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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

緑単アグロ:超力、招来!(スタンダード)

岩SHOW

 『イニストラード:真紅の契り』環境を振り返ってみよう。

 当時のスタンダードでは大きく分けて3つのデッキが強いデッキとして君臨していた。そのうち2つは単色のアグロデッキで、白単と緑単であった。

 単色アグロの利点は、2色土地を使わないことで極力タップ状態で戦場に出る土地を避けられるのでテンポが崩れることなく展開できたり、片方の色を得られなくて機能不全に、という心配がない。そしてその色のマナを色濃く要求するカードを用いられるという点だ。

 それに加えて前環境では単色=基本土地をメインに構築できる=氷雪基本土地が並ぶ=《不詳の安息地》が運用可能、という多色に対しての大きなアドバンテージを有していた。最後の一押しをこの土地が担当するシーンをどれだけ見たことか。

 『神河:輝ける世界』を迎えるにあたって、このスタンダードの単色アグロ最大の特権は失われたわけだが……それでも単色アグロはまだまだやれそうだ。安息地を失った分、色マナ・シンボルがタップリと並んだパワーカードが追加されたからだな。

 というわけで早速、単色アグロの今を追ってみよう。

Simon Nielsen - 「緑単アグロ」
スタンダード (2022年2月19日)[MO] [ARENA]
21 《冠雪の森
3 《ハイドラの巣
1 《耐え抜くもの、母聖樹

-土地(25)-

4 《冬を彫る者
4 《群れ率いの人狼
2 《辺境地の罠外し
4 《カザンドゥのマンモス
4 《老樹林のトロール
2 《茨橋の追跡者

-クリーチャー(20)-
4 《吹雪の乱闘
1 《タミヨウの保管
1 《豊穣の碑文
3 《古霊招来
2 《勢団の銀行破り
4 《エシカの戦車

-呪文(15)-
2 《タジュールの荒廃刃
2 《ウルヴェンワルドの奇異
2 《蛇皮のヴェール
3 《絡み罠
2 《達人の咎め
1 《豊穣の碑文
2 《不自然な成長
1 《勢団の銀行破り

-サイドボード(15)-

 

 「緑単アグロ」の神河環境最初期のサンプルリストだ。

 緑単といえば《老樹林のトロール》《エシカの戦車》とパワー4以上の強力クリーチャーで圧をかけていく、環境きってのハードパンチャーだ。

 《不詳の安息地》がなくともこの色には《冬を彫る者》《吹雪の乱闘》と、《冠雪の森》を並べることで価値が高まるカードがあるので、単色のメリットは揺らいではいない。

 《冬を彫る者》によるマナ加速からの3ターン目戦車という必殺ムーブは、環境が変わっても健在だ。トロールや《カザンドゥのマンモス》《茨橋の追跡者》といったクリーチャー陣も環境が変わってもまだまだ強い。

回転

 《エシカの戦車》は自身が連れてきた猫や《老樹林のトロール》を貼った土地から生成するトロール、《レンジャー・クラス》の狼や《レンと七番》のツリーフォーク、はては《茨橋の追跡者》の手掛かりとあらゆるトークンを増やせる能力が強みである。

 この戦車により複製するトークンの新たな候補としてやってきたのが、単色デッキでしか扱えないであろう新カード《古霊招来》だ。

 刮目せよ、クアドラプル(4連)シンボル! こんなコスト、緑単でしか安定して供給できないもんである。逆に言えば単色デッキならなんてことはないただの5マナのカードだ。

 使えるデッキが限られるこのソーサリーは、4/5のスピリットを2体もたらすという、5マナというコストからは本来あり得ないようなパワフルさを誇っている。シンボルさまさまだなぁ。

 そしてこれらのトークンは到達・警戒・トランプルのいずれか1つをそれぞれに持つ。多くの場合は押していくのに有利なトランプルを選び、拮抗している盤面なら警戒も良い選択肢。対戦相手が各種ドラゴンなど飛行に長けている場合は到達という防御的なオプションも選べるのがありがたいね。

 このスピリットを《エシカの戦車》で増やそうというわけだ。4/5を量産して圧倒してやろうではないか。スピリット自身が戦車に搭乗できるサイズなので盤面を一掃された後の立て直しにももってこいだ。

 比較対象となるのは同じマナ総量の《レンと七番》。レンのトークンはサイズも5/5以上が見込めてゲーム展開次第ではかなりのサイズになる。手札を増やしたりと、継続的なアドバンテージではそちらが上回っている。《古霊招来》はサイズこそ固定だが、一気に2体というインパクトで勝負。《冥府の掌握》など単体除去1枚では捌けないという点がセールスポイントで、あとはレンにはないトランプルが小物でブロックしてしのぐデッキを否定できるのも勝っている点だな。どちらにも良さはあるので組み合わせて使うのもオツなものだろう。

 スタンダード新環境時のお約束イベントであるメタゲーム・チャレンジで7勝0敗という成績を残したこのリスト、《古霊招来》以外の新カードにも注目してみよう。

 緑系アグロのお供と言える除去耐性付与カード《蛇皮のヴェール》と同様の役割を持つ《タミヨウの保管》は、呪禁の他に破壊不能も与えられるので、《ドゥームスカール》などへの耐性がグッと増す点が素晴らしい。

 全体除去の中、巨大クリーチャーが1体無傷で残るのは恐怖以外の何物でもないね。このインスタントは地味ながらライフが回復できたり、クリーチャーでないパーマネントも護ることが可能な点を忘れずに。

 追加の除去としてサイドに取られたのは《達人の咎め》。

 緑によくあるクリーチャーのパワー分のダメージを飛ばす除去だが、インスタントであるという点、プレインズウォーカーも対象に取れるという点が、単なる《吹雪の乱闘》の水増しに留まらないポテンシャルを感じさせるね。《タジュールの荒廃刃》との組み合わせは対アグロ最強の構えだ。

 メインデッキに戻って《勢団の銀行破り》はエシカに続く新たなアドバンテージ型の機体だ。

 単に2マナで4/4というサイズだけでなく、ドローが3回もできるというのはそれを不得手とするデッキにとっての救世主たり得るもの。これが無色だというのだからすごい話だ。今後緑単に限らずさまざまなアグロ、ないしはミッドレンジなどでその姿を見ることになるだろう。そのため《耐え抜くもの、母聖樹》を潜ませるのも忘れてはならないね。

 デッキ自体が大きく変化することはなく、しかしながら確実に強化パーツを手に入れた「緑単アグロ」。アグロの選択肢も増えた今環境で、いったいどれほどのインパクトを残すのか……各種トーナメントの結果が楽しみだね。

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