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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
親・和・復・活(モダン)
あるものが誕生や成立した際には、それがそうである意義というものがある。
あんパンはあんこを包んだパンという意義があるからこそあんパンで、あんパン専門店というのであればあんパンがメイン商品なのは当然である。
ただ、その店のあんパンは生地が美味いがあんことの相性は微妙なところで、あんこがない方がウケが良い。だったらと「あんなしあんパン」を売り出して、それがあんパンよりも売り上げが良くなってメイン商品となった。これはあんパンもあんパン専門店としても意義が失われている状態だ……と、こういうのを形骸化と言うんだね。
当コラムでも、マジックの形骸化というものに関して何度か取り上げている。最も有名で長きに渡ってネタにされてきたのが「親和」だ。
『ミラディン』にて登場した「親和(アーティファクト)」という能力は当時非常に強力で、アーティファクトのタイプを持った土地と組み合わせてスピーディーでパワフルなデッキを生みだして一世を風靡した。このデッキを支えたアーティファクト・土地は危険なものであるとして、モダンというフォーマットが設立された時点から禁止カードに指定されていた。
色マナが得られない《ダークスティールの城塞》のみは使用可能だったので、それを用いた「親和」デッキがモダン初期にプレイされた。《金属ガエル》に《物読み》に、アーティファクトを並べていることでコストが軽くなるカードがモダン初期には用いられた。
……のだが、カエルや《マイアの処罰者》のような親和カードは確かにコストが軽くなるが、カード単体で見た時の強さで考えると、ちょっと押しが弱い。同時に時代が流れるにつれて、そもそも手ごろなコストでカードパワーでも上回るものがどんどんと登場し、「親和」から親和カードがじわりじわりと抜けていった。
最終的には0枚のリストが主流となったが、それでもそのデッキは「親和」と呼ばれ続けた。これぞまさしく形骸化。ロボットのようなアーティファクト・クリーチャーを主体としているので「ロボッツ」と呼ぼうとする流れもあったが、それでも呼びやすさや馴染みから国内・海外を問わず「親和」という名はいつまでも残り続けた。
そして2021年6月。形骸化していた「親和」に、親和という意義が取り戻されようとしている。そもそもモダンの「親和」は《オパールのモックス》が使用不可になってから大きくパワーダウンし、他のデッキにそのポジションを譲り影を潜めていた。
そこに『モダンホライゾン2』での、親和能力の再録である。帰ってきた親和能力持ちの面々の中でも、特に「お、これは……」と注目される1枚があった。そしてそれを軸にして、「親和」は「親和」としてのアイデンティティを取り戻したのである!
4 《ダークスティールの城塞》 4 《空僻地》 3 《産業の塔》 3 《墨蛾の生息地》 4 《ウルザの物語》 -土地(18)- 4 《メムナイト》 4 《羽ばたき飛行機械》 3 《信号の邪魔者》 4 《鋼の監視者》 2 《金属ガエル》 4 《思考の監視者》 -クリーチャー(21)- |
4 《ミシュラのガラクタ》 2 《溶接の壺》 4 《バネ葉の太鼓》 4 《金属の叱責》 2 《極楽のマントル》 4 《頭蓋囲い》 1 《イラクサ嚢胞》 -呪文(21)- |
4 《刻まれた勇者》 4 《急送》 3 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 3 《解呪》 -サイドボード(15)- |
《思考の監視者》!
マナ総量7は《マイアの処罰者》を思い起こさせ、そしてカードとしては《金属ガエル》や《厳粛な空護り》に《物読み》を足したようなスペックと、これまでの親和カードの集大成のような1枚だ。
2/2飛行に2枚ドローと、手札を減らさずどころか増やしながら航空戦力が得られる。これは軽量アーティファクトを多数採用して、親和でコスト軽減を狙ってデッキを組むだけの価値があるカードパワーだ。
《メムナイト》《ミシュラのガラクタ》や《バネ葉の太鼓》など軽いアーティファクトを1ターン目からじゃんじゃん並べて、早いターンでの《思考の監視者》を実現させ、そのために吐き出した手札を補充する。スピード重視のアグロデッキである。その中に《金属ガエル》が混ざっているのが、オールドファンにはグッとくる。
親和達成のために軽量アーティファクトを多数採用しているため、クリーチャーのサイズは全体的に小さめになってしまう。この弱点を補うため、強化する手段はふんだんに。
《信号の邪魔者》《鋼の監視者》でまとめて強化する数で攻める形か、あるいは装備品で単体を強化するか。
《頭蓋囲い》は昔ながらの親和デッキの最強兵器。どんなちっぽけなアーティファクトも打点に換算されるので無駄にならず、回避能力を持ったものに装備させることで一瞬でライフを奪い去る。
特に《墨蛾の生息地》との組み合わせは文字通りの一撃必殺!で、この囲いの追加カードとしてカウントできるのが新装備品《イラクサ嚢胞》。
コストは《頭蓋囲い》よりも重くなってしまうが、エンチャントもカウントするのと生体武器なので、これ自体がクリーチャーとして運用できる点がナイス。
このデッキを後押ししたのは親和だけでなく、《ウルザの物語》の存在もなくてはならない。
この土地である英雄譚は1枚で最大2体の構築物・トークンを生成でき、これらは《頭蓋囲い》同様にアーティファクトを数多く並べることで大ダメージを生み出してくれる。Ⅲ章の能力で持ってくるアーティファクトの候補も多く、アドバンテージを得られるとあっては親和で使えと言わんばかりだ。
他にも土地であると同時にエンチャントである点も《イラクサ嚢胞》のカウントに加算できるなど、とにかく隙が無い。サイド後は《墓掘りの檻》《真髄の針》をサーチしてコンボデッキへの耐性もバッチリだ。
シンプルにして強い、僕らの知る「親和」というデッキがついに帰ってきた。このアーティファクト主体のデッキは、弱点も多いがそれをはねのける爆発力を持つのが魅力。特にメイン戦では怒涛の展開で一気に押し切るその強さが体感可能だろう。
手札を増やす《思考の監視者》のおかげでマリガンにも少々強くなった新生「親和」。使うなら、今!
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