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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:ビビっとくるマルドゥ2選(スタンダード)
通勤の自転車、すっかりクールさを感じるような季節になりました。今週のCool Deck、始めたころは夏でしたね――てなわけで今週も私、岩SHOWがデッキリストを巡る旅の道中に見つけた「こいつぁクールだ」と感じたデッキを紹介していこう。
今週は日本選手権2020冬に向けて、日々行われている予選イベントの中からグッときたデッキを2つ紹介しよう。
今回の日本選手権シリーズでは、参加権利をかけた大会での不戦勝をかけて日々デイリートライアルが開催されている。ここで勝つことが日本一の座をかけた戦いに向けた第一歩と言えるだろう。平日大会といえど、自ずとその内容は濃くハイレベルなものになる。ある者は学業を終えて、ある者は仕事を終え、帰宅してから戦いに臨んでいることだろう。マジックにかけるその思い、その姿勢自体がもうクールなものだよ。全参加者に敬意を抱きつつ、デッキリストに目を通させていただいている。
すべてのデッキが勝つわけでも結果を残すわけでもないが、野心的なリストを見ると胸が躍るものだ。11月4日の予選では2種類の白黒赤、マルドゥと呼ばれるカラーリングのデッキが使用された。色は同じでもアプローチは全くの正反対で、なんともクールに見えたね。
それじゃあ早速1つめのリストのご紹介だ!
2 《山》 4 《平地》 3 《沼》 4 《サヴァイのトライオーム》 4 《悪意の神殿》 4 《針縁の小道》 4 《静寂の神殿》 4 《陽光昇りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(33)- 4 《砕骨の巨人》 4 《スカイクレイブの亡霊》 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 -クリーチャー(11)- |
1 《塵へのしがみつき》 4 《ガラスの棺》 4 《精神迷わせの秘本》 4 《鍛冶の神のお告げ》 2 《無情な行動》 4 《太陽の神のお告げ》 2 《エルズペスの悪夢》 1 《髑髏砕きの一撃》 4 《予言された壊滅》 3 《絶滅の契機》 3 《エルズペス、死に打ち勝つ》 3 《エメリアの呼び声》 1 《破滅の根本原理》 -呪文(36)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 3 《スカイクレイブの影》 1 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 2 《悪斬の天使》 2 《苦悶の悔恨》 3 《裏切る恵み》 1 《絶滅の契機》 2 《破滅の根本原理》 -サイドボード(14)- |
このクールなデッキは?
現スタンダードにおいて多くのプレイヤーが使用しているのが「グルール・アグロ」。クリーチャー主体で《エンバレスの宝剣》《グレートヘンジ》で勝ちに行くデッキであり、シンプルながら強力。
これに抵抗するにはクリーチャーをはじめとしたパーマネントへの対応力が求められる。そうしたカードで固めたデッキは白を含むことが多く、同じ白いデッキであれば相棒として設定でき、各種誘発型能力を持ったパーマネントをいったん追放して戻し能力を使い回す――通称ブリンクを行うことで形成を一気にこちらの有利なものに引き込める《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使った方がお得だということで、「○○・ヨーリオン」デッキもまた数を増やしている。
そのバリエーションは多数あるが、このデッキのようなマルドゥカラーのものは比較的珍しい。この3色はパーマネントの破壊に長けたものの組み合わせであり、その象徴でもある《破滅の根本原理》を見れば一目瞭然。《ガラスの棺》《鍛冶の神のお告げ》などで除去して序盤をしのぎ、相手が再展開してきた最後の戦力をヨーリオンのブリンクによって処理してケリをつけるのだ。
どこがどうクールなのか?
クールポイント:ブリンクのためだけではないパーマネントに寄せた構成
クリーチャー除去や、手札やライフを得たりするための手段を、使い切りのインスタントやソーサリーよりもエンチャントなどのパーマネントを主体とした構成にしているのはヨーリオンのためだけではない。このデッキのもう1つのキラーカードは《予言された壊滅》!
毎ターン各プレイヤーにトークンでないパーマネントの生け贄を強要する、締め上げるタイプのエンチャントだ。相手のパーマネント数を極力減らすことで効果を発揮し、かつ複数回能力を誘発させたいのであればこちらも生け贄を用意しなければならない。各種お告げや英雄譚など仕事を終えたカードをこれの維持コストに充ててやろうというわけで、このような構成になっている。
オルゾフ(白黒)、エスパー(白青黒)といったカラーパターンでもこの二段構えの構成は見られるが、マルドゥはひときわクールだ(個人的には赤でなく緑、アブザンも良いね)。
クールテクニック!
ヨーリオンは相棒とメインデッキに計4枚フル投入されている。そのため2枚以上が手札にやってくることもあるだろう。伝説のクリーチャーなので2体並べることはできないが、うまく使えば3枚分の働きをさせることもできる。1枚目のヨーリオンを戦場に出して使い回したいパーマネントをブリンクし、続くターンで2枚目のヨーリオンを唱える。
戦場に出たことで、すでにいるヨーリオンとどちらを残すかの選択を迫られる。この時に古い方を残すと、その後解決される新しいヨーリオンの能力で古いヨーリオンをブリンクできる。そうして戻ってきた初代ヨーリオンが2回目の能力を誘発させ、計3度のブリンクを行えるのだ。
オーバーキルな場面もあるだろうが、同じカードならより強く運用することを妥協しないのがクールってもんだ。
2 《山》 5 《沼》 4 《サヴァイのトライオーム》 2 《悪意の神殿》 1 《針縁の小道》 2 《陽光昇りの小道》 1 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(21)- 4 《スカイクレイブの影》 4 《嵐拳の聖戦士》 4 《砕骨の巨人》 4 《悪魔の信奉者》 4 《悲哀の徘徊者》 4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 1 《悪ふざけの名人、ランクル》 1 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(26)- |
4 《初子さらい》 3 《村の儀式》 1 《血の長の渇き》 4 《髑髏砕きの一撃》 1 《アクロス戦争》 -呪文(13)- |
3 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 2 《アゴナスの雄牛》 4 《強迫》 2 《レッドキャップの乱闘》 1 《血の長の渇き》 3 《取り除き》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
こちらはうって変わってクリーチャーが主体のリスト。掲載サイトの分類では「マルドゥ・ウィノータ」。《軍団のまとめ役、ウィノータ》を用いて、非人間クリーチャーの攻撃から人間クリーチャーの展開に繋げてライフを一気に詰める大技を持ったビートダウンの総称だ。
ただ、このデッキには《平地》が入っておらず白マナの出る土地は少なめ、白いクリーチャーもほぼウィノータのみという構成。多くのウィノータデッキが白主体であることを考えると、趣が少々異なる。黒赤のクリーチャーデッキに《サヴァイのトライオーム》などで色を足せるからウィノータを入れたと考える方が自然だろう。
ブン周りパターンを増やしてデッキパワーを高めつつ、メインの狙いはもう1つ別にある。
どこがどうクールなのか?
クールポイント:奪って生け贄、それがラクドスのやり方
メインカラーは黒と赤、いわゆるラクドス。黒は生け贄を要求するカードが多く、赤は一時的に相手クリーチャーのコントロールを奪うのが得意。これらを組み合わせたものが、一般的なウィノータ・デッキとは異なるこのデッキのクールな勝ち筋なのである。
《初子さらい》《アクロス戦争》で奪ったら《悲哀の徘徊者》《村の儀式》で生け贄だ。
こうすることで、
- クリーチャーを奪ってこちらの攻撃が通る
- 奪ったクリーチャーでも攻撃してダメージが上乗せ
- 相手のクリーチャーが1体減るのでこちらのライフも守れる
と、まさに良いことずくめ。また、赤いコントロール奪取が引けない時や相手がそもそもクリーチャーを展開してこないときはこちらのクリーチャーを生け贄に捧げて占術やドローを行う。その生け贄は除去の対象になり死亡が確定しているものでも良いし、上陸で再出撃可能な《スカイクレイブの影》も適役だ。
影はデッキ内の生け贄要求カードすべてと噛み合い、2マナでパワー3と打点も優秀、人間でないのでウィノータの誘発を招き、消耗戦の末にはキッカーで5/3になってくる、とにかく強い。まさに影の主役なのである。
クールテクニック!
このデッキならではの面白いカードは《悪魔の信奉者》。このカードの価値を最大限に引き出すと勝ちが舞い込んでくるとも言える。
先述のように《スカイクレイブの影》を生け贄に捧げることで相手の戦場からクリーチャーを排除しつつ3/1がいるという状況を維持、もしくは《初子さらい》で奪ったものを生け贄に捧げて瞬間的に相手のクリーチャーを2体処理できれば、対グルールなどのクリーチャーデッキ戦はだいぶ楽になるだろう。
これが人間であるということもウィノータ採用を後押ししたのかもしれない。こういうカードを使いこなしてこそ、真のクールは訪れる。
以上、日本選手権のデイリートライアルに現れたクールなマルドゥをお届けさせてもらった。真剣勝負の舞台にもクールなデッキは出現し、時としてそのクールが常識となることもある。大会だからこのデッキはやめておこう、と遠慮するのはクールじゃないぞ。自分にとってのベストデッキ=クールデッキだとそれは幸せなことだね。それじゃまた来週! Stay cool!!
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