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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2014
第8回戦:Samuel Black(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)
Blake Rasmussen / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年12月3日
昨日のあまり馴染みのないドラフトの後だけに、プレイヤーたちにとって馴染みのある『タルキール覇王譚』の世界は明らかに安らげるものだった。このフォーマットを使ったプロツアーがおこなわれた直後なので、2日目の開始時点でどのプレイヤーもどういうことになるか正確に理解していたのだ。
――もちろん、世界ランキング11位のサム・ブラックや世界ランキング9位の渡辺雄也はどちらも4-3で、1日目の成績はめざましいものではなかった。ブラックの滑り出しは上々で『Vintage Masters』で2-1の成績だったが、モダンでは足踏みし、1日目の終わりに2勝してようやく五分の星を超えることになった(ブラックのプロフィールはこちら:英語)。
一方、渡辺は1-3の出だしから、最終3ラウンドで連勝してようやく逆転して今の成績に到っている。かつて、2012年のこのイベントで優勝したことのあるプレイヤーにとっては非常に残念な失速だった(プロフィールはこちら)。
両者とも、必要なことも、そのための方法も熟知している。そして、彼らのデッキを見ると、彼らは自分たちのフィールドに戻ってきたのだ。
デッキ
渡辺は、《凶暴な拳刃》から立ち上がり、その勢いで進めていくという濃いティムールのデッキを手にしているようだ。
一方のブラックは、アブザンを軸に《兜砕きのズルゴ》と《マルドゥの魔除け》のために赤をタッチして組み込んだ4色デッキだ。《マルドゥの魔除け》だけでなく2枚の《アブザンの魔除け》も入れており、必要に応じて盤面を一掃するために《死の激情》も入れてある。もちろん、マナが充分に揃えば、渡辺と対抗できるだけの戦力は入っている。マナが安定するように組んであるようではあるが、実際にどうなるかはこれからの話だ。
ゲーム
ブラックは早期に易々と色を揃え、強力な呪文を的確に唱えられるようにした。数枚の軽いクリーチャーを並べ、さらに戦場を整えてから《ラクシャーサの秘密》で渡辺の手札を2枚捨てさせる。
捨てさせられた中に強力なカード《引き剥がし》があったが、それはつまり渡辺が青マナを出せていないということを示していた。まだそれほど必要ではなかったものの、いずれ必要になるのは言うまでもない。
第5ターンに、ブラックは5マナをタップした。渡辺は《兜砕きのズルゴ》の登場を予測してライフ記録用紙に手を伸ばす。ブラックが《サグの射手》を出すと、渡辺は安堵の表情を浮かべた。
「ああ、これでかなり安心したかい」とブラック。
《兜砕きのズルゴ》でなかったことで、渡辺はブラックに圧力をかけ始めることができた。《山頂をうろつくもの》と《マルドゥの心臓貫き》で0/5の壁を打ち抜くが、ブラックの方はさらにタフネスの高いクリーチャーを出して流れを止める態勢が整っていた。《軍用ビヒモス》が全ての攻撃を止め、《わめき騒ぐマンドリル》が戦場に圧力をかけていく。
それから数ターン、両プレイヤーともに戦力を加えるも、相手を打ち倒すには到らない。回避クリーチャーもいなかったため、どちらからも攻撃を仕掛けることができないままだった。
膠着した盤面にブラックの《死の激情》が突き刺さり、渡辺のクリーチャーを2体除去する。ブラックは攻撃して2点ものダメージを与え、数点のライフを得た。
クリーチャーが減ったことで渡辺も攻撃できるようになり、しだいに戦場からクリーチャーが減っていく。
やがて、ブラックの側には《軍用ビヒモス》、渡辺の側には3体のクリーチャーがいるだけになった。ブラックにとって不幸だったのは、そのクリーチャーのうち1体が《遠射兵団》であり、3/6であるブラックの《軍用ビヒモス》をいずれ長久で越えていくということだった。
さあどうなった?
オホン。結局、ブラックは渡辺の6/6クリーチャーに対する有効な手段を引かず、黙って肩をすくめてカードを片付けることになるのだった。
第2ゲームは両プレイヤーともマナ事故気味の立ち上がりとなった。渡辺は緑が出ず、《凶暴な拳刃》を呼ぶことができない。ブラックも最初は黒マナが出せず、《アブザンの戦旗》を手に入れた後には赤マナが足りなかった。
赤マナ不足はゲーム中も続いたが、ブラックが《無情な切り裂き魔》を表向きにするために《兜砕きのズルゴ》を公開したことで、渡辺は、ブラックが第4色を揃えたら一気に不利になると悟った。
その一方で、渡辺も3色目を揃えようと足掻いていた。彼の手札は《森》がないことで身動きが取れなくなっていた。彼は《わめき騒ぐマンドリル》に2/2と2/3で対処したが、ブラックがマナを揃えてマルドゥのカンを呼ぶ前に何か手立てを探さなければならなかった。
そして渡辺に光が差したのは、赤マナを出せていないブラックが別の土地を引いた時だった。
「今回引きが悪いな」そううそぶき、このゲーム9枚目の土地をプレイする。
そして、先に引き当てたのは渡辺だった。《森》を出し、《雪角の乗り手》を表向きにして圧力を高め、《兜砕きのズルゴ》が出てもどうにもならない盤面へと推し進めていく。
最終的に、ブラックは何もできず、マナ事故から解放された渡辺がクリーチャーを次々と出していくのをただ眺めることになった。最後の攻撃が決まると、ブラックは手札に残った3枚の土地を見せ、肩をすくめ――そしてマジックの話を再び始めた。
「後攻を選んだ方がよかったのかな?」とブラックが尋ねる。「除去はあったんだ、ギリギリだった」
渡辺は、自分のデッキがかなりアグロ寄りだったことを見せると、ブラックの除去が刺さっていたら結果はわからなかったと同意した。
もちろん、そのためには土地でないカードを引かなければならなかったわけだが。
5-3となり、強力なドラフト・デッキを持っている渡辺は勝利を繰り返すことができるだろうか? まだ6ラウンドと先は長いが、この部屋にいる中でその可能性を感じているのは1人だけではない。
ブラック 0-2 渡辺
4 《森》 4 《平地》 4 《沼》 1 《血溜まりの洞窟》 1 《花咲く砂地》 1 《ジャングルのうろ穴》 1 《山》 1 《岩だらけの高地》 1 《磨かれたやせ地》 -土地(18)- 1 《無情な切り裂き魔》 1 《射手の胸壁》 1 《ジェスカイの学徒》 1 《高山の灰色熊》 1 《サグの射手》 1 《兜砕きのズルゴ》 3 《わめき騒ぐマンドリル》 1 《子馬乗り部隊》 1 《軍用ビヒモス》 -クリーチャー(11)- |
2 《消耗する負傷》 2 《アブザンの魔除け》 2 《ラクシャーサの秘密》 1 《アブザンの戦旗》 1 《必殺の一射》 1 《マルドゥの魔除け》 1 《境界の偵察》 1 《死の激情》 -呪文(11)- |
1 《春の具象化》 1 《頭蓋書庫》 1 《帰化》 1 《テイガムの策謀》 2 《アブザンの戦旗》 1 《反逆の行動》 1 《取り消し》 2 《従順な復活》 1 《戦場での猛進》 1 《地平の探求》 1 《悪逆な富》 1 《ケルゥの戦慄の大口》 1 《グドゥルの嫌悪者》 -サイドボード(15)- |
6 《森》 5 《山》 4 《島》 1 《岩だらけの高地》 1 《急流の崖》 -土地(17)- 2 《煙の語り部》 1 《跳躍の達人》 1 《戦名を望む者》 1 《沸血の熟練者》 1 《凶暴な拳刃》 1 《遠射兵団》 1 《マルドゥの心臓貫き》 1 《湯熱の精》 1 《山頂をうろつくもの》 1 《熊の仲間》 1 《隠道の神秘家》 2 《雪角の乗り手》 1 《わめき騒ぐマンドリル》 1 《河水環の曲芸士》 1 《長毛ロクソドン》 -クリーチャー(17)- |
1 《引き剥がし》 1 《反逆の行動》 1 《弧状の稲妻》 1 《熊の覚醒》 1 《龍鱗の加護》 1 《焼き払い》 -呪文(6)- |
1 《果敢な一撃》 1 《炎蹄の騎兵》 1 《僧院の速槍》 1 《帰化》 1 《谷を駆ける者》 1 《暴風》 1 《沸血の導師》 1 《マルドゥの戦旗》 1 《物静かな熟考》 1 《ティムールの戦旗》 1 《ラッパの一吹き》 1 《湯熱の精》 1 《素早い蹴り》 2 《アイノクの足跡追い》 1 《グドゥルの嫌悪者》 1 《軍用ビヒモス》 -サイドボード(17)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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