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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
シャドウ・アルカニスト(ヒストリック)
「わかっていたけどやっぱり強ぇ~」 それが率直な感想だ。何に対してかって? ヒストリックにやってきた新顔、《死の影》のことだ!
『ヒストリック・アンソロジー4』に収録されたこの黒い1マナクリーチャー。そのコストに不釣り合いな13/13というバカげたサイズ。そして自分のライフの分だけマイナス修整を受けるという特異な能力。初登場時からマジックプレイヤーを惹きつけてやまない魅力あふれる1枚が、特別に再録される形でMTGアリーナ独自のフォーマットであるヒストリックに参入したのだ。
ヒストリックは設立当初こそスタンダードとパイオニアの中間のような立ち位置だったが、このような特別な再録が度々行われた結果、今ではパイオニアやモダンでさえもプレイできないようなカードが共演する夢の舞台となっている。《死の影》もモダンやレガシー環境からの参入者だ。
これらのフォーマットには《汚染された三角州》《湿った墓》のような自身のライフを失わせる土地が多く、これらを出しているだけで序盤からライフがゴリゴリと削れる。そこに《思考囲い》などを合わせることで加速度的に減少したライフを背景に《死の影》を早期ターンに展開し、対戦相手の体制が整う前に殴り勝つ。
そんなスピーディーなデッキの主役がヒストリックにやってきたわけだが……モダンやレガシーと比べると、《思考囲い》という永遠の相棒は存在するもののその他のカードは大きく様相が異なる。
では、一体どういうデッキになるのか。今日はヒストリックの《死の影》デッキを紹介だ!
3 《沼》 2 《山》 4 《血の墓所》 2 《竜髑髏の山頂》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《イフニルの死界》 1 《ロークスワイン城》 2 《ラムナプの遺跡》 -土地(20)- 4 《死の影》 4 《縫い師への供給者》 4 《戦慄衆の秘儀術師》 3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 2 《血空の狂戦士》 2 《若き紅蓮術士》 1 《嘘の神、ヴァルキー》 -クリーチャー(20)- |
4 《思考囲い》 3 《村の儀式》 2 《血の長の渇き》 2 《初子さらい》 1 《突破》 1 《死住まいの呼び声》 2 《アガディームの覚醒》 4 《立身 // 出世》 1 《木端 // 微塵》 -呪文(20)- |
1 《夢の巣のルールス》 -相棒(1)- 3 《魂標ランタン》 2 《強迫》 1 《致命的な一押し》 3 《削剥》 1 《アングラスの暴力》 1 《乱動する渦》 3 《魔女の復讐》 -サイドボード(14)- |
このリストは既存のヒストリック・デッキがベースになっている。「ラクドス・アルカニスト」、黒赤2色の《戦慄衆の秘儀術師》デッキという意味で、このゾンビの攻撃時に誘発する能力「自身のパワー以下の点数で見たマナ・コストであるインスタントかソーサリーを墓地からマナ・コストを支払わず唱える」というものを活用するテクニカルなデッキだ。
《夢の巣のルールス》を相棒とし、デッキ内のクリーチャーを2マナ以下のものに抑えてはいるものの、小粒とは思えないピリリとした刺激的な攻めが可能で、そのためこのデッキタイプを愛好するプレイヤーも少なくない。熟達したプレイヤーは「こんな状況から勝つのか」とため息が出るような逆転劇を起こす、ドラマチックなデッキでもある。
デッキとしては《縫い師への供給者》で切削するのがロケットスタート。
これで墓地を増やし、2ターン目に秘儀術師を展開。3ターン目には墓地から呪文を唱えて、という形でアドバンテージを取りに行く。
あるいは1ターン目は《思考囲い》から入って相手のプランを崩しつつ3ターン目に再利用という動きも◎。《縫い師への供給者》は適当にブロックして死亡させても良いし、《村の儀式》の生け贄に捧げるのもよし。墓地が肥えればそれだけデッキの選択肢は増える。
秘儀術師で呪文を唱えるだけでなく、ルールスを先頭に《立身 // 出世》の《立身》と、《死住まいの呼び声》《アガディームの覚醒》などが墓地から戦場へとクリーチャーを送り込む。
《立身》は1マナと軽い上に《出世》としても唱えられるので、秘儀術師などに速攻を持たせてパンチというダイナミックなターンを演出する。
また、貯まった墓地にある、土地を中心とした再利用しないカードは《死の飢えのタイタン、クロクサ》の脱出のための餌にしてしまおう。
墓地に関するカードが複雑なシナジーを形成しているのがおわかりいただけただろう。
秘儀術師で再利用して最もゲームに影響を与えるカードと言えばやはり《思考囲い》。土地以外であればなんであれ捨てさせることができるこのソーサリーで、コンボなどの勝ち手段やクリーチャー除去、その他厄介なパーマネントなどその状況で最も脅威となるカードを何回も捨てさせる。
この時、1回唱えるごとにライフが2点失われるのがこれまでのアルカニスト・デッキの弱点の一つであった。対戦相手は1回も攻撃していないのに、こちらのライフは非常ランプが点灯するレベルというのはあるあるな光景だった。
それを逆手にとって、《死の影》を迎え入れたのである。これはスマートなやり方だね。線の細いクリーチャーのみでジワジワ詰めていく構成だったためにライフが危険域に入ると不利な戦闘を強いられがちなデッキだったのだが、突然7/7とかそれ以上のサイズの《死の影》が戦場に出てきて、攻守両方こなしてくれる。これが本当~に頼りになるッ。
勝つまでに必要なターンが短くなるのも大きい。1マナと軽いのでルールスを出したターンにも無理なく唱えられるし、戦場に出て、生きてターンが返ってきたらもう対戦相手にかけるプレッシャーが尋常ではない。
この《死の影》をいち早く展開するため、《思考囲い》の他に土地の枠にも工夫が見られる。《血の墓所》は当然として、本来ならアンタップで出すと無茶苦茶しんどい《地下遺跡、アガディーム》(《アガディームの覚醒》の第2面)、さらには色マナを得ると1点失う《イフニルの死界》《ラムナプの遺跡》も加わって、土地を出してマナを生み出しているだけでライフが減るようになっている。死界も遺跡も、ゲーム終盤には最後の一押しになり得る能力持ちなのが良いね。
さらにこのデッキには、《村の儀式》を使うのであればということで《初子さらい》も投入されている。
対戦相手のクリーチャーをさらって生け贄にしてドロー、こちらは痛手を負わずにドローで相手はクリーチャー損失、最高だね。
この《初子さらい》、自身のクリーチャーに使える点にも注目したい。《死の影》やクロクサに対して使うことで、それに速攻を与えて即攻撃が可能なのだ。《出世》とも併せて奇襲を決めたいところ!
また2マナクリーチャーのチョイスも面白い。ライフを自ら吐き出していく《死の影》デッキということで、すでにヒストリックにいた《スカイクレイブの災い魔》を採用して新旧ライフ参照クリーチャーの共演だ!とやりたくなるのが人情だが、その気持ちをグッとこらえて《血空の狂戦士》を採用しているのだ。
このモヒカンがなかなか強い! 1ターンに2回呪文を唱えるなど楽勝なので、毎ターンじゃきじゃきとカウンターを得てデカくなる。墓地対策カードを出された際にも、それとは関係なく勝ちに行けるという点は非常に優れている。こちらが能動的にライフを減らしても《スカイクレイブの災い魔》は対戦相手がライフが多かったりすると2/2ぐらいでぴたっと止まりがちという弱点があり、それを嫌ってこのリストでは狂戦士の方を優先しているのだろう。
とにかく手数で攻めるデッキだった「ラクドス・アルカニスト」。そこに《死の影》が参入したことで骨太な殴り役も増え、デッキの完成度は増したのではないかな。今後のヒストリックでの活躍が見込まれるデッキ、およびカードなので、対策はしっかりとね。
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