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第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

トピック

「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」プレビュー

Rich Hagon

2022年10月18日

 

 時は来たれり。

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 いよいよ迎える「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」。マジック30周年を間近に控えるこのとき、世界中の優れたプレイヤーが、シーズンを締めくくる一大トーナメントに――このゲームを知らぬ者にも説明不要の「世界選手権」に集います。フォーマットや大会の規模が変わろうとも、「世界王者」のタイトルは競技の世界を知る者の心に響くことでしょう。

 遅延、延期、中止、完全オンライン化……私たちがこれまで当たり前に享受してきたさまざまなものとともに、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権もまた世界規模のイベントへの影響を受けました。その「当たり前」のひとつが、「gathering(集まること)」です。だからこうしてまた、最後に誰かがトロフィーを掲げるイベントを迎えられることに、深い感謝の念が湧いてきます――仲間やライバルに囲まれる中で実際にトロフィーを掲げる姿が見られるのです。

 長年にわたり繰り返されてきたイベントがその年ごとに変わるのは、驚くことではありません。地球上のすべてのマジック・プレイヤーの頂点を決める数百人規模の大会から、現代のように少数精鋭を集めた大会まで、王者の価値に変わりはありません。カイ・ブッディ/Kai Budde、ジョン・フィンケル/Jon Finkel、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa――史上最強プレイヤーとして名高い3人がみな世界王者であるのは、決して偶然などではないのです。頂点に立ち、他の何よりも重要なタイトルを獲得するという根源的な挑戦は、まさに競技の風景の一部です。想像を絶する事態から未来を再構築する中でも、過去の栄光は今なお輝くのです。

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第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権王者、高橋 優太選手

 

 今回、アメリカ・ラスベガスにて「Magic30」とともに開催される「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」には、32名の強者が出場します。いずれも強者という言葉にふさわしい選手です。出場一番乗りを決めたのは、現在の世界王者である日本の高橋 優太選手です。昨年の世界選手権にて、彼はドラフト・ラウンドで最悪のスタートを切りながらも、そこから驚くべき勝利を遂げました。60枚のカードを手にしてから、一度も負けなかったのです。そう、彼が優勝トロフィーを掲げるためには、構築ラウンドでの全勝が必須だったのです。日本はプロツアーの歴史において、上位卓を独占してきたアメリカに対抗できる数少ない勢力でした。ここ最近は鳴りを潜めていましたが、高橋選手が先導する今年の挑戦ではもうそんなことはないでしょう。

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「イニストラード・チャンピオンシップ」トップ6入賞の赤池 庸選手、サイモン・ゴーツェン/Simon Görtzen選手、市川 ユウキ選手

 

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「イニストラード・チャンピオンシップ」トップ6入賞の熊谷 陸選手、斉藤 徹選手、ザカリー・キューネ/Zachary Kiihne選手

 

 日本勢活躍の期待は、シーズン開幕戦の「イニストラード・チャンピオンシップ」から大きく高まります。このイベントでは、優勝を果たした市川 ユウキ選手を筆頭に、赤池 庸選手、熊谷 陸選手、斉藤 徹選手と4人もの日本人プレイヤーがトップ6に入ったのです。市川選手は「プロツアー『ニクスへの旅』」から「プロツアー『マジック2015』」とわずか3か月の間に2度のプロツアー・トップ8入賞を達成し、脚光を浴びました。そこからグランプリ・トップ8入賞9回を記録し、2021年の「Magic Online Champions Showcase」も制しています。市川選手については、ここ一番の勝利が求められる大会で野球用語で言うところの「モンスタークローザー」になることを特筆すべきでしょう。13回のトップ8入賞のうち、6回が優勝という驚異的な成績を誇るのです。

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「神河チャンピオンシップ」トップ6入賞のイーライ・カシス/Eli Kassis選手、宮野 雄大選手、ザック・ダン/Zach Dunn選手

 

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「神河チャンピオンシップ」トップ6入賞のヂィ・イーミン/Zhi, Yimin選手、ジョニー・グットマン/Jonny Guttman選手、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz選手

 

 傑出した選手が32人集まった中では優勝候補を決めきれませんが、「神河チャンピオンシップ」のトップ6で特に目立つのはイーライ・カシス選手とジャン=エマニュエル・ドゥプラ選手の2名でしょう。カシス選手には明確に「ブレイクした」という時期がなく、それは彼のマジックへの姿勢が表れているようです。気分の上下は少なく、過度な高揚も絶望もなく、その可能性をことさらに語らない。ただ静かに、控えめに、思慮深く、タングステン鋼の心で相手と対峙し、カシス選手はグランプリの階段を登っていきました。2015年、2016年、2017年とトップ8入賞を重ね、2018年と2019年はタイトル獲得に尽力。「2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)」のトップ8入賞でさらに力強く一歩を踏み出すと、「神河チャンピオンシップ」で優勝を果たし、世界選手権という究極の挑戦にふさわしい選手へ大成したのです。

 ドゥプラ選手もまた、自らの強さを誇示するまでもなくこの世界選手権をはじめあらゆるイベントで優勝候補に挙げられるプレイヤーです。グランプリやワールド・マジック・カップで優勝の経験はあるものの、彼のキャリアにはあと一歩という成績が並びます。「2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)」での準優勝、プレイヤーズツアー・オンラインでの準優勝、そして昨年の世界選手権でも、止まらぬ勢いの高橋選手の前に最後に立ちはだかったのです。

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「ニューカペナ・チャンピオンシップ」トップ6入賞のサイモン・ニールセン/Simon Nielsen選手、ヤン・メルケル/Jan Merkel選手、マイク・シグリスト/Mike Sigrist選手

 

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「ニューカペナ・チャンピオンシップ」トップ6入賞の吉越 久倫選手、デイヴィッド・イングリス/David Inglis選手、カール・サラップ/Karl Sarap選手

 

 「ニューカペナ・チャンピオンシップ」では、ドイツのヤン・メルケル選手が優勝を果たしました。メルケル選手も、ドゥプラ選手と同様に昨年の世界選手権でトップ4の舞台へ至り、大会前から優勝候補として噂される選手になりました。2006年に当時17歳で「プロツアー・神戸2006」を制したメルケル選手は、それから長い時を経てオンラインの世界で頭角を現しました。「Magic Online Champions Showcase」優勝、「ライバルズ・ガントレット」優勝、「ニューカペナ・チャンピオンシップ」優勝……もう何が言いたいかわかりますね? 率直に言って、このトップ6は特に目立ちますね。ワールド・マジック・カップで優勝したデンマーク代表の一員サイモン・ニールセン選手に、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー受賞経験を持つマイク・シグリスト選手。それからデイヴィッド・イングリス選手は、オンラインで最も優れたプレイヤーの評価を固めつつある選手です。

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リーグ成績上位の八十岡 翔太選手、リード・デューク/Reid Duke選手、マティ・クイスマ/Matti Kuisma選手

 

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リーグ成績上位のローガン・ネトルズ/Logan Nettles選手、ヤクブ・トート/Jakub Tóth選手

 

 マジックの競技イベントの歴史は、リード・デューク選手や八十岡 翔太選手のような殿堂顕彰者が登場する数々の物語なしには語れません。この両者もドゥプラ選手と同様に、世界選手権決勝の舞台まで上がり優勝トロフィーを逃しています。しかしこの2人の生涯成績は凄まじく、プレミア・イベントのトップ8は合わせて18回、グランプリ・トップ8は46回、優勝も10回と、今年の世界選手権出場選手の中でも群を抜いています。しかも「リーグ成績上位」の枠で出場しているということは、過去の成績だけでこの舞台に上がっているのではありません。最高の調子で世界選手権に臨んでいるのです。つまり、マティ・クイスマ選手やローガン・ネトルズ選手、ヤクブ・トート選手もまた、燃えるような戦いを乗り越えてここに至っているということです。決して侮れません。

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チャレンジャー成績上位のトリスタン・ワイルド=ラルー/Tristan Wylde-LaRue選手、グレッグ・オレンジ/Greg Orange選手、小泉 祐真選手

 

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チャレンジャー成績上位のネイサン・ストイア/Nathan Steuer選手、ジュリアン・ウェルマン/Julian Wellman選手、ジム・デイヴィス/Jim Davis選手

 

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チャレンジャー成績上位のドリュー・ベイカー/Drew Baker選手、ルーカス・ホネイ/Lukas Honnay選手

 

 最後にご紹介するグループは、シーズンを通して優れた成績を収めたチャレンジャー8名です。実際にこの中から優勝者が出れば、彼らの成功の理由を改めて語れると思いますが、現時点ではこのグループから王者が輩出されたら驚きでしょう。どんでん返しの英雄的な物語はここから生まれるのですが、中にはダークホースも混じっています。

 ジム・デイヴィス選手は2007年にグランプリ・トップ8入賞を記録するなど、長年にわたりプレイを続けており、その腕前はオンラインでも健在です。グレッグ・オレンジ選手は「Mr.コントロール」の異名を持ち、青と打ち消し呪文を活かせるなら必ず使い倒すでしょう。より純粋なプレイヤー像がいいなら、いま最もホットなネイサン・ストイア選手にご注目ください。彼は「Magic Online Champions Showcase」を2回優勝しており、現時点ですでに「第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の参加権利も有しているのです。ゲームに勢いというものがあると信じている方は、ストイア選手はまさにその勢いに乗っているプレイヤーです。

 どのように参加権利を得たかに関わらず、全員に王者の道は開かれています。頂点を目指す戦いの始まりは木曜日、8人ずつのドラフト・テーブルに分かれて開幕します。そこで彼らはドラフトとデッキ構築を済ませ、金曜日の朝にリミテッド・ラウンド3回戦、続けてスタンダード・ラウンド5回戦が行われます。土曜日は構築フォーマットがエクスプローラーに変わり、6回戦のラウンドでトップ4を決します。他を引き離して11勝を挙げた選手は、自動的にトップ4へ進出します。ですが歴史が示す通り、トップ4の残り3枠を懸けた最終ラウンドは激しい戦いが繰り広げられるでしょう。

 そして迎える、今シーズン最後の1日。フォーマットはスタンダードで、ダブルエリミネーション方式で行われる決勝ラウンドをもって王者を決定します。しかし日曜日はそれで終わりではありません。「Magic 30」のメインステージで、1時間にわたり『兄弟戦争』を深掘りする配信も行われるのです。配信では、マリア・バーソルディ/Maria Bartholdi、マニ・ダヴォーディ/Mani Davoudi、セドリック・フィリップス/Cedric Phillips、マーシャル・サトクリフ/Marshall Sutcliffe、ポール・チェオン/Paul Cheon、エイリー・ロニー/Eilidh Lonie、コーリー・バウマイスター/Corey Baumeisterより、史上最大のパーティーの様子を随時お伝えします。さらに『兄弟戦争』の魅力や大量のプレビュー・カード、そしてもちろん、世界選手権の3日間にわたる記念碑的戦いを、全ラウンド余すところなくお届けします。

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 豪華配信チームに、綺羅星のごとき参加選手たち。戦場が設えられ、ノートパソコンが充電され、デッキリストが揃ったそのとき、マジックが最高潮を迎えることを感じるでしょう。

 マジック:ザ・ギャザリング世界選手権が、いま復活します。形はさまざまでも、私たち全員がその舞台に上がるのです。

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 「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」の模様は、ラスベガスで開催される「Magic 30」の舞台より、10月28日9時(日本時間25時)からtwitch.tv/magicにて生放送でお送りします。どうか1分1秒もお見逃しなく!


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「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」日本語版放送ページ・放送日程
日程 放送日・放送時間 放送ページ
1日目 10月28日(金) 25:00~ Twitch」「YouTube
2日目 10月29日(土) 25:00~
3日目 10月30日(日) 27:30~
(10月31日(月) 3:30~)

日本語版放送出演者

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