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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

マルドゥ・サクリファイス:一緒にサクれば怖くない(ヒストリック)

岩SHOW

 マジックには「こっちもやったんだから、そっちもお願いしますよ~」とプレイヤー間に同様の行動を要求するカードがある。これがポジティブな行いもあれば、ネガティブな処理を強要するものもある。

 前者は良いとして、後者はどのようなものなのか。自分だけが何かを損するなんてのはバカげている。でも対戦相手にだけそれを押し付けるのも理不尽だ。だったらお互いが何かを失ったり大きな被害を受けるのであれば……それこそが平等だね★とでも言わんばかりのカードは、古い時代より今日まで作られ続けている。

 果たしてそれらが真の平等と呼べるかは……怪しい。こちらはそういったカードにより失われるものを想定し、それをコントロールできるデッキで臨んでいるが、対戦相手はそうではないからだ。

 どういうことかというと……『ニューカペナの街角』より来た新カード《致命的遺恨》はその典型で分かりやすい。

 これを唱える際に、自身は1マナのちっこくてかわいらしいクリーチャーを生け贄に捧げる。これにより対戦相手によりマナ総量が大きく主戦力であるクリーチャーを生け贄に捧げさせることができれば、それは平等ではなくこちらの利となるね。

 このソーサリーはカードを1枚引けるのもあって、手札を減らさずにこちらのパーマネントと相手のパーマネントを等価交換することができる、なかなかに強いカードだったりする。クリーチャーを餌にするのであれば、死亡した時になんらかの能力を誘発するカードと併用することで美味しい思いを味わいたいところ。

 そんなわけで今回はこの《致命的遺恨》と、もうひとつニューカペナのあの1枚をフィーチャーしたデッキを見つけたのでご紹介しよう!

Altheriax - 「マルドゥ・サクリファイス」
MTGアリーナ ヒストリック(BO3)イベント 5勝0敗 / ヒストリック (2022年5月8日)[MO] [ARENA]
4 《血の墓所
4 《荒廃踏みの小道
4 《神無き祭殿
3 《秘密の中庭
4 《聖なる鋳造所
3 《感動的な眺望所
-土地(22)-

4 《宿命の旅人
4 《よろめく怪異
4 《不運な目撃者
4 《呪い縛りの魔女
3 《スランの医師、ヨーグモス
-クリーチャー(19)-
4 《命取りの論争
4 《致命的遺恨
3 《忘却の儀式
4 《永久の優雅
4 《敵対するもの、オブ・ニクシリス
-呪文(19)-
4 《致命的な一押し
4 《思考囲い
3 《魂標ランタン
1 《忘却の儀式
2 《食肉鉤虐殺事件
1 《未認可霊柩車
-サイドボード(15)-
MTG Arena Zone より引用)

 

 ヒストリックの「マルドゥ(黒赤白)サクリファイス」だ。

 サクリファイスとは生け贄のことで、クリーチャーをそうすることで勝利に向かうデッキをこの名前でジャンル分けするのがマジック界の習慣となっている。

 サクリファイス・デッキは生け贄に捧げられるクリーチャー、いずれも死亡すると何か誘発するようなマナ総量の低いカードと、それらを生け贄に捧げることで何かのメリットを得られるカード、生け贄をくべる台座という意味合いでの「サクリ台」との組み合わせでデッキが構成されている。それぞれのパーツを確認してデッキをひも解いていこう。

 まずは生け贄になる小粒から。死亡時誘発能力オールスターを紹介しよう。

 トークンを生成しサクリ台への安定供給を約束する《宿命の旅人》、宝物によるマナ加速かマイナス修整で相手の小粒を除去する《よろめく怪異》は生け贄のド定番だな。

 ヒストリックならではの《呪い縛りの魔女》はさらなる生け贄用クリーチャーや《魔女のかまど》などのサクリ台を手に入れたりとデッキにマッチした1枚だ。

 これらに加えてニューカペナからやってきた新入り、《不運な目撃者》がデッキの引き出しを増やす。

 これは死亡時にライブラリーの一番上から2枚追放して、どちらか1枚を期限付きでプレイできるようにするという、赤の得意とする衝動的ドローというものだ。本来手数を失う生け贄という行動が、むしろより強いカードに繋がる可能性がある。派手さはないが、この地味シブな役目の担い手によりデッキがピシッと締まる。この目撃者は今後、色々なフォーマットのサクリファイスデッキの定番の1枚になるかもね。

 ではサクリ台のパートだ。まずは定番中の定番《命取りの論争》。ドローとマナ加速を同時に兼ねる、使い勝手が非常に良い1枚。

 そして《致命的遺恨》と《忘却の儀式》とがパーマネント対策の枠を担う。

 こちらは失うものはあってないようなもの、相手には手痛い損害。これを繰り返せば戦力差が自ずと開くという寸法だ。

 そしてサクリ台と呼ぶならやはり継続して複数回使えるものではないと、ということで《スランの医師、ヨーグモス》。

 対戦相手のクリーチャーを弱らせながらカードを引く、グズグズの泥沼へと引きずり込む恐怖の大王! 喜んで生け贄役をどんどん投げ込んでいくってなもんだ。

 そしてヨーグモスと肩を並べるサクリファイス界の新定番、それこそが《敵対するもの、オブ・ニクシリス》!

 ニクシリスは単騎ではマナ総量相応の、3マナのプレインズウォーカーだなという性能ではあるのだが、唱える際にクリーチャーを生け贄に捧げることでそのコピーも登場。1ターンに2回行動が取れるようになる、ってなニュアンスかな。

 これにより[-2]のデビル生成と[+1]の手札捨て or 2点ダメージ&デビルがいれば2点回復という動きを交互に行うような理想的なムーブが可能となる。

 このデッキの生け贄役はいずれもパワー1なので、コピーは忠誠度1からスタート。そういう意味ではスタンダードなどのニクシリスよりもコピーの圧力は控えめではあるのだが、何度も何度もカードを捨てろと迫り続けるアクションはなんだかんだ鬱陶しいものだ。《宿命の旅人》なら生け贄に捧げつつブロック役を用意できるので安心感◎。

 これらの供物とサクリ台の組み合わせをさらに後押しするのが、このデッキに白が入っている最大の理由である《永久の優雅》。

 1マナのクリーチャーを毎ターン墓地から戦場に戻せるので、これで前述の面々を心置きなくサクっては再利用して満足感を得られる。

 カード1枚それぞれの威力は低くとも、束ねることで強力無比なデッキになる。デッキ哲学の象徴のごときエンチャント、優雅とは一見無縁そうなヨーグモスやニクシリスも……まったりほんわかとしながら、蘇ってきた生け贄役に微笑むのだろうなぁ。

 こっちはこれを生け贄にするから、君も頼むよという平等に見せかけた不平等を強いる《致命的遺恨》。このカードを備えたサクリファイス系のデッキは今後とも勢力を伸ばしそうだ。

 こういう相手には《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》! 生け贄を禁じてしまうことでデッキシステムを機能不全にするべし!

 そんなわけでヒストリックではただでさえ頼りになる存在だったヤシャーン、今後も手放せないカードになる予感。サクリファイス側はしっかりと対策手段を用意して臨むべし!

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