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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ティムール・ギフト:デッキの芳香(ヒストリック)

岩SHOW

 強いデッキにはなんとも言えない芳香があることは皆さんもご存じのこと。素敵なリストに出会ったとき、辺りには芳醇な香りが立ちこめる。それぐらいウットリするっていう比喩表現ね。

 まあ芳香にもいろいろと種類がある。爽やか・刺激的・蕩けそうなほどに甘いもの……自分にピッタリのリストと出会ったときには君もその芳香に包まれる感覚を体験できるはずだ。

 つい先日、僕も野性味あふれつつも大樹のような優しさに満ちた芳香を放つリストと遭遇した。これは、俺の好きな香りだ……。

CCR - 「ティムール・ギフト」
ヒストリック(BO1) (2020年11月18日)[MO] [ARENA]
4 《繁殖池
4 《植物の聖域
4 《蒸気孔
4 《尖塔断の運河
1 《河川滑りの小道
4 《踏み鳴らされる地
3 《岩山被りの小道

-土地(24)-

4 《ボーマットの急使
4 《ギラプールの希望
4 《金のガチョウ
4 《機知の勇者
4 《湖に潜む者、エムリー
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ
2 《アクームの怒り、モラウグ
4 《石とぐろの海蛇

-クリーチャー(30)-
4 《来世への門
2 《王神の贈り物

-呪文(6)-
CCR氏のTwitter より引用)

 

 フォーマットはヒストリック、カラーリングは青赤緑のティムール。この組み合わせはかなり人気が高く、色合いからもフレッシュかつ燃え上がるような、エネルギーに満ちた芳香を感じるものである。

 そして分類上はコンボである。ティムール・カラーのコンボなんて、それだけで南国のフルーツと海辺の香りが漂ってくるな。

 してその正体は「ティムール王神」。キーカードは《王神の贈り物》。

 戦闘開始時に墓地のクリーチャーを元にしたゾンビ・トークンを生成。4/4というサイズで出てきたそれが即攻撃するだけでも脅威だが、戦場に出た際に誘発するものなど各種能力を使ってより美味しく運用することが勝利への鍵となってくる。

 この大型墓地利用アーティファクトを唱えられれば良いが、コストが{7}のカードに頼るのは少々心許ない。他のデッキがそれを許してくれるほどのんびりはしていないからだ。

 なので、これをもっと低コストで戦場に出せるように《来世への門》を用いる。

 自身の墓地にクリーチャーカードが6枚以上落ちていればこれの能力でギフト(贈り物)を直接戦場に出せる。これを目指してクリーチャーを生け贄に捧げたり自身のライブラリーを切削するデッキを「○○ギフト」と呼ぶ。このリストは「ティムール・ギフト」。あまり聞かない色とデッキ名の組み合わせだが、それゆえに芳醇な香りが立ちこめるというものだ。

 デッキの性質上、それを構成するのは門とギフトのパッケージと、残りは大量のクリーチャー。不純物が混じるとデッキの動きが悪くなる、それゆえのピュアさが心地よい香りを運んでくる。

 ギフトで釣り上げたいゴール的な立ち位置のクリーチャーは《アクームの怒り、モラウグ》。

 これのコピーであるゾンビを生み出して戦闘を終え、続くメイン・フェイズで土地を戦場に出せば上陸能力が誘発。追加の戦闘フェイズに突入するのだが、このデッキでそれの意味するところは他のデッキとは比較にならない。ただ攻撃できる回数が増えるだけでなく、戦闘の開始時に能力を誘発させるギフトの恩恵をもう一度受けることができるのだ。これぞコンボデッキ、勝ちパターンに持ち込んだら一気に畳みかけて勝機を逃さない!

 他のクリーチャーたちもゾンビ化させて得できるものが揃っている。《機知の勇者》はドローしてから捨てる能力、通称ルーティングで墓地にクリーチャーを送り込む要員でもあり、ギフトによりパワー4となった暁には引く枚数が捨てる枚数を上回るのでアドバンテージももたらしてくれる。

 デッキの性質上、クリーチャーを単純な破壊やダメージによって除去されても何度も蘇るそのしぶとさにより長期戦は得意としているが、手札も増えるとあってはどんなデッキにとっても脅威となることだろう。

 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はコピーとして出てきても脱出していないのですぐに消えてしまうが、ドローとライフ回復とマナ加速をもたらす1つの選択肢となるだろう。墓地を肥やしてもギフトが封じられている、という時の勝ち手段として脱出させられる点もナイス。

 ウーロに加えて《ボーマットの急使》と、自ら生け贄になり墓地を増やすクリーチャーにも恵まれている。《来世への門》はクリーチャーが死亡した時に能力を誘発させ、ライフ回復とルーティングでさらに墓地を増やす。《石とぐろの海蛇》が採用されているのは実はこのためで、X=0で唱えてルーティングすることを狙っているのだ。

 墓地を満たす役目は《湖に潜む者、エムリー》が最も長けている。

 彼女はただ切削するだけでなく、墓地からアーティファクトが唱えられるというのもこのコンボと噛み合っている。門やギフト、場合によっては海蛇やボーマットを再利用してゲームを理想の展開へともっていこう。

 『カラデシュリマスター』からの新戦力としては《ギラプールの希望》がフル投入されている。

 攻撃を通すことで、生け贄に捧げて相手の非クリーチャー呪文を封じてしまう、見た目よりも厄介な飛行機械だ。キーカードである《来世への門》などを打ち消されずに唱えるために、返しでの除去や手札破壊によるプラン崩しを避けるために、相手のコンボが決まるのを防ぎつつ殴り勝つために……その能力はさまざまな局面で役に立ち、デッキとも上手く噛み合っている。今後、ヒストリックにおいて他のコンボデッキなども採用し、相手の妨害を乗り越える手段として繰り出してくるかもしれない。要注目のシブい1枚だ。

 色鮮やかで、かつプレイしていて楽しそうなルックス。そんなリストを見ると、理想の芳香に包まれたと、そう錯覚してしまう。このリストはBO1(メイン1本勝負)専用のもの。サイドボーディング後はどうしても墓地対策に苦戦することになるので、何か他の戦略を用意してそちらに切り替えて戦うプランを備えておけば、マッチ形式でも戦えるものになるかもしれない。幸い、クリーチャー主体デッキなのでシンプルに殴り勝つ側面を強化するという、わかりやすいプランがある。

 ぜひとも、このリストから立ち上る香りを、ネクストレベルに引き上げてやってほしい。

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