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週刊デッキ構築劇場
第30回:清水直樹のデッキ構築劇場・満月のデックコンストラクト
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.09.19
第30回:清水直樹のデッキ構築劇場・満月のデックコンストラクト
演者紹介:清水 直樹 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。 |
みなさんこんにちは!
9月です。9月は新エキスパンションの月ですね。いよいよイニストラードの発売が近づいています!
イニストラードの目玉と言えば、やはり両面カード!
各所で大きな話題を呼んでいますが、若干スリーブの出し入れが大変かも?とは思いますがメカニズムやフレイバーは非常に僕好みでいいと思います。満月の夜に変身なんて、カッコいいじゃないですか!
というわけで、今回の構築劇場はこの両面カードをフィーチャーしたデッキをさっそく作ってみたいと思います!
なお、イニストラードのカードは発売前なので、この記事を書いている2011年9月17日現在、カードギャラリーに載っているカードのみを採用したいと思います。
あと、今回は久々にあの特別ゲストに登場いただきます。
「どうも、狼男です」 |
確かに狼男・・・別に月が出ていても変身しないけど。
それにしても、月といえば9月は大変きれいですね。今夜も月が綺麗に見え・・・
!?
「シミチンさん!?」 |
「たたたたいへんだ、シミチンさんが変身してしまった・・・」 |
ハハハハハ! なんだか気分がいいぞ!
しかし夜は短い。この高揚した気分が冷めやらぬうちに、さっそくデック・コンストラクションを始めてやろう!
いいかお前ら、「デッキ」ではない。「デック」だ!
「ど、どう見てもいつもの中2病をこじらせただけだった・・・」 |
黙れゼリー男、俺の裏面こそがまさしく真の姿! この状態になってこそ、真のデックを完成させることができるのだ!
さぁ、今回のメイン・ディッシュはコイツだ!
メイヤー・オヴ・アヴァブルック!
うーむ、なんとも地味なカードだ。そこかしこから、「ワタシ、初めて選挙に勝てたんです」というオーラが匂ってくる。
本体は1/1でしかないし、能力がオマケのようについているが機関(ファイレクシア)がミラディンを制圧した現状では人間の生き残りはあまりにも少ない!
どうやらやはりこの表の顔を生かすということはこの標準環境(スタンダード)では難しいと言わざるを得ないだろう。
「ボクは強化されますけど」 |
黙れ不定形生物!
貴様は所詮、現代環境(モダン)のバベルデッキにでも銀弾(シルヴァー・バレット)されておけ!
「狼男の弱点は、銀の弾丸っていうシャレですね!」 |
黙れローウィンスライム!
このままでは全くデック・コンストラクションが進まないではないか!
「なんか、世界選手権3日目のモダンでは、あるプロプレイヤーたちの集団の中で、もっとも成績が良くなかった人が特製の『バベル』を使うことになるらしいですよ」 |
話を元に戻すぞ。やはり《アヴァブルックの町長》を活かすにはこの裏の顔にご登場願うしかない。
変身後の《吼え群れの頭目》の能力は極めて強力だ。自身の強化能力も含め、各ターンに3/3のトークンを戦場へ誕生させることができるのだ。放置すれば、たちまち戦場は狼の村と化すだろう。
「でも、変身させるの大変ですよね。出したターンは絶対無理ですし、相手のターンも厳しそう。出した次のターンに呪文を使わないのはちょっと・・・」 |
フハハハハハハ! 考えが甘いぞモーニングタイド・プリンよ! 出したターンに変身させるのが絶対無理だと?誰がそう決めたんだ。
確かに《アヴァブルックの町長》を通常通り召喚したのではそれが呪文を唱えたことになってしまうな。ならば、呪文を唱えずに《アヴァブルックの町長》を召喚すればよいだけの話だ。
「じゅ、呪文を唱えずに召喚!? そんな『確定した過去を変えずに結果を変える』ようなことができるんですか??」 |
そう、このカードを使えばな!!
「今のスタンダードでも大活躍中のカードじゃないですか」 |
そういうことだ。つまり、イニストラードの発売により弱体化すると思われた《出産の殻》は、両面カードの推参により弱体化するどころか強化されているということなのだ!
「すごいですシミチンさん!」 |
愚か者め! シミチンなどは所詮世をしのぶ仮の名にすぎぬ。俺の名は「清水直樹」だ!
「思いっきり本名じゃないですか」 |
クッ・・・いちいち突っ込みどころが鬱陶しいババロアめ。
よく俺の名の漢字を見てみろ!
「水・・・に樹ですか。・・・はっ!?」 |
気付いたようだな。名は体を表す。この俺が青と緑の使い手であるということは既に先のクラージ・大実験の結果によって運命づけられていたのだ!
・・・ってまた話が脱線してしまったではないか。
イニストラードには、この俺がこよなく愛する青緑のデックを完成させるための土地がしっかりと用意されている。
《内陸の湾口》だ。
《霧深い雨林》を失って一時はどうなることかと思われたが、これでこれからの標準環境(スタンダード)も安心だ。
では、まずは今回のデックの全貌を公開しよう。
7 《森》 4 《島》 2 《山》 4 《銅線の地溝》 4 《内陸の湾口》 2 《硫黄の滝》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 2 《幻影の像》 3 《アヴァブルックの町長》 3 《ヴィリジアンの密使》 2 《夜明けのレインジャー》 1 《躁の蛮人》 1 《スカーブの殲滅者》 1 《詐欺師の総督》 1 《オキシド峠の英雄》 2 《真面目な身代わり》 1 《扇動する集団》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《酸のスライム》 1 《ホロウヘンジのゴミあさり》 1 《業火のタイタン》 1 《霜のタイタン》 -クリーチャー(30)- |
4 《出産の殻》 3 《情け知らずのガラク》 -呪文(7)- |
1 《シルヴォクの模造品》 1 《霊気の達人》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《ホロウヘンジのゴミあさり》 4 《電弧の痕跡》 4 《マナ漏出》 3 《忍び寄る腐食》 -サイドボード(15)- |
「レシピが長くてめんどくさいです」 |
《出産の殻》デックだからな。仕方がないことだ。
このデックには、3種類の「狼男」(ウェアウルフ)を用意した。そしてその親玉たる《情け知らずのガラク》も加えておいた。
《アヴァブルックの町長》は中でも最もコストが低く使いやすい上、中盤以降役立たずとなる《極楽鳥》や《ラノワールのエルフ》を《出産の殻》のイケニエとすることで、相手がアップキープを迎えた頃にはトランスフォームが完了しているという寸法だ。
1ターン目《ラノワールのエルフ》、2ターン目《出産の殻》、3ターン目に変身!といった具合だな。実に美しい。
また、《詐欺師の総督》を一度経由し《出産の殻》をアンタップすることで、《ヴィリジアンの密使》から《扇動する集団》→《野生の血の群れ》を降臨させることも可能だ。
これが今回俺が開発することに成功した、《出産の殻》によって即変身を可能にするシステム、その名も
「疾風迅雷の満月(インヴィンシブル・フルムーン)」
である。特に意味はない。
「そろそろ恥ずかしくなってこないんですか」 |
口を慎めアカントアメーバ!
この高揚した感情を抑えてしまえば、たちまち今回のデックが全て台無しになってしまう!
話がまた脱線してしまわないうちに、個々のカードの説明に移ろう。今回は銀弾となっているカードが多いから、説明しておかなければならない項目も必然、多くなってしまっているのである。
《スカーブの殲滅者》
こいつはイニストラードの新参だ。確かに通常通り召喚しようとするとやはりこの追加コストが大きなネックになってしまうが、
「インヴィンシブル・フルムーン」による特殊召喚をすることによって簡単に《マハモティ・ジン》を得ることができるのだ。
なお、こいつを更にイケニエとした場合も、墓地からの特殊召喚が可能だ。《出産の殻》でイケニエとしたお前の仲間を、なかったことにするのだ。
《夜明けのレインジャー》
変身後の「格闘」も、イニストラードでの新規要素だ。4/4の大きさがあれば、殺せない敵のほうが少ないだろう。
もちろん、《アヴァブルックの町長》との相性は折り紙つきだ。ただし、感染クリーチャーを相手にするときは気を付けてほしい。
通常時の能力は、厄介な《墨蛾の生息地》や《大霊堂のスカージ》、そして相手の《極楽鳥》を撃墜できるぞ。
《扇動する集団》
変身前こそ平凡だが、この変身後の攻撃力の高さは間違いなく最強の名を冠するに相応しい。自分自身だけでも、8/5トランプルである。
これに他のクリーチャーが攻撃に参加しようものなら、あっという間に対戦相手のライフは消し飛ぶだろう。《極楽鳥》の「マナバード・ダイブ」ですら侮れないものとなる。
《幻影の像》《ファイレクシアの変形者》
これまで《出産の殻》デッキでは当然のようにレギュラーを張っていたこのクローン軍団たちだが、実はウェアウルフ達との相性は抜群である。
なんと、一度変身をすることに成功したウェアウルフをコピーすることで、対戦相手が呪文を2度唱えようとも「元に戻らない」、まさしく究極のウェアウルフが誕生するのだ。
逆に、変身前の状態に化けて条件を満たしたとしても、この《幻影の像》には裏の顔はないから変身することはできない。注意してほしい。
詳しくは、両面カードのルールのページを参照されたい。
《情け知らずのガラク》
クリーチャー除去が貧弱になりがちな緑においてはこの能力は極めて重要だということは言うまでもないだろう。
また、2/2の狼トークンは《吼え群れの頭目》で強化することができる。
変身後、中段の能力はクリーチャーが多彩なこのデックにとっては非常に相性がいい。墓地に置くことで仕事をするクリーチャーも多い。
最後の能力。接死をもつ狼を強化することもできる、トランプルとの組み合わせを1枚で実現してしまうこの事実。つまりは、1点のダメージでも「致死ダメージ」となるため、タフネスにかかわらず「パワー引く1」のダメージを防御プレイヤー(もしくはプレインズウォーカー)に与えることができるのだ。
個人的にこの新ルールは「デス・トランプル」と呼んでいるが、知っているのと知らないのとではコンバットにおいて多大なる影響が表れてくる。覚えておこう。
《酸のスライム》
敵の行動を制限するということは、ウェアウルフ達の変身を解く条件である「1ターンに呪文2個」を達成させないためには極めて重要だ。
無論、これはこれまでの《出産の殻》デッキでも同様だが。土地を破壊しつつ《霜のタイタン》に化け、更に相手の動きを封じるという動きの強さは健在である。
《ホロウヘンジのゴミあさり》
《強情なベイロス》を失った今、《出産の殻》の要求するファイレクシア・マナのライフルーズというのはかなり厳しいものとなる。
だが、このカードはその役割をちょうど代わってくれる。「陰鬱」の能力語は、まさしく《出産の殻》のためにあるといっていい。
これの他にもイニストラードには強力な「陰鬱」を持ったメランコリック・クリーチャーが豊富なので、各自チェックしておくように。
その他のカードは現行スタンダードでもよく見るカードばかりだ。
もちろんこれから残りのイニストラードのカードが公開されていくことにより、「インヴィンシブル・フルムーン」が強化されることもあろうかと思うが、それは暫し、プレリリースまでのお預けだ。
「そういえば、このデッキ、《思案》が入っていないですね」 |
よく気付いたなゼラチン男よ。確かにこれまで《思案》が盲目的に《出産の殻》には投入されていた。
《思案》を使って《出産の殻》を引きに行く必要があったのだ。だが、重要な点が1つある。もはや俺たちは、《霧深い雨林》《沸騰する小湖》を持ちあわせていない。
ということは、《思案》で3枚見たうちの都合のよい1枚だけを引き、残りをシャッフルしてしまうという「ポン・デ・シャッフル」が使えないということなのだ!なので、新環境においてはこれまでのように《思案》を入れるところからスタート、というのは考えものだな。
今回は、《出産の殻》が引けない時に備えてという意味でも《情け知らずのガラク》が役に立つだろう。
「サイドボードは?」 |
この俺が諜報部隊を用いつつ各地で情報を集めたところによると、現在のところ新しい標準環境(スタンダード)においては《鍛えられた鋼》が最も有力だということだ。
当然のことだが、ローテーション後の環境ではまずはブロック・コンストラクテッドで活躍したデックの焼き直しが強いとされる。
イニストラードから得るものは少ないかもしれないが、あのプロツアー・名古屋での活躍を思い出すに、「まずは鋼より始めよ」ということになろうと思う。
というわけで、この《鍛えられた鋼》デッキを殲滅するため、サイドボードには《忍び寄る腐食》を用意した。《電弧の痕跡》と併せてやれば、十分に鋼をスクラップにしてしまうことが可能だろう。
だが、実際のところまだまだ情報が完全に出切ったわけではないので情勢は不透明だ。これから公開されるカード如何によっては、もっと他に対策すべきデックが現れるかもしれない。究極のデック・コンストラクションには、現状に満足してはならないということが肝要なのだ。
今回は「両面カード」の良さを引き出すために「インヴィンシブル・フルムーン」を活用したわけだが、イニストラードには他にもさまざまなテーマがある。
FBと略されることが多い「フラッシュバック」、新たなるヴァンパイアたち、そしてスピリットのシナジーだ。
また、墓地がテーマになったことでこれまでよりも強化されたカードは多くあるだろう。
例えば《溶鉄の尾のマスティコア》は今か今かとその獲物を狙っている。《記憶の熟達者、ジェイス》は10枚削る能力を自分自身に使うことで疑似的なアドバンテージを発生させることが可能かもしれない。
新エキスパンションが発売されたとき、まずすべきことはこれまでのカードを復習することだ。誰も気付かなかったディスカバリーが、そこにあるだろう。
「なんかすっごいいいこと言った気でいますね」 |
無論だ。
さて、間もなく夜が明けるようだ。これから公開されるカード、そして来週のプレリリースを心待ちにしつつ、筆を置くとしよう。
みなのもの、準備はいいか?
Decks, be Ambitious!!
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