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週刊デッキ構築劇場

第11回:清水直樹のデッキ構築劇場・「○○さつの魔法」

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週刊デッキ構築劇場

2011.04.21

第11回:清水直樹のデッキ構築劇場・「○○さつの魔法」

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


 皆さん、こんにちワームとぐろエンジン!!

 ・・・のっけから失礼しました。

 いよいよ今週末、グランプリ・神戸開催となりましたが、一方で日本選手権予選シーズンがいよいよ始まるところです!
 「新たなるファイレクシア」の発売も近づいてきて、これからもっとも「スタンダードが楽しい」時期がやってきます!

 ・・・グランプリ・ダラスではトップ8で《精神を刻む者、ジェイス》が32枚使われたなんて、悪い夢を見ているような気もしますが、
 きっと「新たなるファイレクシア」のカードがそんな状況を一新してくれることに期待しましょう。

 さて、今回は現行のスタンダードを締めくくるデッキを構築したいと思います!

 お題はこれです!

集団変身

 え・・・この《精神を刻む者、ジェイス》全盛期に《引き裂かれし永劫、エムラクール》でも出すの・・・?

 とお思いになったそこのあなた!甘い!

 確かに今までの《変身》あるいは《集団変身》で、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を無事着地させても、返しで《精神を刻む者、ジェイス》や《審判の日》を撃たれて「あれれ?」となることは多かったでしょう。
 やはり1ターンの猶予を与えてしまう、というのが弱点なのです。

 ならば、発想を逆転させましょう。《集団変身》を撃ったそのターンにゲームに勝ってしまえばいいのです!

 そのカギとなるのが、「新たなるファイレクシア」発売後でもきっと注目されるであろうコイツです!

化膿獣

 手順は、こうです。

  1. デッキには《化膿獣》4枚しかクリーチャーを入れない
  2. トークンを2体以上用意して、《集団変身》をぶっ放す
  3. 楽しい《化膿獣》がポポポポーン!

 なんというカッコよさ・・・最大4体の《化膿獣》が同時に襲いかかるなんて・・・

 このコンセプトの良いところは、なにもカッコいいことだけではありません。
 《引き裂かれし永劫、エムラクール》などを降臨させようとしたときは、うっかり手札に引いてしまったとき「誰コイツ知り合い?」となるのは明らかでしたが、《化膿獣》なら十分、素で唱えることができます。
 つまり、《集団変身》を撃たなくても、《化膿獣》が2回通れば勝ててしまうこともあるということです!

 「ミラディン包囲戦」では、《墨蛾の生息地》という便利な土地もありますし、トークン生産として非常に優秀な《迫撃鞘》もあります。《精神を刻む者、ジェイス》全盛の今こそ、《集団変身》→《化膿獣》の時代なのです。

 さて、今回のレシピです。

「どくさつの魔法」[MO] [ARENA]
6 《
4 《
4 《カルニの庭
2 《ハリマーの深み
4 《霧深い雨林
2 《広漠なる変幻地
4 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

4 《化膿獣

-クリーチャー(4)-
3 《迫撃鞘
4 《定業
4 《探検
2 《乱動への突入
2 《剥奪
4 《成長の発作
3 《屍肉の呼び声
4 《集団変身
3 《精神を刻む者、ジェイス
1 《野生語りのガラク

-呪文(30)-
1 《エメリアの盾、イオナ
4 《呪文貫き
2 《自然の要求
3 《伝染病の留め金
1 《迫撃鞘
1 《肉体と精神の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
2 《ジェイス・ベレレン

-サイドボード(15)-


 さぁ全国の青緑信者の皆さん大変長らくお待たせいたしました!今回のデッキは久々に「純正青緑」です!
 え、サイドボードになんか混じってるって? ま、まぁ、赤単とかに出しちゃえば勝つんで流石に入れときましょうよ!(笑


 デッキの動きはもはや説明不要かと思います。なんとかしてトークンを複数体確保して、6マナを確保して、「どくさつの魔法」で「楽しい化膿獣」が「ポポポポーン」してください。

 《成長の発作》はマナ加速とトークンを両立することができる、まさに《集団変身》用のカードですね。
 《探検》は正直言ってできるだけ確実にマナ加速したいこのデッキにとっては微妙なカードではありますが、ほかの選択肢がもっと微妙なので(《永遠溢れの杯》と《太陽の宝球》)、妥協です。まぁ《定業》とは相性良いので目を瞑りましょう。

 「包囲戦」で新加入となった《迫撃鞘》は、ビートダウンに対してとても有効であり、かつ《集団変身》用のトークンを確保でき、終盤には感染クリーチャーを投げて「どくさつ」が狙えてしまうという、いいことずくめです。
 むしろ、このカードが追加されたおかげでこの「どくさつの魔法」を形にすることができたといってもいいでしょう。万が一《狡猾な火花魔道士》なんて出された日にゃ目の前が真っ暗になりますからね。

 《集団変身》で勝つことを狙っていますが、もちろん、地味に《屍肉の呼び声》や《墨蛾の生息地》で相手をチクチクと攻撃するのも忘れずに!
 何個かこれで毒カウンターを貯めた後、《化膿獣》を素で唱えて勝利を狙うことだって不可能ではありません。

 とはいえ、「攻撃」を勝ち手段にしているので、うっかり《ギデオン・ジュラ》が通っちゃうとひどい目に遭うので気を付けてください。
 あいつはそう簡単には倒れませんよ。もちろん《化膿獣》は使い捨てです。ご利用は計画的に。


 ところで、ちょっと前になりますが《定業》は果たして青いデッキにとって必ず4枚必要なのか?という議論が盛り上がったことがあります。

 僕に言わせれば、答えは「否」です。というか、正直僕はできるだけ《定業》はデッキにいれたくないカードだと思っています。
 デッキの特定のカードを引く確率を上昇させて、デッキの動きを滑らかにする・・・とかそういうデジタルな議論もありますが、僕の考えはそこから大きくぶっ飛んでいて、

「特定のカードをいつも引くようなゲームやったって面白くないじゃーん!!」

 ということです。本当にこのゲームで大会で勝とうとしている人間の言うセリフなのかと言われそうですけど。

 特にデッキ構築劇場みたいな企画で、面白くないデッキを組もうものならもう完全に企画倒れです。
 《定業》を4枚入れるくらいなら、代わりにいろいろな状況に対応できるようなカードを入れておきたいですね。
 単純にカード引くだけのカードを入れるのはあまり好みません。《Ancestral Recall》くらいになれば話は別ですけど。

 ただ、残念なことに、今回のデッキの場合《集団変身》を引けないと本当に面白くなくなるので、仕方なく《定業》を採用させていただきました。

 これが、普通のコントロールデッキだったりしたら、おそらく僕は「このデッキってこんなこともあんなこともできちゃうんだぜ!」と楽しむために《定業》を犠牲にしていろいろなカードを入れることでしょう。やっぱりマジックはゲームなので、楽しんだもの勝ちっすよ!

 話が大きく脱線しました。元に戻りたいと思います。

 今回のデッキは、サイドボードに《饗宴と飢餓の剣》《肉体と精神の剣》を仕込んであります。

 もう「Xに剣を代入すると勝つ」みたいになっていますが、今回のデッキにおいては本当にそれが顕著で、《カルニの庭》とかエルドラージ落とし子トークンが剣握って殴るとか想像するだけで「マジックナメてんだろ」と突っ込まれそうです。前回アメボ君にも指摘されましたが、こういうところが現代っ子の良くないところではあります。

 一方、当の「カルニの庭トークン」さんはこんなコメントを残していますね。


植物 「いやぁ、ボクと言えば《精神を刻む者、ジェイス》さんをお守りするのが主な仕事だったんですよね。

 5/5とかになった《板金鎧の土百足》さんを受け止めたときはほんとうに拍手喝さいです。たまーに《ゼンディカーの報復者》さんのお陰で活躍できたりして、そのときは本当に生きてて良かった、って感じですよね。

 そんなボクでも、なんか剣を持つといきなり対戦相手の表情が変わるらしいんです。まさかこのボクが、『除去呪文』を撃たれる日が来るなんて・・・本当に生きてて良かったです。除去られちゃいますけど。」


 というわけで、《集団変身》前に除去を使わせるのに《饗宴と飢餓の剣》はうってつけです!!

 もちろん《肉体と精神の剣》のトークンを変身させる狙いもありますよ。
 メインボードのコンボが対処されやすいサイドボード後を想定して採用していますが、例えば周りに青いデッキが多いなら(というか《精神を刻む者、ジェイス》)、《肉体と精神の剣》をメインに搭載する選択肢も有効だと思います。


 果たして「新たなるファイレクシア」の発売はスタンダードにどのような影響を与えるのでしょうか。
 感染を大きなテーマにしていいるこのデッキも、きっと採用できるようなカードがあるに違いありません。
 新しいセットが出たときは、保守的にならずに、どんどん新しいカードを試していきましょう。《定業》を抜いて、新しいカードを試しましょう。
 そうすると、今まで見えてこなかった「マジックの楽しさ」が見えてくると思いますよ!

 さぁグランプリ・神戸、日本選手権に向けて、この魔法の言葉で締めくくりましょう。

 Decks, be Ambitious!!!

2011年日本選手権予選

グランプリ・神戸

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