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日本選手権2022 -Tabletop Returns-

戦略記事

デッキテク:三上 由朗の「白緑ワサビ投げつけヒロイック」

伊藤 敦

(編注:この記事についての取材は1日目に行いました。)

 今回の日本選手権2022では、初日に7回戦があるうち5勝したプレイヤーは無条件で2日目に進出が決定する。

 そんな中、開幕の3戦で日本選手権2021 SEASON2王者の廣澤 遊太、MPLプレイヤーの茂里 憲之と並みいる強豪を立て続けに打ち倒しての3-0で2日目進出に向け大きな弾みをつけたプレイヤーがいた。

 パイオニア・フォーマットで開催されたマジックフェスト・名古屋2020#1での準優勝経験もある、三上 由朗(東京)だ。

decktech_mikami.jpg

 しかも三上が使っているのは、この単体除去があふれるミッドレンジまみれの環境においてまさかの「白緑ヒロイック」(※俗称。クリーチャーに1マナの強化呪文を撃ちまくるコンセプトが、過去存在した「英雄的」というキーワードを軸に組まれたアグロデッキに類似しているため)だというのである。

 はたして、そんなデッキを持ち込んだ意図はどこにあるのか。三上にインタビューをお願いすることにした。


――このデッキはご自身で作られたのでしょうか?

三上「もともとはオンラインの2日制の大会で初日だけ活躍を見せていたデッキで、回してみたところ好きなタイプのデッキで非常に爽快感があったので、調整して使うことにしました」

――元のレシピからどういった点を変更されたのでしょうか?

三上「元のレシピでは《賢い光術師》や《レオニンの光写し》が採用されていたのですが、それらがあまりにも弱くて、何か他の候補はないかな~と探していたところ、いま目の前に座っている(※第3回戦のフィーチャーマッチ終了後だった)MPLプレイヤーの茂里さんが《群れのシャンブラー》を提案してくれたんです」

茂里「くっ、自分のデッキに負けるとは……」

三上「あとはタダ強の《光輝王の野心家》を入れて現在の基盤ができた形ですね」

――サイドボードに《婚礼の発表が入っているのも珍しいですよね。

回転

三上「《婚礼の発表》も調整で入れた部分です。メインコンセプトであるオールインだけだと、グリクシスやジェスカイのように軽めの除去が多いデッキにはいいようにやられてしまうので、特に後手番の際などに軸をずらして勝つために採用しました」

――環境の主要なアーキタイプである「エスパー・ミッドレンジ」や「グリクシス吸血鬼」、「ジャンド・ミッドレンジ」などとの相性はどうなんでしょうか?

三上「エスパーは微有利ですが、グリクシスやジャンドなど《税血の収穫者》と《鏡割りの寓話》のセットが入ったデッキ相手はめっちゃ不利ですね。このデッキ、除去が入っていないのでコピーされ放題、除去され放題になっちゃうんですよ」

三上「ただその一方で、このデッキの強みとして自分が先手ならどのデッキ相手でも勝てるというのがあって、《照光の巨匠》を『呪禁』スペルで守っているだけで勝てちゃうんですよね。なので相性はそこまで気になりません。あとこのデッキを選んだ一番の理由は、このトーナメントがデッキ非公開制だったことです。デッキを知ってたら除去たくさん引くまでマリガンするでしょうが、知らなければそういう手札ばかりでもないでしょうしね」

――なるほど。そういえば、軍団の天使も元から入っていたんでしょうか?

三上「《軍団の天使》はタダ強なので。いきなりですが、スタンダードを『寿司』だとするとこの環境には『シャリ』が存在するんですよね」

――(なるほど、シャリですか)は???

三上「《光輝王の野心家》、《婚礼の発表》、《放浪皇》、《軍団の天使》。スタンダードのデッキを作ることが寿司を作ることだとするなら、『上に何を乗せても強いカード』っていうのはシャリに当たるわけですよ。てことは、これらはシャリに相当するわけです」

――は、はぁ……

三上「マズいデッキはシャリに気を遣わないと、ってことでメインに《光輝王の野心家》《軍団の天使》、サイドに《婚礼の発表》が入ってるわけです。このデッキ、メインはワサビの塊みたいなものなので」

――ワサビ?????

三上メインは相手にワサビを投げつけて勝って、サイド後は寿司を召し上がってもらう。これがおもてなしの精神です」

――最後に、久しぶりのリアルイベントだと思いますが、ここまで対戦してきてどうでしたか?

三上「第一に、懐かしい空気感がありますよね。それから、オンラインにはない緊張感もあります。家でMTGアリーナだとなかなか緊張感が保てませんが、リアルで目の前に強い相手が座ると、自然と背筋が伸びますよね。そこが良いですね」

――ありがとうございました。


 寿司とシャリの話はともかく、三上独自の環境分析による細かなデッキ調整と、テーブルトップのイベントならではのデッキ選択が光った格好ということなのだろう。

 ローグデッキで勝ちたいという方は、ぜひリアルのイベントに参加してみるといいかもしれない。

三上 由朗 - 「白緑ワサビ投げつけヒロイック」
日本選手権2022 / スタンダード (2022年5月28~29日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《平地
4 《草茂る農地
4 《枝重なる小道
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《皇国の地、永岩城

-土地(16)-

4 《群れのシャンブラー
4 《龍護りの精鋭
4 《照光の巨匠
4 《光輝王の野心家
1 《学生の代言者、マビンダ
1 《軍団の天使

-クリーチャー(18)-
4 《突っ走り
4 《農家の勇気
4 《自然の化身
3 《蛇皮のヴェール
3 《タミヨウの保管
3 《巨森の補強
3 《セジーリの防護
2 《エメリアの呼び声

-呪文(26)-
2 《厳しい試験官
3 《軍団の天使
3 《パラディン・クラス
2 《運命的不在
1 《豊穣の碑文
4 《婚礼の発表

-サイドボード(15)-
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