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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

名古屋、ブリュッセル、初のプレイヤーズツアー王者(パイオニア)

岩SHOW

 《真実を覆すもの》により自身のライブラリーをごっそりと消し去って勝利するデッキは、プレイヤーズツアー・名古屋とブリュッセルの直前に出現。この2つのトーナメントにおいて、覆すものデッキは数でも成績でも存在感を示した。

 間違いなく主役と言えるデッキであったが、しかしながらこのエルドラ―ジを用いるデッキは両方のトーナメントで優勝を逃している。パイオニアの激戦を生き延び、トロフィーを勝ち取ったデッキを紹介していこう。

原根 健太 - 「バント・スピリット」
プレイヤーズツアー・名古屋2020 優勝 / パイオニア (2020年2月1~2日)[MO] [ARENA]
2 《
2 《平地
4 《神聖なる泉
4 《氷河の城砦
4 《繁殖池
4 《植物の聖域
4 《寺院の庭

-土地(24)-

4 《霊廟の放浪者
2 《幽体の船乗り
4 《鎖鳴らし
4 《無私の霊魂
4 《至高の幻影
4 《天穹の鷲
4 《ネベルガストの伝令
4 《呪文捕らえ
2 《厚かましい借り手

-クリーチャー(32)-
4 《集合した中隊

-呪文(4)-
2 《蔓延するもの
4 《拘留代理人
1 《大天使アヴァシン
2 《安らかなる眠り
1 《軽蔑的な一撃
4 《神秘の論争
1 《残骸の漂着

-サイドボード(15)-

 

 まず1つ目は、名古屋の頂点に輝いた「バント・スピリット」。

 パイオニア制定当初、《集合した中隊》に注目したクリーチャーデッキがいくつか登場した。青と白のスピリットをこの呪文から展開し、《至高の幻影》《天穹の鷲》によって打点を引き上げて殴り勝つ「バント・スピリット」も同じくパイオニアの最初期のデッキとして使用されていた。

 中隊なしでも安定して十分に戦えることから色を減らした青白2色型の安定感が高く評価されて流行。プレイヤーズツアーでも高い使用率を誇ったが、ここに来て、また緑を加えて爆発力を増したものが優勝したのだからマジックは面白い。

 《至高の幻影》《天穹の鷲》がオフェンス担当なら、このデッキにはディフェンスも立派にこなす連中も揃っている。と言っても、それらもクリーチャーであり攻撃するのでオフェンスも兼ねており、しかもいずれも飛行持ちなので殴り合いを一方的に制することも可能なのが、スピリットで固めたデッキの強みだ。

 単体の除去呪文は《鎖鳴らし》、全体除去は《無私の霊魂》。相手の攻撃やブロックは《ネベルガストの伝令》で防ぐ。

 コンボにも打ち消し能力を持った《呪文捕らえ》《霊廟の放浪者》で対処と隙がない。

 青白2色型では、デッキ内の最強スピリットとも言える《呪文捕らえ》と相性抜群の《時を解す者、テフェリー》を組み合わせるのが定番だが、テフェリーで相手のインスタントを縛るよりも《集合した中隊》のもたらすバリューを優先した形になっている。どちらが有用かは、全体的なデッキ分布に左右されるものなので、ここは読みもバッチリとハマったのだろう。

 緑を足したことで中隊以外にサイドボードの幅が広がるという恩恵も。誰もが忘れていたようなクリーチャー、《蔓延するもの》の姿には驚いた。

 アグロデッキ全般に対して地上に立ちふさがり、相手のクリーチャーをブロックして戦闘ダメージを与えれば自分のコピーへと変身させてパワーダウンさせる。タフネスが3あるため対赤単において簡単に処理されず、《アーティファクトの魂込め》も無力化させることもできる、となかなかやりよる1枚のようだ。これできちんとタイプもスピリットなので、シナジーもしっかりと満たしてくれるナイスなやつだ。

Joel Larsson - 「スゥルタイ昂揚」
プレイヤーズツアー・ブリュッセル2020 優勝 / パイオニア (2020年1月31日~2月2日)[MO] [ARENA]
1 《
1 《
2 《
1 《華やかな宮殿
4 《草むした墓
4 《花盛りの湿地
1 《湿った墓
4 《繁殖池
1 《植物の聖域
1 《ギャレンブリグ城
3 《寓話の小道

-土地(23)-

4 《サテュロスの道探し
3 《ヴリンの神童、ジェイス
1 《漁る軟泥
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ
2 《クルフィックスの狩猟者
1 《残忍な騎士
1 《不屈の追跡者
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
1 《約束された終末、エムラクール
1 《歩行バリスタ

-クリーチャー(19)-
4 《致命的な一押し
4 《思考囲い
3 《ウルヴェンワルド横断
2 《突然の衰微
2 《忌まわしい回収
1 《最後の望み、リリアナ
2 《世界を揺るがす者、ニッサ

-呪文(18)-
1 《再利用の賢者
1 《不屈の追跡者
1 《人質取り
1 《強迫
2 《軽蔑的な一撃
1 《喪心
1 《害悪な掌握
2 《神秘の論争
1 《スゥルタイの魔除け
3 《虚空の力線
1 《ビビアン・リード

-サイドボード(15)-

 

 こちらはブリュッセル優勝の「スゥルタイ昂揚」。ここにきて、まさかの昂揚デッキが頂点に立つとは思いもしなかったのが正直なところ。

 墓地にあるカード・タイプが4種類以上であれば効果が増す「昂揚」能力を持ったカードの中でも、蜘蛛・トークンを3体生み出してゲームを終わらせる力を持った《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と、ライブラリー内のどんな土地やクリーチャーでも探してこれるようになる《ウルヴェンワルド横断》を用いることを狙っている。

 《サテュロスの道探し》でライブラリーを掘ったり、《ヴリンの神童、ジェイス》で複数のタイプを持つカードを捨てることで条件を満たすのだ。

 能動的に墓地に落ちるクリーチャー・カードである《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はまさにうってつけの1枚である。

 これと《クルフィックスの狩猟者》で土地を伸ばして《不屈の追跡者》から手掛かりを増産したり、《約束された終末、エムラクール》の降臨を1ターンでも早くしたりしつつ、貯まった墓地を糧にウーロ本人も戦場に出てきてフィニッシャーになれる、と良いことしかない。マナと墓地を両方育てて、ウルヴェンワルドから1枚挿しのカードを引っ張ってきて戦う……盤面構築が好きなプレイヤーにはたまらないデッキと言えよう。

 どちらのデッキも、プレイヤーズツアーを優勝するデッキとして予想していたプレイヤーは少なかったことだろう。そういうのが勝つから、競技マジックは奥が深い。今後のパイオニアの動向にも影響を及ぼすことは必至なので、各デッキの勃興から目を離さずに追っていきたいところだね。

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