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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
グルール・アグロの2つの型:そもそもグルールって?(スタンダード)
マジック初心者のために岩SHOWおじさんが優しく教えるシリーズ~ドンドンパフパフ~。
マジック界隈では当たり前のように使われている専門用語はそれこそ山のようにあるが、マジック歴が浅いとなんのことかさっぱりだろうからね。このコラムでなるべく各用語について説明はしようと意識はしているのだが、誌面の都合上用語説明だけで埋まってしまいそうな場合には割愛させてもらっている。申し訳ないッ!
だからこうして不定期で用語解説をさせてもらっているってわけで……今回はおそらくはこのコラムで最も扱われるものを取り上げる。ズバリ、デッキの色を意味するフレーズたちだ。
マジックのデッキ名の表記には大きく分けて2種類ある。1つは「ココア・ペブルス」のように使用者がなんらかの意図で付けた、文字通りのデッキ名。そしてもう1つはアーキタイプ名である。
アーキタイプとは大まかなジャンル分けのことで、クリーチャーで攻める短期戦狙いのデッキは「アグロ」、それらを捌く受け身な長期戦デッキは「コントロール」、その中間的なデッキは「ミッドレンジ」、といった具合に分類されている。
そしてこのアーキタイプ表記は、そのデッキの方向性の前にデッキの色が示されるのが慣例だ。「白単アグロ」みたいな感じにね。
で、2色以上のデッキに関しては「青黒コントロール」のように表記することもあるが、それと同じくらいにカタカナの固有名詞で表記されることがある。たとえば2色デッキの場合、ラヴニカという次元における2色の組み合わせ10種類に分かれたギルドの名前を用いるものだ。上記の青黒の場合、「ディミーア・コントロール」という具合にね。
では以下にギルドになぞらえた各色の組み合わせを記しておこう。
- 白青:アゾリウス
- 青黒:ディミーア
- 黒赤:ラクドス
- 赤緑:グルール
- 緑白:セレズニア
- 白赤:ボロス
- 青赤:イゼット
- 白黒:オルゾフ
- 黒緑:ゴルガリ
- 青緑:シミック
この他に3色の組み合わせも固有名詞で示されるのだが、あまりに詰め込み過ぎると逆に覚えられないと思うのでこの辺にしておこう。
今日紹介するデッキは上記の2色デッキの中から取り上げよう。さあ、改めて今回のタイトルを見てみよう。もう、何色のデッキかわかるよね。グルール、赤緑だ。そしてジャンルはアグロ、攻めて攻めて攻めまくるのが信条な一本気あふれるアーキタイプである。
フォーマットはスタンダードから。この環境において「グルール・アグロ」と表現しても、実はデッキの詳細は伝わらない。なぜなら同じカラーリング、同じ戦術でありながら、全く異なるカードを採用したデッキが共存しているからだ。
7 《森》 6 《山》 4 《落石の谷間》 4 《岩山被りの小道》 1 《ハイドラの巣》 1 《バグベアの居住地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(24)- 4 《隆盛な群れ率い》 4 《ケッシグの自然主義者》 3 《群れ率いの人狼》 4 《無謀な嵐探し》 3 《不吉な首領、トヴォラー》 3 《結ばれた者、ハラナとアレイナ》 2 《不機嫌な一匹狼》 2 《移り気な放火魔》 1 《アヴァブルックの世話人》 1 《トヴォラーの猟匠》 -クリーチャー(27)- |
4 《火遊び》 4 《レンジャー・クラス》 1 《群れの希望、アーリン》 -呪文(9)- |
4 《蛇皮のヴェール》 3 《アーニ、トロールを制す》 3 《バーニング・ハンズ》 3 《自然への回帰》 2 《轟く叱責》 -サイドボード(15)- |
まずは前環境におけるグルールの基本形とも言える狼男型だ。イニストラードの主要部族の1つである狼男、そしてそれらと相性の良い狼をフィーチャーした形だ。
これらのクリーチャーで固めることで《ウルヴェンワルドの王》で全体強化し、《不吉な首領、トヴォラー》がいれば攻撃が通るたびにカードが引ける。
3体以上狼男&狼が並ぶことでトヴォラー含むすべての狼男が変身するので、《無謀な嵐探し》や《アヴァブルックの世話人》でハチャメチャな盤面を形成可能だ。
狼男に寄せているということで、なかなかに他のタイプのクリーチャーを採用しにくいデッキである。そして狼男はどの次元にもいるというものではないので……新入りはそう簡単には迎えられない。
このリストも『神河:輝ける世界』の新カードは《耐え抜くもの、母聖樹》1枚のみに留まっている。
これもたかが1枚だがされど1枚、無駄なドローになりにくい形でメインデッキからアーティファクトおよびエンチャントへの対策を仕込めるというのは無視出来ない補強だ。《婚礼の発表》《エシカの戦車》と、現行スタンダードではその対象に困るゲームの方が少ないかもね。
新規カードを取り入れているわけではないが、神河環境になっても狼男型の「グルール・アグロ」はいまだ健在という事実は、デッキを組んだプレイヤにとっては安心できることに違いない。
その事実とともに、神河の影響をバリバリに受けた新型がいるというのも把握しておかねばならない。改善型グルールの登場だ!
4 《森》 4 《山》 4 《落石の谷間》 4 《岩山被りの小道》 3 《ハイドラの巣》 1 《バグベアの居住地》 2 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 -土地(23)- 2 《群れのシャンブラー》 4 《蜂起軍の無法者》 4 《オラン=リーフの軟泥》 2 《髑髏砕きの突撃者》 4 《轟く雷獣》 2 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(18)- |
4 《熊野と渇苛斬の対峙》 3 《神の火炎》 3 《レンジャー・クラス》 3 《活力の温泉》 2 《髑髏砕きの一撃》 4 《エシカの戦車》 -呪文(19)- |
2 《辺境地の罠外し》 2 《タミヨウの保管》 2 《バーニング・ハンズ》 2 《燃えがら地獄》 2 《勢団の銀行破り》 1 《神の火炎》 2 《勝負服纏い、チャンドラ》 2 《群れの希望、アーリン》 -サイドボード(15)- |
日本選手権2021 FINALでトップ8入賞により注目を浴びた、新概念である「改善」をフィーチャーした形だ。
「改善されている」とは大雑把に言うとクリーチャーがオーラや装備、カウンターなどによって恒常的に強化されている状態のことであり、『神河:輝ける世界』にはこれにボーナスをもたらすカードが多数ある。
グルール・カラーにおける改善は、+1/+1カウンターを用いるものが主体となっている。神河を抜きにしても赤や緑の得意ジャンルだが、これがより強化されカウンターをばら撒いてクリーチャーを強化しながら、さらに打点を引き上げるデッキが成立するようになった。
改善を促すカードは《レンジャー・クラス》に《オラン=リーフの軟泥》、そして新カードからは《熊野と渇苛斬の対峙》と《活力の温泉》。
さまざまなアグロに引っ張りだこな熊野はそれ自身が優秀なダメージ源であり、温泉の方は改善シナジーによりクリーチャーに速攻を付与する強烈な加速役も兼ねる形だ。
そして同じくクリーチャーを改善させつつシナジーを発揮するのがデッキの主役、《轟く雷獣》!
改善されているクリーチャーの数だけダメージを与え、一気に相手のライフを削り切る。この飛び道具、瞬間的爆発力は狼男型にはないこのリスト独自の魅力となっている。《蜂起軍の無法者》も絡めば、序盤からサイズで圧倒していけるはずだ。
《神の火炎》も対アグロ同型においてはこの上ない攻防一体のナイス除去である。
従来の狼男型と、新しい改善型。どちらが優れているかというのは難しい質問で、相手のデッキに左右される部分も大きい。どちらのグルールが今勝てるか、そして自分の肌に合っているか。そのあたりを見極めて、スタンダードにおけるグルール・ライフを楽しんでほしい。
これだけ連呼すればもう赤緑のデッキをなんて呼ぶか、覚えてもらえたよね?
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