッキがイクサランのリリースと同時にやってきた。フォーマットは丁度今週末に開催されるチャンピオンズカップファイナルでも採用されているパイオニア。全く新しいコンボが誕生し、同トーナメントでも台風の目となるか？要注目のそのデッキは……

　象のプレインズウォーカー、《クイントリウス・カンド》！古代の記憶をスピリットとして蘇らせる能力を持った彼は、イクサランの洞窟探検の任を受ける。はじめてプレインズウォーカーとしてカード化されたクイントリウスは、追放領域から呪文を唱えると対戦相手に2点ダメージ＆コントローラーに2点のライフを与える白赤らしい誘発型能力を持つ。そしてこの能力を誘発させられる2種類の－能力を持っており、これらでアドバンテージを得ながら対戦相手とのライフ差を拡げていく……そんなカードにデザインされているのだが。このクイントリウスを用いた、瞬殺コンボデッキが突如として姿を現した。それではリストを見ながら、そのクールさを体感してみよう！

　こちらがパイオニアのクイントリウスを用いたコンボだ。肝心のコンボの流れはこうだ。

①《クイントリウス・カンド》を戦場に出す
②[－3]能力を起動する

　以上。

　…マジっすか？　マジですとも

　かなりはしょったが、②までいけばコンボが決まるのだからこれはまぎれもなくクールな真実なのである。では②の後に何が起こるのか？

③発見4を解決する。4マナ以下の呪文が公開されるまでライブラリーを追放していく
④このリストに採用されている該当カードは《灯の分身》《賢いなりすまし》《イルーナの神話》のみなのでこれらのいずれかが追放され、マナを支払わずに唱えられる
⑤上記3種の呪文を唱えたら、クイントリウスの能力が誘発。対戦相手に2点ダメージ
⑥4マナ呪文でクイントリウスをコピーする。コピーが戦場に出たら[－３]能力を起動する

　③～⑥までのループが形成されることになる。そしてその過程で対戦相手に２点ダメージが与えられる。《灯の分身》は伝説でないコピーとなり、それを他のカードでコピーするという手段を用いればクイントリウスが何体も戦場に並び、とてつもないダメージの雨を降らせる。これで対戦相手のライフを0にすることを狙っているのだ。コンボ始動に必要なのはクイントリウス1枚のみ、これは驚異的だ。アメージング、マーベラス、そしてクール！

　1枚コンボではあるが、デッキ自体はどう組んでも良いというものではない。マナ総量4以下をコピー３種に絞り込み、クイントリウスとそれ以外は5マナ以上のカードで固めなければならない。あとは全部土地！なんて呑気なことも言ってられないので、5マナ以上だけどもそれより軽いコストで唱えたりできるカードを採用してデッキを成立させている。コンボ始動は1枚でも、デッキ全体でコンボを成立させているってことだな。

　コストが軽減される《力線の束縛》や《大群退治》、出来事のモードを持つ《有角の湖鯨》、捨てて宝物を生成する《創造の発露》《マグマ・オパス》などなどカードチョイスは光っているが、その中でも注目は《嘶くカルノサウルス》。捨てれば3点ダメージの除去になり、唱えて戦場に出せば発見５を行う。この５からクイントリウス、あるいはコピーカードを捲ってという具合にコンボ始動に繋げられるのだ。恐竜と象、クールすぎる新戦力の共演だな。

　このリストのクールなところはコンボのみではなく、サイドのルックスからも感じ取れる。デッキ内に4マナ以下のカードはコピー系のみ、だったら何の問題もなく《巨智、ケルーガ》を相棒指定できる。通常のゲームプラン、コンボルートには無関係なカードだが、それが全く決まらない状況下に陥ったならこのカバの力を借りてアドバンテージを獲得しつつ、恐竜や鯨と殴り勝つというプランに切り替えるべし。また対戦相手のデッキによって除去や打ち消しを水増ししたい場合は《粉骨 // 砕身》や《翦草 // 除根》のような分割カードをサイドイン。これは賢いね。モードそれぞれは2，3マナだったりするが、分割カードは唱えられていない時には両方のマナ総量を合計した数字がそのカードのマナ総量となるので、発見4がこれらで止まってしまうことはないのだ。ルールを用いたクールな解決策、イカスぜ。

　そしてサイド後のシークレットテクニック、それはもう一つのコンボ……《マグマ・オパス》×《奔流の機械巨人》！オパス自身の能力で手札から捨てて墓地に置き、それを機械巨人の能力で対象にして唱える。オパスの宝物が後押しして、本来唱えられないようなターンにこの超強力インスタントが叩き込まれる！一時期パイオニアでも大流行を巻き起こしたコンボが、新たなブームのサイドボードに潜んでいる……新旧主人公の共演って感じでクールじゃないか。

　この《クイントリウス・カンド》を用いた新たなコンボデッキ、SNS上では「象さんを増産コンボ」「エレファントマシマシ」などのユーモアあふれるデッキ名で呼ばれているのもクールだ。最近は個性的なデッキ名が減少傾向にあるので、このコンボに限らずに各々デッキの動きがイメージできる理にかなった名前をデッキにつけてあげて欲しいところだ。

　それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Let’s rock with Elephants!!