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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
Eureka Tell(レガシー)
マジックの背景世界は、僕らの住んでいる世界とは異なる多元宇宙を舞台に繰り広げられている。カードに描かれているイラストは、遠く離れた別の宇宙で起きているワンシーンを切り抜いたものだと考えるといい。
そこには和風だったり古代エジプトやギリシアの文明によく似た世界だったりが描かれているが……僕らの住むこの次元との直接的な繋がりがあるわけではない。MTGアリーナでの音声では彼らが英語を喋ってはいるが、意思伝達にアルファベットを用いているわけではないようだ。時折ルーン文字など、彼らが使用している言語がカードに描かれることもあり、なんとも興味深い。
ただ、マジックの初期のころにはこういった設定をスルーして普通にアルファベットが使われているシーンを切り取ったイラストもあったりする。それはそれでなんとも味があって面白いものだ。有名なところでは《実部提示教育》。
初出の『ウルザズ・サーガ』のイラストでは背景の黒板にSHOWとTELLと書かれている様をはっきりと目にすることができる。トレイリアでは普通にアルファベットを使っていた可能性があるのか? 妄想は膨らむばかりだ。
そしてもう1つ、アルファベットだけではなくアラビア数字や記号まで登場しているのが《Eureka》(日本だとギリシア語の発音に合わせてエウレカと読まれることが多いね)。
「E=MC²」と書かれた黒板のようなものを持ってエレメンタルか何かがポンと出てきた瞬間なのだろうか。大はしゃぎしている魔道士の笑顔がまぶしい。この公式はエネルギーと質量、光速度の関係を示すもので、かのアルベルト・アインシュタインが発表したもの。多元宇宙のどこかではこの法則に魔術を用いて到達したものがいるということか。
「Eureka(エウレカ)」とはギリシア語で「わかったぞ」の意味で、数学者アルキメデスが叫んで町中を走り回ったというエピソードから、何かを閃いた時に用いられるフレーズだ。
《実部提示教育》と《Eureka》、学術的なシーンを描いているという点でも共通点のあるこの2枚のソーサリーは、その効果もよく似ている。すべてのプレイヤーが順番に手札からパーマネントを出し続けるというド派手な《Eureka》を調整し、全プレイヤーが1枚ずつに固定したのが《実物提示教育》。どちらも本来のコストを無視してパーマネントを展開できる一種のマナ加速で、特に《実物提示教育》はレガシーで昔から高い人気を誇るコンボデッキのキーパーツだ。
これの5枚目以降として《Eureka》を用いるスタイルのデッキを、両者のカード名から「Eureka Tell」と呼ぶ。3マナ、あるいは4マナから展開するパーマネントは……
2 《冠雪の島》 4 《Tropical Island》 1 《神秘の聖域》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 2 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 2 《古えの墳墓》 2 《裏切り者の都》 -土地(19)- 3 《グリセルブランド》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(4)- |
4 《水蓮の花びら》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 1 《定業》 4 《夏の帳》 1 《衝動》 1 《森の知恵》 4 《狡猾な願い》 4 《実物提示教育》 1 《直観》 1 《Eureka》 4 《意志の力》 4 《全知》 -呪文(37)- |
3 《花の絨毯》 3 《墓掘りの檻》 1 《狼狽の嵐》 2 《残響する真実》 1 《蟻の解き放ち》 1 《自然への回帰》 1 《直観》 1 《テフェリーの世界》 1 《呼応した呼集》 1 《火想者の予見》 -サイドボード(15)- |
《全知》!
すべてを知ることで呪文を唱えるためのマナが不要になる、この巨大エンチャントを戦場に叩きつける。これさえでればもうゲームに勝ったも同然だ。
マナ・コストを無視して繰り出されるのは《グリセルブランド》。
彼の能力で7枚、14枚と引いたら、そのすべてがそのままプレイ可能。何だってできてしまう。《引き裂かれし永劫、エムラクール》で追加ターンを迎えつつそのまま殴り勝つ、これがシンプルでわかりやすい。
グリセルもエムラも、単体で《実物提示教育》なり《Eureka》なりから出してゲームを決めるだけのパワーが十分にある点もポイントだ。
もう1つの勝ち筋は《全知》からの《狡猾な願い》。これで《蟻の解き放ち》を持ってきて、《渦まく知識》や《思案》でライブラリーの上にエムラクールなどの重たいカードを置き、解き放ちを唱える。
1点ダメージからの激突で、ほとんどの場合こちらの重いカードのほうが相手より点数で見たマナ・コストが上なので、解き放ちが手札に戻る。1点1点1点……とマシンガンのように撃ち続けて勝利する。
《全知》設置前には《直観》などを、全知後は《火想者の予見》《呼応した呼集》などを持ってきて蟻コンボなりエムラ追加ターンで勝つなりをサポートする、《狡猾な願い》は最重要カードと言えるかも。
クリーチャー二大巨頭で勝つことに絞った場合、《Eureka》ではなく《騙し討ち》を用いることが多い。エウレカで勝つということは緑を足すのであり、《騙し討ち》が使えない分、緑のカードが使えるという点に利を見いだした構築ということになる。
緑を足すことの恩恵、それは青いデッキへの耐性が大幅に上がるということ。メインに4枚投入された《夏の帳》!
これを唱えたターンにこちらの呪文を打ち消されなくしてくれるインスタントで、相手の《意志の力》などの打ち消しをこれとこちらも打ち消しを使うことで、強引に押し通してしまえる形になっている。たった1マナで、しかも1枚ドローまでついていて、まさしく最強の1枚だ。打ち消しだけでなく青と黒に対する呪禁を得ることで《思考囲い》などの手札破壊や《残響する真実》のようなパーマネント対策もスパッと弾いてしまう、防御面では完璧とも呼べる1枚だ。これのために緑を足し、だったらということで《Eureka》が足されているというのが正しい見方ではないだろうか。
もう1つ、サイドボードから入る《花の絨毯》も青殺しだ。
1ターン目に出せて、以降は相手の島の数だけ毎ターン好きなマナが手に入る。色対策カードの中でもずば抜けて効果の高いものの1つで、これにより《実物提示教育》および《Eureka》を早いターンから仕掛けたり、絨毯複数設置からの10マナで《全知》素出しという荒技も狙えたり。かなりデンジャラスなカードなので青いデッキを使うプレイヤーは気をつけるべし!
マジックの世界の面白さを体現する《実物提示教育》と《Eureka》。今後もこれらのカードのようにアルファベットや、その他の実在言語が書かれたカードが登場するかもしれないね。例えば日本語なんかが……それらもこの2枚のように強く、デッキを生み出すようなカードであることを願うばかりだ!
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