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プロツアー・パリ11
準々決勝: 石村 信太朗(埼玉) vs. Vincent Lemoine(ベルギー)
「Lemoine、レモンサワーのようにあっけなく」
by Marc Calderaro / translated by Atsushi Ito
日本の石村とベルギーのLemoine。彼らはプロツアートップ8経験こそないものの、ずぶの素人というわけではもちろんない。石村はグランプリ・浜松のトップ8に名を連ねたこともあるし、「rizer」のアカウント名の持ち主として2010年のマジックオンライン・チャンピオンシップ(MOCS)で姿を現したこともある。対するLemoineだって負けてはいない。2004年の世界選手権で団体戦決勝まで上り詰めたベルギーチームの代表であり、グランプリ・アテネでは準優勝。そしてまた、現ベルギー王者でもあるのだ。
ベルギーのVincent Lemoine |
スイスラウンドを1位通過したLemoineは、メインボードで行う1ゲーム目は有利に進められる、先手を取ればなおさらだ、と踏んでいる。しかしLemoineは「でも3本先取だからさらに2本も取らなきゃいけないんだよね」とも述べる。何せ石村のサイドボードには、ゲーム後半でも盤面を引っくり返すことができるオシャレなカードがいくつか採用されているのだ。《漸増爆弾》や《悪斬の天使》は、ボロスデッキのぶん回りすらもいとも簡単に捌ききってしまう可能性がある。
Game 1
Lemoineのオープンハンドは強力なものだった。《ゴブリンの先達》《戦隊の鷹》《未達への旅》《石鍛冶の神秘家》と良いカード尽くしだ。対する石村も3枚の《マナ漏出》に加え《失脚》《定業》とこれまた恵まれた手札なのだが、後手とあってはこういう手札もあまり歓迎できたものではない。もし序盤の猛攻を耐えしのぐことができれば、ゲーム中盤にかけて石村の地位は安泰だろう。だが、果たして彼はそこまでたどり着けるだろうか?
Lemoineの《ゴブリンの先達》が《定業》をめくり、まずは相手のライフを18に。石村は《氷河の城砦》をタップインすると、次にめくれたのは《饗宴と飢餓の剣》。石村は《マナ漏出》のためにマナを立ててターンを返す。
次のアタックで石村のライフは13となり、戦闘後にLemoineは既に召集済である、2体目の《戦隊の鷹》をプレイするが、これは《マナ漏出》される。ベルギー人が土地を置いてターンを返すと、石村は《定業》で《未達への旅》《氷河の城砦》を見つけるが、これらのカードでは遅すぎてとても役に立ちそうにない。2枚とも下に送って見えていないカードをドローするが、ここで盤面の状態と手札に溜まった役立たず以外の何者でもないカウンター呪文たちを見て少考。
やがて「負けました」と石村が言い、勝負は2ゲーム目へ。
Lemoine 1-0 石村
「今のが先手だったらなー」とカードをかき集めつつぼやく石村。
Game 2
今回石村のキープした手札は《悪斬の天使》《漸増爆弾》そして《精神を刻む者、ジェイス》と、先ほどと同じデッキとは思えない内容である。しかし、彼はまたも1ターン目《ゴブリンの先達》の脅威に悩まされることとなった。今度は《沸騰する小湖》を供給したゴブリンに対して静かに《漸増爆弾》が置かれ、さらなるLemoineのアタックで石村のライフは16へ。公開されたカードは《マナ漏出》。
ベルギー人は1ゲーム目を(後手という違いはあれど)なぞるように2ターン目の《戦隊の鷹》でさらに2体の鷹をサーチする。《漸増爆弾》にカウンターが乗り、2枚目の《天界の列柱》を置く石村だが、《ゴブリンの先達》がめくったのがまた《マナ漏出》なのを見てうめく。《ぐらつく峰》の助けもあってライフは11へ。
そのカウンター呪文も2体目の《戦隊の鷹》を打ち消すことで一応の仕事はしたが、目下石村が考えなくてはならないのはこの対戦相手の素早い初動をどうやってしのぐか、である。《漸増爆弾》はカウンター1個のままで自分のターンに入り、《精神を刻む者、ジェイス》をキャストして+2能力で自身のライブラリートップの土地を下に送る石村。
日本の石村 信太朗 |
Lemoineは《戦隊の鷹》のおかげで溢れんばかりの手札を抱え、最良のプレイングを模索する。そして《精神を刻む者、ジェイス》を無視してクリーチャーたちを本体に攻撃させ、石村のライフを1桁に落とす。
フェッチランドの使用もありライフは17対8、ここでLemoineは《ミラディンの十字軍》をキャストする。プロテクションがゲームに影響することはないだろうが、Lemoineの他の2体のクリーチャーと違って3マナ域の強力なクリーチャーである。だが石村はそれを即座に《精神を刻む者、ジェイス》でバウンスすると、ついにタップアウトで《悪斬の天使》をキャストする。これに対してLemoineは《ステップのオオヤマネコ》《肉体と精神の剣》と並べるしかできず、アンタップした石村の盤面には天使と、2つカウンターの載った《漸増爆弾》、そして忠誠値4の《精神を刻む者、ジェイス》。
石村は早速ジェイスの0能力を使用すると、《悪斬の天使》で殴りにいく。ギャー。しかも戦闘後に2体目が登場。さらにギャー。特筆すべきことに石村のデッキには全部で2枚しか入ってないっていうのに。それでもLemoineは《ステップのオオヤマネコ》に《肉体と精神の剣》を纏わせ、《広漠なる変幻地》を置いて攻撃。石村のライフを7まで戻し、ライフは一応12対7。だが2体のでっかい、飛行持ちの、おまけに絆魂持ちの天使がどうしようもないし、さらに《精神を刻む者、ジェイス》も健在なのだ。結局2体目の《戦隊の鷹》がブロッカーとして戦場に降り立つが、石村は先刻ご承知とばかりに《漸増爆弾》でそれらを薙ぎ払い、Lemoineを投了に追い込んだ。
Lemoine 1-1 石村
Game 3
Lemoineに先攻が移り、《ステップのオオヤマネコ》が即座に《失脚》される。2ターン目に続くクリーチャーはなく、《沸騰する小湖》が置かれるのみ。ここぞとばかりに《漸増爆弾》がキャストされるが、ベルギー人は引き入れた《ステップのオオヤマネコ》を出しなおした後、《戦隊の鷹》を呼び寄せる。ターンエンドに爆弾のカウンターが貯まり、石村は《ミラディンの十字軍》をキャストする。
ようやくこのゲーム初の戦闘ダメージで石村のライフが17へ。Lemoineの尽きぬフェッチランドが《ミラディンの十字軍》でのブロックを許さないのだ。戦闘後に2体目の《戦隊の鷹》が出てターンを終えると、石村がドローゴーで再びLemoineの戦闘フェイズへ。2枚のフェッチランドが生け贄に捧げられ、ライフは17対9でベルギー人優勢だ。
石村の《漸増爆弾》はカウンター2個のままで依然プレッシャーをかけ続けている。《ミラディンの十字軍》がLemoineのライフを4点削り、戦闘後に《闘争の学び手》が登場して即座に3/3へとレベルアップ。が、Lemoineはアンタップして、すぐさまこれを《稲妻》して学び手を馬から叩き落すと、石村のライフを5まで追い込む。もはや風前の灯火、とそう明らかに感じられる。だがまだ《漸増爆弾》があり、そして《ミラディンの十字軍》がLemoineに予断を許さない。ライフは9対5。
えっと・・・何これ? |
両者ともにまだ手札が尽きぬこの状況で、石村はついにメインフェイズで《漸増爆弾》を起動し、その後に《戦隊の鷹》でさらに3枚の鷹を補充する。そのうち2枚をさらにキャストして石村がターンを返すと、このビッグイニングを終えた段階でLemoineの場には6枚の土地と《ステップのオオヤマネコ》がいるだけだ。
しかし《電弧の痕跡》が石村の《ミラディンの十字軍》と鷹の1体を葬り、Lemoineの残り2体の鷹が盤面に追加される。《ステップのオオヤマネコ》は上陸なしでアタックに行けない。他方で石村も《天界の列柱》を起動して警戒でアタックしライフを5対5のイーブンとしつつ、戦闘後に《乾燥台地》でライフ4にしてのこちらも最後の《戦隊の鷹》をプレイ。石村が3体の《戦隊の鷹》に対してLemoineは2体。
《肉体と精神の剣》が鷹に装備されるが、Lemoineは攻撃せずにターンを返す。石村も確かに鷹に剣はお似合いと言わんばかりに《石鍛冶の神秘家》をキャストして自身の剣をサーチする。こちらは《饗宴と飢餓の剣》だ。剣を装備した互いの鷹が相打ちになった後、Lemoineの《ステップのオオヤマネコ》が友の敵をとらんと剣を装備して攻撃し、石村が《石鍛冶の神秘家》でこれをチャンプブロックする。Lemoineは《板金鎧の土百足》を追加しつつ《未達への旅》で石村の鷹の1体を葬り、さらにアンタップ状態の鷹に《肉体と精神の剣》を付けかえる。Lemoineは土地さえ引ければ《ステップのオオヤマネコ》を(そして今では《板金鎧の土百足》をも)もっと重大な脅威にできるという状況だ。
残された《戦隊の鷹》は1体、他に《饗宴と飢餓の剣》と《天界の列柱》がある盤面で、石村はどうやって自分の4点が削りきられる前にLemoineの5点を削るか、その方法を模索する。まず鷹が剣を装備してアタック、Lemoineの最後の鷹と相打ちになる。そして石村の手札からその戦いを見ていた《闘争の学び手》が、文字通り闘争を見て学んだかのように2回のレベルアップで3/3へと成長する。
しかしそういった全ては無駄になってしまった。《ステップのオオヤマネコ》がついに「+4/+4修正」と書かれた毛糸玉のようなフェッチランドを見つけると、石村のライフを削りきるには十分なのだった。
Lemoine 2-1 石村
Game 4
お互いにマリガンすることになり、Lemoineが言う。「紳士的にお互いマリガンてことで、公平でいいんじゃない」
両者ともに6枚でキープし、戦いが幕を開ける。石村の《漸増爆弾》がLemoineの《ステップのオオヤマネコ》《戦隊の鷹》という立ち上がりを押さえ込む形。
《戦隊の鷹》でサーチしている最中、Lemoineは「マリガンなんてしたっけ?」とおどける。石村は《漸増爆弾》とカウンターを1に増やし、《饗宴と飢餓の剣》をプレイ。次のターンには無防備な《精神を刻む者、ジェイス》を2体の鷹と《ステップのオオヤマネコ》の前に展開するが、+2能力を使用した忠誠値5ならおそらく大丈夫だろうといったところ。
何とかしのいだか、という石村 |
ところがLemoineの置いたさらなるフェッチランドを見て思わず「んー」と漏れる。頑張れ石村、相手は14枚もフェッチランドが入っているんだ!一応Lemoineに《精神を刻む者、ジェイス》へのアタックが聞いてみるが、そんなはずもなく。日本のスイスラウンド8位がライフを7に落とし、戦闘後に《ゴブリンの先達》がキャストされる。だが石村は《漸増爆弾》がカウンターを2個に増やし、《精神を刻む者、ジェイス》で《ステップのオオヤマネコ》をバウンス、大胆にもフルタップで《悪斬の天使》をプレイする。
《石鍛冶の神秘家》で《肉体と精神の剣》をサーチし、2体目の《ゴブリンの先達》もプレイするが、殴るわけにもいかないLemoine。石村は《定業》で土地を下に送って《失脚》を獲得し、さらに《精神を刻む者、ジェイス》の0能力でライブラリを掘り進める。そして石村は座り直すと、このマッチで一番のビッグイニングを見せつけた。すなわち、《悪斬の天使》に《饗宴と飢餓の剣》を纏わせ、《漸増爆弾》でブロッカーの《戦隊の鷹》と《石鍛冶の神秘家》を排除。さらに《地盤の際》で《ぐらつく峰》を破壊した上、《ゴブリンの先達》を《失脚》して見せたのだ!石村が長かったターンを返すと、ライフは15対14となり、先ほどまでの複雑な盤面は見る影もない。
勇敢な《ゴブリンの先達》が石村のライフを12に戻し、《ステップのオオヤマネコ》と《戦隊の鷹》が次々出現するが、《精神を刻む者、ジェイス》のバウンス能力、そして《天界の列柱》が天使とともにレッドゾーンに進軍すると、Lemoineのライフは一気に3まで落ち込み、次のターンには0を割った。
Lemoine 2-2 石村
そうして勝負は最終戦にもつれ込んだ。これまでの4ゲームはどれも、どちらに傾いてもおかしくない互角の戦いだったと言える。《悪斬の天使》と《漸増爆弾》がそれぞれの仕事を果たし、微妙な盤面から勝利へと導いて見せた。対するLemoineの容赦ない、尽きることないフェッチランドも、石村を毎回のように追い詰めた。下馬評では一方的と思われていたマッチアップだが、サイドボード後に思わぬ展開を見せたのだ。
Game 5
しかし、幕切れはあっけなかった。
石村は素晴らしいハンドをキープした。ただ、そのハンドは1つの問題を抱えていた・・・土地が1枚しかなかったのだ。攻防を支える序盤のクリーチャーたちには事欠かないのだが、それらをキャストするためのマナがない。対するLemoineは堅実に《板金鎧の土百足》をプレイ、だがこれは即座に《失脚》された。そしてこのマッチで初めて、石村が序盤の一斉展開を見せる。2体目の《闘争の学び手》をプレイしつつ、1点アタック。しかし、依然2枚目の土地は引けていない。
どんな結末でもLemoineは手を抜かない |
石村は4ターン目のドローを見てうめく。出しなおされた《板金鎧の土百足》が《ぐらつく峰》で石村のライフを15まで削り、さらに次のターンにはレベルアップした《闘争の学び手》が《反逆の印》されてライフは19対6。《板金鎧の土百足》出す→フェッチランド置く→ブロッカーをどかす・・・皆さん、これが最強コンボです。
ようやく石村が2枚目の土地にたどり着いた。(《反逆の印》で)4/4と1/1の《闘争の学び手》をコントロールしており、《板金鎧の土百足》もどうにか《未達への旅》したことでLemoineの場には土地だけだ。
だが、Lemoineは最後の詰めとなるスペルをもしっかりと持っていた。エンド前の《稲妻》から、2枚目となる《反逆の印》がこの激闘に終止符を打ったのだった。
Lemoine 3-2 石村
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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