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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
デイリー・デッキ都市伝説:「セレズニア・フェザー」という矛盾(スタンダード)
皆さんもご存知の通り、マジックのカードはただゲームをするために作られているものではありません。そのアート、カード名、フレイバー・テキストを見ればわかる通り、幾万のカードはこのゲームの舞台、多元宇宙の歴史を伝えるものでもあるのです。
要するに、カードを集めればストーリーが見えてくるってことなんですよね。さまざまな次元とその住人、そしてそれら次元を旅するプレインズウォーカーたちが織り成す物語。これを追いかけるのがゲーム以上に好きというファンもいらっしゃるくらい。
でも、実はマジックの背景ストーリーというものは、カードを見ているだけでは全ては把握できない、というのもまた事実です。
特に過去のセットに言えることですが、雑誌で言うなら紙面の都合、動画で言うなら尺の都合、マジック的には……カードプールの都合と言いましょうか。ひとつのセットに収録できるカードの枚数は決まっており、また同じような立ち位置のカードをいくつも収録するわけにもいかないのは、理解していただけると思います。
そのために、カード化という世に存在をアピールする出番をもらえなかった、しかしストーリーにはしっかりと出てくるキャラクターというのがいたりするのです。
こういった知る人ぞ知る不遇のキャラクターたち。彼らを救済するかのように、近年のセットでは積極的にそういったキャラクターがカード化される傾向にあります。
その代表的なものが、ラヴニカ次元の住人であるフェザー。彼女はボロス軍に所属する天使で、最初にラヴニカを扱った背景ストーリーでは主人公アグルス・コスとともにラヴニカで起きた事件の解決のために行動していました。その後長年姿をくらましたり、ボロス軍のギルドマスターであるラジアの死を見届けたりと、いろいろあった末にボロス軍の新リーダーに就任しました。
結構な重要人物であるものの、ボロスの伝説枠はコスとラジアで埋まっているので出番なし。まあギルドマスターだしまた出番があるよなと、そう思っていたら今度はオレリアに追放され……2度目と3度目のラヴニカ探訪でも出番なし。
こんなこっぴどい仕打ちを受けてきた彼女ですが、ラヴニカでの最終決戦『灯争大戦』にて、ついにカード化されました。
《贖いし者、フェザー》としてデビューを果たすも、なんと今度は同セットの小説には出番なしというオチがついてしまいました。
そんな、ある意味では美味しい役どころのフェザーですが、カードはどうかというとこれが一級品だったから、彼女の苦労も報われる形となったんですね。3マナ3/4飛行とスペックも優秀、さらに能力は自分のクリーチャーを対象としたインスタントやソーサリーは手札に戻ってくるというアドバンテージを稼げるもの。これを活かして《果敢な一撃》や《無謀な怒り》を使いまわす「ボロス・フェザー」は大人気のアーキタイプとして当時のスタンダードで大活躍。ヒストリックでも活躍するチャンスがあるというのがフェザーの近況なんですが……この度、妙な噂を耳にしましてね。
都市伝説その5:フェザーが2021年のスタンダードにいる
いや、いないんですよ。何かの間違いや裏技で使えるとかそういう話ではなくてですね。《贖いし者、フェザー》は2021年6月時点でスタンダード環境には存在していない、しかし「○○・フェザー」と名乗るデッキを目にすることがあると、こういう話なんですよね。しかも彼女が属したボロスではなく、セレズニアとかそういう他のギルドのカラーリングを名乗っているとまで言うんですよね。
これはどういうことなのか。その答えは、以下のリストを見ると納得してもらえるかもしれません。
8 《冠雪の森》 7 《冠雪の平地》 4 《枝重なる小道》 3 《寓話の小道》 -土地(22)- 4 《賢い光術師》 4 《巨人落とし》 4 《龍護りの精鋭》 4 《光輝王の野心家》 4 《学生の代言者、マビンダ》 -クリーチャー(20)- |
4 《突っ走り》 4 《果敢な一撃》 4 《籠城用投薬》 2 《吹雪の乱闘》 2 《一心同体》 2 《蛇皮のヴェール》 -呪文(18)- |
2 《鎖巣網のアラクニル》 2 《ドラニスの判事》 4 《精鋭呪文縛り》 2 《吹雪の乱闘》 2 《蛇皮のヴェール》 2 《魂標ランタン》 1 《影槍》 -サイドボード(15)- |
単純にデッキスタイルで分類するなら白緑のアグロデッキとなりますが、「セレズニア・フェザー」と呼びたくなるのも納得のリストです。低コストに抑えられたクリーチャーと、同じく低コストのインスタントとソーサリーで固められたリスト。在りし日のフェザー・デッキを思い起こさせるものです。
しかし、スタイルが近いというだけではフェザーを名乗るのは少々無理があります。そこにはきちんとフェザーと同じ役目のカードがあるのです。ネタを明かすと、このデッキのいうフェザーとは《学生の代言者、マビンダ》です。
同じ3マナで飛行クリーチャーというだけではなく、マビンダは墓地にあるインスタントかソーサリーを唱えられるという能力を持っており、これで自分のクリーチャーを強化したりドローするのを毎ターン繰り返すという点がかつてのフェザーの雄姿を思い出させる……ということなのです。
もちろん、同じ呪文を何度も使いまわせるフェザーとは使用感も異なる部分もあり、叶わない部分もあるマビンダ。しかし、手札が1枚もない状況で引いてきて立て直すという動きはマビンダにできてフェザーにはできない武器でもあります。フェザーが好きだった方は一度、マビンダを使ってみてはいかがでしょうか。
クリーチャーの顔ぶれもフェザー流に適したものを選んであるのが特徴です。《賢い光術師》《龍護りの精鋭》は魔技を持ち、この能力でパワーとタフネスが強化されます。インスタントとソーサリーを唱えていると、ドンドンと大きくなって見た目以上の破壊力を披露してくれます。
光術師は基本のパワーは0なので、手札から呪文が無くなれば無力になりがちですが、そこをカバーするのがマビンダ。最後の一撃を間に合わせ、スピード勝負を制するのが狙いです。
このリストの非クリーチャー呪文は強化・防御・除去に大別できます。
強化の中でも《果敢な一撃》《突っ走り》は、クリーチャーを強くするという役割で見れば微々たるものですが、ドローがついてくるというのが優れもの。手札を減らさず、魔技を誘発させるので呪文自体の額面は大したものじゃなくて良いのです。
防御の呪文は《一心同体》《蛇皮のヴェール》。破壊不能や呪禁でクリーチャーを護るものであり、かつサイズアップもさせるので攻めにも使えるのが素晴らしい。対アグロデッキにおいて《籠城用投薬》をマビンダで使いまわして、ライフを継続して回復するというのもある意味防御的と捉えられるかもしれません。
除去は《吹雪の乱闘》。格闘する呪文は相手だけでなく自身のクリーチャーを対象に取るので、マビンダでペナルティを受けずに{0}で再利用することが可能なのです。魔技や+1/+1カウンターで強化されたクリーチャーで一方的に叩き潰して攻撃をねじ込むと勝利は目の前でしょう。
いるはずのない時代にいるタイムトラベラー。あるはずのない時代にあるオーパーツ。2021年にスタンダードにフェザーがいるのかいないのかは、あなた自身でプレイしてみて確かめてください。
このような都市伝説をご存知なら、そっと教えてくださいね。その時には真実をお話しできるかもしれません。
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