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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:Fastbond Amulet Titan(ヴィンテージ)

岩SHOW

 マジック:ザ・ギャザリングCool現象のひとつとして「あるフォーマットで活躍したデッキが他のフォーマットにも輸入される」というのがね、あると思いますよ。岩SHOWです。

 今週もやってきました「Cool Deck」のコーナー。あくまで私の個人的な感覚が審査基準、ビジュアルがカッコイイ、まさかのカードを主役にしている、なんだかわからんがとにかくいいぜこれ、そんな……一言でまとめればクールさを感じさせてくれたデッキを取り上げる、週に1回金曜日のお約束だ。

 今回紹介するクールなデッキは、冒頭でも述べたとおり、あるフォーマットから別のフォーマットへと、環境を渡り歩いてやってきたものだ。論よりリストってことで、早速だがその姿を拝んでいただこう。

Dominick Paolercio - 「Fastbond Amulet Titan」
The Mythic Society | Weekly | Vintage 3勝1敗 / ヴィンテージ (2021年2月4日)[MO] [ARENA]
1 《ドライアドの東屋
2 《Tropical Island
2 《Volcanic Island
1 《Taiga
2 《霧深い雨林
2 《沸騰する小湖
2 《魂の洞窟
2 《シミックの成長室
1 《グルールの芝地
1 《ボロスの駐屯地
2 《トレイリア西部
1 《ボジューカの沼
1 《処刑者の要塞
1 《軍の要塞、サンホーム
1 《露天鉱床
1 《不毛の大地
1 《ヴェズーヴァ
-土地(24)-

1 《溜め込み屋のアウフ
4 《原始のタイタン
1 《荒廃鋼の巨像
-クリーチャー(6)-
1 《Black Lotus
1 《Mox Pearl
1 《Mox Sapphire
1 《Mox Jet
1 《Mox Ruby
1 《Mox Emerald
1 《魔力の墓所
1 《召喚士の契約
1 《精神的つまづき
4 《精力の護符
4 《Fastbond
1 《Ancestral Recall
1 《渦まく知識
1 《思案
3 《定業
1 《Time Walk
3 《ヴァラクートの探検
1 《修繕
1 《緑の太陽の頂点
1 《大いなる創造者、カーン
-呪文(30)-
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale
1 《ラムナプの採掘者
1 《トーモッドの墓所
2 《狼狽の嵐
1 《三なる宝球
4 《虚空の力線
4 《意志の力
1 《マイコシンスの格子
-サイドボード(15)-
MTGMelee より引用)

 

このクールなデッキは?

 《Black Lotus》に各種Mox、《Ancestral Recall》に《Time Walk》……コストに見合わぬぶっ壊れた威力を持った呪文たち、通称「パワー9」。これをプレイできる構築フォーマットといえばヴィンテージ。

 というわけでヴィンテージ環境のこのデッキ、その出身地は……なんとモダン。現在の構築フォーマットをカードプールの広さ=使用可能なセットの古さ順に並べると、スタンダード、(立ち位置が難しいがヒストリック)、パイオニア、モダン、レガシー、ヴィンテージ、そして特殊なカードプールのパウパーが存在する。モダンからヴィンテージということは間のレガシーをすっ飛ばしているということで、その事実がもうクールに思える。

 モダン出身のこのデッキは「アミュレット・タイタン」。アミュレットは《精力の護符》、タイタンは《原始のタイタン》のことで、この2枚を組み合わせたコンボデッキである。

 タイタンは戦場に出た&攻撃したときに土地を2枚ライブラリーから戦場に出せる。基本土地に限らないので強力な土地を持ってこられるスーパークリーチャーなのだが、それらの土地がタップ状態で戦場に出るというのが唯一とも言える欠点。その土地を《精力の護符》でアンタップしてやることで、しっかりと土地からマナを得たり能力を起動したりできるようになる。

 《処刑者の要塞》で速攻を与えて攻撃し、《軍の要塞、サンホーム》で二段攻撃を与えて大ダメージというクールな勝ちパターンは、初登場時にはプレイヤーたちの注目の的となった。このデッキがなぜヴィンテージに?

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:ヴィンテージにしかない加速装置

 モダンでは《精力の護符》と、《シミックの成長室》などの通称「おかえりランド」とでマナ加速をして6マナのタイタンを早いターンに唱えることを狙っているデッキだ。

 2マナ出せる代わりに、タップ状態で戦場に出る&戦場に出た際に土地を1つ手札に戻さなくてはいけないというデメリットを抱えたおかえりランド。この弱点は《活力の護符》でアンタップすることで緩和し、手札に戻すという能力は《迷える探求者、梓》などの1ターンに出せる土地の数を増やすカードと組み合わせればメリットにすらなる。おかえりランドを出してアンタップしてマナを得たらそれ自身を戻して出し直す、ということを繰り返すわけだ。

 そしてヴィンテージには、梓も裸足で逃げ出すようなとんでもないカードがある。《Fastbond》だ。

 このエンチャント、1ターンに出せる土地の枚数という制限を完全になくしてしまう、ルールを強烈に破壊するものなのだ。2枚目以降の土地を出すと1点のダメージを受けるという形でデメリットが設定されてはいるが、スピード勝負・やるかやられるかのヴィンテージにおいて、ライフが失われることは他のフォーマットよりも痛みが薄い。ありったけの土地を置いてそのまま勝ってしまえばノーダメージと一緒だ。《稲妻》のようなプレイヤーにダメージを与えるインスタントもほとんど使われていないので安心してぶっ放せる。

 護符+おかえりランド+《Fastbond》。これぞ必勝のマナ加速システム! もちろんパワー9など{0}アーティファクトから得たマナを使って、1ターン目に決めることも可能だ。1ターン目タイタン、クール過ぎるなァ。

クールポイントその2:タイタンにはヴァラクートを添えて

 《原始のタイタン》といえば《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を思い浮かべるプレイヤーは少なくない。同時期にスタンダードに現れて、モダンなどでも今なお、お約束のコンボの1つとなっている。土地を並べるタイタンの能力と、山タイプの土地が戦場に並ぶことでダメージを誘発させるヴァラクートで大ダメージを弾き出すのだ。

 残念ながらこのデッキには山タイプの土地が少ないのでヴァラクートという相方は不在……じゃなかった。《ヴァラクートの探検》があった!

 土地が戦場に出た際に、ライブラリーの一番上のカードを追放してそのターン限りの擬似的なドローを提供するこのエンチャントもまた、タイタンや《Fastbond》との相性が抜群だ。特に《Fastbond》で上陸させまくり、おかえりランドにたどり着くという動きは見事なものだ。

 大量のマナを得ながら、そこから唱える勝ち手段にもアクセス可能という隙の無さ! クール極まるってもんだよ。フォーマットと時代を経て2021年のヴィンテージでタイタンとヴァラクートが巡り会う……デッキの背景、フレイバーもなんともクールだね。

クールテクニック!

 《ヴァラクートの探検》は追放したカードを唱えずにターンを終えた場合、それらのカードをすべて墓地に置いてその枚数分ダメージを与えるという能力も持っている。これはつまり、このダメージだけでもゲームに勝利しようと思えばできるということだ。

 例えば対戦相手が《汚染された三角州》などの1点支払う土地を起動したり、《古えの墳墓》から2点ダメージを受けていたり、何かしらの理由でこちらよりライフが少なかった場合。無理にタイタンを使わなくても《Fastbond》+《精力の護符》+《ヴァラクートの探検》+おかえりランドのセットを揃えて出し入れを行うだけでも十分に勝利へと至ることが可能となる。

 タイタン、探検、そして《修繕》と《荒廃鋼の巨像》の毒殺コンボ、《大いなる創造者、カーン》から引っ張ってきた《マイコシンスの格子》による封殺、勝ち手段はヴィンテージの中でも多い方だ。

 土地を24枚とヴィンテージの中ではトップクラスに大量にスロットを割いているにもかかわらず、この引き出しの多さはクールとしか言えないな。

さらなるクールのために

 《Fastbond》《精力の護符》と揃っている状況で最後のピースであるおかえりランドを持ってくることができる《輪作》は良いカードになるのではないか。

 相手のデッキによっては勝負を決める1枚となる《ボジューカの沼》《The Tabernacle at Pendrell Vale》のような土地をサーチするという戦略も取れるようになり、デッキの引き出しが増える。

 また、護符がなくとも「おかえりbond」で勝てるカードとして《遺跡ガニ》という選択肢も考えられる。

 戻ってくる土地を出すたびに3枚切削、相手のライブラリーを空にしてドローできない状況にして決着! 1ターン目にも決まりうるのがクール。

 《Glacial Chasm》もこのデッキをさらにスパイシーな味付けにしてくれる可能性がアリアリ。

 この土地がある限り一切のダメージを受けなくなるので、おかえりbondを好きなだけ繰り返すことが可能になる。古いカードの中には今には見られない、マナを出さないクールな土地がいろいろあるのだ。

クールなまとめ

 モダンのデッキをヴィンテージに持ち込み、ただパワー9や制限カードなどのぶっ壊れカードで補強しただけでなく《Fastbond》というこの環境だからこそ使えるカードと組み合わせてデッキとして完成させたのはお見事の一言。天晴れ、クールポイント50点差し上げます。

 皆も好きなデッキがあったら、それを他のフォーマットへと連れ出すというのに挑戦してみてほしいね。勝つか負けるか、失敗か成功かも大事ではあるが、何よりも楽しくクールな時間を味わうことに注力しながらやってみよう。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Be a titan!

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