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プレイヤーズコンベンション愛知2024
デッキテク:齋藤 神威の「シミック・ランプ」 ~版図ランプを乗り越えし純正ランプ~
全13セット(「ビッグスコア」を含めると14!)から構成されるスタンダード史上最大級となった現スタンダードのカードプール。アグロ、ミッドレンジ、コントロール、ランプ、コンボとあらゆるアーキタイプが共存共栄することで、メタゲームを複雑化させ、我々を楽しませてくれている。
そのなかでも版図ランプはデッキ名こそ”ランプ”とつくものの、その実は多色化したマナベースに支えられたコントロール寄りの戦略であったり、エスパー・ミッドレンジのように”攻撃的な”ミッドレンジなど、アーキタイプの境界線は曖昧模糊となっている。
しかしながら、今回「ジャパンスタンダードカップ:『サンダー・ジャンクションの無法者』Supported by 楽天ブックス」では純正のランプデッキと出会えた。齋藤 神威(埼玉)が持ち込んだシミック・ランプだ。参加するからには勝ちたい、その勝利の手段がオリジナルなら最高と語る彼のデッキは唯一無二のものだった。
シミックカラーで構築されたランプの強みはマナ加速とビッグスペルのみにあらず、細かなテクニックと『サンダー・ジャンクションの無法者』よりもたらされたキーワード能力によって戦略が確立されていた。
1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《眠らずの蔓茎》 4 《夢根の滝》 4 《森》 1 《天上都市、大田原》 1 《乾燥地帯のアーチ道》 2 《植物の聖域》 4 《迷路庭園》 1 《魂の洞窟》 -土地(24)- 4 《宝物庫生まれの暴君》 3 《有角の湖鯨》 4 《産業のタイタン》 -クリーチャー(11)- |
4 《かき消し》 3 《連携探索》 4 《三歩先》 4 《大ドルイドの魔除け》 2 《消えゆく希望》 4 《密輸人の驚き》 4 《中心核の瞥見》 -呪文(25)- |
1 《飲み込む潮》 2 《青の太陽の黄昏》 2 《ティシャーナの潮縛り》 2 《否認》 2 《温厚な襞背》 1 《カーンの酒杯》 1 《金線の酒杯》 2 《毒を選べ》 2 《船砕きの怪物》 -サイドボード(15)- |
シミック・ランプとは
──「シミック・ランプとはどんなデッキでしょうか」
齋藤「マナ加速から早期に大型クリーチャーを展開する王道のランプ戦略です。理想的なムーブとしては2→4→6と土地を伸ばしていき4ターン目にして6マナを揃えて、《密輸人の驚き》でクリーチャーを2体踏み倒します。《中心核の瞥見》から始めて《大ドルイドの魔除け》や《連携探索》で土地を伸ばす感じですね」
齋藤「その後は戦場へ出た《宝物庫生まれの暴君》や《産業のタイタン》を打ち消し呪文でサポートしながら攻めていきます。《密輸人の驚き》のおかげで対戦相手のターンに仕掛けられるため、《太陽降下》や《告別》といった全体除去をさけて比較的安全にフィニッシャーを着地させられます。ひとたび土地が起きればその後は《かき消し》や《三歩先》を構えられるわけですから」
デッキ詳細
──「オリジナルデッキですが、どのような点を意識して構築されましたか」
齋藤「版図ランプには速度で勝てるように《中心核の瞥見》を4枚採用し、初速をあげています。また、素早いマナ加速から相手のターンにしかけられるように、デッキの大半はインスタントタイミングで動けるように統一しています。ひとたび《密輸人の驚き》が解決されれば、《三歩先》で相手の反撃の芽を詰みつつ、さらに《宝物庫生まれの暴君》のコピーを生成するなんてこともできるわけです」
──「土地が伸びるランプなら放題も選び放題ってわけですね!」
デッキ選択の理由
──「このデッキの構築したきっかけってありますか」
齋藤「自分自身がランプ戦略が好きで、オリジナルデッキを構築してみたという感じですね。以前トッププレイヤーである八十岡 翔太さんがみんなと同じデッキだと面白くないとおっしゃていたのをきいて、自分も組んでみようと思いまして。組むからにはある程度勝てるように構築したつもりです」
齋藤「元々はエルドレインの森発売時に《荒々しい三つ子》を《かき消し》で守るというコンセプトから始まりましたが、『サンダー・ジャンクションの無法者』で《密輸人の驚き》や《三歩先》が加わり、デッキパワーが跳ね上がりましたね」
汎用性の塊:《大ドルイドの魔除け》
──「珍しいカードでは《大ドルイドの魔除け》がありますね」
齋藤「《大ドルイドの魔除け》は要求される色マナこそ厳しいものの、選択肢が多く、汎用性の高いカードです。単に土地を伸ばすだけではなく、ランプにありがちな土地詰まりを解消できる仕掛けがありまして。《大ドルイドの魔除け》から《乾燥地帯のアーチ道》をサーチすることでマナ加速しつつ、手札から置く分の土地を確保できます。要はこれ1枚で2マナ分伸ばせるわけです」
齋藤「打ち消し呪文のある相手に対して大型クリーチャーを直接プレイするために《魂の洞窟》をサーチします。アゾリウス・コントロールなどの打ち消し呪文があるデッキは《廃墟の地》で《魂の洞窟》を狙ってきますが、スタックして《大ドルイドの魔除け》で《乾燥地帯のアーチ道》をサーチして、起動型能力をフィズらせて守ることも可能です。戻した土地が《迷路庭園》ならば諜報でデッキを掘り込めたりと細かなシナジーがありますね」
齋藤「ほかのモードに関していえば版図ランプにはダメージ効果で《偉大なる統一者、アトラクサ》を対処したり、《力線の束縛》を追放したりとどのモードも活躍します。その分マナベースに負担がかかるため、緑マナの発生源は21枚用意しています」
主要なデッキとの相性
──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずは版図ランプからお願いします」
齋藤「版図ランプはこちらのマナ加速が一手早い分、有利だと考えています。《密輸人の驚き》で相手のターンエンドに《宝物庫生まれの暴君》や《産業のタイタン》を出し、後は《太陽降下》を打ち消すだけですね。《力線の束縛》なら《大ドルイドの魔除け》で対処できますし、《集団失踪》のような破壊には《産業のタイタン》や《密輸人の驚き》である程度耐性がありますので」
──「硬軟織り交ぜて攻めてくるエスパー・ミッドレンジはいかがでしょうか」
齋藤「基本的にお互いインスタントタイミングで動いていくので、タップアウトしたタイミングでマナを伸ばしていきます。ゲームを長引かせられるかが焦点ですね。序盤にクロックを形成されてしまうと厳しいため、《有角の湖鯨》などで時間を稼ぎます。インスタントタイミングで動き合う意味では《密輸人の驚き》は相手のタップアウトを咎める絶好のカードです」
──「ボロス召集や赤単アグロのような早いデッキはいかがでしょうか」
齋藤「厳しいですね。戦闘ダメージや火力でライフを削りきられないことを祈りながら、最速で土地を伸ばしていくしかありません。ボロスはサイドボードで多少延命もできますが、自分の手札と相手の動きを見比べてお祈りタイムですね」
──ありがとうございました。
現在のスタンダードには多色土地にあふれており、色を増やすことは容易く、様々なカードを織り込むことができる。ともすればカード単体に目を奪われ、戦略自体を根底からひっくり返しかねないことを意味する。
今回ご紹介したシミック・ランプは直線的な動きでありながら隙のない戦略であり、新たなランプデッキの萌芽といってよかった。特に《大ドルイドの魔除け》から《乾燥地帯のアーチ道》は革新的なテクニックであり、ランプ戦略の弱点であった土地詰まりさえも解消してみせたのだ。
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