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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
スパイシーなケシス・コンボ(スタンダード)
最近、英語圏のデッキリスト関連の記事やツイートなどでよく目にするようになったフレーズがある。「spicy」だ。
読みはそのまんまスパイシー。ピリ辛なカレーを食べた時にいったりするアレだ。日本語で言う「アツい」とかの表現に近いのだろう、独創的で、他とはひと味違うカードチョイスやデッキを「スパイシーなデッキだぜ!」と紹介する記事がイベントごとのお約束になっている。最も個性にあふれて、見るだけで刺激的なデッキリストは「spiciest deck」なんて呼ばれるもんだ、なんだか憧れるね~痺れるデッキビルダーになりたいもんだ。
2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)でも、各デッキの勝率を紹介するとともに個性的なデッキを紹介するコラムが掲載された。その中で最もスパイシーなデッキとして紹介されていたのが……《隠された手、ケシス》を用いた「ケシス・コンボ」の最新型だ。
え、ちょっと待ってくれよって? 「ケシス・コンボ」はコンボパーツである《精励する発掘者》と《モックス・アンバー》がスタンダード落ちしたことでもう死んでしまったデッキだろう、と言いたいのかい?
うん、それは事実だし言いたいこともわかる。でも実際に、それを現在のスタンダードで蘇らせてしまったプレイヤーがいるのだ。ケシスの伝説のカードを再利用する能力のように、デッキもまた蘇る……リストを拝みつつ、どうやって蘇ったのかを考えてみようじゃないか。
1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 1 《森》 3 《神聖なる泉》 1 《神無き祭殿》 2 《静寂の神殿》 2 《寺院の庭》 3 《湿った墓》 4 《繁殖池》 1 《神秘の神殿》 1 《草むした墓》 1 《疾病の神殿》 2 《睡蓮の原野》 2 《寓話の小道》 -土地(26)- 4 《迷い子、フブルスプ》 3 《万面相、ラザーヴ》 4 《隠された手、ケシス》 2 《不屈の巡礼者、ゴロス》 -クリーチャー(13)- |
2 《夏の帳》 4 《水没した秘密》 4 《ビヒモスを招く者、キオーラ》 4 《時を解す者、テフェリー》 3 《王冠泥棒、オーコ》 3 《伝承の収集者、タミヨウ》 1 《神秘を操る者、ジェイス》 -呪文(21)- |
2 《虐殺少女》 2 《狼の友、トルシミール》 2 《夏の帳》 3 《霊気の疾風》 4 《ケイヤの誓い》 2 《覆いを割く者、ナーセット》 -サイドボード(15)- |
「ケシス・コンボ」とは、《隠された手、ケシス》の持つ「墓地から伝説のカードを2枚追放して、他の伝説のカードを墓地から唱えられるようにする」能力を使ってループを形成するのが狙いだ。
《モックス・アンバー》が2枚以上あれば、これを唱えてマナを出し、2枚目以降も唱えて、すでに使ったものを伝説ルールで墓地に置いて、新しいものからマナを出し……という動きをしてから、ケシスの能力で墓地に落ちたモックスを再利用してマナが出せる。《精励する発掘者》がいれば伝説の呪文を唱えるたびにライブラリーから墓地にカードを落とすことができ、これで自分のライブラリーを落とし込みながらどんどん伝説のカードを唱えてモックスを回してマナを得て……と連続してライブラリーを掘り進むことが可能になる。
その末に自分のライブラリーを空っぽにして《神秘を操る者、ジェイス》で勝利したり、《ケイヤの誓い》を連打して相手のライフを0にしたり、《精励する発掘者》を複数体並べて対戦相手のライブラリーを削り切ったり…とさまざな勝ちパターンでフィニッシュするコンボだった。
2度目となるが、その重要なパーツであるモックスと発掘者は現スタンダードには不在だ。この穴をどうやって埋めるのかというと……発掘者の代わりは《水没した秘密》が、モックスの代わりは《睡蓮の原野》と《ビヒモスを招く者、キオーラ》が務めるのだ。
え、ちょっと待ってくれよと? ケシスの能力で墓地から青い伝説のカードを唱えることで《水没した秘密》の能力を誘発させ、自分を対象にしてライブラリーを2枚墓地に落とす……これが発掘者の代わりになるのはまだわかる、って? うん、こっちはやってることは似ているから体感的にはわかりやすいね。
でも何度も何度も伝説のカードを唱えるためのモックスの代わりがキオーラと睡蓮ってのがわからないって? じゃあその手順を見てみよう。
1.《睡蓮の原野》を戦場に出す(《不屈の巡礼者、ゴロス》で持ってこれるよ!)
2.《ビヒモスを招く者、キオーラ》を戦場に出し、能力で《睡蓮の原野》をアンタップする
3.《睡蓮の原野》から青か緑のマナを3つ得て、2枚目のキオーラを唱える。すでに戦場にいるキオーラは墓地に
4.2枚目のキオーラで《睡蓮の原野》をアンタップ。3枚目以降もあるなら同様に、《睡蓮の原野》を起こしてキオーラを唱える
5.《隠されし手、ケシス》の能力を起動し、こうして墓地に落ちたキオーラを唱えては睡蓮を起こしてという動きを繰り返す。
6.青い呪文が何度も唱えられるので《水没した秘密》の能力も複数回誘発し、墓地にどんどんカードが落ちる。キオーラを唱え続けてライブラリーを空にする。最後は《神秘を操る者、ジェイス》でフィニッシュ!
3マナを生み出せる3マナの青い伝説のカードを唱え続ける、という形でモックスの代わりにしてしまうという鬼神のごとき発想力! こんな形で「ケシス・コンボ」が再現できるとは思いもつかなかった、天晴れというほかなし。いや~着眼点が人とは違うってのは素晴らしいことだね。
残念ながらこのデッキは、スタンダード・ラウンドを3回戦って勝利することなく初日落ちとなってしまったのだが、ミシックチャンピオンシップという最強のプレイヤーを決める戦いの場にこのコンボデッキを組んでもってきたという野心にあふれた姿勢もステキだ。これからもこのコラムではこういうスパイシー極まるデッキを皆に紹介する機会があると思うと、ワクワクしてモチベーションも保たれるというものだ。さあ、あなたもスパイシーなデッキを作ってみよう!
……ここまでは先日の11月18日の禁止制限告知前に書いたものだ。皆さんもご存知の通り、《王冠泥棒、オーコ》と《夏の帳》はスタンダードで禁止カードとなった。まあ、このデッキの場合、オーコはメインの勝ち筋に絡まない、あくまでサブの勝ち手段兼墓地に落ちた時にコストに回せる伝説カードという扱い。帳がメインから入っているのはオーコや《世界を揺るがす者、ニッサ》に対抗するためにメインから《害悪な掌握》を入れたデッキが多かったミシックチャンピオンシップⅥのメタゲームならではのもの。
なので、これらの枠も別のものに置き換えれば「ケシス・コンボ」自体は存続だ。青い伝説のカードであり、ライブラリーを削る役目を任せられる《湖に潜む者、エムリー》や、サブの勝ち手段ということなら《呪われた狩人、ガラク》など……伝説のカードを放り込んでこの枠を埋めて、楽しいコンボ・ライフを皆が送れることを祈ってるよ!
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