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戦略記事

高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」

第6回:「神戸への道」エクステンデッド攻略 その1

読み物

高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」

2011.02.18

第6回:「神戸への道」エクステンデッド攻略 その1


 3月19-20日に開催されるグランプリ・神戸。そのフォーマットは、エクステンデッド!
 そしてプロツアー・名古屋予選のフォーマットもエクステンデッドであり、皆さんも触れる機会が多くなっていると思います。

 今回から数回に分けて、エクステンデッドの特集をしていきたいと思います。。


使用可能なセット
  • ローウィン
  • モーニングタイド
  • シャドウムーア
  • イーブンタイド
  • アラーラの断片
  • コンフラックス
  • アラーラ再誕
  • ゼンディカー
  • ワールドウェイク
  • エルドラージ覚醒
  • ミラディンの傷跡
  • ミラディン包囲戦
  • 基本セット2010
  • 基本セット2011

 以前も触れましたが、ルールの改訂を経て、より「スタンダードの延長線上」と感じられるようになりました。現に、マジック歴が1年以上のプレイヤーなら、スタンダードで活躍していたことを知っているデッキが、この後もどんどん出てきます。

 なお、現在のところ使用禁止カードはありません。


これまでのあらすじ~世界選手権2010までのメタゲーム~

 世界選手権2010で事前に予想されていた主なデッキは、フェアリー、クイッケントースト、ジャンドなどなど。

 まだメタゲームがハッキリしていなかったこともあり、数多くのデッキタイプが存在しました。自分も「親和」や「青赤昇天」など、今となってはマイナーなデッキにも当たっていますね。

 去年の連載でもエクステンデッドを取り上げているので、ご参考にどうぞ。


世界選手権後のメタゲーム

 グランプリ・アトランタ (英語)

 1月22日に、エクステンデッドで開催されたグランプリ・アトランタ。

 そのトップ8のリストを見てみると、ジャンド、フェアリー、ヴァラクート・・・かつてスタンダードで王者だったデッキ同士のぶつかり合いになっています。

 今年のエクステンデッドの導入として、まずはこのトップ8分析から始めます。


フェアリー

Owen Turtenwald
グランプリ・アトランタ2011 8位[MO] [ARENA]
4 《
2 《
4 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
4 《人里離れた谷間
2 《沈んだ廃墟
4 《変わり谷
2 《地盤の際

-土地(26)-


4 《呪文づまりのスプライト
2 《ヴェンディリオン三人衆
4 《霧縛りの徒党

-クリーチャー(10)-
4 《苦花
3 《思考囲い
2 《コショウ煙
2 《見栄え損ない
1 《コジレックの審問
3 《マナ漏出
2 《闇の掌握
4 《謎めいた命令
2 《ジェイス・ベレレン
1 《精神を刻む者、ジェイス

-呪文(24)-
3 《吸血鬼の夜鷲
2 《誘惑蒔き
2 《ワームとぐろエンジン
2 《コショウ煙
2 《呪文貫き
1 《死の印
1 《破滅の刃
2 《地盤の際

-サイドボード(15)-
John Runyon
グランプリ・アトランタ2011 6位[MO] [ARENA]
3 《
3 《
3 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
4 《人里離れた谷間
3 《沈んだ廃墟
4 《変わり谷
1 《地盤の際

-土地(25)-


4 《呪文づまりのスプライト
4 《ウーナの末裔
1 《ヴェンディリオン三人衆
4 《霧縛りの徒党

-クリーチャー(13)-
4 《苦花
3 《思考囲い
2 《コジレックの審問
2 《コショウ煙
2 《見栄え損ない
2 《マナ漏出
2 《苦悶のねじれ
1 《闇の掌握
4 《謎めいた命令

-呪文(22)-
1 《絡み線の壁
1 《エレンドラ谷の大魔導師
1 《誘惑蒔き
1 《ワームとぐろエンジン
1 《思考囲い
2 《呪文貫き
2 《コショウ煙
2 《瞬間凍結
1 《対抗突風
2 《弱者の消耗
1 《ジェイス・ベレレン

-サイドボード(15)-
Ari Lax
グランプリ・アトランタ2011 5位[MO] [ARENA]
6 《
2 《
3 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
4 《人里離れた谷間
2 《沈んだ廃墟
4 《変わり谷

-土地(25)-


3 《呪文づまりのスプライト
3 《ウーナの末裔
2 《ヴェンディリオン三人衆
4 《霧縛りの徒党

-クリーチャー(12)-
4 《苦花
4 《思考囲い
1 《コジレックの審問
2 《定業
2 《見栄え損ない
3 《マナ漏出
2 《燻し
1 《苦悶のねじれ
4 《謎めいた命令

-呪文(23)-
2 《絡み線の壁
1 《ヴェンディリオン三人衆
2 《誘惑蒔き
2 《ワームとぐろエンジン
1 《コジレックの審問
2 《コショウ煙
1 《死の印
2 《広がりゆく海
1 《夢への委託
1 《地盤の際

-サイドボード(15)-

 これまでも何度も紹介してきたデッキ、フェアリー。

 3つの中では、Owen Turtenwaldのフェアリーが個人的には好みですね。クリーチャーを10体に抑えて除去多めの構成で、ジェイスも新旧あわせて3枚。序盤を除去で捌いて、プレインズウォーカーでアドバンテージを取って勝つ、という意思がリストから見て取れます。

 その2種類のプレインズウォーカー《ジェイス・ベレレン》《精神を刻む者、ジェイス》、フェアリーでどちらを使うかは意見が分かれるところです。

 《ジェイス・ベレレン》の利点は、やはり3マナというコスト。青対決では軽いカードの方が通しやすいですし、フェアリーは《霧縛りの徒党》《謎めいた命令》の2つで4マナ域が強いデッキなので、その中間である3マナは動きの阻害をしません。《苦花》→《ジェイス・ベレレン》→4マナのどちらかという動きは、フェアリー同系やコントロール相手に特に強いです。ただし忠誠値の低さや盤面に影響しないことからビートダウン相手には弱いカードで、サイドアウト候補筆頭でもあります。

 それに比べて《精神を刻む者、ジェイス》の利点はバウンス能力、これに尽きます。《聖遺の騎士》《悪斬の天使》など、火力を持たないビートダウンが出してくるクリーチャーに対してバウンス能力は強く、相手のマナを払ったターンを無駄にしつつ、±0でアドバンテージを取れるのがベレレンとの差です。フェアリーはプロテクション(黒)のクリーチャーも苦手としていますが、《謎めいた命令》以外でそれを対処できるのも大きい。また《霧縛りの徒党》を戻し続けて毎ターン土地をタップするコンボもあります。

 しかしネックとなるのはマナコスト。前述のように《謎めいた命令》《霧縛りの徒党》とマナ域が被るという欠点がありますし、《謎めいた命令》《霧縛りの徒党》と違って複数引いても弱いカードなので、入れても2枚が限度ですね。

 フェアリーはシナジーデッキであり、単体で見たときのカードの強さは、単体が強いジャンドなどに比べると弱いです。アドバンテージ獲得手段に乏しいデッキなので、手数を増やすためにも少量のジェイスは欲しいところ。一度マナがオープンになってしまえば、《苦花》《謎めいた命令》のおかげでプレインズウォーカーを守るのも容易ですからね。

 出た後の支配力と、《霧縛りの徒党》《呪文詰まりのスプライト》によるハーフロックがあるという理由で、今のところ自分は4マナのジェイスを使っていますが、3マナにするかはいまだに悩んでいます。個人の感覚だと思うので、フェアリーを使うプレイヤーはどちらのジェイスも試してみてください。


3マナのフェアリー選択

 《ウーナの末裔》は同系や白ビート、緑白ビート、青白コントロールに強く、赤いビートダウンに弱いカードです。

 特にフェアリー同系対決で《ウーナの末裔》が4のデッキと0のデッキが対決したら、4の方に有利がつくでしょう。2枚目が出るとすべて被覆がつくこともあり、重なれば重なるほど強いカードです。被覆によって他のフェアリーを除去から守れるようになるので、《誘惑蒔き》の価値を上げる働きもします。

 同じマナ域の《ヴェンディリオン三人衆》との枚数のバランスで悩むところですが、この選考基準は環境に赤いデッキがどれだけいるかに関わっていると思います。極端に言ってしまえば《火山の流弾》がどれだけ使われているかです。

 同じマナ域の《ヴェンディリオン三人衆》は単体でパワーが高く、能力で《火山の流弾》も未然に防げるのに対して、《ウーナの末裔》はパワーが1しかなく、2体目を出してもまとめて流されてしまいます。しかし逆に《ヴェンディリオン三人衆》はフェアリー同系で弱く、《ウーナの末裔》との差は大きい。

 クイッケントーストが減ってきて、現状で《火山の流弾》を使うのはヴァラクート、ジャンド、赤単の3種類。同系、青白、白単ビートなど、有利な相手のほうが多いので、今の環境は《ウーナの末裔》を推しますね。


サイドボードの《吸血鬼の夜鷲》《ワームとぐろエンジン

 これまでフェアリーは、赤いビートダウンを苦手としてきました。《思考囲い》《苦花》など、他のデッキに比べてライフをリソースとして使うため本体火力や赤の速攻クリーチャーに弱く、盤面は制圧したのに《苦花》死、なんてこともよく起こりました。

 この2枚は、今までフェアリーができなかった部分であるライフ獲得手段です。

 特に《吸血鬼の夜鷲》はビートダウンだけでなくフェアリー同系にも強いカードで、今まで片方だけ《苦花》はゲームエンドでしたが、《吸血鬼の夜鷲》は相手だけ《苦花》の状況でもゲームをイーブンにすることができます。

 《ワームとぐろエンジン》は重いだけあって、その《吸血鬼の夜鷲》を凌ぐ対ビートダウン用カード。ジャンドやナヤ、赤単にはターンが帰ってきたら勝ちで、無色の《悪斬の天使》みたいなものです。

 この《ワームとぐろエンジン》含めてサイド後は《誘惑蒔き》など重いクリーチャーも増えるので、なるべく土地は多め、Owen Turtenwaldのように《地盤の際》含めて26枚という構成が良いですね。フェアリーは他のデッキに比べて「3マナストップ=負け」が多いデッキなので、土地を多くしてマナフラッドで負けるリスクよりも、マナスクリューで負けるリスクの方が大きいと、自分は考えます。


ジャンド

Charles Gindy
グランプリ・アトランタ2011 7位[MO] [ARENA]
1 《
1 《
2 《
3 《野蛮な地
4 《怒り狂う山峡
3 《溶岩爪の辺境
3 《銅線の地溝
3 《黒割れの崖
2 《火の灯る茂み
4 《黄昏のぬかるみ

-土地(26)-


4 《朽ちゆくヒル
3 《獣相のシャーマン
4 《台所の嫌がらせ屋
3 《呪詛術士
4 《血編み髪のエルフ
4 《復讐の亜神

-クリーチャー(22)-
4 《稲妻
2 《終止
3 《荒廃稲妻
3 《大渦の脈動

-呪文(12)-
2 《強情なベイロス
2 《叫び大口
4 《思考囲い
3 《幻触落とし
1 《終止
3 《火山の流弾

-サイドボード(15)-

 ジャンドはパーマネント破壊・手札破壊により相手の脅威への対処手段が多く、どんな相手にも均等に戦うことができます。スタンダードの頃からあった《朽ちゆくヒル》→《荒廃稲妻》→《血編み髪のエルフ》から続唱《荒廃稲妻》、というブン回りも健在です。

獣相のシャーマン》《復讐の亜神

 ジャンドがエクステンデッドで得た武器が、《獣相のシャーマン》複数回起動からの《復讐の亜神》強襲プラン。

 スタンダードでも《復讐蔦》とセットで使われる《獣相のシャーマン》。《復讐蔦》の場合は「1ターンにクリーチャー呪文2回」の条件を満たすためにクリーチャー多めのデッキ構築という制限がかかりますが、《復讐の亜神》はそれと違ってプレイするだけで戻ってくるので、《稲妻》《大渦の脈動》などの除去を減らすことなく、飛行もあるため一撃でゲームに勝てるほどの力があります。

 ただ、《獣相のシャーマン》が除去されやすく、仕事しなかったときの2/2が弱いということもあって3枚に抑えられていますね。

マナベース

 しかし、この2つが共存するデッキ構築をすると序盤に緑マナ、後半は{B/R}{B/R}{B/R}{B/R}{B/R}が必要になり、マナベースに少々負担がかかります。2ターン目に《》を出すと5ターン目《復讐の亜神》を出すのにフィルターランド(《火の灯る茂み》《黄昏のぬかるみ》)が必要ですからね。どうしても《》は弱く、《新緑の地下墓地》が入っていないのもそういった理由からです。

 それでも、この2つが共存できるほど、マナベースはスタンダードの頃に比べると格段に強くなっています。ジャンドがスタンダードの頃、2ターン目に《朽ちゆくヒル》を出してしまうと3ターン目タップインで《芽吹くトリナクス》が出せないジレンマはよくありましたが、《黒割れの崖》《銅線の地溝》の2種類のミラディン地形のおかげでズムーズに動けるようになっています。そのぶん4ターン目のタップイン率は上がって《血編み髪のエルフ》が遅れる欠点もありますが、3マナに集中したデッキなので、デメリットよりもメリットの方が大きいです。

 フェッチからの《つぶやき林》含めて、今のエクステンデッドは土地が強く、多色デッキをやりやすい環境ですね。


3マナの比較

 ジャンドは3マナ域に強力なカードが多く、どれを使うか悩むところ。

呪詛術士

 効く相手と効かない相手がはっきりしているカードで、フェアリー・ジャンド同系・青白には強く、赤緑ヴァラクート・オーメンヴァラクートにはかなり弱いカード。


台所の嫌がらせ屋》《芽吹くトリナクス

 どちらも除去耐性があり、ビートダウン全般に強いカード。
 最初のサイズと破壊されたときを考えると、

 比較すると《台所の嫌がらせ屋》の方が、ビート耐性は少しだけ勝っていますね。《芽吹くトリナクス》の方が3色マナから出しやすい利点はあるが、プロテクション(黒)の影響がある欠点もあります。総合的には、《台所の嫌がらせ屋》の方が少し強いです。


荒廃稲妻

 スタンダードの頃からジャンドの強さを支えてきたカード。フェアリー・同系・そしてコントロール全般に強く、複数引いたら効果が上がるカードなので、自分は4枚推奨です。


大渦の脈動

 万能パーマネント破壊。フェアリーやヴァラクート相手には割るものが限られていて、入れすぎると腐る展開もあるので注意。3枚が適正に思えます。


大貂皮鹿

 決してフェアリーを擁護するためではないですが、ジャンドにこのカードは不要だと思います。既に3マナ域はオーバーフローであり、これを入れなくてもジャンドはフェアリーに少し有利なデッキです。《大貂皮鹿》はほぼフェアリー専用のカードであり、サイドボードはもっと受けの広いカードを取るべきです。


サイドボードのキーカード

 一つ書いておきたいのが、サイドボードの《幻触落とし》。

 見慣れないカードかもしれませんが、エンチャント・アーティファクト対策、もっと言うと《虹色の前兆》対策ですね。

 なぜこのカードなのかというと、「ライブラリーに戻す」効果で《ワームとぐろエンジン》対策を兼ねているからです。《ワームとぐろエンジン》は除去耐性・絆魂能力によりたった1枚でジャンドを制圧できるカードであり、フェアリーもジャンドに対して良くサイドインしてきます。《幻触落とし》は《苦花》を対処しつつ《ワームとぐろエンジン》も対処できる、ナイスサイドカードです。


 来週はグランプリ・アトランタ トップ8の赤緑ヴァラクート、オーメンヴァラクート、青白コントロールの解説を予定しています。

 では、また来週。

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