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戦略記事

週刊デッキ構築劇場

第31回:浅原晃のデッキ構築劇場・PW人材派遣会社3?リリアナのプロデュース大作戦!

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週刊デッキ構築劇場

2011.09.26

第31回:浅原晃のデッキ構築劇場・PW人材派遣会社3-リリアナのプロデュース大作戦!

演者紹介:浅原 晃

 マジック界のKing of Popとして知られる、強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権05・世界選手権08トップ8、グランプリ優勝2回、The Finals2連覇など。
 「構築戦はビルダーの舞踏会。タキシードでないデッキはジャージ」といいつつ、時に斬新なデッキを持ち込み、時にトップメタのデッキを使うという虚実入り交じった発言で人々を惑わせる『A級の虚影(エーツー)』。
 ゴブリンデッキに《怒りの天使アクローマ》を投入するなどの柔軟な発想から海外でもカルトなファンが多く、また、構築・リミテッドを問わず見せる高いプレイスキルから国内プロからの信頼も厚い。・・・が、虚構も多いので、虚構を虚構と見抜ける人間でないと浅原のアドバイスを受けるのは難しいと言われている。
 代表作は、自身のビルダーとしての原点という「アングリーハーミット・ゼロ」、荒堀 和明のグランプリ・仙台優勝によって世間の注目を集めた「アサハラ・ゾンビジム」、ヴァージョン6まで存在する勝ち手段の存在意義を問うた問題作「みのむしぶらりんしゃん」、God of the Deck略して「G.o.D.」、Wander Deck「The One」他多数。


 前々回前回も合わせてご覧ください。
 ※この物語はフィクションです。


前回⇒今回のあらすじ

 ジェイスが逮捕されたことで居場所が無くなり、新天地イニストラードに来ていたリリアナ。ここで一旗あげるべく、ゼンディカー落ちで暇になっていたニッサをスカウトしアイドルユニットを組んでみたら、思いのほかウケていた。


■イニストラード

 リリアナとニッサの2人のユニット『ダブルスリーブス』の野外コンサート。

村人 村人「ワーワー」
リリアナニッサ リリアナ&ニッサ「愚民ども、またねー」


 ......コンサート終了


ヴェンセール ヴェンセール(マネージャー・幽霊)「りっちゃんにニッサちゃん、お疲れ様~。いや~、マジ良かったっていう! 会場に来ていた村人たちも、盛り上がりすぎちゃって昼夜昼夜って変身しまくってましたよ。中には、興奮しすぎちゃって"格闘"したり、元に戻れない奴も居ましたから。それ、宴会芸かっていう」
リリアナ

「ヴェンちゃんさ~、やっぱ、この世界の雰囲気って、私と合ってるのよね。ゾンビ、幽霊、吸血鬼、人狼って"陰鬱"な奴しか居ないし。やっぱ、ミラディンの奴らは金属術とかいってガチャガチャうるさいのが駄目ね」

ヴェンセール

「ですね。自分も幽霊始めたてですけど、この世界の居心地は悪くないっていう。ちょっと生きてるときに誰かに心臓あげちゃったらしいんですが、最近は幽霊も悪くないなって思いはじめました。マネージャーとして雇っていただいて、無職じゃなくなりましたし、幽霊ってただでさえ無色透明なのに加えて無職ってしゃれにならないっていう」

ニッサ

「森に帰る前に誘われたから来たけど、なかなか面白いところなんだゾッ」

ヴェンセール

「今のところはユニットもうまくいってるっていう」

ニッサ

「なんだな☆」

リリアナ

「ただ、ヴェンちゃんにニッサちゃん、今はいいけど、流行があれば廃りもあるわ、ゼンディカーが無くなって、今はイニストラードの時代になりつつあるけど、これから先、さらに時代の流れはあるの。ジェイスの背中を見てきた私なら分かる、強すぎるものは、その出る杭を打とうとする力も強くなるのよ、単体で、個人で強くても滅びてしまうのね」

ヴェンセール

「それは確かにありますね。しかも、民意は常に変化と進化を求めてるっていう」

ニッサ

「つまり、どういうことなんだゾ?」

リリアナ

「どんどん新しいものをプロデュースしていく必要があるのよ。そうね、今ならゼンディカーが無くなり、イニストラードへ変わった、世界の変化を象徴する何かが必要なの。その象徴そのものが流行になるのよ。その象徴を作れば勝ちってことね。だから、私はこのイニストラードに私の劇場を作り、そこから新しいアイドルユニットをどんどんデヴューさせて、そのデッキを売り出していくわ、そうすれば、イニストラードが注目を浴びて、さらに私はプロデューサーとしての確固たる地位を築けるのよ!」

ニッサ

「さすが、りっちゃんは頭がいいんだゾ。そこから民衆どもを支配していくんだな☆」

リリアナ

「その通りね。このプロジェクトの名前を『チェンジ・ザ・ワールド』とするわ。これ以降、プロデューサーである私のことは"L"と呼びなさい」

ニッサ

「りっちゃ・・・いやL、アイアイサーだゾ☆」

リリアナ

「とりあえず、あなた達はアイデアを考えて来てちょうだい」

ヴェンセール

「考えるの僕達っていう」

ガラク

ガラク「相変わらず他力本願デスね」

ニッサ

「あれっ、ガラクいたの」

ガラク

「リリアナに呪われて、今はここで雑用としてこき使われてマス。見てください、相当ヤセちゃいまシタよ」


■ヴェンセールの場合

ヴェンセール

「ということでL、この前、飲み屋で知り合ったスピリットの《聖トラフトの霊》さんが、最近は天使トークン萌えと言っていたので、流行に乗るなら彼を使って、天使を取り入れたものがいいのでは無いのかって思いましたっていう。ユニット名は『スピリット&エンジェル』っていう」

『スピリット&エンジェル』[MO] [ARENA]
4 《
4 《平地
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
2 《水没した地下墓地
2 《孤立した礼拝堂
4 《墨蛾の生息地
1 《ムーアランドの憑依地

-土地(25)-

2 《瞬唱の魔道士
4 《聖トラフトの霊

-クリーチャー(6)-
4 《思案
3 《彼方の映像
4 《マナ漏出
3 《四肢切断
4 《禁忌の錬金術
2 《熟慮
2 《雲散霧消
4 《審判の日
1 《血統の切断
2 《ルーン唱えの長槍

-呪文(29)-
3 《否認
3 《天界の粛清
3 《石のような静寂
3 《金輪際
3 《機を見た援軍

-サイドボード(15)-
ヴェンセール

「イニストラードでの幽霊のヒーロー《聖トラフトの霊》さんの力によって天使を呼び出し相手を撲殺するっていう。《聖トラフトの霊》さんは呪禁もあって除去耐性もばっちりですし、飛行の天使を呼び出せば6点のダメージが入って打撃力も半端無いので、歌って踊れるどころじゃないっていう。それに《聖トラフトの霊》さんは何かカリスマ性ありそうでいいっていう」

リリアナ

「確かに《聖トラフトの霊》は2/2の呪禁だけでもそれなりに厄介なのに攻撃するたびに4/4飛行が付いてくるのは強いわね」

ニッサ

「でも、天使は1回で消えちゃうし、本人がそこら辺の《ルーン爪の熊》と相打ちになったらそれで人生終了なんだゾ」

ヴェンセール

「幽霊なんで人生じゃないっていう」

ニッサ

「あん?」

ヴェンセール

「いや、なんでもないっていう・・・。しかし、このデッキに入っている、神が推す7本の武器の内の一つと言われる《ルーン唱えの長槍》は先制攻撃に加えて、墓地にあるソーサリーやインスタント呪文の枚数分パワーを引き上げてくれるという代物っていう。このデッキには特にインスタントがたくさん入っているので、パワーももりもり上がって、それに加えて先制攻撃となれば・・・」

リリアナ

「呪禁を持つ《聖トラフトの霊》に付けるのにうってつけというわけね。タフネスが増えないデメリットは先制攻撃と呪禁でほとんどカバーすることができるわね。本人の打撃力もアップして、クロックも大幅に強化することができるってことね」

ヴェンセール

「《禁忌の錬金術》みたいな、墓地のカードを増やすカードもありますし、適当に呪文打ってたら勝っちゃうんちゃいますかっていう」

ニッサ

「そう考えると、《墨蛾の生息地》との相性も良さそうだゾ。《ルーン唱えの長槍》を装備すれば一撃で毒☆殺もあるし、《地盤の際》も無くなったから、プレッシャーを与えられそうなんだゾ」

ヴェンセール

「そうなんですよ、この二の矢とも呼べる戦略で、コントロールでありながら一撃必殺も狙えるっていうのがポイントっていう」

リリアナ

「ん~、でも、ヴェンちゃんさ~。これちょっと地味じゃない? 前に活躍してた『Caw-Blade』っぽいし、何かピンと来ないんだよね。売りみたいのが少ないのよ、訴えかける力が弱いっていうのかな。Cawがなくなって、喜んで飛び出してきちゃいました感っていうの?それが、民衆の心を打たないんじゃないかな」

ヴェンセール

「確かにそこの部分はりっちゃ・・・Lの言うとおりかもっていう」

ニッサ

「じゃあ、キャッチフレーズとか付けたほうがいいと思うんだゾ。『空も魂もぶっ飛んでます(クスリで)』とかいいと思うんだゾ」

ヴェンセール

「いや、それは、アカンっていう」

リリアナ

「ヴェンちゃんねー。やっぱり、《聖トラフトの霊》だけに頼っているのが良くないわね。もっと全体でアピールできるものが欲しいわ。ユニット全体での調和っていうの?ハーモニーが足りないっていう? バッと出て、ぱーと華やかになってく感じ、分かるかなそういうの」

ヴェンセール

「なかなか難しいっていう」

ニッサ

「私はりっちゃ・・・Lがそういうと思って、考えて来てあるゾ☆」


■ニッサの場合

ニッサ

「L、私が注目したのは墓地だゾ。イニストラードは墓地が命! つまり、墓地で生き生きとするもの、それは何か? と考えれば答えは明白だゾッ。しかも、イニストラードは死んだものが勝手にゾンビになったりするから、ゾンビにはこと欠かないんだゾン」

ヴェンセール

「最後だけさりげなく語尾がゾン?」

『GRY48、チームG』[MO] [ARENA]
7 《
7 《
4 《水没した地下墓地
4 《闇滑りの岸
3 《ネファリアの溺墓

-土地(25)-

4 《戦墓のグール
4 《息せぬ群れ
3 《スカーブの殲滅者
4 《甲冑のスカーブ
4 《グレイブディガー
2 《皮裂き
2 《復讐に燃えたファラオ
2 《死体生まれのグリムグリン

-クリーチャー(25)-
4 《禁忌の錬金術
2 《墓への呼び声
4 《屋根の上の嵐

-呪文(10)-
4 《歩く死骸
4 《グール起こし
3 《飢えへの貢ぎ物
4 《ヴェールのリリアナ

-サイドボード(15)-
ニッサ

「このデッキのポイントはまさに、ゾンビ一色というところだゾ。キャッチフレーズも考えてあるんだゾ、『GRY48 もう墓地でぼっちにさせない。この命ある限り戦い続ける。何故だ!ゾンビだからさ!』だゾ」

ヴェンセール

「なるほど、ゾンビを売っていくっていうアピールはできてるっていう。そのGRYって何っていう?」

ニッサ

「Graveyardの略だゾ。墓地を主体にしたユニットとして売り出そうと考えてるんだゾ。48は墓地にこんくらいクリーチャーが欲しいなっていう願望だゾ」

リリアナ

「悪くないわね。新しいウインドを感じるわ。ただ、ニッサちゃん、そのキャッチフレーズだけど、ゾンビだしネガティブな方が受けるんじゃないかしら。『GRY48 もう、墓地でぼっちにさせない。死にゾンは嫌だゾン!~生存禁止条例~』の方がいいわね。これならゾンビがネガティブながらも頑張る感じをアピールできるわ、不完全さをアピールしないと駄目なのよ、この業界は」

ニッサ

「さすがりっちゃ・・・Lだゾッ」

ヴェンセール

「正直、感動したっていう」

ガラク

「さっきから、この人達は何を言ってるんデスか」

リリアナニッサ

「あ?」

ガラク

「ひぃ・・・」

リリアナ

「でも、このユニットはちょっと直線的すぎるわね。いかに、ゾンビをフィーチャーしたといっても、動きのバリエーションが少なくないからしら」

ニッサ

「それは、ゾンビらしさを動きにも取り入れてるからだゾ。心をなくしてゾンビのようにプレイできるという意味をこめられているんだゾ」

ヴェンセール

「なるほど、君もゾンビの一員だっていう、一体感ね」

リリアナ

「それも一つの売りにはなるわね。ただ、それだけだと、民衆に飽きられてしまうわ。そうね、ここは、墓地を主体にして、さらにイニストラードではないカードも多く混ぜた2つ目のユニットを作るのがいいわ。これで、旧と新の対比になり、変化が感じられるし、バリエーションも付いて、いいんじゃないかしら」

ニッサ

「それなら、ゾンビだし、《裏切り者グリッサ》ちゃんをスカウトしてきたらどうなんだゾ」

『GRY48、チームR』[MO] [ARENA]
5 《
1 《
2 《平地
4 《森林の墓地
4 《孤立した礼拝堂
4 《陽花弁の木立ち
4 《剃刀境の茂み

-土地(24)-

4 《危険なマイア
4 《裏切り者グリッサ
2 《弱者の師
4 《真面目な身代わり
2 《皮裂き
3 《太陽のタイタン
2 《ワームとぐろエンジン
2 《囁く者、シェオルドレッド
2 《大修道士、エリシュ・ノーン

-クリーチャー(25)-
4 《心なき召喚
2 《堀葬の儀式
1 《排水路の汚濁
4 《ヴェールのリリアナ

-呪文(11)-
2 《シルヴォクの模造品
4 《解放の樹
3 《苦心の魔女
3 《死の支配の呪い
3 《情け知らずのガラク

-サイドボード(15)-
リリアナ

「これはいいんじゃないかしら。《心なき召喚》によって、クリーチャーのコストを{2}下げることができるから、軽快に動くことができるし、大型クリーチャーを早期に出すことができるわ。《ヴェールのリリアナ》+《堀葬の儀式》も悪くないわね、-1/-1のデメリットも大きなクリーチャーならば受けにくいし、《大修道士、エリシュ・ノーン》を出せればデメリットは無いようなもの」

ヴェンセール

「それに、そのデメリットもプラスに昇華しちゃうのが《裏切り者グリッサ》っていう。《心なき召喚》を置いておけば、《危険なマイア》を{0}で召喚でき、そして、出た瞬間に死亡して墓地へ直行。死んでナンボの《危険なマイア》なら、これはうれしいっていう。さらに2ダメージで相手のクリーチャーを死亡させれれば、《裏切り者グリッサ》で回収できるっていう。無限循環もありえるっていう。ついでに《弱者の師》でドローできれば最高っていう」

ニッサ

「しかも、《太陽のタイタン》でドーンと《裏切り者グリッサ》ちゃんも《ヴェールのリリアナ》も回収できるのがうれしいゾ。さらに、《排水路の汚濁》なんかで、スライムがたくさん生まれるのも萌えポイントだゾ」

リリアナ

「これは、いけるわ! この2つのユニットを軸に、イニストラードに私達の劇場、GRY劇場をオープンさせましょう」

ニッサヴェンセール

「絶対いけますね、りっちゃ・・・L!」

リリアナ

「せっかくだから、次の満月の日に華々しくデヴューさせるのよ。さあ、彼達を集めてきて、レッスン開始よ!」

ニッサヴェンセール

「はいっ!」


 こうして、リリアナ達はGRY劇場開演へ向けて準備を進めていったのだった。

 ......


アメーボイド

アメーボイド(友情出演)「ニッサさんのファンなんです。握手できるなんて夢のようです」

ニッサ

「違うゾ、良く見るんだゾ☆」

アメーボイド

「あれ、握手会じゃなくて、えーと、搾取会?」

ニッサ

「いいゾンビになるんだゾ☆」

アメーボイド

「えっ、一応僕は元々ゾンビで・・・ぶべらっ」

ニッサ

「何がでるかなっ、何が出るかなっ」

歩く死骸

元アメーボイド「きしゃー」

ニッサ

「全然ハズレで使えないゾー。これぞ、まさに死にゾンだゾ☆」


ヴェンセール

「今度オープンするっていう、ビラ配るっていう」

村人

村人「いや、いらないけど」

ヴェンセール

「幽霊なんです、これ失敗して無職になったら路頭に迷っちゃうんです、お願いします!・・・っていう」

村人

「しょうがないなぁ・・・」


リリアナ

「ガラク、劇場の方、ちっとも進んでないんじゃない、しっかりやって。後、私の肩揉んで、最近肩こりがひどくて」

ガラク

「うーい」


 ・・・そしてオープン一週間前


リリアナ

「遂に私の劇場がオープンするわ、この『チェンジ・ザ・ワールド』プロジェクトで私の野望に一歩近づいたわ。ちょっと劇場の建築作業が遅れているみたいね、ガラク、誰でもいいからそこら辺の村人達を集めて作業させなさい、急ピッチで進めるわよ」

ガラク

「しょうがないデスね。ちょっと集めてきますデス」


ガラク

「体付きのいい奴、集めて来たデスよ」

リリアナ

「ついに、私の時代が来るのね」


 ・・・

 しかし、リリアナの劇場がオープンすることはなかった。
 満月の日にガラクが集めた村人は「月」を見て全て変身して狼男になり、劇場は見事に全壊、集めたゾンビ達は逃げる途中に手足が全てもげてしまい使い物にならなくなってしまったのだった。


ガラク(呪)

ガラク「Yes!Yes!Yes!」


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