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プロツアー『タルキール龍紀伝』

観戦記事

準決勝:八十岡 翔太(日本) vs. Ondrej Strasky(チェコ)

By Naoaki Umesaki

2015年4月12日

 独自の『青黒ドラゴンコントロール』を使用して準決勝まで勝ち上がってきた八十岡は、準々決勝の試合を勝った後、中村修平や大磯正嗣といったメンバーと昼食をとりながら準決勝の作戦会議をしていた。

 話を聞いてみると、「相手はマナブーストから重量級のカードを連打してくるデッキ。そういったカードを対処しきれるかの勝負になる。準々決勝で当たった『赤緑ドラゴン』よりかは序盤が楽に戦えるし、相性はいいと思う」と簡単にまとめてくれた。

 ビデオカメラに囲まれたステージの席に座ると、「前回のプロツアーでも当たったよね」とストラスキーが誇らしそうな表情で話しかけ、八十岡は無言のいい笑顔で返す。

 どうやら、前回の対戦ではストラスキーが勝っているらしい。
 早くも勝負が始まっているような、ピリピリとした空気。八十岡、大舞台でのリベンジとなるだろか。

sf_strasky_yasooka.jpg

ゲーム1

 プレミアイベントの決勝ラウンドは、スイスドローラウンドの順位が高い側に先攻後攻を選択する権利がある。
 八十岡は5位通過だが、ストラスキーは1位通過。
 ストラスキーの先手でゲームが開始された。

八十岡の開始手札

 ストラスキーは1マリガンでキープを宣言。

 ストラスキーは2ターン目に《森の女人像》を出してマナブーストするも、3ターン目はノーアクションで終了を宣言。
 4ターン目の《囁きの森の精霊》が事実上の初動となるが、これは八十岡の《シルムガルの嘲笑》でカウンターされる。

 5ターン目に出した《囁きの森の精霊》も、八十岡に《龍王シルムガル》を見せながらの《シルムガルの嘲笑》でカウンターされてしまい、ストラスキーにとっては芳しくない序盤となった。

 八十岡は《忌呪の発動》で《森の女人像》を除去すると、少考した後に《氷瀑の執政》を出して攻勢に転じる。

 ここからの攻防は、準決勝戦に相応しい非常に目まぐるしく華々しいものだった。

 まず、ストラスキーは《龍王アタルカ》を繰り出し、能力で《氷瀑の執政》を除去。

 その返し、八十岡は《龍王シルムガル》を出して《龍王アタルカ》のコントロールを奪取して応戦。普通なら、ここで一本ありとなりそうなところなのが...。

 ストラスキーは「待っていました!」といった声が聞こえてきそうなキメ顔で2枚となる《龍王アタルカ》を唱え、八十岡の《龍王シルムガル》を除去!

 試合を見ている側が「うわー」となっていたところ、冷静な八十岡の手札から出てきたのは、なんと2枚目の《龍王シルムガル》!!

 再び、八十岡軍に寝返るストラスキーの龍王。
 そこまで完璧に持っていたのか......。

 ストラスキーにとっては悪夢のような展開だが、これには彼も苦笑いするしかない。
 これは、流石に勝負あり。2体の龍王は、驚くべき速さで八十岡に勝利をもたらした。

八十岡 1-0 ストラスキー

 八十岡は《精霊龍、ウギン》《ジェイスの創意》《忌呪の発動》といったカードを減らして、《軽蔑的な一撃》《否認》《究極の価格》をサイドイン。

ゲーム2

 八十岡は初手に来た《時を越えた探索》、《氷瀑の執政》2枚、土地4枚といった重たい内容の手札をマリガン。6枚の手札をキープした。

八十岡の開始手札

 ストラスキーの初動は《クルフィックスの狩猟者》。

 八十岡は手札に《シルムガルの嘲笑》を持っているが、これをカウンターせずにスルー。

 八十岡は事前の研究で「致命的なカードを通さないことが焦点。状況にもよるけど、《クルフィックスの狩猟者》は致命的なカードではないので、放置することもありえる」と指針を固めていた。

 コントロールデッキを使う場合、相手の攻めを完璧に捌ききれるに越したことはないが、毎回そう都合のよい手札・展開を望むのは難しい。
 何気ない序盤戦に見えるが、現実的な取捨選択。しっかりとプランを持つことの大事さを感じされられる1シーンだった。

sf_yasooka.jpg

 ストラスキーは《世界を喰らう者、ポルクラノス》と続けるのだが、これは八十岡が《軽蔑的な一撃》でカウンター。
 その次にプレイされた《高木の巨人》も《氷瀑の執政》を見せての《シルムガルの嘲笑》、2枚目の《クルフィックスの狩猟者》はスルーと、八十岡がカウンターする流れが続く。

 一見すると八十岡がペースを握りつつあるように見えるのだが、土地が4枚で止まって伸びていない点が地味に響いていた。

 手札に《命運の核心》があるのだが、次に土地を置いて5マナフルタップで《命運の核心》を打つのでは返しのターンに致命傷となるカードを通されてしまう。カウンターのマナを残しながら《命運の核心》を打つという理想的な展開のためには、土地が順調に伸びる必要があるのだ。

 八十岡はようやく5枚目となる土地を引いたところで、意を決して土地をフルタップして《氷瀑の執政》をプレイ。

 しかし、返しにストラスキーは《高木の巨人》を着地させると、《ニクスの祭殿、ニクソス》からの大量マナで即座に怪物化能力を起動。
 八十岡の《氷瀑の執政》を撃ち落として、有利な状況を作り出す。

sf_strasky.jpg

 これ以上の我慢は難しい八十岡、カウンターのマナを残せず《命運の核心》で戦場を流すのだが......。

 懸念していた通り、相手の手札からは《世界を目覚めさせる者、ニッサ》が登場。
 コントロールデッキにとって、致命傷となりえるカードだ。

 もし先ほど《クルフィックスの狩猟者》の能力でストラスキーのライブラリートップに見えていた《囁きの森の精霊》を出されたならば、手札にある《究極の価格》で対処できたのだが、これはどうにもならない。

 どうにもならない状況と把握した八十岡は、すみやかにカードを片付けた。
 やはり、事前に語っていたとおり、致命的なカードを捌けるか、捌けないかの勝負のようだ。

八十岡 1-1 ストラスキー

ゲーム3

 八十岡、土地が1枚の手札を見て即座にマリガン。
 第2ゲームの展開に見られるように、コントロールデッキは土地を順調に並べていくことが重要。土地が1枚の手札では、思うようなゲームは見込めないだろう。

 結果、八十岡は1マリガンの手札をキープした。

八十岡の開始手札

 八十岡の第1ターンは、《欺瞞の神殿》をセットして占術。
 《漂う死、シルムガル》を見て少考するのだが、結局は下に送る。
 判断は難しいところだが、今すぐは不要ということだろう。

 対するストラスキーは、1ターン目から《エルフの神秘家》で幸先のよいスタート。
 しかし、《爪鳴らしの神秘家》は《シルムガルの嘲笑》。《クルフィックスの狩猟者》は《究極の価格》での除去と、八十岡の妨害に阻まれて上手く攻めこむことは許されない。

 八十岡は土地が3枚で止まる状況になるも、《高木の巨人》と《囁きの森の精霊》を《シルムガルの嘲笑》と《軽蔑的な一撃》のカウンターで凌いで、4枚目の土地をドロー。

 2枚目となる《囁きの森の精霊》も《解消》でカウンターすると、占術で5枚目の土地が。
 耐えた甲斐もあり、中盤も終わりに入ったあたりで八十岡に風が吹き始める。

 ストラスキーは続いて《世界を目覚めさせる者、ニッサ》プレイ。重量級カードの連打は続くのだが、気が付けば八十岡には《軽蔑的な一撃》が手札にある状況で《時を越えた探索》を打つ余裕がある。
 結果、《氷瀑の執政》と《究極の価格》を手に入れて、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》は《軽蔑的な一撃》でカウンター。

 《氷瀑の執政》を出した返しに《高木の巨人》は出てくるが、先ほど手に入れた《究極の価格》で即座に除去して問題なし。
 次に出てくる《狩猟の統率者、スーラク》は生き残ったように見えるが、八十岡の手札には《英雄の破滅》と《ジェイスの創意》があり、残りライフは16と安全域。
 状況は、もう完全に八十岡がコントロールしている。

 先ほどのゲームで勝負を決めた《世界を目覚めさせる者、ニッサ》が通ってしまい一瞬ヒヤッとするも、《ジェイスの創意》でドローを進め、《氷瀑の執政》の攻撃で《世界を目覚めさせる者、ニッサ》を撃墜して、2枚目となる《氷瀑の執政》を追加で問題なし。

 《狩猟の統率者、スーラク》が果敢に攻撃するが、《氷瀑の執政》と相打つだけで攻撃が八十岡に届く気配はない。

 八十岡がトドメとばかりに《時を越えた探索》を打つと、これにはストラスキーも苦笑いを浮かべるしかない。

sf_strasky_bitterlaugh.jpg

 苦笑いを浮かべながら《狩猟の統率者、スーラク》2号機を出すストラスキーだが、八十岡の手札からは《龍王シルムガル》が登場。
 この龍王によって《狩猟の統率者、スーラク》は裏切り、能力によって速攻でストラスキーに攻撃する。

 勝ち勝負、鬼のごとし。
 八十岡、恐るべし。

 ストラスキーは、笑顔で八十岡に手を差し伸べた。

八十岡 2-1 ストラスキー

 試合終了後、ストラスキーが「決勝戦も頑張ってくれ。これでプロポイントはプラチナに到達した?」と八十岡に語りかける。

「いやいや、全然ポイントが足りないよ」と八十岡が返したのを聞いて、英語版のカバレージライターが「問題ないよ、翔太は今年プロツアー殿堂入りするからね!」と会話に入ってきた。

 プロツアー『タルキール龍紀伝』という大会に相応しく、ドラゴンのギミックや龍王を使いこなした新「ヤソコン」での決勝進出。八十岡のデッキビルダーとしての凄さを世界も再認識しているようだ。

 ジャッジから5分後に決勝戦の試合が始まることが伝えられると、八十岡はどこか自信を感じされるようなイントネーションで「準決勝戦は2本先取だったけど、決勝戦は3本先取の勝負。相手の赤単とは相性が悪いけど、当たったのが決勝戦でツイてたね。サイド後が多いから、勝てる可能性が上がってる」と言葉を残して一旦席を立った。

 プロツアー優勝まで、あと1勝!

八十岡翔太、決勝戦進出!

八十岡 翔太 - 「青黒コントロール」
プロツアー『タルキール龍紀伝』 トップ8 / スタンダード[MO] [ARENA]
6 《
4 《陰鬱な僻地
4 《汚染された三角州
4 《欺瞞の神殿
3 《
2 《華やかな宮殿
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
1 《精霊龍の安息地

-土地(26)-

3 《氷瀑の執政
2 《龍王シルムガル
1 《漂う死、シルムガル

-クリーチャー(6)-
2 《思考囲い
4 《シルムガルの嘲笑
2 《胆汁病
2 《究極の価格
3 《英雄の破滅
2 《解消
2 《忌呪の発動
3 《命運の核心
3 《ジェイスの創意
1 《残忍な切断
3 《時を越えた探索
1 《精霊龍、ウギン

-呪文(28)-
3 《強迫
2 《軽蔑的な一撃
2 《層雲の踊り手
1 《胆汁病
1 《否認
1 《究極の価格
3 《悲哀まみれ
1 《悪性の疫病
1 《龍王の大権

-サイドボード(15)-
Ondrej Strasky - 「緑信心」
プロツアー『タルキール龍紀伝』 トップ8 / スタンダード[MO] [ARENA]
10 《
4 《奔放の神殿
4 《樹木茂る山麓
3 《ニクスの祭殿、ニクソス
2 《吹きさらしの荒野
1 《

-土地(24)-

4 《エルフの神秘家
4 《爪鳴らしの神秘家
4 《森の女人像
4 《クルフィックスの狩猟者
2 《加護のサテュロス
4 《世界を喰らう者、ポルクラノス
2 《狩猟の統率者、スーラク
4 《囁きの森の精霊
4 《龍王アタルカ

-クリーチャー(32)-
4 《書かれざるものの視認

-呪文(4)-
1 《旅するサテュロス
4 《ナイレアの信奉者
3 《歓楽者ゼナゴス
4 《世界を目覚めさせる者、ニッサ
3 《高木の巨人

-サイドボード(15)-
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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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