『神河：輝ける世界』リリース直前から期待されていた１枚、《大牙勢団の総長、脂牙》。

　機体を墓地から戦場に戻す、リアニメイトの変化球的な能力を持つ。２色ではあるがたった３マナのクリーチャーで、どんな機体でもコストを踏み倒して戦場に出せるという……なかなかに大判振舞いな性能である。

　いろいろな機体との組み合わせが思いつくが……誰もが思い描いたのは《パルヘリオンⅡ》とのコンボだろう。

　５/５飛行・先制攻撃・警戒という驚異的な戦闘能力に、さらに攻撃すると４/４飛行・警戒の天使２体が攻撃している状態で戦場に出るという誘発型能力を併せ持つ。つまりはこれが攻撃すれば最大で対戦相手に13点叩き込める！ 超ド級の夢が詰まったロマンカード代表だ。

　脂牙は戦場に戻した機体に速攻を与えるので、戻した《パルヘリオンⅡ》は即出撃可能、しかもパルヘリオンの搭乗コストはちょうど脂牙できっちり満たすことが可能だ。

　ターン終了時にパルヘリオンは手札に帰還するが、13点ぶち込んで天使２体を置き土産にしてくれれば過ぎたる戦果だ。

　というわけで脂牙＆パルヘリオンのコンボを、多くのプレイヤーがあらゆるフォーマットで試してみたことだろう。今日はそんなリストのひとつ、ヒストリックのものを紹介しよう！

　これぞヒストリックの「マルドゥ・パルヘリオン」！

　脂牙の能力でパルヘリオンを緊急発進させるには、まずこの巨大な機体を墓地に送るという準備作業が必要になる。最強戦艦を墓地という名の格納庫にて待機させるため、多くのプレイヤーが思いついたのが手札から捨てるというシンプルプラン。

　このリストもそれを実行するためにヒストリックならではの１枚、《信仰無き物あさり》を用いる。

　１マナのこのソーサリーであれば脂牙が出てくる３ターン目に間に合うように、パルヘリオンを手札から捨てることが可能だ。３ターン目に13点と４/４飛行２体！

　さらに物あさりにはフラッシュバックが付いている。手札に戻ったパルヘリオンをまた捨てて、２ターン連続の脂牙コンボを決めるというオーバーキルじみた勝利を演出だ。

　《信仰無き物あさり》４枚のみに頼るわけにはいかないので、他にも手札を捨てる手段を採用するのがこの手のデッキにおいては肝となってくる。このデッキでは血・トークンをそれに用いるアプローチをとっている。《ヴォルダーレンの美食家》と《血の泉》でトークンを生成だ。

　ただ手札を捨てるだけでなくカードを引くというのが血・トークンの能力なので、これで脂牙などその時に必要なものをドローするのにも繋げられる。《血の泉》は除去や打ち消されたりと対処されてしまった脂牙を墓地から拾う手段でも兼ねている。

　これらに加えて《マグマの媒介者》《歴戦の紅蓮術士》と墓地利用デッキではお馴染みのクリーチャーを加えれば、パルヘリオンを引き込んで捨てるというミッションはそう難しいことではなくなるってわけだ。

　《信仰無き物あさり》などの手札を捨てる手段、そしてヒストリックとくれば……マッドネス！

　２枚捨てるカードのうち１枚はパルヘリオン、もう１枚は捨てた時に唱えられるマッドネス能力を持った呪文にすることで、手札の枚数を損することなくゲームを進められる。

　この環境には《猛火のルートワラ》《癇しゃく》と非常に低コストで唱えられるマッドネス呪文が揃っている。

　デッキとしてはどちらかというと、これらをマッドネスするのが本筋とも言える。手札を捨てて唱えて無駄なくスピーディーに展開し、隙あらば脂牙でパルヘリオンを出撃させる、コンボ要素を含んだビートダウンと認識しておくのが正しいかな。個人的にはそういうデッキ、大好きでね。

　手札を捨てる＝墓地が貯まる、というわけで黒赤という２色を採用したデッキにおける親玉《死の飢えのタイタン、クロクサ》もガッツリ４枚採用だ。

　これが脱出してきて殴りだせばそれだけで勝てる、神河参入後もこのタイタンの力は衰えることを知らない。パルヘリオンを警戒して脂牙に除去を使い切ると、死の国からヤツが這い出てくるぞ！

　しかしここにきて《パルヘリオンⅡ》がバンバンと空を飛び交うゲームを見ることになるとは……神河という次元、恐るべしだな。スチームパンクな世界がもたらした技術は他にもまだまだ予期せぬ化学反応をもたらしているはずだ。

　ヒストリックが採用される「神河チャンピオンシップ」で、君はとんでもない未来のゲームを目撃するかもしれない！