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マジックフェスト・千葉2019

観戦記事

決勝:鈴木 和茂(愛知) vs. 中道 大輔(東京)~選択の果てに~

伊藤 敦

 ここに至るまで、数々の選択があった。

 グランプリ・千葉2019には、2317人分の選択があった。2317人分の物語があった。

 「優勝したい」という、2317人分の祈りがあった。

 努力が必ず報われるとは限らない。だが、より良い未来にたどり着こうとする意志のもとでなされた選択は、現実にフィードバックを与え、あるはずだった未来を書き換えていく。

 そう……選択には、望んだ未来を実現する力がある。


 これから決勝戦を戦おうとしている2人も、厳しい選択をいくつも乗り越えてきたからこそ、ここに立っている。

 たとえプレミアイベントでのトップ8入賞歴がこれまでなくても、フォーマットを問わずありとあらゆるトーナメントで上位に顔を見せるがゆえに、強者であることを誰一人として疑わないであろう「草の根の王者」、中道 大輔

 23年もの間繰り返してきた選択の重みが、中道には刻まれている。デッキ選択、マリガン、プレイ、サイドボード……マジックにおける基本セオリーの核となる概念が、言葉にできなくとも蓄積されている。

 そして対戦相手である鈴木 和茂にも、グランプリ・東京2016の決勝戦で敗北し、優勝を逃した経験がある。2度のプロツアー参加は、たとえ初日敗退の憂き目にあったとしても、鈴木の実力をさらに確かなものとしたことだろう。


 選択とは、リスクを認識した上でなお踏み込むという人の営みだ。

 だからここから先の結果は、神の意思などには決して委ねられていない。

 託宣などではなく、中道が、鈴木が為した選択が、その積み重ねが、未来を形作るのだ。

 さあ、未来を望む2人の戦いを見届けよう。

 グランプリ・千葉2019、決勝戦。

 最後の選択が、為される時が来た。

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ゲーム1

 スイスラウンド上位の中道が先攻を選択。《大都市のスプライト》→《秘本綴じのリッチ》と攻め立てるが、これに対し鈴木も《菅草の蠍》→《網投げ蜘蛛》と完璧な受けの構えを見せる。

 しかし中道のデッキには、受けが通用しないカードが搭載されていた。

 アーク弓のレインジャー、ビビアン》!

鈴木「えっと、まずテキスト確認いいですか……強くないそのカード???」

 即座に[+1]能力で《大都市のスプライト》を3/4に育ててターンを終えると、4マナフルオープンでターンを返した鈴木に対し、再びの[+1]能力で5/6飛行による攻撃を敢行。さらに{U}{U}を注ぎ込み、5ターン目にして一気に7点もの大ダメージを叩き込む!

fn_suzuki.jpg

 しかし鈴木もさるもの、ターンエンド前の《夜群れの伏兵》から3体を《アーク弓のレインジャー、ビビアン》へと攻撃に向かわせると、《秘本綴じのリッチ》がブロックしたところで接死封じの《混迷》! 一方的に中道のクリーチャーを討ち取ることに成功する。

 だが、中道のターン。ここで中道には《大都市のスプライト》を防御に立てつつ[+1]で打点を伸ばす選択肢もあったが、事前のデッキリスト公開で鈴木のデッキには《絞首された処刑人》くらいしか完全除去が入っていないと知っていることを踏まえ、《大都市のスプライト》の全力パンプアップで8点を叩き込みつつ、《アーク弓のレインジャー、ビビアン》を使い捨てる[-3]能力で、《夜群れの伏兵》を除去することを選択。一気に勝負を決めにいく。

 返すターン、追い詰められた格好の鈴木は《翼ある言葉》でカードを引きつつ、3マナを立ててターンエンド。何かを構えているのか、それとも……?

 そして7ターン目、中道は選択を迫られる。

 リスト公開で鈴木のデッキに《送還》《巻き込み》が入っていることはわかっている。すなわち、この起きている3マナで返されるリスクもある。そうなったら、土地ばかりの手札に付け込まれて優勢がひっくり返されるかもしれない。

 だが、だとしても。勝利を求めて、未来を求めて、中道は選択する。

 飛行を止められる唯一のブロッカーである《網投げ蜘蛛》のコントロールを奪う、虎の子の裏切りの工作員を召喚。

 ……その、選択の結果。

 コンバットを待つまでもなく、鈴木はカードを片付けた。

鈴木 0-1 中道


鈴木「レアが強いですね……まあ、それもマジックって感じですけどね。でも、レアならこっちも負けてないんだけどなぁ」

 言いながらゲーム内容を振り返った鈴木は、ひとまず自分のプレイに瑕疵がなかったことを確認する。4ターン目《アーク弓のレインジャー、ビビアン》、7ターン目《裏切りの工作員》という不条理に対し、ただ嘆くことは簡単だ。

 だが、鈴木はそうしない。あくまでもいまこの瞬間に対して全力であるというその姿勢こそが成長をもたらし、より良い未来を導くはずだと信じているのだろう。

 鈴木も選択する。変えられない過去となった1ゲーム目は割り切って、より良い未来に向けて次の2ゲーム目に集中することを。


ゲーム2

 《龍火の薬瓶》から《雲族の予見者》と動いた鈴木に対し、中道は《予期》から《網投げ蜘蛛》を立て、序盤は1ゲーム目とは逆に中道が受ける展開。

 だが、続いて鈴木が《翼ある言葉》+《心臓貫きの弓》という動きにとどまりクロックを追加できなかったことで、先に《狼乗りの鞍》を展開できた中道が主導権を握った形となる。

 返す《シルバーバックの巫師》は即座に《金縛り》し、中道が5点クロックで殴りだす。

fn_nakamichi.jpg

 一方6マナに到達した鈴木は、《心臓貫きの弓》+《龍火の薬瓶》の起動で《網投げ蜘蛛》を除去しつつ、3マナを立ててターンエンド。そして返しの《腐れ蔦の再生》は悩む素振りを見せつつもスルーし、代わりにエンド前に《雲族の予見者》へ《残忍な発動》をエンチャントする。

 さらにこの飛行の4点クロックを受けるべく中道が送り出した《網投げ蜘蛛》は、《骨を灰に》で打ち消す。

 ライフは9点まで追い込まれているものの、あとは地上のクロックを止めればいい鈴木は、《菅草の蠍》《名高い武器職人》と展開。そして返すターンの狼・トークンの攻撃に対しては、《菅草の蠍》でのブロック後に《混迷》を打つことで、接死により一方的にトークンを処理しにいく。

 しかし、その選択が鈴木にとっての仇となった。

 第2メイン、鈴木がフルタップとなった隙をついて中道が送り出したのは裏切りの工作員》!せっかく作り上げた4/3飛行の《雲族の予見者》が、中道の戦線に寝返っていく。

鈴木「いやーミスったー!」

 加えて、牙を剥いた4/3飛行を止めるべく《北方の精霊》《大都市のスプライト》と並べた鈴木に対し、中道はアーク弓のレインジャー、ビビアンを出して[+1]能力でこの4/3をさらに強化。

 鈴木は続く中道の《翼ある言葉》からの《茂み壊し》こそ《巻き込み》で打ち消したものの、《アーク弓のレインジャー、ビビアン》、そして何より奪われた《雲族の予見者》を落とせる目途が立たない。

 ……やがてエンド前の《名高い武器職人》起動でライブラリーの中身を確認した鈴木は、吹っ切れた様子でこう宣言した。

鈴木「うん、何引いても勝てないですね。投了!」

鈴木 0-2 中道



鈴木「シルバーコレクターだなぁ……」

 《菅草の蠍》と《名高い武器職人》を出した返しのターン、狼・トークンの攻撃を1ターンだけ我慢して3点食らう選択ができていたなら。おそらく第2メインにプレイされたであろう《裏切りの工作員》を《巻き込み》できて、《雲族の予見者》でそのまま殴りきれたかもしれない。

 その選択が、勝負の明暗を分けた。

鈴木「まあ、未熟でした」

 一方、フィーチャーエリアの近くで勝負の行く末を見守っていた、グランプリ・静岡2018(スタンダード)で中道よりも一足先にトップ8入賞を果たしていた斉田 逸寛は、親友の戴冠を万感の思いを爆発させながら祝福した。

斉田「……やっとだよ! あんなに強い中道がグランプリトップ8初めてっていうのが、そもそもおかしかったんだよ!」

 確かに中道の実力ならば、本来もっと早くにグランプリでトップ8に入っていてもおかしくなかったのかもしれない。

 ただその場合、中道は優勝できたのだろうか。むしろ草の根大会などでの度重なる入賞により、いかなる大舞台でも動じない円熟した実力と精神性を身に着けた今だからこそ、ドラフトラウンド無敗 (9-0) という偉業を達成できたのではないだろうか。

 そう……中道が23年間、マジックを続けることを選択し続けたからこそ。より良い未来を夢見たからこそ、この結果がある。

 関東の草の根大会「PWC」に通いつめ、腕を鳴らした時期があった。

 プロツアー『マジック・オリジン』で、初出場ながら76位という好成績を残したことがあった。

 2014年から、11回にも及ぶ「神決定戦」でのトップ8入賞があった。

 そして今回、友人たちとのドラフト合宿において約15回にもわたる『基本セット2020』ドラフトの経験があった。

 「マジックを取ったら何も残らないです」と言い切るほどに、才能と時間と情熱を積み重ねつつも全力でマジックを楽しんだ、その選択の果てに。

 中道は、望んだ未来についにたどり着いたのだ。

 グランプリ・千葉2019、優勝は中道 大輔! おめでとう!!

gpchi19_champion_nakamichi.jpg
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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