マジックフェストの土曜日の目玉として、人気女流棋士・香川愛生さんがステージイベントを行ないました。

　香川さんは最近マジックを始められ、「女流棋士・香川愛生チャンネル」でMTGアリーナのプレイなどを配信されています。先日はおなじみの金子さんも対戦相手としてお邪魔したので、ご存じの方も多いでしょう。

　赤単を使用している香川さんにピッタリのチャンドラのコスプレ衣装を、今回はアメリカで特別に制作。凛々しい姿が会場でお披露目されると、マジックファンだけでなく将棋ファンの方々にも大好評となっていました。

トークショー

　まずはサイドイベントステージにてトークショーが行なわれ、香川さんがいろいろな質問に答えてくださいましたので、いくつかご紹介します。

　香川さんが最初にマジックに興味を持ったのは、先輩棋士の糸谷哲郎竜王（当時）がプロツアー『タルキール龍紀伝』に招待されたというニュースを見て、「カードゲームで世界大会に行けるなんて！」と思ったのがきっかけだったそうです。

じつは糸谷先生も幕張にいらしてました！グランプリ出てるのまでは聞いてたんですが普通に勝ち残っててさすがすぎます。明日もがんばってください〜 pic.twitter.com/jqO2ovYGZv

— 香川愛生 金曜南ナ30b (@MNO_shogi) 2019年8月3日

　香川さんの好きな色は赤。相手のライフを一気に削るのが楽しいから、という納得の理由です。

　また、今までに使ってきたカードの中で好きなカードとしては、奥義でカードが一気に７枚めくれるのがわかりやすく気持ちいい、ということで《炎の職工、チャンドラ》を挙げていらっしゃいました。

　「マジックの醍醐味は？」という質問に対しては、

　「将棋でもそうですが、比較して手を選ぶことが好きで、今までやったことがあるほかのカードゲームなどでも普通のカードは１枚に１つの能力というのがほとんどだけれど、プレインズウォーカーはどの能力を使うか選べるので、カードを出してからもいっぱい悩む選択肢があるのが面白い」というお話でした。選択肢の多さこそマジックの醍醐味とおっしゃるのは、さすが棋士という感じがしますね。

　「将棋とマジックで似ているところは？」という質問への答えは、

　「終盤戦に行くほどやれることが増えるけど、強い人の目には一筋の勝ち筋が見えるところですね、早くそういう世界に行きたいです。あともう１つ、勝ちそうと思った瞬間が一番危ないこと」

　これには会場のお客さんたちも納得しきりでした。

　逆に将棋とマジックが違うところは、相手が自分のターンに介入してくることで、次の手を考えに考え抜いていたら相手のインスタントで状況が変わり、また考え直さなきゃ！ となるのが最初は慣れなかったそうです。

　最後に「今日会場に来て雰囲気を体感し、子供時代の大会を思い出して出たくなりました、プロ棋士は１日１回しか試合ができない決まりなので、１日じゅう大会で頑張ってみたい」とおっしゃっていました。いつかどこかの大会でお目にかかれるかも……！

対戦イベント

　続いて、MTGアリーナを用いて配信やイベント司会などでおなじみの岩SHOWさんと対戦するステージイベントです。

　この日のために、チャンドラたちが活躍するデッキを作ってこられたとのことで、最高ランクのプレイヤーしか使えないチャンドラの光輝くスリーブなどで特別に飾られたデッキが用意されていました。

　「岩SHOWさんはマジック長いんですか？」などと和やかに話しながらゲームがスタートしましたが、岩SHOWさんの緑単が初手《豊穣の力線》から《世界を揺るがす者、ニッサ》へのブン回り。

「あっ、３/３の《森》が生えてる！ えっ、警戒で速攻もある！ なんで!?」と、その強さに驚く香川さんでした。《世界を揺るがす者、ニッサ》を初めて使われた時、誰もが通る道ではないでしょうか。

　岩SHOWさんのデッキは「カジュアルで楽しいデッキ」のはずが引きが鬼強く、一方香川さんは満載されているチャンドラたちが姿を現さず引けども引けども《山》ばかり……（涙）。

　これだけ《山》を引き続けたなら、明日からはきっといいドローに恵まれるはずです！

　香川さんは対戦を通じて徐々にカードの知識を増やしているところで、いずれ赤白などほかの色を加えたデッキも試してみたいので、少しずついろんな色を知っていきたいとのことでした。

香川愛生さんインタビュー

　１日のイベントを終えた後、お時間のない中でしたがインタビューをさせていただくことができました。

――先日、マジックの動画配信を始められましたが、マジック歴はどれくらいなんですか？

「チュートリアルの動画をあげたころからなので、まだ２か月たってないくらいでしょうか」

――そうなんですか。対戦を見ていて、だいぶ赤いデッキに関しては習熟度が上がっていると思いました。

「そうですか？ でも、赤は本当にわかりやすいカードが多いですし、ほかのカードゲームでもマジックをもとにして作られたような、見たことのある効果とかがあるので、理解しやすかったです」

――私は将棋に詳しくなくて恐縮なのですが、香川さんは攻めの戦法が得意で「番長」と呼ばれている、と耳にしました。

「そうなんです（笑）」

――そうすると、マジックでも守るより攻めるほうが得意ですか？

「どうですかね、やってみたら『いやらしい戦法』と言われる青も好きなんじゃないかという気がします。やれることが多いほうが、実力差がつきやすいと思うので、そういうデッキも使ってうまくなりたいなとは思っています」

――先ほどのステージではほかの色にも挑戦してみたいとおっしゃっていましたね。

「そうですね、ゆくゆくは。ただ、まずは身の丈に合ったデッキを使おうということで、わかりやすい赤単しか今は使っていないんですが。あと、赤単も普通に強いと聞いていますので『香川と言えば赤単娘』みたいなほうがいいのかなとも。何より、まずは人と対戦する機会を増やしていかないとと思っています」

――コスプレは以前にもされていたとのことですが、今回の衣装はアメリカから特注したものですよね。サイズはどうやって合わせたんですか？

「マネージャーさんに測ってもらって、伝えました。昨日初めて衣装合わせをしたんですが、着てみたらほぼぴったりだったので、魔法みたいで感動でした。同じマジックプレイヤーのコスプレイヤーさんだと伺ってましたので、愛って偉大だなと思いましたね（笑）。

　自分でもコスプレ衣装を作りますが、自分のために作るのでも本当に大変なんです。たとえば、かわいい服を作ろうとするなら、かわいいと思えばゴールなんですが、元のキャラがいるものだとそれをいかに再現するかだから、少しの違いでも気になってしまうので……。これを作る時間でもっと自分のために好きな衣装も作れたのに、私のためにここまでしてくれたことが、涙が出る思いでした」

――本当にそうですね。今日はお疲れのところどうもありがとうございました。

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　香川さんの、マジックに関する表に出ての活動はひと段落ですが、YouTubeでのMTGアリーナの配信は今後もやっていけたらとのこと。今日の対戦で《山》ばかり引いてしまい、このままでは「山女」になってしまうので、ぜひ次こそチャンドラを活躍させたいというお話でした。

衣装制作者に聞く！

• Instagram：air_bubbles_cosplay
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　このチャンドラの衣装を作成されたArielleさんも来場されていたので、制作時のポイントなどについてコメントをいただきました。

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――コスプレ衣装はいつごろから、どれくらいの数を作ってこられましたか？

「大学で演劇を勉強していたころ(2011年)からコスチュームを作っており、その後2013年ごろからコスプレ衣装を作り始めました。その時から今までに26着の衣装を作っており、香川さんの着ているチャンドラが27着目で、今は自分のために《新米紅蓮術師、チャンドラ》を作っています」

――今回チャンドラの衣装を作るにあたり、特にこだわったところはどこですか？

「香川さんの衣装のために一番かつ最優先で確保したかったのは快適さです。そのため、できるだけ涼しく、かつ洗濯が可能な布地を注意深く選びました。

　さらに、鎧の塗装のために20時間くらいの時間を使いました。どうしてもカードイラストに忠実であってほしかったからです。

　最後に、電気系統はとても難しい挑戦でした。今までは自分用だけで誰かのために作ったことがなかったので、使いやすく理解しやすいアイテムを買いそろえ、すべての配線をシンプルに整理するのにとても時間がかかりました」

――作った衣装を香川さんが実際に着ているところを見て、どう思われましたか？

「素晴らしい光景でした！ この衣装は１か月マネキンに着せられていましたが、ついに本人に着てもらえた瞬間は私にとってとても誇らしいものでした。この衣装が香川さんとその周囲の方々にどんな喜びをもたらすかを想像すると、これを作らせてもらえてとてもラッキーだと感じるとともに、今後もっと衣装を作っていきたいと思いました。それに、香川さんがチャンドラの衣装をまとった姿はとても素敵で、プレインズウォーカーが実際に生きて動いているようでした！」