READING

戦略記事

Beyond the Basics -上級者への道-

私が最も重視するデッキ構築ルール

authorPic_GavinVerhey.jpg

私が最も重視するデッキ構築ルール

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2018年2月8日

 

 マジックをプレイしているうちに、戦術に関するさまざまな知識を自然と得ていくことだろう。そのような知識の中にはわかりやすいものもある。コントロール同士の対戦では相手のドロー呪文を攻めろとか、ドラフトのデッキには土地を17枚入れようとか。それからもちろん、1ターン目の《極楽鳥》には《稲妻》を撃て、というのもそうだ。

 一方で、私のマジックにおける思考の過程を大まかに形作る、啓示ともいえる知識もいくつかあった。それらは頻繁に起こることではないが、それに気づくことができれば、自身のマジックの基盤となっている考えを革新し、成長することができる。私がそのように成長しながら、つまり「上級者への道」を登りながら競技的なデッキの構築に取り掛かっていたとき、デッキを最も適切に構築できるようになる、どんな時にでも役に立つ考え方があるということに気がついた。

 今日は、その知恵を読者の皆と共有しようと思う。

 これはドラフト・デッキからスタンダード・デッキ、そして統率者戦デッキに至るまで、あなたのあらゆるデッキ構築に影響を与えるはずだ。そしてこれが私のデッキ構築に関する考え方の根本であることも間違いない。

 その助言の一端は単純なものだ。あなたがやろうとしているのはデッキの構築であって、カードを束にまとめることではない。

 それの意味するところとは? 気になるかもしれない。デッキは構築するものに決まっているじゃないか!

 ああそうだ、デッキとして60枚のカードをテーブルに置けば、それが自分のライブラリーになる。(総合ルールの401.1にある通りだね!)しかしそれは、はたしてデッキだろうか? それともカードの束だろうか?

 これは微妙な差だが、重要な違いだ。

 デッキには戦略がある。目標、計画と言い換えてもいい。デッキ全体で一貫した戦術が採用されている。

 逆に、カードの束は矛盾を抱えている場合がある。相乗効果は後付けだ。欲しいと思ったあらゆる内容のカードによってさまざまな方向へと引っ張られ、身動きが取れない。

 興味が湧いてきたかな? 続きへといこう。

目的の衝突

 この話について、まずは例を挙げて説明していきたい。

 あなたは今、ストロンボリ/Stromboliと対戦中だ。彼は赤白のアグレッシブなビートダウン・デッキを使っている。ストロンボリはまず《先兵の精鋭》から展開し、さらに《経験豊富な操縦者》へと繋げてきた。

 2ターン目にしてあなたはパワー5と対面している。すでに後がない状態だ! しかも、次のターンまでまともな対応ができない。まいったね!

 ストロンボリのターンになり、3枚目の土地が置かれ、彼はこれを追加してさらに圧力を加えてきた。

 ちょっと......なんだって?

 このプレイには、「なぜストロンボリはインスタントなのにこれをメイン・フェイズにプレイしたんだろうか?」という疑問よりも、もっと大きな謎がある。つまり......最初の2枚とこのカードが同じデッキに入っているのはなぜだろうか?

 ああ、場合によってはまっとうな理由があるかもしれない。《アジャニの群れ仲間》や《天使の協定》のようなカードが入った白のデッキであれば、ライフ獲得をテーマとする手筋はある。《若返りの儀式》はそのためのカードとして最適だろうか? おそらくそうではないが、少なくともそれを入れるだけの意図が背後に見える。

 しかしこういうことがあった場合、そのほとんどは「カードの束」問題のせいなんだ。

 ストロンボリのデッキは間違いなく内部で衝突しあっている。

 アグレッシブ・デッキは戦略上、可能な限り対戦相手のライフを0にしようとするものだ。そのためその計画は、素早く攻撃し圧力をかけて、相手が安定して持ち直す機会を得る前に仕留める、というものになる。

 ストロンボリが最初にプレイした2枚のカードは、この計画に従って問題なく機能する。コストを見てもパワーを見ても、アグレッシブな数値を持つクリーチャーだ。素晴らしい!

 しかし3枚目のカードは、全体から見てまったく別の方向へと進んでいるんだ。戦場には影響しないし、ライフへの圧力がまったくかかっていないのにライフを回復しようとしている。このデッキは自分から攻撃を仕掛けていく作戦だ。必要なのは自分のライフを増やすものではなく、追加のダメージを与えられる火力呪文だろう!

 逆もまたしかりだ。ストロンボリがもっと遅いコントロール・デッキをプレイしていて、その戦略が最終局面まで生き延びることだとしよう。そうであれば、《若返りの儀式》は前の状況よりもずっと合理的なカードだし、2種のクリーチャーは戦略にかみ合っていない。(繰り返すけど、《若返りの儀式》は最善ではないと思う。とはいえ、最低限戦略に沿った内容であることは確かだ。)

 ストロンボリのデッキから《若返りの儀式》を抜いて《稲妻の一撃》を入れれば、回復する代わりに3点ダメージを与えられるようになるので、もっと良い速攻が決められるようになるだろうね!

 マジックでは、対処しなければならない衝突の形がいくつもある。例えば対戦相手の手札やクリーチャーとの衝突もそうだし、どのように攻撃するかを考えるにつれて、自らのデッキの中でゆっくりと広がっていく混乱との衝突もそうだ。デッキが内部で衝突しないように気をつけよう。

目標の明確化

 デッキを構築するときは、デッキをスリーブに入れるだとか、デッキに入れるためのカードの束を集めることよりも、先にすべきことがある。まず最初に行うこととして、そのデッキで何をしたいのかを決めよう。

 どんなデッキでも目標の明確化が――デッキ構築の方針を定める何らかのゲームプランが――必要になる。それは、「赤白のアグレッシブ・デッキで素早く攻撃して勝利したい」というような単純なものであっても、全く問題ない。

 逆に、「まず《ブリン・アーゴルの白鳥》を戦場に出して、それから《突撃の地鳴り》で《ダクムーアの回収場》を捨てて、ドローを発掘に代えてデッキを全部引き、何枚か土地を捨てて相手にダメージを与え、手札が満杯だからクリンナップ・ステップに引いてきているはずの《引き裂かれし永劫、エムラクール》を捨てて、能力が誘発することによりまた優先権を得て、墓地をシャッフルしてライブラリーに戻してまた同じことを繰り返し、これにより新しいクリンナップ・ステップを何度でも始められるので相手のライフを0にするまでカードを捨て続ける」というような複雑な目標を掲げることもできる。

 私はどちらもやったことがあるよ。(そんなことだろうと思ってたって?)

 しかし、目標をはっきりさせるための何かは必要となる。ただ「ゲームに勝ちたい」だとか「赤白のデッキ」だけでは、方向性を定めるには足りない。

 攻撃的なデッキを目指しているのか? 防御的なデッキを使いたいのか? デッキには相乗効果を持つ組み合わせが多いだろうか? ゲームに勝つための手段は? これらはどれも、目標を明確化するための質問だ。

 一度それをはっきりさせることで、それに当てはまるすべてのカードを検討し始めることができる。「《先兵の精鋭》は素早い勝利に貢献するだろうか? ああ、攻撃することで勝ちに繋がる! 《撃砕確約》はどうだろう? ああ、攻撃の助けになる! 《極上の大天使》は? いや、これはだめだ――7マナもかかる」この簡単な選別法は、実際にデッキ構築の方向性を導く助けとなるんだ。

 これは構築戦のデッキを組むときの話だが、ブースタードラフトやシールドデッキにはそぐわないんだろうか?

 実は、リミテッドにこそ当てはまるんだ......断然ね!

SCyrHC4ZMl.jpg

 目標をはっきりさせなければならないのは、デッキ構築の時だけではない。デッキとなるカードをドラフトしている間から、常にそれを意識しておく必要があるんだ! ドラフトでカードを4枚ピック(訳注1)したとき、あなたのデッキは何を目指しているだろうか?

(訳注1:ピック/ドラフトでパックから自分のデッキ用にカードを選ぶこと)

 軽量クリーチャーを4枚ピックした場合と、除去やドロー呪文を4枚ピックした場合では、目標は全く異なるものになるだろう。ドラフトの過程すべてにおいて、カードをピックするすべての機会ごとに、自分が組もうとしているデッキがどんなものかを考えなければならない――そしてそのデッキに必要なものをいつ得るべきかも知らなくてはならない!

 ドラフトで失敗してひどいデッキを組む羽目になる時は、おおむねデッキが何をしたいのかを決めかねた時だ。なぜなら、ドラフトでのデッキ構築作業は、実際のところその大部分がカードをピックしている最中に行われるからだ。最適なカードの組み合わせが常に来るとは限らないが――時には、足りない穴を埋めるためのまともなカードや強力なレアを使うために、予定を少しばかり変更することも求められるだろうが――しかし基本的には、なるべく目標に沿って進むべきだろう。

 あなたの好きなフォーマットが構築戦であってもリミテッドであっても、統率者戦であってもキューブ・ドラフトであっても、デッキの目標を――明確化した目標を――意識し続けることが、成功する上で最も大事なことだ。

一途に押し通す

 このほかにも、『イクサラン』ブロックで素晴らしい例を見ることができる。

 マジックには、開発部の面々が「リニア・デッキ」(訳注2)と呼ぶものがある。それは単純な内容で、戦略を1つだけ持っていることが多い。それにすべてを賭けているんだ。多くの場合、そういったデッキは、投入したカードの単純な合計よりも大きな結果を得るために、特定の要素を大量に投入して引き当てる必要がある。(これについてさらに詳しい内容を知りたければ、リード・デューク/Reid Dukeの素晴らしい記事(訳注:リンク先は英語)を読むといいぞ。)

(訳注2:リニア・デッキ/linear(直線的な)、という意味合いから、目的に一直線に向かうデッキ)

 そして『イクサラン』はなぜこの話に合うのか? 『イクサラン』で見うけられる部族デッキ(「クリーチャー・タイプを重視したデッキ」のこと)は、リニア戦略の典型的な例だからだ。その部族に恩恵を与えるカードと組み合わせることで、その部族のクリーチャーが多いほど良い結果が得られることになる。《霧まといの川守り》自身はそれほど良いカードではないが、《マーフォークの霧縛り》を何体も出すことができれば、とんでもない脅威へと変貌する!

 これはデッキ構築の計画に影響を与えうるものだ。構築戦で《マーフォークの霧縛り》に続けて《財力ある船乗り》を展開する意味はあまりないだろうからね。(リミテッドでは? 理想的ではないが、まあ、そういうこともあるだろう。)

 そしてこれが当てはまるのは、部族デッキだけではない。

 他の好例としてはバーン・デッキが挙げられる。赤いデッキに見境なく《溶岩の撃ち込み》を4枚投入したとして、すべての赤いデッキにぴったり合うとは限らない。クリーチャーでの戦闘を前提としたアグレッシブ・デッキの場合、追加のクリーチャーや、《稲妻の一撃》のような柔軟に使える除去呪文のほうが欲しいかもしれない。ミッドレンジやコントロールであれば、3点のダメージを与えるためだけにカードを1枚消費するのは割に合わないかもしれない。

 しかしながら、他の火力呪文の山とともに、対戦相手に対して炎と稲妻で畳みかけるのであれば、《溶岩の撃ち込み》は劇的に強力なカードとなる。バーン・デッキは本質的にはコンボ・デッキなんだ――そのコンボは手札や戦場で組み合わせるものではなく、数ターン呪文を唱え続けて対戦相手のライフを0にする、という点を除けばね。しかし必要十分な枚数が投入されていなければ、目標に届かないということに気づくだろう――そのため、《溶岩の撃ち込み》のようなプレイヤーにしかダメージを与えられない火力呪文を使うデッキは、それ以外にも多くのプレイヤー専用火力呪文を投入する傾向にある。これがリニア計画だ。

 デッキを構築しているときに、その計画がリニア的だと思う場合は、可能な限りそれに専念してみよう。結果やり過ぎになるかもしれないが――結局のところマーフォーク・デッキと言えども、マーフォークでも土地でもないカードが欲しくなるものだが――試してみるまではどこからがやり過ぎか分からないものだ。

グッドスタッフを見つける

 そういった一極集中デッキの真逆の存在として、一般に「グッドスタッフ」デッキという素晴らしい名称で呼ばれているものがある。それらのデッキは基本的に、デッキという鍋の中に環境で使える最高のカードを大量に煮込んでスープを完成させる、というものだ。

 今のスタンダードで考えてみよう。黒緑青(スゥルタイ)ミッドレンジ・デッキに入っている《逆毛ハイドラ》と《スカラベの神》は、一緒になって何をしているんだろうか?

 答えは......どちらも単に極めて強力なカードというだけだ!

 「このデッキの目標は何だろう? デッキにはエネルギー・カードの相互作用が多少はあるかもしれないけど、実際にそれらを利用した計画を定められるものだろうか?」と疑問に思うかもしれない。

 そして、ああ、ここでは確かにそれらは計画の一部なんだ。

 「グッドスタッフ」デッキの思想は、リニア戦略のほぼ逆を行っている。これらのデッキの方針は、相乗効果を特に発揮せずとも単体のそのままの強さが十分であるカードを大量に採用するというものだ。素で強い呪文と対戦相手のカードをぶつけ合ってやり取りを続けられれば、最終的には優位に立つ可能性が高い。

 そしてその中にこそ明確化された目標がある。このようなデッキの目標とは、「単体で最も強力なカード群を利用して対戦相手を圧倒し、長期的にゲームが続く中でカードのやり取りを続け、優位に立つ」という方針であると私は考えている。その特異性に応じて表現は長くなったり短くなったりはするだろうが、とどのつまりこれが計画の内容だ。

 例えば、この計画に従うならば、そのフォーマットで最も効果的ではあっても序盤でしか活躍できないクリーチャーは採用したくない、ということになる。ゲームをもっと長引かせ、そこでのカードの質の比べあいで勝つことを狙っているからだ。それよりも、《導路の召使い》のようなカードを入れて呪文をより早いターンに唱えられるようにしたり、《マーフォークの枝渡り》や《翡翠光のレインジャー》といった序盤から展開できて後々置くための土地も探せるような強力なクリーチャーを採用したい。

 グッドスタッフはリニア・デッキに比べれば基準が緩いかもしれないが、それでもデッキ構築の方向性を導くための妥当な目標が定められている。

目標に向かって

 成功したデッキのほぼすべてが、その構築の背後に何らかの計画を持っている。そして今、あなたが自分のデッキを構築するときに今回の内容を適用できるよう願っているよ。

 そしてこれも伝えておきたいのだが、デッキは常にその目標に完璧に従うわけではない。

 もちろん競合する要素もあるだろう。例えば、グッドスタッフ・デッキであったとしても、4ターン目よりも前に呪文を唱えるために、少々控えめな2マナ域を採用する必要があるかもしれない。

 しかし可能な限りは、明確化した目標を指針として用いよう。それに従うことで、勝利もまたあなたに付き従うはずだ。

 この技術を、デッキを設計するために、そしてデッキを改善するために用いてくれることを願うよ。私自身、確かにこの考えに助けられてきたんだ!

 何か考えや疑問はあるかな? ぜひとも聞かせてほしい! いつでもTwitterTumblrでメッセージを送ってくれてかまわないし、BeyondBasicsMagic@Gmail.comに(すまないが英語で)メールしてくれても大丈夫だよ。

 楽しんでくれ。そしてあなたのデッキすべてに明確化された目標があらんことを!

 また会おう。

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索