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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:イニシアチブ・ストンピィ(ヴィンテージ)
今週もやってきました、クールを語る金曜日。今最も旬でクールな話題と言えば……「アジア・エターナル・ウィークエンド2022」が開催されたこともそのひとつに挙げたいね。
マジックの最古から最新まで、あらゆるセットのカードが集結するエターナル・フォーマット。日本を含むアジアでも長きにわたって人気の高い、静かに熱いフォーマットだ。
プレイヤーズコンベンションの会場内ではパイオニアで熱戦が繰り広げられる中、レガシーとヴィンテージでもアジア王者を決める戦いが進行していたのだ。
レガシーは日本国内でも定期的に規模の大きいトーナメントが開催されているが、ヴィンテージはその機会もこのウィークエンドくらいになってくる。その貴重なトーナメントが実に久しぶりに開催! お待たせしました、クールな週末を楽しんで!と、ようやくヴィンテージ愛好家の同窓会的な遊び場が帰ってきた。
そこに集ったのは103名。アジア王者の名誉ももちろんのこと……今回は賞品も熱い。トップ8には今年のエターナル・ウィークエンドのために用意された世界に24枚のプロモ版《噴出》が! そして優勝者には《Bazaar of Baghdad》の新規イラストの原画を用いたトロフィー! どちらも一生モノの最高のプライズ、この上ないスペシャルなトーナメント!クールすぎるじゃないか。
このトーナメントの準優勝デッキがこれまたクールすぎて、12月の気温が逆に寒く感じなくなったよ。それじゃあリストを……
4 《平地》 2 《カラカス》 2 《魂の洞窟》 4 《古えの墳墓》 1 《裏切り者の都》 4 《不毛の大地》 1 《露天鉱床》 4 《ウルザの物語》 -土地(22)- 4 《迷宮の霊魂》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《エメリアのアルコン》 4 《白羽山の冒険者》 2 《選定された平和の番人》 2 《第三の道のロラン》 4 《練達の地下探検家》 1 《宮殿の看守》 4 《孤独》 -クリーチャー(29)- |
1 《Mox Pearl》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 1 《金属モックス》 1 《モックス・ダイアモンド》 1 《魔力の墓所》 1 《大祖始の遺産》 1 《虚空の杯》 1 《大いなる創造者、カーン》 -呪文(9)- |
2 《戦争の報い、禍汰奇》 1 《宮殿の看守》 1 《トーモッドの墓所》 2 《剣を鍬に》 4 《安らかなる眠り》 2 《無のロッド》 1 《石の脳》 2 《精神壊しの罠》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
「2022 Asia Vintage Championship」準優勝者、Chris Schiber選手の「イニシアチブ・ストンピィ」!
イニシアチブとは『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』にて登場した能力で、2022年に生まれたばかりのまだまだ真新しいもの。マジック30年、古き時代のパワーカードもひしめくヴィンテージでこの最新能力が輝くとは思わなかったなぁ。
最近はレガシーでもこのクールな能力を使用したデッキがめきめきと頭角を現している。イニシアチブはプレイヤーが得る概念であり、これを得たプレイヤーは「地下街」というこれでしか探索できない特殊なダンジョンを探索する。さらにイニシアチブを保持しているかぎり、毎アップキープごとに地下街を探索し続けられる。
このダンジョンにはクリーチャーに+1/+1カウンターを2個置いたり、プレイヤーのライフを5点失わせたりといったアグレッシブなデッキにとって嬉しい効果が含まれている。
イニシアチブはまずはカードの効果でどちらかのプレイヤーが得て、その後はそれを持つプレイヤーをクリーチャーで攻撃して戦闘ダメージを与えることで奪うことが可能だ。アドバンテージを巡って戦闘するという点では、統治者という能力にも似ているね。
このイニシアチブという能力はどのように機能するか、しばらくは様子見されていたが……この11月ごろからレガシーにて積極的にデッキに取り込まれるようになった。最初は赤いデッキが目立っていたが、徐々に白が隆盛。レガシーの旬なデッキとも呼べるほどで勢力図を拡げたところで、ヴィンテージにもその手を伸ばしてきたのがこのクールなリストというわけだ。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:冒険者と地下探検!
白いイニシアチブ要素は《白羽山の冒険者》と《練達の地下探検家》。
白羽山はイニシアチブを持っているかぎり自身のすべてのクリーチャーが対戦相手のアップキープにアンタップ、実質的に警戒を得る能力で隙なく攻撃して殴り合いを制するデザインになっている。アンタップということは《第三の道のロラン》の能力を2倍使えるということでもあるね。
そして地下探検隊は懐かしのパーティー参照能力のごとく、特定のタイプを持ったクリーチャーの攻撃時にそれにプロテクション(クリーチャー)を与えることでブロック不可の攻撃を敢行。白羽山もクレリックなのがクールに噛み合っているな。
さらにそれらは探検という能力も経て、サイズアップか土地を提供してくれる。ヴィンテージであればここから《露天鉱床》が飛び出すという度肝を抜くスーパープレイも炸裂しうるね。
これらのクリーチャーを主役とし、その他コストパフォーマンスに優れたクリーチャーを採用。それらを各種アーティファクトや《古えの墳墓》《裏切り者の都》から得られるマナで高速展開して早いターンから文字通りイニシアチブ(主導権)を握ってしまうという戦術を用いる。
ストンピィとはこの手のデッキの総称で、エターナルでも歴史のあるアーキタイプだが……ヴィンテージで有色のクリーチャーを用いたこの手のデッキがトップ戦線に躍り出るというのも久しぶりの感じがするなぁ。つまりはそれだけイニシアチブという能力が強いってことかな。
決勝ラウンドを観戦していたライターの方も「いや~イニシアチブめっちゃ強いね!」と感嘆の声を控室で漏らしていたので、このリスト公開となる前からこのデッキは心底気になっていたものだったのだ。
クールポイントその2:熊じゃなくてもヘイトベア
ヴィンテージで白いビートダウンを組むのであれば、ただ単に打点を追求すれば良いというものではない。クリーチャーを並べてターンを返せば、そのまま瞬殺コンボを決められた……そんなヴィンテージの日常風景に抗うには、ヘイトベアの助けが必須だ。
「ヘイトベア」とは、対戦相手の自由なゲーム展開を阻害する能力を持ったクリーチャーの総称。2マナ2/2のことは《灰色熊》になぞらえてあらゆるコミュニティで熊と呼ばれている。対戦相手のヘイトを買う熊ってことだが……今では熊のスペックに当てはまらないものも含めてこう呼ばれている。
《スレイベンの守護者、サリア》《選定された平和の番人》は呪文に追加コストを強いる。
Moxから先出しすれば相手のMoxや《Black Lotus》からのロケットスタートを大きく減速できる。
《エメリアのアルコン》もそういったマナ加速からのスムーズなアクションに待ったをかける。
こちらはイニシアチブでダンジョン探索すれば、1ターンに1度の呪文+αくらいの展開はできるので、展開力で差をつけられるというものだ。呪文の連打が前提のストームデッキを完全に沈黙させられるのも素晴らしい。
そして《迷宮の霊魂》、これはご存知《Ancestral Recall》へのアンサーだ。
1ターンに1枚のドロー、正々堂々やろうぜと言いつつ……こちらは対戦相手のターンに《第三の道のロラン》を起動して「自分だけイタダキますね」とクールにドローしてやると清々しいまでにいやらしい。
これらのベアとともに《宮殿の看守》《孤独》でクリーチャー除去、ロランと《大いなる創造者、カーン》でアーティファクトをシャットアウト、そしてこれらのパーマネントへの対抗手段をカーンから持ってきた《石の脳》でぶっこ抜く……いやぁ、これはプレイしたくなるワクワク感!
クールなまとめ
ヴィンテージの大型イベントが開催できるまでに戻ってきたテーブルトップの日常。これで終わりにならずに、このまま次のイベントへ、そして未来へ……僕はこれからも、ひとつひとつのイベントを大事にしていこうと思うよ。とりあえずテーブルトップが大好きな僕らは、ひとつのイニシアチブを握ったね。
それじゃ今週はここまで。Stay cool! Hold initiative!!
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