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プロツアー『カルロフ邸殺人事件』
プロツアー『カルロフ邸殺人事件』初日の注目の出来事
2024年2月24日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
2024年へ、そして「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」へようこそ!
信じがたいことに、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emanuel Deprazが「第29回マジック世界選手権」を制して2023年の世界王座に就き、プロツアー再開という記念すべき年を感動的に締めくくってから、5か月が経った。また、その大会ではサイモン・ニールセン/Simon Nielsenが2023年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーを劇的な展開で獲得した。リード・デューク/Reid Dukeとのポイント・レースは、シーズン最後の大会の最終日の最後の最後まで続いたのだ。
それからあっという間に時が過ぎ、6か月が経とうとしている。ドゥプラもニールセンも競技マジックの新たな1年を迎え、タイトル防衛を果たすべく「MagicCon: Chicago」にて行われる「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」の開幕を待ち受けていた。
……少なくともドゥプラは。ニールセンは、大会を前に集中力を高めるため、宿泊場所から会場へ自転車で向かうことにした。そして彼は、道を間違えた。数ブロックを猛烈に漕いだすえに、プロツアーの開幕には間に合ったのだった。
We're live with #PTKarlov!
— PlayMTG (@PlayMTG) February 23, 2024
Join us as 250+ players compete for their share of $500,000 in prizes at https://t.co/glt0Vc12PT pic.twitter.com/wX9M82YLao
#PTKarlovが開幕します!
250名を超えるプレイヤーが賞金総額500,000ドルを懸けて競い合う大会の様子を、twitch.tv/magicにてご覧ください。
新たな顔と馴染みの顔
2024年最初のプロツアーは、ハイレベルなマジック・プレイヤーたちにとって大事なイベントだ。1年のスタートを快調に飛ばし、車輪を回すためのポイントを集め、さらなるプロツアーの権利を得るチャンスなのだ。プロツアーでトップ8に入り英雄となるのは誰もが夢見ることだが、その大勝へつなげるために出場を続けられるだけの結果を残すことも大切なのだ。
The first MTG purchase I ever made was @Jabsmtg World Championship Psychatog deck. Fast forward 20 years later and he’s the first person I see walking into #MCChicago.
— Brad Nelson (@fffreakmtg) February 23, 2024
I love this game.
最初に購入したMTG製品が『World Championship Decks 2002』の@Jabsmtgの「サイカトグ」デッキだった。それからもう20年経ったが、#MCChicagoの会場に入って最初に会ったのが彼だった。
このゲームが大好きだよ。
In 2018 a shy 13-year-old kid had his mom ask his favorite Magic the Gathering Pro Player @Mengu09 if he could play vs the kid at a meet&greet the Friday of a Grand Prix. Almost 6 years later they're prepairing together for the Pro Tour at his favorite Pro Player's house https://t.co/uWY7pxsAz8 pic.twitter.com/WOGsIOwBsw
— Lorenzo Terlizzi (@terlollo15) February 6, 2024
2018年のこと。グランプリの金曜日に行われた、憧れのマジック:ザ・ギャザリング・プロプレイヤー@Mengu09との対戦会で、13歳のシャイな子供は母親に、子供と対戦してもらえるか聞いてもらった。それから6年、その憧れのプロプレイヤーの家で、プロツアーへ向けた練習をともにしている。
しかしもちろん、今大会には戦い慣れたベテランだけが参加しているわけではない。出場選手258名の中には、人生で初めてプロツアーの舞台に上がる者もいるのだ。
Ethan Saks of Lords of Limited is playing his first Pro Tour at #PTKarlov!
— PlayMTG (@PlayMTG) February 23, 2024
"Draft is good, but playing is terrifying!" pic.twitter.com/HvhkWulzf0
「Lords of Limited」のイーサン・サックス/Ethan Saksが、 #PTKarlovで人生初のプロツアーに挑戦!
ドラフトは悪くないけど、プレイするのが怖いよ!
そのうちの1人が、以前はジャッジをしていたが最近競技の世界に足を踏み入れた、シアトル出身のタリア・バエル/Talia Baelだ。バエルはVMLで権利を獲得したアトランタでの地域チャンピオンシップにて、わずか数か月前に地域チャンピオンシップ・デビューを果たした。そしてそれは、思い出に残る第一歩となったのだ。
多くのプロツアー初出場のプレイヤーと同様に、バエルはこの舞台で味わえる体験を楽しんでいる。
「プロツアー出場の成功体験は、MTGコミュニティにおけるプレイヤーとしての私を表現するのに大いに役立つでしょう」と、バエルは言う。「コロナ禍以前は、かなりのキャリアを積んだジャッジでした。現時点での私の第一目標は、より広いコミュニティへと関係を広げていくことです。競技の世界では新参者ですから、プロツアーの舞台に挑戦できたことは、競技コミュニティの少なくとも一面を知る上で多くのことを紹介してくれました」
サックとバエルはともに、『カルロフ邸殺人事件』ドラフトで2勝1敗と好調なスタートを切った。サックはパイオニア・ラウンドで優勝争いから脱落したものの、バエルは「ジェスカイ・コントロール」を操り初日6勝2敗とし、2日目も突き進む可能性がある。
殺人事件の謎を解き明かせ
プロツアーで特に注目を集めるのは構築フォーマットだが、それには理由がある。カード60枚の(《空を放浪するもの、ヨーリオン》があれば80枚の)デッキで対戦する試合はトーナメントの終盤に行われ、トップ8や次のイベントへの参加権利が懸かったものになるからだ。
しかし見落とされがちなドラフト・ラウンド6回戦こそ、プロツアーの大きな部分を占める。どれだけ優れた構築デッキを仕上げても、初日のドラフト・ラウンドで0-3するのは破滅的だ。一方ここで力強く踏み出せれば、合計10回戦におよぶ構築ラウンドに臨む上で大きな違いを生み出せるのだ。
この違いは長年にわたって世界最高のプレイヤーたちに認められており、トップ・チームはどこも、必ず1人はリミテッド・マスターを擁している。『カルロフ邸殺人事件』でプレイ・ブースターが導入されたことでドラフトはさらなる進化を見せ、プロツアーの有力選手たちにとってはこれまで以上に、ドラフトを軽視しないことが大切になっている。プロツアー殿堂顕彰者たちはみな、卓越したリミテッド技術をもってキャリアを積み重ねてきたのだ。
こうして、各チームが動き出した。
Worldly Counsel excluding team kills went 26-10 day 1 in draft (32-16 with team kills).
— Eduardo Sajgalik (@Walaoumpa) February 23, 2024
Good stuff ^^
チームメンバー同士の対戦を除いて、「Worldly Counsel」の初日ドラフト成績26-10(全部込みで32-16)。
いい感じ^^
蓋を開けてみれば、プレイヤーたちは新型ブースターや馴染みのメカニズムの新たな形に適応していた。『カルロフ邸殺人事件』ドラフトの核となるのは、「変装」メカニズムだ。
初期にはアグロ環境であることが示唆されたこのセットだが、トップ・チームによる2週間にわたるプレイテストを経て、どのような数字が示されたのか?
一般的な通念には、ときに一般的になった理由がある。少なくとも今大会初日の成功の秘訣は、白ベースの攻撃的なデッキであった。
Day 1's 3-0 draft decks at #PTKarlov color breakdown:
— PlayMTG (@PlayMTG) February 23, 2024
Boros: 3
Azorius: 3
Selesnya: 2
Golgari: 2
Izzet: 2
Rakdos: 1
Esper: 3
Naya: 3
Mardu: 3
Sultai: 2
Bant: 2
Abzan: 2
Temur: 1
4-Color: 2
#PTKarlov初日のドラフト・ラウンド全勝デッキの色分布は以下の通り:
ボロス:3
アゾリウス:3
セレズニア:2
ゴルガリ:2
イゼット:2
ラクドス:1エスパー:3
ナヤ:3
マルドゥ:3
スゥルタイ:2
バント:2
アブザン:2
ティムール:14色:2
ドラフト全勝デッキは、そのドラフトにおいて知っておくべき大切なことを伝えてくれる。今大会初日のドラフト全勝者リストには、元世界王者の高橋 優太に加えて、地域チャンピオンシップ優勝者が名を連ねた。中にはルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasやジェイク・ビアズリー/Jake Beardsley、アドリアン・イニーゴ・タステト/Adrián Iñigo Tastetといった名前もある。
「主な戦略は2つありました。1つは基本に忠実な方法。もう1つは型破りな方法です」と、チーム「Handshake」のアンソニー・リー/Anthony Leeは述べる。彼が言うには、基本に忠実なプランは早々に崩れ、方向転換を余儀なくされたという。
そのために、入念なプレイテストが必要なのだ。リーはなんとか方向を変えることに成功し、悲惨なスタートが予想されたところから手堅く2勝1敗にまとめ、初日を乗り切ったのだった。
さて、危うくプレイヤー・オブ・ザ・イヤー防衛の年を始められないところだったニールセンはどうだったのだろう? もちろん3戦全勝のパーフェクトな滑り出した。すでにウォームアップは済ませてきたのだから。
Almost missed my draft, sat down all sweaty, opened Deadly Cover-Up and 3-0'ed my pod by drawing it every game
— Simon Nielsen (@MrChecklistcard) February 23, 2024
危うくドラフトに間に合わず、汗だくで席につくことになったけど、《死人に口無し》引き当てて、全ゲームでそれ引いて3-0 :D
パイオニアの鍵をこじ開けろ
このフォーマットは2023年の地域チャンピオンシップ・シーズンに幅広くプレイされたが、新たなキーカードの追加(や《大いなる創造者、カーン》の除外)によって、今年にかけて移行期にあった。
大まかに、現環境は3つに分けられる。「アマリア・コンボ」や「睡蓮の原野」を擁する「コンボ」、「アゾリウス・コントロール」や「ラクドス・ミッドレンジ」を擁する「フェア」、そしてデッキが独自のアーキタイプを成す「イゼット・フェニックス」の3つだ。今大会の初日を経て、その3本の柱が環境を定義した。
しかしその下にも、見るべきものはたくさんある(我らが殿堂顕彰者フランク・カーステン/Frank Karstenが、特に刺激的なデッキを紹介している)。パイオニアに圧倒的なデッキはなく、デッキ選択で優位を得られるというのが大方の見方である中で、サプライズを用意してきた注目すべきチームがあった。
3 《沼》 4 《変わり谷》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 3 《硫黄泉》 4 《黒割れの崖》 4 《血の墓所》 3 《魂の洞窟》 2 《目玉の暴君の住処》 1 《荒廃踏みの小道》 -土地(25)- 4 《血管切り裂き魔》 3 《分派の説教者》 4 《薄暮軍団の盲信者》 4 《税血の収穫者》 -クリーチャー(15)- |
4 《傲慢な血王、ソリン》 1 《強迫》 4 《思考囲い》 4 《鏡割りの寓話》 1 《苦々しい勝利》 4 《致命的な一押し》 -呪文(18)- 2 《Smuggler's Copter》 -その他(2)- |
2 《ヴェールのリリアナ》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《危難の道》 2 《強迫》 1 《苦々しい勝利》 3 《減衰球》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
「ラクドス吸血鬼」? この同族デッキは、以下のシナジーを中心に構築されている。
《血管切り裂き魔》は6マナという重さがパイオニアでは厳しいように見えるが、メタゲームの穴を綺麗に埋めてくれる。必要とあれば唱えることもできるが、それは基本的には《傲慢な血王、ソリン》経由で戦場に出る。そしてひとたび戦場に出れば、吸血能力がボロスのような横にトークンを展開するデッキを罰し、一方でクリーチャーの生け贄を要求する護法能力は、「アゾリウス・コントロール」にはほとんど支払えないのだ。
4-1 now, playing Splinter Twin in Pioneer ♂️ (deck is sweet as hell) #PTKarlov pic.twitter.com/eATMVkXbKp
— Luis Scott-Vargas (@lsv) February 23, 2024
現在4-1。パイオニアは「欠片の双子」使ってる(デッキは死ぬほど良い) #PTKarlov
決して支配的なデッキではないが、サム・パーディー/Sam Pardeeを初日6勝2敗の成績に導いた。
一方の白青を使うプレイヤーたちは、キーポイントである対応の動きに《喝破》を頼っている。
他に目を引くデッキを挙げるなら、「イゼット・エンソウル」だろう。これは《アーティファクトの魂込め》と、《ダークスティールの城塞》のような軽量(で破壊不能を持つ)アーティファクトや《ヴォルダーレンの美食家》などが生成するさまざまなトークンを組み合わせたデッキだ。古典的な1枚である《爆片破》を採用しゲームを終わらせる力を一段階上げた「エンソウル」デッキ(とドラフトの好成績)は、ホセ・イラリオ/Jose Hilarioをタステトに喫した1敗のみの7勝1敗の好成績に導いたのだった。
4 《ダークスティールの城塞》 1 《島》 1 《山》 1 《天上都市、大田原》 2 《バグベアの居住地》 4 《シヴの浅瀬》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 4 《尖塔断の運河》 4 《ダークスティールの城塞》 4 《蒸気孔》 -土地(26)- 3 《無謀な奇襲隊》 4 《太陽の執事長、インティ》 4 《遠眼鏡のセイレーン》 4 《ヴォルダーレンの美食家》 4 《戦闘急使》 -クリーチャー(19)- |
4 《上機嫌の解体》 4 《アーティファクトの魂込め》 4 《爆片破》 2 《塔の点火》 1 《呪文貫き》 -呪文(15)- 4 《Smuggler's Copter》 -その他(4)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》 2 《azoret the Fervent》 2 《暴れ回るフェロキドン》 1 《否認》 3 《引き裂く流弾》 2 《呪文貫き》 2 《塔の点火》 2 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
さらなる殺人事件へ
初日のパイオニア・ラウンドが終了したとき、最も高くそびえ立っていたのはもう1つの見慣れたデッキだった。ジェシー・ハンプトン/Jesse Hamptonが操る「イゼット・フェニックス」だ。
ハンプトンは、今大会への参加権利を複数の方法で積み上げるほどの成功の波に乗ってシカゴへやってきた。
- 「Magic Online Champions Showcase」
- プロツアー『指輪物語』にてマッチ・ポイント30点以上獲得
- 「MagicCon: Las Vegas $100,000 Open」にて上位入賞
- MTGアリーナにおける予選ウィークエンド
そして彼は、競技の世界でスポットライトを浴びることを知らぬ者ではない。過去にプロツアー・トップ8入賞を2回達成しており(2014年の「プロツアー『運命再編』」とモダンがデビューした「プロツアー・フィラデルフィア2011」)、その他イベント経験は豊富だ。ハンプトンが着々と順位を上げていったのは、驚くべきことではないのだ。
ドラフト3-0でスタートを切った彼は、歩みを緩めることなくパイオニア・ラウンドも「イゼット・フェニックス」を手に5戦全勝で初日を終え、「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」で唯一の全勝プレイヤーとなっている。
今日は彼の誕生日でもあった。
すぐ後ろには、彼を追う者が団子状態になっている。7勝1敗で2日目へ進出し、トップ8やプロツアーへの継続参戦という目標に向かってインコースを走れるプレイヤーは7名。そこにはサイモン・ニールセンやアドリアン・イニーゴ・タステトも含まれている。
私たちは「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」を最後まで追うつもりだ。皆さんにもぜひTwitch.tv/Magic(訳註:日本語では日本公式YouTubeチャンネル)で見届けてほしい。
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