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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ある1枚のストラテジー:エルフの文書管理人(スタンダード)

岩SHOW

 あなたはデッキを構築する時、カードからはじめる?あるいはコンセプトから?デッキの組み方は人それぞれ。今回は1枚のカードを分析し、どのようなデッキで活躍するか?考えていくことにしよう。1枚のカードから戦いは始まる!今回のテーマは……。

 最新セット『エルドレインの森』より《エルフの文書管理人》!新レアカードについて考察を深めよう。まずはカード情報すべてを再確認。

マナコスト … {1}{G}
カードタイプ … クリーチャー
サブタイプ … エルフ・工匠
パワー/タフネス … 0/1

 マナ総量は2と非常に軽く、要求する色マナも1つであるため2ターン目に出しやすい。しかしパワー0でタフネス1と、戦力としては無に等しい。タイプはエルフを持つため、各種エルフとの部族シナジー(相互作用)が見込める。では続いてテキスト欄。

1つ以上のアーティファクトがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、エルフの文書管理人の上に+1/+1カウンター2個を置く。この能力は、毎ターン1回しか誘発しない。

1つ以上のエンチャントがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、カードを1枚引く。この能力は、毎ターン1回しか誘発しない。

 アーティファクトとエンチャント、“置物”と形容されるパーマネントタイプ2種とシナジーを形成する能力の持ち主だ。2種類の誘発型能力は最近の傾向に則って1ターンに1回だけしか誘発しない制限付きだが、どちらも非常に強力。

 アーティファクトが戦場に出れば0/1から2/3に。1回の誘発で2マナに十分見合うサイズになり、もう一度誘発させられれば4/5と4マナクラスのスペックに!2ターン目に文書管理人を展開出来れば、4ターン目にパワー4で攻撃が可能であり、これはタフネス1という脆すぎる状態で1ターンを耐えるというリスクに見合う文句のない打点。

 同様にエンチャントが戦場に出ればドロー、これは1回でも誘発させられればそれだけでもう強い。1体のクリーチャーでカードを1枚引けば、除去されたとしても1:2交換で得している。2回以上誘発させられた暁にはお祭りである。1ターンに1回という制限の元、最大限のパフォーマンスを詰め込んだおもちゃ箱的な1枚に仕上がっている。

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 この文書管理人には最近のカードに見られがちなもう一つの制限はかけられていない。「トークンでない」の一文は書かれていないのだ。なので、アーティファクトの方は宝物や食物、エンチャントの方は『エルドレインの森』の新メカニズムである各種役割、これらのトークンを生成することで誘発させられる。特定のパーマネントタイプとシナジーを形成するカードはこのトークンが条件を満たせられるかどうかが最重要と言っても良い。トークンもOKということは《エルフの文書管理人》を用いたデッキを構築するハードルはかなり低いものとなっている。

 カード1枚で文書管理人の能力を複数回誘発させられるものがあれば、それと組み合わせない手はない。同セットで見れば英雄譚との相性は抜群も抜群、大抜群。まず英雄譚自身がエンチャントなので1ドロー、この時点で使い捨てである英雄譚の元が取れるというもの。《甘歯村へようこそ》は食物を生成するので誘発は2回、これ1枚で1ドローとカウンター2個を得て、そして人間1体と食物の数+1のカウンターも戦場に加わるので、かなり硬い盤面を築き上げられる。緑単色で成立する組み合わせなのも嬉しい。

 そして《魔女の虚栄》。これもⅡ能力で食物を生成するので、カウンター2個を増やし、そしてⅢ章の能力で役割も生成して計2ドローをもたらす大盤振る舞い。クリーチャー除去に成功すれば、これと管理人の2枚で莫大なアドバンテージを稼ぎ出すことが可能となる。役割もひねくれ者と強いものなので隙が無く、この2枚の組み合わせはシナジーの域を超えてコンボと表現しても決して大袈裟とは言われない。

サンプル①:緑単アーティファクト
MTGA - BrewLab - 「緑単アーティファクト」
スタンダード (2023年9月4日)[MO] [ARENA]
13 《
4 《道路脇の聖遺
4 《ミレックス
1 《耐え抜くもの、母聖樹
-土地(22)-

4 《鉄の弟子
4 《ジンジャーブルート
4 《生歯の子ワーム
4 《継ぎ接ぎ自動機械
4 《堅いクッキー
4 《エルフの文書管理人
3 《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿
-クリーチャー(27)-
3 《無鉄砲
4 《甘歯村へようこそ
2 《打ち砕かれた尖塔、オゾリス
2 《アガサの魂の大釜
-呪文(11)-

-サイドボード(0)-
X より引用)

 

 以上を踏まえて、《エルフの文書管理人》のポテンシャルを最大限に発揮できそうなスタンダードのサンプルリストを紹介していこう。MTGA - BrewLab氏のアイディアで、緑単色のアーティファクトを中心としたアグロデッキだ。緑には文書管理人と似た1マナクリーチャーで《生歯の子ワーム》がいる。アーティファクトが戦場に出ると能力誘発、毎ターン1回目だけカウンターで強化され、そうでなくてもライフ1点の回復をもたらしてくれる。こちらは1/1と最低限の戦闘力は備えており、一度でも誘発すれば2/2で1マナとしては十分なスペックに。また接死も得るため、見た目以上に戦闘面では役立ってくれる隠れた名カードだ。

 これと文書管理人、そしてアーティファクト呪文を唱えるとサイズアップする《継ぎ接ぎ自動機械》らと軽量アーティファクトを展開して押していく、ザクザクと攻めていく感覚が楽しいアグレッション高めの構成だ。

 アーティファクト主体ながらエンチャントは《無鉄砲》《甘歯村へようこそ》が採用されており、文書管理人でのドローも期待できる。そして非クリーチャーのアーティファクト枠に採用されている《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》。これが理にかなった素晴らしいチョイス。文書管理人と子ワームの成長率を高めるのはもちろんのこと、これ自身で両者の能力を誘発させられるのが綺麗に噛み合っている。《鉄の弟子》《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿》《甘歯村へようこそ》とカウンターに関するカードも豊富なので、デッキの大半のカードとシナジーを形成する構築は見事の一言。

 このデッキのフィニッシュはこれまた鮮やか。《アガサの魂の大釜》を用いるもので、カウンターを撒けるこれもまたオゾリスと好相性。だがそれだけにとどまらず、《ジンジャーブルート》との組み合わせは突然の勝利をもたらしてくれる。

 自身の能力で生け贄に捧げて墓地に置けるブルート。これを大釜で追放すると、すべての+1/+1カウンター持ちクリーチャーがブルートの起動型能力「①:このターン、(カード名)は、速攻を持つクリーチャーにしかブロックされない。」の能力を得る。速攻持ちが複数体並ぶデッキなど限られているので、実質ブロック不可になった強化されしエルフ&ワーム軍団で卒倒し、ジ・エンド。この暴力的でありながら無駄がなくスマートな理想のフィニッシュ、一度は決めてみたい。

サンプル②:ゴルガリ・エンチャント
Jaffer - 「ゴルガリ・エンチャント」
スタンダード (2023年9月6日)[MO] [ARENA]
4 《ラノワールの荒原
4 《死天狗茸の林間地
4 《眠らずの小屋
2 《ジアトラの試練場
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《ミレックス
6 《
2 《
-土地(25)-

4 《エルフの文書管理人
2 《無常の神
3 《グリッサ・サンスレイヤー
3 《黙示録、シェオルドレッド
-クリーチャー(12)-
3 《切り崩し
3 《喉首狙い
3 《ローアンの陰惨な調査
2 《おかわり
4 《魔女の虚栄
3 《甘歯村へようこそ
3 《珠眼の寺守り
2 《執念の徳目
-呪文(23)-

-サイドボード(0)-
X より引用)

 

回転

 もう一つ、Jaffer氏の提案するサンプルリストを紹介させていただこう。こちらは誌面の関係で省略した形になるが、先のリストと異なりエンチャントの方を主体としている。文書管理人のドロー能力を毎ターン誘発させ、常に満たされた手札でプレイしたいという欲求を叶える形だ。スタンダードにおける黒と緑の定番カードを備えつつ、エンチャントのチョイスやそれらと組み合わせる協約能力を持った呪文など、一般的なミッドレンジにエンチャント要素を強めた構築にすることで、新しいゲーム体験を提供してくれることが期待できるリストだ。

 1枚のカードをみつめ、理解し、対話し続けることで至る境地がある。思いを込めた1枚から始めるデッキ構築、あなたもトライしてみてはいかがでしょう。それでは、また解析すべき1枚と遭遇した時にお会いしましょう。

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