READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

バント・パーティー(ヒストリック)

岩SHOW

 組みたいデッキを思いついたとする。あれとあれを組み合わせよう!みたいな感じに。で、それを実行する。その結果、理想的なデッキが組み上がることもある。想定したターンに想定通りの動きができて楽しいね、と。

 でも、多くの人はそうはならないという経験をしたことがあるはずだ。なぜデッキが思い通りに動かないのか、その多くは多色デッキにて起こる。2色ぐらいならなんとかなるが、3色以上になると生半可な土地構成では必要なマナを得られない。特にスタンダードは使用可能なセット数が定まっているので、タイミングによっては2色以上を生み出す土地が全くないということがある。

 2020年11月現在のスタンダードは、ローテーション後1セットしか出ていない状態なので、最もカードプールが狭い状態だ。2色ないし3色土地の枚数自体はそれなりに多いが、《神秘の神殿》《ゼイゴスのトライオーム》のようにタップ状態で出るものが大半を占め、『ゼンディカーの夜明け』で登場した両面2色土地も6種類しかない状況だ。

 タップ状態で出ることを許容できるゆっくり戦うデッキであれば多色でも問題はないが、毎ターンマナを使い切ってクリーチャーを展開したい攻めるデッキは2色以下かつ両面土地を持つ色の組み合わせ以外は組みにくいというのが現状だ。土地が増えるまではおとなしく我慢するのが良いのか……

 否、組みたいデッキがあるのであれば待つ必要はない。土地が、マナ基盤が強いフォーマットに移ればいいのだ。MTGアリーナをやっているのであれば、スタンダードでうまく動きそうにないデッキはヒストリックに持ち込めばいい。

 ちょうどそのような思想で組まれたデッキを見つけたのでここで紹介しよう。白青緑の3色、バントカラーと呼ばれる組み合わせのデッキだ。

SoulArcher - 「バント・パーティー」
ヒストリック(BO1) (2020年11月3日)[MO] [ARENA]
4 《神聖なる泉
4 《氷河の城砦
4 《寺院の庭
4 《陽花弁の木立ち
4 《枝重なる小道
4 《古代の聖塔
-土地(24)-

4 《イオナの大司祭
4 《光輝王の野心家
4 《敏捷な罠探し
4 《歴戦の神聖刃
4 《タジュールの模範
1 《尊敬される語り手、ニアンビ
4 《拘留代理人
1 《玻璃池のミミック
3 《海門の擁護者、リンヴァーラ
3 《兵団の統率者
-クリーチャー(32)-
4 《訓練された戦術
-呪文(4)-
SoulArcher氏のTwitter より引用)

 

 クリーチャーに関してはほぼスタンダードのものでありながら、24枚の土地はほぼヒストリックならではのものという極端な構成が面白い。

 《神聖なる泉》などの2種類の基本土地タイプを持った通称ショックランド、そして特定の基本土地タイプをコントロールしていればアンタップ状態で出せる《陽花弁の木立ち》などの通称コアランド(M10ランド、チェックランド、バディランドと、なぜかこの土地サイクルには通称が多いね)。

 これらの組み合わせは本当に安定した多色デッキを組ませてくれる、数年前のスタンダードが懐かしくなるなぁ。

 それらに加えて、非クリーチャー呪文が4枚だけという構成だからこそ使用可能な《古代の聖塔》が3色という構成をガッシリと支える。クリーチャー限定とはいえ、5色の好きなマナがデメリットなしで得られるアンタップで出せる土地というのはなかなかお目にかかれない。

 で、その盤石のマナ基板を背にクリーチャー主体で何がしたいかというと、最新セットの『ゼンディカーの夜明け』が推奨する「パーティー」デッキだ! スタンダードを去った土地が最新のメカニズムを支えるって、それだけでなんだかグッとくるな。

 パーティーは当コラムでも何度か取り上げたが、戦士・ウィザード・ならず者・クレリックの4種類の職業を数えて何かしたり、すべて揃っているとボーナスが得られたりする能力を持ったカードを使ったデッキだ。

 このデッキの場合、パーティーが全員揃っていると……《イオナの大司祭》でクリーチャーを強化しつつ飛行を与え、《海門の擁護者、リンヴァーラ》で相手のパーマネントを1つ封じ、《敏捷な罠探し》で攻撃を通したクリーチャーの数だけドローし、《兵団の統率者》で全体強化&破壊不能で強引に勝ちにいける。理想的な状況なのでこれを速やかに目指したい。

 そのために《光輝王の野心家》や《歴戦の神聖刃》といった各職業の中でも特に優秀なクリーチャーをピックアップして採用している。

 早いターンからこれらをガンガン展開し、単体の性能でも盤面を押しつつパーティーが揃う4~5ターン目以降に本領を発揮して押しつぶす形になる。

 貴重なウィザードとしてカウントできる上に、クリーチャーだらけのこのデッキにおける除去の役目を果たす《拘留代理人》は重要な存在だ。

 ここまで書いてきて、緑のカードが全く出てこない。それもそのはず、1種類しか採用されていない。たった1種4枚、されどその4枚があるとないとではパーティー・デッキの質は大きく異なるレベルのものであるため、わざわざ色を足してまで使われているのだ。

 《タジュールの模範》は2マナ3/2と攻める視点で見れば優秀なスペックで、かつパーティー構成員のすべてのタイプを持っている。欠員があってもこれ1枚で都合よく埋めてくれるというわけだ。

 そしてキッカーで唱えた際にはライブラリーから他の構成員を引き連れてやってくる。この能力は《神の怒り》などで戦場をリセットしようとしてくるデッキ相手にもカードの枚数で勝負を仕掛けられるので非常に頼もしい。

 スタンダードで青白パーティーにこれのためだけに緑を足す、という構築は難しいかもしれないが、ヒストリックであればそれを許容してくれる。なんとありがたい話だろう、遠慮せずに存分に使おう。

 使えるカードが多いフォーマットであれば、数多ある選択肢が組みたいデッキを成立させてくれる。逆にカードが少ないフォーマットであれば、どうやって思いを形にするかあれこれ考えて工夫するのが楽しい。それぞれの良さがあるが、マナ基盤に甘えたいときは広いフォーマットの懐に飛び込んで楽しくやらせてもらうのがいいね!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索