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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ナヤ・フューリー(スタンダード)

岩SHOW

 マジックは英語の勉強になる。日本でも英語版のパックを購入、英語版のカードをプレイできるからだ。

 僕は中学1年生の時にマジックを始めた。当時の英語力ではさすがに英語のテキストを読むのは難しい。当時のテキストは今ほど洗練されていないので余計わかりにくいというのもあったが、何にせよ英語を学び始めた人間には難しかった。

 ただ英語版のカード単体で見るとわからなくとも、日本語版のカードと並べると法則性が見つかり、段々と意味が分かってくるものだ。マジックで頻発するテキスト「until end of turn」が「ターン終了時まで」ということがわかり、そこからuntilが「~まで」という意味ということが理解できた。こうやっていろいろな言葉を覚えたことは、教科書や英単語帳よりも身体に染みついているように思う(もちろんそれらでの勉強ありきだけどね)。

 また、英語を学ぶと同時に日本語を知る機会であることも忘れてはいけない。『プロフェシー』には「○○の化身」という名の、ある条件下でコストが軽くなるクリーチャーのサイクルがあった。その中に《憤怒の化身》というのがおり、これが見た目が実にカッコイイ。英語版のカードを見ると《Avatar of Fury》。他の化身たちにも「Avatar」というフレーズが見られ、これが化身という意味だということがわかった。

 そして「Fury」が「憤怒」ということになるのだが、そもそも憤怒ってなんだと。中学1年では耳にする機会もなかった(そもそも現在に至るまで日常会話で飛び交ったことはないが)。字面は怒が含まれているので怒っているのだろうということはわかる。そもそも読みがわからず、激怒と同じサウンドと捉えてひとまず「ふんど」と読んでいた。

 とりあえずこんな時はと国語辞書。そこには……「ふんぬ・あるいはふんど:激しい怒り。憤りのこと」のような旨が書かれていた。なるほど憤りと怒りの合体か、怒りの中でも最強クラスってことか。以後、この「Fury」というフレーズはマジックで常に目にすることになり、英語圏では結構使われる言葉なのかな、という学びを得たのだった。

 特に《憤怒の化身》と同じく赤のカードで見ることが多いね。赤は激情の色、感情を爆発させて怒りをむき出しにする呪文やクリーチャーたち、頭に血が上るようなカードの集合体。

 現在のスタンダードでは、2つの「Fury」カードに注目が集まっている。

liopoil - 「ナヤ・フューリー」
$5K Kaldheim Championship Qualifier 4位 / スタンダード (2021年2月21日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《
2 《平地
4 《岩山被りの小道
4 《針縁の小道
4 《枝重なる小道
3 《寓話の小道
-土地(20)-

4 《エッジウォールの亭主
4 《巨人落とし
4 《群れの番人
4 《砕骨の巨人
4 《恋煩いの野獣
4 《黄金架のドラゴン
-クリーチャー(24)-
4 《セジーリの防護
4 《憤激解放
4 《カズールの憤怒
4 《スカルドの決戦
-呪文(16)-
2 《灰のフェニックス
1 《傑士の神、レーデイン
3 《赦免のアルコン
1 《アゴナスの雄牛
1 《トーモッドの墓所
2 《レッドキャップの乱闘
2 《乱動する渦
2 《焦熱の竜火
1 《アクロス戦争
-サイドボード(15)-
MTGMelee より引用)

 

 その2枚は《憤激解放》と《カズールの憤怒》。

 これらを計8枚、最大枚数まで採用しているデッキがスタンダードに躍り出て、大きなインパクトを残した。「Fury」が主役なので「ナヤ・フューリー」とも呼ばれている。

 クリーチャーのパワーを倍にするものと、クリーチャーを生け贄に捧げてそのパワー分ダメージを与えるもの、確かにこれら2枚の相性は良い。ただ一緒に用いるのはマナも手札も必要で、なかなか普通のクリーチャーデッキでは扱いづらい。その問題点に関するアンサーが『カルドハイム』でやってきたのだ。

 2枚の憤怒カードと相性抜群なのは《黄金架のドラゴン》。

 5マナ4/4飛行・速攻。このスペックだけでも十分に強いドラゴンだが、さらに注目すべきは宝物に関する能力。攻撃するか呪文の対象になるかすると、宝物・トークンを生成する。そしてこの宝物からマナを2つ得られるようになる。殴れるクリーチャーで素のパワーも高め、そしてマナも得られる。「Fury」に求められるものを持っている!

 というわけで、動きの一例を。

  1. 5マナある状況で《黄金架のドラゴン》を唱えて、戦場に出たら攻撃。宝物・トークンを生成する
  2. ドラゴンを対象に《憤激解放》を唱える。宝物・トークンが生成され、ドラゴンのパワーが8になる
  3. その宝物でさらに《憤激解放》を。宝物が生成され、ドラゴンのパワーは16に
 

 なんと5マナから突然の16点ダメージ! ここに至るまでに《砕骨の巨人》で1回攻撃を通しておけば、もうそれだけで20点のライフを削り取って決着なのだ。

 6マナ以上ある状況で動けば、パワーを倍にしてから《カズールの憤怒》で投げつけることも可能だ。立派なコンボと言って差し支えなく、決まった時の爽快感も凄まじい。

 ゲームをいたずらに長引かせないので、長期戦を狙う相手やこちらの6ターン目以降を許してくれそうにない速攻デッキ相手にも、どちらにも有用なのがエラいねぇ。

 使用するカード自体はすべて赤なので赤単色のデッキで狙っても良いコンボだが、要求するマナシンボルはとりあえず赤が2つあればOKなので多色化しても問題はない。なんだったらそうした方が安心だ。

 白を足して《セジーリの防護》と併せて使うとコンボの完成度は高まる。

 ドラゴンを突撃させたところに《無情な行動》などの除去が飛んでくる→呪文の対象となったので宝物が生成され、そこから得たマナで防護を唱えてドラゴンにプロテクションを与えて除去を弾く。このアクションでもまた宝物が生成されるので、そこから憤激なり憤怒なりに繋ぐことも問題なしと完璧なのだ。除去だけでなく《サメ台風》などの飛行クリーチャーでのブロックもすり抜けられるので、これで安心安全確実な勝利をその手に収めよう。

 白を足すのであればさらに相性最強な《スカルドの決戦》も。

 これでドラゴンと「Fury」一式がめくれれば、次のターンには勝ちに行くぞと宣言したようなものだ。この英雄譚の能力でドラゴンに+1/+1カウンターを置くことで、20点を超えるダメージをはじき出せるようになるという点もパーフェクト。《スカルドの決戦》を使うデッキと言えば環境最初期に「ナヤ・アドベンチャー」が頭角を現したように、出来事とこのカードの相性もまた良好。というわけで緑も足してアドベンチャー・デッキとしても立ち回れる……死角のないデッキが完成したというわけだ。

 3色デッキであり、また土地の枚数を抑えて《カズールの憤激》《セジーリの防護》を土地としても運用することで回すデッキであるため、動きが円滑に行かないゲームもある。弱点はあるにはあるが、そのリスクに見合うだけのリターンは備えたデッキだ。勝つときの圧倒的なパワーで押し込む感覚は、ちょっとクセになる。

 サクッと勝ちたい、カードを組み合わせて勝ちたいというプレイヤーには現スタンダードで最もオススメできるデッキじゃないかな。いつでも一発逆転、一撃必殺。その憤怒を解き放って鮮やかに勝利してやろうじゃないか。

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