READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

デイリー・デッキ都市伝説:ジャンド城塞の怪しげな亭主(ヒストリック)

岩SHOW

 夏なので怖い話をしましょう。昔から人が集まるとこういった流れになるのは自然なものですからね。

 私も学生の頃などには関西の某心霊スポットに行ってみよう、なんて若気の至りで夜中に出かけたものです。行先は霊体験が多く語られるある山。その山の麓のトンネルに行ったのですが、その入り口の信号が赤でストップ。車内からトンネル内を見ると、こちらに向かって歩いてくる人の姿が。車内には僕を含め4人おり、そのうち3人にはその歩いてくる人が見えていたのですが、後部座席の1人だけ何も見えないと言い出し……助手席に座っていた私と運転手はそちらを向いて冗談はやめろと言うのですが、どうも本当に見えていないようで。え?と思いながら二人で振り返ると、信号は青に。そして先ほどまで見えていたトンネル内の人影はどこへやら……

 山の怪談やホラー映画などでお馴染みのシチュエーションであれば、山小屋の怪異なんかも定番中の定番。山小屋に幽霊が、というのならむしろまだ救いがある方で、たまたま訪れた山小屋に危険な人間が住んでいたというものの方が悲惨な話であるように思います。

 一見、フレンドリーに笑顔で招き入れる亭主の、その裏の顔は……という具合に。さて、久しぶりのデイリー・デッキ都市伝説。今宵のウワサは……

都市伝説その6:亭主のスマイルに要注意

 現在、マジックには亭主と名のつくカードが4種類。もちろん、いずれもクリーチャーであります。そのうち2種類は現行スタンダードで使用可能な比較的新しいもので、まず1つは《エッジウォールの亭主》。

 出来事を主体としたアドベンチャーデッキはこれがないと始まらないというくらい重要な、非常に強力なクリーチャー。

 そしてもう1つが、この夏にデビューしたばかりの《裕福な亭主》。

 名前からしても暖かくもてなしてくれそうな、親切な人物というのはイラストからも伝わってきます。

 しかしながらそのスマイルに騙されてはいけない。《エッジウォールの亭主》はたった1マナで1/1とちっぽけなクリーチャーだったのに、あれだけ強力で一時期はスタンダードでも屈指のパワーカードとして認知されていたほどです。同じく緑で、1/1と共通点を持つ《裕福な亭主》も、使用者には優しく対戦相手には牙を剥くカードなのでは?という噂が囁かれていたとか、いないとか。

 結論から言うと、その噂は真実である、と断言して差し支えないでしょう。他に自軍のクリーチャーが戦場に出ればライフをもたらす能力で、1/1とブロックには参加できないながらもこちらのライフを護ってくれる防御的な能力。そして宝物という使い切りの形ではあるが、使用できるマナの量を増やすマナ加速としての役目。2マナでこれが手に入るのはまさしく破格。クリーチャータイプはハーフリングに市民と、シナジーを期待できるものではないですが、人間ではないという点を評価するデッキにおいてはかなりやり手の2マナ域として活躍中の様子です。亭主と名乗るクリーチャーは、その持てないし精神の裏に対戦相手を苦しめる強さを持っている、と注意した方が良いでしょう。

 《裕福な亭主》の強さはスタンダードに留まらず、ヒストリックでもそのポテンシャルを発揮しているようです。たとえば、以下のようなリストで。

Will Erker - 「ジャンド城塞」
ヒストリック(BO1) (2021年7月27日)[MO] [ARENA]
4 《草むした墓
4 《花盛りの湿地
4 《闇孔の小道
1 《血の墓所
4 《岩山被りの小道
3 《踏み鳴らされる地
2 《ファイレクシアの塔
-土地(22)-

4 《金のガチョウ
4 《ラノワールのエルフ
3 《よろめく怪異
4 《裕福な亭主
3 《忘れられた神々の僧侶
3 《漁る軟泥
2 《血の芸術家
4 《波乱の悪魔
4 《悲哀の徘徊者
3 《再利用の賢者
2 《スカルポートの商人
-クリーチャー(36)-
2 《コジレックの審問
1 《致命的な一押し
2 《削剥
1 《命取りの論争
3 《魔女の復讐
4 《集合した中隊
3 《ボーラスの城塞
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ
-呪文(17)-
Will Erker氏のTwitter より引用)

 

 このデッキはジャンド(黒赤緑)カラーで、サクリファイス(生け贄)系のデッキの1つ。ある特徴から「ジャンド城塞」と分類されるものになります。《ボーラスの城塞》をキーカードとし、これによる大量展開を武器にしているのです。

 このアーティファクトはマナではなくライフを支払う形でライブラリーからカードをプレイ可能で、それだけでも強力ですがもう1つの武器を持っています。土地でないパーマネントを10個生け贄に捧げることで対戦相手のライフを10点失わせる、という何とも派手な一撃。

 これには生け贄が伴うので、サクリファイスデッキの主力である《波乱の悪魔》と相性抜群。10個の生け贄で10点ダメージを発生させ、城塞と併せて20点削り切ることが可能なのです。

 追加の悪魔枠として《血の芸術家》、生け贄エンジンであり占術でライブラリー操作することで城塞からの展開を助ける《悲哀の徘徊者》、同じく生け贄を発生させつつマナを得られるので城塞を唱える助けとなる《忘れられた神々の僧侶》、これらのクリーチャーを一気に展開する《集合した中隊》……と名カードが組み合わさった、プレイしていて非常に楽しくまた強力なデッキが「ジャンド城塞」の正体なのです。

 この城塞の新たなメンバーとして、《裕福な亭主》は招かれたというわけです。亭主の宝物は城塞を唱えるのを助け、また宝物を生け贄に捧げることで《波乱の悪魔》が火を吹くと、一石二鳥。

 さらにはその回復能力もまた城塞デッキと相性抜群で、ライブラリーの上からライフを支払って唱えられたクリーチャーが戦場に出ることでライフを得られるので、ライフの減少を緩和してくれる働きを見せてくれます。2体並べばライフの損失がほとんどなくなり、3体目からはむしろ唱えた方が増えるというような状態に。

 城塞コンボはアグレッシブなデッキにライフを詰められるとどうしても動けないという弱点を抱えていましたが、《裕福な亭主》さえいればなんとか少ないライフからも勝利に繋げられるようになると、これまでにない画期的な1枚として加わったのです。実際に、ライフが5点を切った状態からの逆転勝ちなども多々あり、その実力は本物であるように感じられます。

 他にも宝物に関するカードがいくつか新しく採用されている点も見逃せませんね。《よろめく怪異》は宝物を生成すれば1マナとカード1枚で2回分の生け贄を発生させるので、コンボと関係なくライフを削り切って勝利したり、盤面のクリーチャーを除去する際には重宝します。

 《スカルポートの商人》《命取りの論争》も生け贄を行いながらカードが引ける、チャンスを拡大する役目として良い仕事をします。これらの枚数は各自で調整して、必要か不必要かを見定めれば良いでしょう。

 暖かな室内に手招きする亭主のスマイルには、決して騙されないように。ただし味方であるならば、これほど頼もしい存在もないかもしれません。アンコモンと手に入りやすく、初心者にとっても気兼ねなく使用可能というのは二大亭主に共通する良い点ですね。

 亭主というカードは構築で活躍する今日カードである可能性大、信じるか信じないかは……亭主が提供してくれるサービスを見てから考えると良いでしょう。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索