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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
モダンに突如出現、その名はエンチャントレス(モダン)
子どもの頃にあったものが街中からなくなっていく……加齢あるあるというか、これはまぁどの世代でも経験することだろう。流行り廃りや、技術の発展により不要になったものなどを見かけなくなっていく。
マジックでもそういう、かつて目にしたけれども、もう見ないなぁというものがいろいろと。たとえば、「エンチャントレス」。
僕がマジックを始めた頃にはこのタイプを持つクリーチャーが3種類あった。《新緑の女魔術師》《フェメレフのエンチャントレス》そして《アルゴスの女魔術師》だ。
どれも「エンチャントレスの召喚」と書かれていたなぁ。今ではこれらはドルイドに置き換わっており、エンチャントレスのタイプは消滅。ただ、女魔術師を意味するこのフレーズはデッキ名として残っている。
主にレガシーで《女魔術師の存在》を使ったコンボ要素を持ったコントロールデッキのことで、エンチャント・呪文を唱えるとカードを1枚引ける《女魔術師の存在》をエンジンとしていることからその名で呼ばれている。
この《女魔術師の存在》は『モダンホライゾン2』に再録された。初出も古いカードなので、手に入りやすくなったことは喜ばしい。
そして、この再録によりモダンでも使用可能になった。これはカードを引くことが好きなプレイヤーには見逃せない一大事だ。
とにかくエンチャントを唱えて、手札も戦場もカードでいっぱいに埋め尽くす。そんなゲームを楽しみたければ、このデッキを使うべし!
8 《冠雪の森》 4 《冠雪の平地》 1 《寺院の庭》 1 《踏み鳴らされる地》 3 《吹きさらしの荒野》 2 《樹木茂る山麓》 1 《虹色の眺望》 -土地(20)- 4 《聖域の織り手》 3 《運命を紡ぐ者》 3 《収穫の手、サイシス》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(11)- |
4 《楽園の拡散》 3 《豊かな成長》 3 《薄氷の上》 4 《真の木立ち》 1 《偉大なるオーラ術》 4 《女魔術師の存在》 3 《血染めの月》 3 《独房監禁》 1 《払拭の光》 1 《排斥》 2 《空位の玉座の印章》 -呪文(29)- |
2 《領事の権限》 1 《薄氷の上》 2 《原基の印章》 2 《石のような静寂》 1 《抑制の場》 4 《虚空の力線》 3 《神聖の力線》 -サイドボード(15)- |
《女魔術師の存在》以外にも『モダンホライゾン2』にはエンチャントに関するカードが盛りだくさん。順を追って説明していこう。
まずは《女魔術師の存在》とともにデッキの中核を成すエンジンとなるカード。これがなくては始まらない。このリストには39枚ものエンチャントが採用されている。土地以外はほぼすべてエンチャントだ。
デッキを構成するカードを唱えるだけで、《女魔術師の存在》はカードを1枚引かせてくれる。手札が減らないだけでも強力だが、これが2枚以上戦場に出ると手札がゴリゴリと増えていく。
圧倒的な物量差を得るために《女魔術師の存在》は超重要なキーカードであり、それが4枚だけでは足りないので《収穫の手、サイシス》も併用する。
エンチャントを唱えるたびにライフと手札を1ずつ供給してくれる、超強力な能力を持った伝説のニンフだ。伝説なので4枚採用するのは避けられているが、2マナでこの能力は破格。サイシスと存在の7枚を中核を担うエンジンに据えたら、各種エンチャントをひたすらに唱え続けていくデッキの誕生だ。
大量にドローをすることは嬉しいことではあるが、贅沢なことに次なる悩みに直面することになる。その手札を使うためのマナが欲しい、と。
レガシーのエンチャントレスデッキは《セラの聖域》という超強力な土地がこの問題を解決する大量のマナを供給してくれる。今までのモダンであればエンチャントでマナを増やすものとなると《楽園の拡散》くらいしかなく心細かったが……このたび加わったマナを担うエンジンは《聖域の織り手》!
なんと《セラの聖域》よろしくエンチャントの数だけ好きな色マナを生み出す。これまた2マナで超強力マナ加速クリーチャーだ。サイシスと織り手、どちらも見たらすぐに除去しないと危ないパワーカードであり、どちらかを「おとり」として除去を誘い出して本命を生き延びさせるという運用をすれば対戦相手はたまったものでないだろう。
あるいは、どちらも除去させないという強気で最強な作戦も。《真の木立ち》を先出しして被覆を与えれば、全体除去以外に怖いものはない。
このカードも懐かしの再録カードで、エンチャントを護りつつ2枚目を引いてしまった場合は生け贄に捧げて好きなエンチャントをサーチする手段として使える。《偉大なるオーラ術》と併せて使うことでエンチャント・クリーチャーを強気に展開していけるように構成されている。これらが戦場に出る前に打ち消されるというのであれば、《運命を紡ぐ者》がアンサーとなってくれるだろう。
対戦相手のクリーチャーなどには《薄氷の上》などの追放するエンチャントで対処。そして「ウルザの」土地を用いるデッキや多色土地に頼ったデッキは《血染めの月》で黙らせる。
これらでコントロールしつつ、それでも攻めが激しいデッキに対してはこれまたエンチャントレスや再録カード《独房監禁》に引きこもるのが吉。
ダメージを受け付けずまた呪文や能力の対象にもならなくなる、最強の防衛システムで籠城戦だ。毎ターン手札を捨てることが要求され、また各ターンのドロー・ステップが飛ばされてしまうが、サイシスと存在でドローすることは可能なのでこれで手札を満たしながら牢獄に籠り続けたい。コチラに何も手出しできないとわかれば、諦めの良い対戦相手は手を引くだろう。
それでもゲームを続ける者に対して勝利するために、攻めるためのフィニッシャーも用意してある。《空位の玉座の印章》はエンチャントまみれのこのデッキであればあっと言う間に致死量の天使軍団を生成してしまえる。
また、《聖域の織り手》から無尽蔵にマナが得られることを利用して《引き裂かれし永劫、エムラクール》というわかりやすくゲームを終わらせる1枚も採用されている。唱えて追加ターンを得て殴れば大体勝てるし、そういった攻めを受け付けないデッキであるならば《独房監禁》でこちらも超長期戦を挑めばよい。
独房の維持コストとしてエムラクールを手札から捨てれば、その能力で墓地がライブラリーに戻る。これによりライブラリーがなくなってしまうという敗北条件を回避可能となるので、相手にも同様の手段がなければこちらの籠城力が上回って勝利となる。このデッキを相手にじっくり戦うというのは、無謀そのものなのだ。
デッキがほぼすべてエンチャントなので、《自然に帰れ》1枚で盤面が文字通り崩壊してしまうという明確な弱点も持ち合わせている。完全無欠なデッキというものはないものだが、だからと言ってすべてのデッキがこのような対策カードを備えているかというとそういうわけでもない。
打ち破る手段のない相手にはまさしく、無敵で不死身なモダンの「エンチャントレス」。新アーキタイプがどこまで勢力を広げるのか、この夏の躍進が楽しみなデッキのひとつだ。
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