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マジックフェスト・千葉2019
準決勝:Raoul Zimmermann(イングランド) vs. 中道 大輔(東京)~ピンチのピンチのピンチの連続そんなとき~
「絶対絶命のピンチ」。
片方のプレイヤーが投了するまであと1ターンもないように思える、著しく傾いた盤面を迎えていた。半ば諦めの視線を送る観客もいる。しかし、「彼」は一瞬たりとも俯いていなかった。
「まだ、逆転の道筋は残されている。」
そしてデッキはそんな彼の気持ちに応えた。やがて間もなく、大逆転の一撃となる「必殺技」がついに放たれた……!
ゲーム 1
これが自身初のグランプリ・トップ8となる中道 大輔は「青緑タッチ黒」のドラフトデッキを組み上げていた。「3枚目の土地」を引ければ展開もドローもしかけていけるスペルのつまったハンドをキープし、ゲーム1に挑んでいる。対するラウル・ジマーマン/Raoul Zimmermannのデッキは「白黒」。ジマーマンもまた複数回のプロツアー出場経験をもつプレイヤーだ。今回はポーランドという遠国からの旅行であり、緊張に身を震わせる姿や友人らと談笑するシーンがそれぞれあり、この大舞台を良い意味で肌に感じ、楽しんでいるようだ。
そして2人が向き合うグランプリ・千葉2019準決勝のゲームはすでに、始まっている。
ジマーマンはダブルマリガンのあと《血に染まった祭壇》と土地4枚という手札をキープしている。互いに不十分な態勢からのスタートだったが、土地を1枚引ければ良いというゆるい条件の中道の方に、若干の確率的な分があるように見えた。
しかし先に展開を続けたのは、ジマーマンの側であった。後手4ターン目、《練達の接合者》。
中道のもとに3枚目の土地が届いたのは、その返しのターンであった。中道は《楽園の贈り物》から《獰猛な仔狼》と、少しずつ盤面を揃えていくが、ここからジマーマンの展開も早い。
《血に染まった祭壇》は阻害なく着地し、ジマーマンは《練達の接合者》(本体)をコストにデーモンを生成する。一気に不利な状況に追い込められた中道は、《予期》で《翼ある言葉》を選ぶ。デッキ「最強の1枚」でもある《アーク弓のレインジャー、ビビアン》も《予期》で見えていて、中道ももちろんそれが欲しくないわけがないが、今この瞬間の劣勢を返す能力を持ってはいなかった。
中道は《翼ある言葉》から土地を引いて、《小走り犬》をプレイする。この《小走り犬》と狼・トークンでジマーマンのゴーレム・トークンのアタックをダブルブロックして交換するが、ここだけみれば損失の方が大きく、割に合っていない。
さらにジマーマンは《大隊の歩兵》で《大隊の歩兵》を探して、《血に染まった祭壇》でデーモンに変化させて次ターンにでも勝ちきれそうな様子であった。
圧倒的な盤面。しかし中道は、活路を見いだしていく。《秘本綴じのリッチ》から《狂気の一咬み》と続け、「接死ダメージ」でデーモンを1体落とす。
ジマーマンは先ほど手札に加えた《大隊の歩兵》をデーモンに変化させて「デーモン2体を攻防に参加させる体制」を崩さないが、ここで中道が示したのは、《裏切りの工作員》だ。
中道は立っているデーモン・トークンのコントロールを奪って、それを対策とした。元々ダブルマリガンのために手札の少ないジマーマン。デーモン・トークン生成の「種」となる次弾がここで続けられなかった。
ここで、これまでほとんど一方的に守勢を強いられ続けてきた中道が攻勢に回る。《腐れ蔦の再生》も置き、総勢アタックを続けたところで、ジマーマンは耐えきるだけのライフを喪失した。
ジマーマン 0-1 中道
ゲーム 2
中道 大輔 |
ゲーム2の準備で、中道は《要塞ガニ》などをサイドインしていく。減らすのは《急報》のようなカードに弱い、《塩水生まれの殺し屋》のようなカードだ。
このゲーム2はしばらくゆっくりとした展開となった。ジマーマンの先手1ターン目《強迫》が中道の手札から《予期》を落とすと、たがいにゲームメイクをできるほどの脅威を示していけない。
多少クリーチャー同士の交換があった後、ジマーマンは《深海艦隊の殺し屋》から《骨まといの屍術師》とミッドレンジ・クリーチャーを並べ立てる。中道も負けじと《腐れ蔦の再生》から《節くれ背のサイ》と続けるが、この《節くれ背のサイ》が《殺害》されると、盤面はジマーマンの側に再び傾いた。
ラウル・ジマーマン |
中道の《腐れ蔦の再生》と《要塞ガニ》対、ジマーマンの《深海艦隊の殺し屋》《骨まといの屍術師》、ゾンビ・トークンだ。ジマーマンの3体アタックに対してダメージをいくらか軽減することしかできず、中道のライフは次第に追い込まれていく。さらにジマーマンは3/3の攻撃をブロックした《要塞ガニ》に《苦しめる吸引》を当てて、アタッカーたちの行く道をこじ開けていく。
これに対し中道も《腐れ蔦の再生》で引き込んだ大量の土地と《予言ダコ》、《秘本綴じのリッチ》で守りを固め、巻き返しを図る。
しかしジマーマンはこの2体を気にする様子もなく、3体で再びアタックを仕掛けてきた。《秘本綴じのリッチ》がゾンビ・トークンを、 《予言ダコ》が《骨まといの屍術師》をブロックする。ジマーマンは《鼓舞する突撃》で《予言ダコ》を一方的に打ち取りつつ、さらに《漆黒軍の騎士》を追加した。さらに先ほど5点が通っているので、戦場に出たターンから+1/+1カウンターが置かれることで、ほとんどベスト・ムーブともいえる噛み合いだ。
ここまでか。中道を見守る側の応援にそんな雰囲気が一瞬漂ったかに見えたが、中道は諦めの表情を一度も浮かべなかった。まず《ムラーサの胎動》で《秘本綴じのリッチ》を回収しそのままプレイ、さらに《狂気の一咬み》で《漆黒軍の騎士》を一方的に撃ち落とすと……ライフに一気に余裕ができつつ、ふたたび盤面は均衡を迎えようとしていた。
やがて《腐れ蔦の再生》で多数のカードを引いていた中道が、《裏切りの工作員》にたどり着いた。
《深海艦隊の殺し屋》を奪うと、ジマーマンのもとには《骨まといの屍術師》しか残らず、それも《金縛り》にあって、2度の逆境をしっかりと乗り越えた中道が、2-0という形でマッチを制した。
ジマーマン 0-2 中道
デッキリスト
8 《島》 6 《森》 1 《沼》 2 《ジャングルのうろ穴》 -土地(17)- 2 《塩水生まれの殺し屋》 1 《大都市のスプライト》 2 《獰猛な仔狼》 2 《網投げ蜘蛛》 1 《小走り犬》 1 《秘本綴じのリッチ》 1 《予言ダコ》 1 《茂み壊し》 1 《裏切りの工作員》 1 《隕石ゴーレム》 -クリーチャー(13)- |
2 《狂気の一咬み》 1 《予期》 1 《楽園の贈り物》 1 《ムラーサの胎動》 1 《翼ある言葉》 1 《金縛り》 1 《腐れ蔦の再生》 1 《狼乗りの鞍》 1 《アーク弓のレインジャー、ビビアン》 -呪文(10)- |
9 《沼》 7 《平地》 1 《磨かれたやせ地》 -土地(17)- 1 《漆黒軍の騎士》 2 《血の強盗》 1 《死体騎士》 2 《大隊の歩兵》 1 《大胆な盗人》 1 《不動の哨兵》 1 《深海艦隊の殺し屋》 1 《庇護のグリフィン》 1 《練達の接合者》 1 《骨まといの屍術師》 1 《夜明けの天使》 1 《陰惨な鞭使い》 -クリーチャー(14)- |
1 《骨の粉砕》 1 《祖先の刃》 1 《勇壮の時》 1 《平和な心》 1 《殺害》 1 《魂回収》 1 《苦しめる吸引》 1 《骨への血》 1 《血に染まった祭壇》 -呪文(9)- |
終わってから互いのデッキを見れば、中道のデッキは「緑多色」として強烈なレアや多色のアンコモンが多数採用されている。むしろ序盤はマナ基盤を整えることを得意とするカードが多く、ジマーマンがそこをテンポ良く展開しつつ差し切れるかどうか、といった相性だったようだ。
《裏切りの工作員》。中道のデッキにとって、おそらく一番の「必殺技」となるカードだろう。決勝ドラフトではカードプールは事前公開のために「知られていない」という前提で使うことは不可能だが、そもそも互いに展開し合う普通のリミテッドでは《裏切りの工作員》の能力に対抗できるカードや戦法はごく一部だ。
おそらく最も《裏切りの工作員》対策として「期待値が高い」のは、出てくる前に中道を倒しきることだろう。もちろんそうしたプランを立てられることも分かっている中道は、その一歩二歩先を行けるような目線でデッキを組んでいる。
二度の劣勢から二度の「必殺技」を放ち、中道 大輔が決勝へ進出した。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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