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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ディミーア・コントロール(スタンダード)
最近のマジックで言うコントロールと、大昔のそれとでは大きく異なる点がある。それはフィニッシャーの強さだ。
フィニッシャー、コントロールデッキにおけるゲームに勝つための役目を与えられたカードのこと。現在のスタンダードで言えば《出現の根本原理》なんかがそれにあたる。
このカードは……唱えられれば大体即座に勝ち。7マナで色マナ要求も多く、コストは重たいがきちんとその分の役目を果たす。そう、重いカードが強いのである。《精霊龍、ウギン》なんかを見ればそれがよくわかると思う。
だがかつては、そうではなかった。たとえば、大昔に一時代築いたカードといえば《Kjeldoran Outpost》。
この土地から1/1トークンを生成し続けることが勝利への道だった。一体どれだけターンを掛けるんだという話であるが、今のように重いカードが強くなるまではそれが普通だったのだ。現スタンダードにもこの土地によく似た《アーデンベイル城》がありこれもまた強力な土地ではあるが、これだけで勝つコントロールデッキを組めと言われたらかなりしんどいというのが正直なところよね。
時間がかかるフィニッシャーは、それだけ対戦相手にターンを与えてしまう。チャンスをつかまれる可能性があるってわけだ。その点根本原理など、コストも効果もヘビー級なカードたちはチャンスを与えない点が優れている。これらの重いカードを唱えてさっさとゲームを終わらせることが得策なので、《耕作》で土地を戦場に出すなどのマナ加速を用いる。結果としてコンボ的な要素を持ち合わせる形になる。昔からのコントロールプレイヤーからすると、そのプレイ感の大きな変化を実感することだろう。
そんなわけでサクッと勝てる(もちろんそこに至るまでコントロールしきる必要はある)「スゥルタイ根本原理」のようなデッキが現スタンダードのコントロールの主流となっている。が、これに反発するかのようなデッキを用いるプレイヤーがいないわけではない。
コントロールと言えば青黒! 緑を足してのマナ加速など邪道!と主張せんばかりの、純粋な「ディミーア(青黒)コントロール」を見つけたのでリストを紹介しよう。
6 《島》 6 《沼》 4 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 2 《ゼイゴスのトライオーム》 2 《ヴァントレス城》 1 《ロークスワイン城》 2 《這い回るやせ地》 4 《寓話の小道》 -土地(31)- -クリーチャー(0)- |
2 《塵へのしがみつき》 4 《取り除き》 4 《無情な行動》 4 《精神迷わせの秘本》 4 《海の神のお告げ》 3 《否認》 2 《本質の散乱》 2 《ジュワー島の撹乱》 2 《才能の試験》 4 《襲来の予測》 1 《真夜中の時計》 4 《多元宇宙の警告》 3 《アショクの消去》 2 《悪意の熟達》 2 《絶滅の契機》 3 《影の評決》 1 《海門修復》 2 《オニキス教授》 -呪文(49)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 2 《厚かましい借り手》 3 《強迫》 3 《神秘の論争》 2 《エルズペスの悪夢》 1 《絶滅の契機》 3 《サメ台風》 -サイドボード(14)- |
メインにクリーチャー0枚、フィニッシャーもごく最低限。これぞ昔ながらのコントロール、派手さはないが歳を重ねるにつれ食べたくなる昭和の醤油ラーメン的な良さを感じてしまう。
構成要素は土地・ドロー・クリーチャーなどの除去・打ち消し・そしてフィニッシャーだ。青と黒が得意とするジャンルの集合体であり、その中でも特に中核を担う《多元宇宙の警告》《襲来の予測》がこの手の王道コントロールを成立させていると言っても過言ではない。
この青の軸に白を相方にして《夢さらい》などを用いる青白は『カルドハイム』環境初期によく見られた。今回『ストリクスヘイヴン:魔法学院』では青黒という2色はプッシュされてはいないが、コントロールとしては得るものがあった。《オニキス教授》という新たなフィニッシャーだ。
手札を増やし、クリーチャーを除去する手段も兼任し、最後は手札が尽きそうな相手に対して[-8]能力起動で一気にライフを削り落として勝利を狙う。魔技でライフを回復できるという点も、その役目を《夢さらい》に頼らなくても済むので青黒コンが成立、というわけだ。
デッキとしてはとにかく長期戦狙い。打ち消しや除去のインスタントを構えて、極力自分のターンに土地をタップしないことを心がけてターンを進めていく。隙を晒してでもタップする時は《絶滅の契機》《影の評決》を用いて、対戦相手のクリーチャーを複数体処理する時。
あるいは予顕や《精神迷わせの秘本》を唱える or 起動するための2マナは自ターンに捻りだしても良い。絶えず打ち消しのプレッシャーは与えたいが、背に腹は代えられないタイミングでは思い切ってぶっ放そう。
逆にフィニッシャーである《オニキス教授》を適当に出してしまうのは良くない。彼女の魔技を誘発させつつ打ち消しや除去でしっかりと守ってやれる状況まで可能な限り温存したい。そういうオールクリアな盤面を築き上げることに喜びを見いだせるプレイヤーにこそ使ってほしいデッキだ。
しかしながら対戦相手のすべてを捌き切るというのは容易なことではない。そのために、少しでも楽ができればと採用されているのが《アショクの消去》。
少々特殊な打ち消しの一種で、対戦相手はこれにより追放されたものと同名の呪文を唱えられなくなる。デッキに4枚入っているようなキーカードをこれで打ち消せれば、残り3枚も封じたようなもの。対戦相手の手札にそれがあったり、後から引いてきたのであれば無駄な手札にすることができて大きなアドバンテージが得られる。《砕骨の巨人》や《アールンドの天啓》といったよく見るカードをシュバッと追放できれば、かなり楽になる。
ひとつ注意してほしい点は、当事者(出来事を持つ)カードやモードを持つ両面カードの扱いについて。当事者カードをこれで追放した場合、クリーチャーとしては唱えられなくなるが、出来事は別の名前の呪文となるので唱えることが可能だ。両面カードもそうで、第1面のカードとしてしか追放できないので、第2面では唱えられてしまうことには気を付けたい。
上記のリストで実際にプレイをしてみたところ、個人的には少し勝ちにくいと感じる点もあった。まず《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用しているため、デッキの枚数は80枚。
このゲーム外から手に入るフィニッシャー兼《海の神のお告げ》《精神迷わせの秘本》のおかわりを提供するアドバンテージ源は貴重なので、この相棒に関しては大歓迎。
なのだが、80枚デッキにしては土地の枚数が31枚とかなり少ない。土地のモードを持っている両面カードをカウントしても少な目で、プレイしていて土地が引けずに負けという盤面が多々あった。そこで土地を増量したい。
また、赤単や白単が用いてくる《不詳の安息地》がキツい。
もともとコントロールキラーなカードなのでしょうがないところだが、この土地のためにインスタント除去を温存しなければならないのはハードルが高い。
この2つの弱点を補う形で組んでみたのが、以下の僕が実際に使用したリストだ。プレイしていてしっくりくる、お気に入りの古典的コントロールとなった。
6 《島》 6 《沼》 4 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 2 《ゼイゴスのトライオーム》 2 《ヴァントレス城》 1 《ロークスワイン城》 4 《廃墟の地》 2 《這い回るやせ地》 4 《寓話の小道》 -土地(35)- -クリーチャー(0)- |
4 《取り除き》 4 《無情な行動》 4 《精神迷わせの秘本》 4 《海の神のお告げ》 2 《ジュワー島の撹乱》 2 《否認》 1 《本質の散乱》 4 《襲来の予測》 1 《真夜中の時計》 4 《多元宇宙の警告》 4 《絶滅の契機》 2 《アショクの消去》 3 《影の評決》 2 《サメ台風》 1 《海門修復》 1 《悪夢の詩神、アショク》 2 《オニキス教授》 -呪文(45)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 2 《厚かましい借り手》 3 《強迫》 2 《塵へのしがみつき》 1 《才能の試験》 3 《神秘の論争》 2 《エルズペスの悪夢》 1 《影の評決》 -サイドボード(14)- |
土地を増量&安息地に安息なし!をスローガンにカードを探したところ、あるじゃないのおあつらえ向きなやつが! そう、《廃墟の地》だ。
思い切って4枚放り込んでやる!と、それに伴って呪文の取捨選択を行ったのが上記のリスト。特にデッキコンセプトに大きな変化はなく、使用感が大きく変わることはない。
ただ、あまりにもサイドからメインに入れ替える率が高かった《サメ台風》をメインへと昇格させて、教授との2大フィニッシャーという形に。《悪夢の詩神、アショク》もせっかくなので採用し、これらでじりじりと真綿で首を絞めるようなフィニッシュへと持ち込む。好みのタイプのコントロールに仕上がったと概ね満足している。
《出現の根本原理》でドカバキグシャーーーッと勝つ豪快なマジックも楽しいが、コツコツと勝利に向かう古のコントロールスタイルもまた味わい深いものだ。そのどちらも楽しんでこそのマジック。ぜひともいろいろなデッキを手に取って試してみてほしいものだね。
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