READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ドメインZoo……なのか?豆の木とデーモンを添えて(モダン)

岩SHOW

 豆の木の躍進は続く。《豆の木をのぼれ》というエンチャント、これを使ったデッキはスタンダードに留まらず、モダンやレガシーでも量産され、秋の豆祭りに湧く9月となった。にょきにょきと生える豆の木は、5マナ以上のマナ総量持つ高コストでありつつ、コスト軽減や代替コストで支払って唱えられるカードと好相性。なのでスタンダードよりもモダンやレガシーなどのフォーマットの方が好都合なフィールドであるため、新たな刺激に飢えているプレイヤーらによってデッキが量産されるに至った。彼ら彼女らは待っていたのだ、こんなカードが来ることを。無茶をすればするほどカードが引ける、背中を押してくれる1枚を。

 コスト軽減呪文の代表格は《力線の束縛》。大した下準備をせずとも1マナまでコストが軽減できる6マナの追放除去。モダンなどであれば《樹木茂る山麓》のようなフェッチランドから、《ゼイゴスのトライオーム》などの複数のタイプを持った土地をサーチしてくることで、いとも簡単に低コストで唱えられるようになる。除去しつつドローする、単純なこの行いがどれほど強力なのかはマジックプレイヤーなら誰もが知るところ。同様に《激情》や《孤独》などの代替コストを持ったカードもまた豆の木との組み合わせが美しい。手札が1枚を追放することでマナを払わずに唱える。手札の枚数では損をしつつも、それでも強いからこそ使われているこれらのカード。豆の木ドローで損すらしなくなった暁には……。

 これらの“豆の木フレンズ”を搭載したデッキの研究は短期間のうちに進み、各種の偉業とも呼べるリストが日々その姿を披露している。今回紹介するリストも、一つの到達点に行きついた形だ。「やっべぇ~」そんな感想しか出てこない、モダンのデッキを照覧あれ!

Lim Jinyi - 「ドメインZoo(?)」
RCQ @ Utopia Games (Singapore) 準優勝 / モダン (2023年9月17日)[MO] [ARENA]
4 《樹木茂る山麓
4 《吹きさらしの荒野
2 《沸騰する小湖
1 《ゼイゴスのトライオーム
1 《サヴァイのトライオーム
1 《蒸気孔
1 《血の墓所
1 《踏み鳴らされる地
1 《寺院の庭
1 《草むした墓
1 《聖なる鋳造所
1 《繁殖池
1 《
-土地(20)-

4 《縄張り持ちのカヴー
2 《ナクタムンの侍臣、サムト
2 《カマキリの乗り手
2 《探索する獣
4 《激情
4 《魂剥ぎ
4 《縞カワヘビ
2 《オリファント
4 《ドラコの末裔
-クリーチャー(28)-
4 《稲妻
4 《力線の束縛
4 《豆の木をのぼれ
-呪文(12)-
3 《忍耐
2 《耐え抜くもの、母聖樹
2 《活性の力
2 《羅利骨灰
2 《残忍な切断
4 《頑固な否認
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 モダンで《力線の束縛》を用いるデッキの一つ、「ドメイン(版図)Zoo」。Zooとは序盤からクリーチャーを展開して攻撃するアグロデッキとイメージしてもらえれば良い。力線の除去によるバックアップを受け、版図能力を持ったクリーチャーで攻める。《縄張り持ちのカヴー》は2マナ5/5、《ドラコの末裔》は2マナ4/4飛行!驚異的なスペックの持ち主を展開し、それらでの攻撃を邪魔するものを排除する。シンプルな戦略が魅力的すぎるアグロの名デッキだ。

 このデッキの他のクリーチャーらはその多くが速攻を備えている。《カマキリの乗り手》や《探索する獣》など、速攻だけでなくブロックされにくくなる回避能力を備えており、ダメージを叩き込む効率には優れている。それら速攻持ちを展開することで《ナクタムンの侍臣、サムト》でのドローも見込める。豆の木だけじゃ物足りない、アグロの弱点である手札切れを兎に角避けるという強い意志を感じるぞ。これらの連中は警戒も持つため攻防一体だ。力線と《激情》による除去だけでなく攻撃しつつもブロック役を残す戦場を構築し、殴り合いを制するのだ。

 ……と、ここまでだと豆の木よりも《野生のナカティル》のような低コストのクリーチャーを採用した方がデッキとしてまとまりそうに感じる。そんな考えをぶち壊すのがこの1枚……《魂剥ぎ》ッッ!マニア達が愛する激ヤバクリーチャー、地上最強の生物となるポテンシャルを秘めたデーモンだ。《魂剥ぎ》は探査能力を持ち、墓地を追放することでコストを軽減可能だ。黒マナ2つの4/4、コストパフォーマンスに優れたスペックではあるが、単にそんなことで地上最強は名乗れない。《魂剥ぎ》はその探査コストのために追放したクリーチャーらが持つキーワード能力を自身のものにする。このキーワードとは最も基本的なもの……速攻やトランプル、飛行などの“常盤木”と呼ばれほとんどのセットで見ることができるもののことだ。

 そう、先ほど紹介したクリーチャーらは速攻と共に多種多様な戦闘を有利にする能力を持っている。そして豆の木の友達である《激情》、これは二段攻撃を持っている!想起能力で唱えて即座に生け贄に捧げて墓地に送り、それを追放して二段攻撃やその他無数のキーワード能力を持った《魂剥ぎ》を生み出す……ロマンが溢れて止まらないぜ。そして《魂剥ぎ》でも豆の木は誘発、1ドローが付いてくるという隙の無さ!なんでもかんでも盛り込んだ、最高に欲張りなデッキじゃないか。

 通常、《魂剥ぎ》デッキはこれのために切削などを行って墓地をモリモリと増やすカードを備えている。このリストはそうではなく、「ドメインZoo」の要素をメインとしつつも《魂剥ぎ》を運用する工夫がちりばめられているのである。先述の《激情》想起や、《縄張り持ちのカヴー》の手札入れ替え能力などを用いて墓地の枚数を増やす。フェッチランドもこれを大いに後押ししてくれるだろう。そして《縞カワヘビ》《オリファント》らサイクリング・クリーチャー。これらを捨ててカードを引いたり山タイプの土地を持ってきたりしつつ、墓地を増やして《魂剥ぎ》を解き放つ体制へと持っていく。これらはトランプルに呪禁にと、これまた強力なキーワードを《魂剥ぎ》に付与。あとは《ドラコの末裔》による能力も合わされば……このデッキにおける《魂剥ぎ》は最大で

飛行・警戒・二段攻(先制攻撃)・速攻・接死・トランプル・絆魂

 こりゃたまらん。というわけで今回は《豆の木をのぼれ》と《魂剥ぎ》を盛り込んだ意欲的すぎるリストを紹介させていただいた。豆の木と相性の良いカード、まだまだあるのかもしれないな。君の見つけたヤバい組み合わせがあれば、是非とも教えていただきたいね!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索