READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

イゼット・テンポ(アルケミー)

岩SHOW

 昨年2021年にやってみたことのひとつに、大会の開催があった。

 規模は小さいものだが、普段やりとりをしているコミュニティの面々に楽しく交流してもらおうと、スタンダード・ヒストリックの大会を定期的(という名の不定期)で開催・運営させていただいた。まだまだ小規模ながら、初見の方々にも参加いただいて手応えはあった。これは2022年も継続してやっていきたいところだなぁと。

 2021年ラストの大会は、12月に始動したアルケミーで行ってみた。今年はこのフォーマットの可能性を探り、またここで紹介するデッキを追い求めるという意味でもアルケミーのオンライントーナメント開催を重ねていきたいところだなぁ。

 昨年末のオンライントーナメント結果を見れば、他のフォーマットに混じってアルケミーのものが存在感を放っていた。これからどんどんと盛り上がっていくのかもしれないね!

 というわけで今回は年末のアルケミー大会で上位入賞したデッキを紹介しよう!

Slim Heavens - 「イゼット・テンポ」
$MAGIC New Years Alchemy Tournament! / アルケミー (2021年12月29日)[MO] [ARENA]
4 《
4 《
4 《河川滑りの小道
4 《嵐削りの海岸
2 《バグベアの居住地
-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者
4 《激情の霊潰し
4 《トラルフの信奉者
2 《指名手配の殺し屋、ラヒルダ
2 《街裂きの暴君
-クリーチャー(16)-
4 《考慮
4 《消えゆく希望
4 《火遊び
2 《ジュワー島の撹乱
4 《静電破
4 《表現の反復
1 《錬金術師の計略
1 《発見への渇望
1 《家の焼き払い
1 《髑髏砕きの一撃
-呪文(26)-
3 《心悪しき隠遁者
2 《不屈の釣り人
1 《星山脈の業火
1 《エネルギー吸収
3 《削剥
2 《才能の試験
1 《軽蔑的な一撃
2 《勝負服纏い、チャンドラ
-サイドボード(15)-
MTG Melee より引用)

 

 イゼット(青赤)カラー、そして2マナ以下の軽量カード中心で固められたテンポデッキである。

 マジックのデッキ名における「テンポ」という概念は……たびたび議論にもなるのだが、ここではざっくりと。軽い呪文の連打、1枚のカードパワーではなく手数で押していく戦略を用いるデッキということにしておこう。

 そのためマナは多くは必要としない、5~6枚目の土地は使い道がないことが多いので土地の枚数を切り詰めている構成が特徴的だ。それでもマナが全く不要というわけではないので、必要な土地は2マナ以下の軽量ドロー呪文で引き込むという形で運用される。

 すなわち、おのずと青が中心で、《考慮》や《表現の反復》などがそのエンジンとなる。

 青のテンポと言えばバウンスだ。クリーチャーを手札に戻す《送還》のようなカードは、根本的な解決にはならないのだが、その代わりに低マナで対戦相手のクリーチャーを戦場から一時的にどかすことが可能だ。その1ターンがあれば十分、その隙に勝負を決めてしまおうという考え方だ。

 このバウンス呪文には《消えゆく希望》という過去最高レベルの1枚がある。

 クリーチャーを戻して攻撃やブロックを防ぎつつ、不要な土地を下に送ったりと勝負の流れに大きな影響を与える占術1を行う……これが1マナだから無茶苦茶強いね。

 赤が入ることで《火遊び》という軽い除去も入り、これはプレイヤーに撃ち込んでライフを削りつつこれまた占術が行える、テンポデッキのための1枚と言えよう。

 それらで手数の勝負をしつつ、軽いクリーチャーで攻めていくのがテンポデッキのスタイルだ。

 アルケミーのこの「イゼット・テンポ」のスタートを切るのは他フォーマットのテンポデッキでもお馴染み《秘密を掘り下げる者》。

回転

 インスタントとソーサリーがタップリのこのデッキでは《昆虫の逸脱者》に変身するのは容易。

 3/2飛行という驚異の1マナに続く2マナ域にはこれと比肩しうる性能が求められるが……そこはアルケミーのオリジナルカードが担う枠。《激情の霊潰し》はこれまたインスタント&ソーサリーデッキにおいて輝く1枚。

Frenzied_Geistblaster.png

 2/2果敢で攻めにおいても優れているが、戦場に出た際に不要なカードを捨てて他の呪文を得ることができるのが実にテクニカル。必要以上に引いた土地だけでなく、マナが十分出揃った相手への《ジュワー島の撹乱》、クリーチャーを用いない相手への《削剥》といった不要カードを捨てて、より良いものを引き込める可能性がある能力ということだ。なかなかシブい能力を持ったカードで、使ってみることでその味わい深さがわかるデザインだ。

 この霊潰しと抜群の相性を誇るのは、同じくアルケミー産の3マナ域《トラルフの信奉者》。

Toralfs_Disciple.png

 3マナ3/3速攻、スピーディーでテンポ向きのスペック、さらに攻撃すれば《稲妻》をライブラリーに4枚仕込むというデジタルでしか表現できない未知なる能力。2回3回と殴れば、ドローが《稲妻》である確率は跳ね上がる。1マナ3点をクリーチャーなりプレイヤー本体なりに撃ち込んで、ライフを一気に奪い去るフィニッシュを演出する。これでライブラリーの中に仕込んだ《稲妻》を《激情の霊潰し》で抽出してやろうというわけだね。綺麗に決まれば最高に気持ち良い、アルケミー限定のちょっとしたコンボだ。

 《トラルフの信奉者》と併せて強いアルケミーオリジナル呪文はクリーチャーだけではない。2マナでプレイヤー本体にも飛ぶ2点ダメージ、《静電破》。

Electrostatic_Blast.png

 これを唱えたその次にインスタントorソーサリーを唱えると、ライブラリーの一番上からカードを3枚追放してそのうち1枚をプレイしてもよいという、変則的なアドバンテージを得られる。《稲妻》をこれでめくれば瞬間的に大ダメージを弾き出す、This is tempo deckと言わんばかりのシビれるムーブが狙えるぞ。

 スタンダードの優秀なインスタントとソーサリー、それらと相性の良いアルケミー独自のカード。スタンダード既存のカードのポテンシャルをより引き出すデジタル的な挙動を行うカードのテクニカルな共演。体験するならアルケミーで! もし僕がオンラインで大会開いているのを見つけたら、遠慮なく参加してみてね!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索