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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ジャンドとその対抗馬(ヒストリック)
先日『カルドハイム』チャンピオンシップが開催された。予選を突破したプレイヤーと、マジック・プロリーグ(MPL)やライバルズ・リーグに所属するプロプレイヤーたちによる、『カルドハイム』環境の総決算だ。
次期セットのリリースが迫る中、この環境の最終決戦に選ばれたフォーマットは……スタンダードとヒストリック、MTGアリーナでプレイ可能な構築フォーマットの二本柱両方で競うということで、デッキの選択も通常のトーナメントの倍。何を使うのか、参加者は皆頭を悩ませたことだろう。
競技トーナメントに参加する以上、目標はもちろん勝つこと。気軽にデッキを試せるランク戦と違って、デッキリストを提出したらもう後戻りはできない。よって、実験的なデッキで大きく勝負に出るプレイヤーもいるにはいるが、多くは手堅いチョイスを行う傾向にある。
今回で言えば、ヒストリックの手堅いデッキはジャンド(黒赤緑)であった。生け贄に関するカードをデッキの主軸とした「ジャンド・サクリファイス」と呼ばれるデッキ群である。これの使用率は全体の31.3%。実に3割であるが、ただこのジャンドの中にも大きく分けて2つのデッキがある。
《魔女のかまど》で《大釜の使い魔》を生け贄に捧げては戻し、その横に《波乱の悪魔》を並べてダメージをばらまくというメイン・エンジンは共通。
その展開力を《集合した中隊》で加速させるのが「ジャンド・カンパニー」。
《パンくずの道標》で手札を得て《フェイに呪われた王、コルヴォルド》で勝ちに行くのが「ジャンド・フード」。
今回のトーナメントでは、よりどっしりと戦える後者を選んだプレイヤーが25.6%と、圧倒的に多かった。《古き神々への拘束》という万能パーマネント破壊であり、かつコルヴォルドを唱えるための土地を得る手段を獲得したことがこのデッキを大きく強化した。
クリーチャーを主体としたデッキには《初子さらい》で奪ったクリーチャーをかまどで生け贄に捧げたり悪魔で除去しまくるなどで勝ち筋を絶ち、遅いデッキ相手には悪魔によるダメージでライフを詰めてコルヴォルドの圧倒的なサイズで押し切ると、相手を選ばずに自分のゲームができるのがこのデッキの魅力だ。
2 《沼》 1 《山》 2 《森》 4 《血の墓所》 4 《草むした墓》 3 《花盛りの湿地》 1 《踏み鳴らされる地》 3 《岩山被りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《大釜の使い魔》 4 《金のガチョウ》 4 《波乱の悪魔》 2 《悲哀の徘徊者》 4 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》 -クリーチャー(18)- |
4 《魔女のかまど》 2 《初子さらい》 2 《致命的な一押し》 2 《思考囲い》 4 《パンくずの道標》 3 《古き神々への拘束》 1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 -呪文(18)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 1 《運命の神、クローティス》 2 《思考囲い》 1 《リリアナの敗北》 3 《害悪な掌握》 1 《削剥》 2 《魔女の復讐》 1 《古き神々への拘束》 1 《衰滅》 1 《ボーラスの城塞》 1 《戦争の犠牲》 -サイドボード(14)- |
ただそれも、普通のデッキを相手にした場合の話。チャンピオンシップに参加するにあたって「ジャンド・フード」が多くなることはほとんどの参加者が読んでいたことであったが、そこでその読みに賭けて「徹底的にジャンドを倒すデッキを組む」という結論を出したプレイヤーらも存在した。
打倒ジャンドのキーカードは《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》。
能力の起動や呪文を唱えるための、コストとしての生け贄を禁止する能力を持っている。《魔女のかまど》は起動できず《大釜の使い魔》も墓地から戻ってこられず、《金のガチョウ》も《悲哀の徘徊者》も、食物・トークンすらも沈黙させる。生け贄さえ封じれば、ジャンドのクリーチャーは能力を持たない集団も同然だ。
このヤシャーンを中核に据えた白緑のデッキこそ妥当ジャンドの最有力候補。今回は『カルドハイム』チャンピオンシップに持ち込まれた対ジャンドデッキを紹介しよう。
2 《平地》 1 《沼》 2 《森》 4 《インダサのトライオーム》 4 《神無き祭殿》 4 《陽光昇りの小道》 4 《寺院の庭》 4 《枝重なる小道》 4 《草むした墓》 4 《闇孔の小道》 1 《ロークスワイン城》 -土地(34)- 4 《花の壁》 4 《秋の騎士》 4 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 -クリーチャー(15)- |
4 《思考囲い》 4 《不可解な終焉》 4 《精神迷わせの秘本》 2 《ネスロイの神話》 2 《ケイヤの誓い》 4 《古き神々への拘束》 4 《絶滅の契機》 3 《エルズペス、死に打ち勝つ》 2 《エメリアの呼び声》 2 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》 -呪文(31)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 3 《変容するケラトプス》 2 《領事の権限》 4 《軍団の最期》 1 《屍呆症》 2 《ヤヘンニの巧技》 2 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(14)- |
同チャンピオンシップのトップ8進出を果たしたシャハール・シェンハー/Shahar Shenharが使用した「アブザン(白黒緑)・ミッドレンジ」。対ジャンドに焦点を絞ったこのデッキは、彼の調整チーム内でこのリストを作り上げたプロツアー殿堂顕彰者であるガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifにちなんで「ガブザン」と呼ばれているそうだ。
さて「ガブザン」、デッキとしては《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒とした80枚のデッキであり、3色からヨーリオンと相性の良いカードを中心に、パーマネント対策をたっぷりと採用。対戦相手にとって理想的なゲームプランを展開させないことに注力したデッキだ。
『カルドハイム』チャンピオンシップで最も使われたカード4枚のひとつである《古き神々への拘束》。このカードがデッキ成立の決め手であることは間違いない。種類を問わないパーマネント破壊でありながら、土地を探してくるマナ加速でもある。それでいてパーマネントなのでヨーリオンで再利用することが可能と、アンコモンと言えど神話レアもしのぐレベルの超高性能な英雄譚だ。
パーマネントをこれや《エルズペス、死に打ち勝つ》で対処し、生け贄エンジンはヤシャーンで封じる。《思考囲い》で相手のプランを崩して動き出すターンを遅れさせることで、初動がややゆっくりめのこのデッキの速度に引きずり込む。
あとはヨーリオンや《精神迷わせの秘本》で良い意味でダラダラとアドバンテージを稼いでいれば、対戦相手は勝利する術を無くしてしまい、決着となるだろう。
追放にもこだわっている点に注目したい。2マナの除去という選択肢は数あれど、その中から選んだのは《不可解な終焉》。
追放できる範囲は定められているものの、これもまたパーマネントとして戦場に残るのでヨーリオンで使いまわせる。戦場を離れることで対戦相手は恐竜・トークンを得てしまうが、ヨーリオンが立っていれば大丈夫。《波乱の悪魔》のような能力持ちに比べたら100倍マシという話。
《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は《魔女のかまど》《大釜の使い魔》を対処できるカードであり、「ラクドス・アルカニスト」などにも突き刺さる墓地対策でもある。見た目よりもずっとヒストリックでは強く運用できるので、一度お試しあれ。
まとめて吹き飛ばす全体除去は《絶滅の契機》と、第2の手札とも呼ばれる墓地にはクリーチャーなどを落としたくないという徹底ぶりだ。
デッキ内のカードをこのように同じベクトルに向けることが、チャンピオンシップのような場所で勝つためには重要になってくる。
対ジャンドに特化した構成ではあるが、同時にその他のクリーチャーデッキにも強く戦えるようになっている。またサイドボードは対青系コントロール用に《変容するケラトプス》が3枚という形になっており、なんだか懐かしさを覚える。《ドミナリアの英雄、テフェリー》への対抗手段としてはいまだ健在だ。
「ジャンド・フード」と、それを倒すために生まれた「ガブザン」。どちらも魅力的なデッキであり、今後のヒストリックを考える上では無視できないデッキだ。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》と遭遇することは避けられないと思った方がよく、これへの対抗策を用意せずに生け贄をテーマとしたデッキを組むことはやめておくことをオススメするね!
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